第34話 - 貴族の応酬 -
コン コン
「おじゃまいたしますわ」
!
「ごきげんよう、シャル、気分はいかがかしら?」
「裁断者……。たった今、最悪になりました。なにか御用ですか?」
「ユミ=マーガリン」
150cm少し程度、左右に2本金~ピンク、ドリルテールの髪をリボンで縛り、やや短い黒調のロリータドレスを着ている。
シャーロテは待遇こそ悪くないものの、ほぼ軟禁状態が続いていた。その能力から、陣営に取り込もうとする貴族が後を絶たない。
「『紡ぐ者』ですわ。もちろん本日も勧誘です。私達の元に来る決心はつきまして?」
裁断者と呼ばれたことを不服そうにし、自ら訂正する。
――――マーガリン伯爵家の子女、正直この女は頭のネジがズレている。目的が何なのかすらわからない。ただ、一族秘伝の糸と魔法を複合した実力は国内最強クラス。というか、負けたところを見たことが無い。
「私は処刑となる身でしょう。あと愛称で呼ばないでください」
「処刑にならないために、誘っていますのよ?」
――――分かっていて、言っているのに皮肉も通じないのね。
「お帰りを」
「ふぅん」
途端に目つきが鋭くなる。
「そんなダサイ服を着ているから、気分も滅入るのでなくて?」
瞬間、ユミが手をかざし、指が不規則に動く。
ズババンッ!
一瞬にしてシャーロテの収監服が粉々になり、床に散乱する。下着を残して裸になる。
「なっ!? ……なにを!」
パチンッ ガチャ
ユミが指を鳴らすと、使用人のメイドがケースを持って入室してくる。
「置いて」
再びユミが片手を不規則に動かす。ケースが開き、中からドレスが浮き出てくる。
――――見えない糸で操っている!
「動かないでくださいまし? 動くと血だらけですわよ」
ズババババンッ!
ドレスがありえない動きをした後、シャーロテにキレイに着せられた。
驚愕の表情だ。
――――なんという糸のコントロール力、こんな芸当みたことがない……!
メイドは淡々と、床に散らばった粉々になった服のほうを箒で集め、ケースに片づけている。
「サイズはピッタリのようね? 差し上げますわ。気に入っていただけたら、私達とパーティー場へ参りましょう? 私のことは姉だとおもって」
・・・
ユミは退室しメイドも丁寧に頭を下げて出てゆく。廊下を進むユミの前にふらふらと歩く朝姫が向かってきた。すれ違う。
「ふんっ 異邦人がうろうろと」
「ぬ? ”ほつれ”が目立つぞ? 向かい合うは血筋ではないのか?」
「……この女、いつか切り刻む」
・・・
ガチャ
「……はぁ」
「邪魔するぞ」
「……今度は、あなたですか、神来社朝姫」
「ほう。上等な召し物じゃのう。捕虜というのはそんな待遇なのか?」
この西区の庁舎、中でもこの区画に入って来られるのは、かなりベーリット派に偏った関係者のみだ。そんな中でもこの朝姫はおかまいなしでどこでも現れる。姿を見ようが外交特権のめんどくさい相手と関わる人間など居ない。
「無理やり着せられました。差し上げるのでここから救出していただけませんか?」
「魔法弾を撃ってきた相手をなぜ助けねばならん?」
――――そんなこと露ほども気にする人間ではないことくらい承知。何か目的があるはず。でもこの神来社朝姫相手に、隠し事はほぼ不可能。
空返事のような言い方から少しボーっとした感じでシャーロテを見始めた。
――――この動き! 先見、もしくは星詠みを使う時の特徴とみた。
シャーロテも朝姫の動きを凝視する。
「ん?」
その視線に朝姫も気づき、スッっと普段通り、鉄扇を少し開き、口元を隠す。
「……私について、何かみえましたか?」
「ククッ。何も? 札を数枚置いていく。私に情報を流せ。お前にできることは、それが良い方向に動くことを祈るだけじゃ」
「……」
「じゃあの」
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