第33話 - 衛兵VS傭兵
カーリは詠唱に入る。何かする気だ。転移門のドウターは、まだ姿も薄く、意識がなく、陣の中央で三角座りをしている。カーリが地面に両手を突く。
ドンッ!
「ゴーレム!? 召喚士か!」
状況が全く分からないが、相手はやる気まんまんのようだ。エスティナはこちらが知り合い同士とみて、状況を聞きたがっている。しかし3メートル級のゴーレムの大振りのパンチが襲う。
ブオン!
同時に後退し交わす。
「エ、エスティナ! 回復をくれ!」
「? ふざけているのですか? まだ何もしていないでしょう」
「今日は決闘の試合日だって言ってあっただろう! 見た目に傷はないが、身体が疲労困憊だ!」
「……私も仕事で神聖術を使っていて、あまり余力がありません。ゴーレムは引き受けます。拳銃で術者を狙ってください」
!
エスティナは大ハンマーのほうを具現させ、パンチを受けたり、
攻撃を放ったりし始めた。
「ちっ!」
銃を構えた。が、すぐに防御障壁を展開される。
「撃ってもだめか!」
瞬間――
「キッハー!」
ガンッ!
「ぐあ!」
何かに横から薙ぎ払われる。慌てて受け身から姿勢を立て直し、
攻撃を受けた方向に目をやる。
「!? お前は! オッドか!」
「よおガードォ、遊ぼうぜえ?」
じきに召喚が完了し、ドウターの姿が完全なものとなった。
「オッド、足止めをなさい!」
言うと、カーリは現れたドウターごと、転移していってしまった。ゴーレムも消える。
「目立った傷はねえが、余力は少なそうだなあ? お2人さんよ。キャミソールとはサービス盛況だなエスティナさんよ」
――2対1でも余裕って顔だな。この状態でオッドとやりあえるか? エスティナも余力は無いらしい、下手すれば全滅だ。
「私はオッドと相性がよくありません、カベヤマさん、残りの法力で回復をするので、なんとかできませんか?」
オッドは全身の関節を外して、攻撃も防御にも利用してくる。元の身長の高さに加えて、バネとムチのように非常にリーチが長い。打撃を受ける際は関節をわざと外し、受け流して緩和するので、エスティナのハンマーとは相性が悪いそうだ。その体質を発揮しやすいよう、鉤爪(かぎづめ)を両手に装備している。
回復を受けながら説明も受ける。
「ナックルよりナイフの斬撃主体で行ってください。私も一応取れる対策はしておきます」
――何かしてきたら銃で撃ってやろうと思ったが、こっちの回復を見逃してやがる。なぜだ?
「準備オッケーか? 待っててやったぜガード」
「それが命取りだったんじゃないか?」
問答無用で拳銃を撃つ。
ダン!
「キッハー!」
同時に上へ飛んできた。上から鉤爪の一撃が襲う。
ガキン!
ナックルナイフで受ける。やはり190センチから繰り出される異様に長いリーチから、さらに関節も外してくるため、それなりの距離を取っていてもかなり間合いへの到達が早く感じる。
ガンガン! ガンガン!
鞭のようにしなるような攻撃で4連撃が繰り出される。
ナックルナイフで丁寧に迎撃する。
――速度はそこまで早くないが、変則的すぎる!
「らぁ!」
明らかにスキがあったので蹴りを撃つ。が、届かない。
――リーチ差が掴みにくい!
「キッハッハー! どうしたガード?」
「シッ!」
突っ込む。オッドの右が襲う。
ガシ!
ナイフで、受けて絡めとる。左も来る。
ガシ!
同じくナイフで受けて絡めとる。
――!
両手が塞がり、互いに蹴りを警戒する、がどちらも撃たない。
ならば――
同時に、頭突きを繰り出した。考えたことは同じだ。
ゴキッ!
正面衝突する。
――ッ
「がはッ!」
ガードが昏倒する。
――首の関節まで外せるのか……!
同時に放った頭突きであったが、これもオッドが首も関節を外し、ムチのように振るって威力を増大しガードに打ち勝つ。
「キアッ!」
ガシッ
ひるんだところを首を掴まれ持ち上げられる。
「終いだガード!」
「ぐううう!」
!?
バシン! バシン!
エスティナから2本のナイフが投擲される。オッドが反対の手で弾く。
出来たスキでオッドの掴む手の肘側に蹴りを入れる。手が離れた。
「チィ!」
オッドが逆の手で肘を庇う。おそらく神経管付近に当てられた。
シビレを誘発させたようだ。バックステップで距離を取る。
「……ま、今日は楽しめたぜえ。仕事は時間稼ぎだしな。だから最初の回復時間も見逃した。あばよ」
「ちっ」
すかさず拳銃を撃つ。
ダン!
同時に大きく後ろに跳躍し、塀にのってさらに平屋の屋根の乗り、オッドは去っていく。
――もう拳銃の効かない敵ばかりじゃないか?
ヘトヘトでなんとか空き家に帰宅し、居間にぶっ倒れた。
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