第16話 - 臨時の試験 -

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「まさか卑しさ溢れるあなたを叩き潰せるとは。日々お祈りしていた甲斐がありました」


 ――日々どんなお祈りしてるんだよ。特殊なファン狙いか?


-スタンド上、エル-


「ガードくん勝てるかなあ? 槍は使いこなせるようになったのかな」


「喧嘩は昔から強かったけどねえ。でも世の中つよーい人がいっぱいいるのよお? むっふふふ」


・・・


『両者に魔法バリアを施します』


 武器は本物を使うため、監督術者によって双方に同量の、全身への競技用耐久バリアを施す。会場内のモニターに残り耐久量のゲージが表示される。


 緑→黄→橙→赤とダメージを追うたびに変わり、赤もしくは消失の時点で負けとなる。またバリアの耐久が少ない状態で、本人に大ダメージが入りそうな場合は審判に緊急終了させられることもある。


「神槍リザルエルスラルですか。一度拝見しましたが、あなたの手にあるとは。しかし使いこなせるのですか? ”結果を求める者”。あなたとは正反対ですね」


「……」


 シスターは武器を出す動作に入る。ガードは魔力による具現、発現がまだできない。


 ――おそらく、書の類の神具か、法杖だろう。前衛VS後衛の構図か。


「?」


 具現されたその手に握られていたのは、女性の体格にはそぐわない巨大なハンマーだった。


 ――ハンマーかよ! それでさっきの、か!


『それでは、試合開始』


 ビーーーッ!


 ブザーが鳴った。


 ――ッ!


 ゴッ!


 たった2歩の踏み込みから両手ハンマーの一撃を受ける、

なんとか槍で受けるが腕がシビれそうになる威力だった。


 ――はええ!


 三連突きを撃つが、長さ50×幅30程度の円柱状のハンマーの頭頂側を向けられ、

ずらすように簡単に防がれる。


 ――法術で重さをコントロールしてガンガン振り回してくる気か。


「ハッ!」


 上、左右を基本に連撃を繰り出してくる。防いだり交わしたりするが、

重量の圧の差によってガードのポジションが徐々に後退していく。


 ――重い! このままじゃジリ貧だ。


「やはりまったくその槍を使えていませんね」


 ガコッ!


 大振りが来る。なんとか防ぐが衝撃でさらに大きく後退してしまう。


・・・


 大分場内の端近くまで後退させられたが、さらなる追撃は来ない。一息つく。


「よし、いくぞ……はっ!」


 エスティナの足元のみへ連続の細かい突きを撃ち込んでいく。


 !


「なるほど、考えたの」


 朝姫が関心している。


 エスティナは上半身のスキを嫌い、大きさのあるハンマーを下段まで下ろしたくないようだ。足さばきのみで交わしている。


 ――このまま突き続ける! 苦しくなれば必ずハンマーで防御するはず!


 壁際まで数メートルといったところまで押されたエスティナが、ついにハンマーを下向きにする。足元への突きをハンマーの頭側で防御した。


 ――ここだ!


 上段へ強い突きを撃ち込む。


「それはよくばりすぎじゃ」


 瞬間――


 ゴッ!


「がっ……!」


 突きは交わされ、側面から両手ハンマーがモロに入る。

表示される耐久ゲージが一気に大きく失われ、黄色帯となった。


 肉体への実際のダメージはないが、痛覚は出る。


「あのシスター、相当速いの」



ガード           ■■■ ■■■■ ■■■■

エスティナ ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■


・・・


 ――あ、ありえねえ。後の先だぞ? 両手ハンマーは一発が重い。その代わりの重量だ。なのにこれで返されてちゃ勝ち目がない。クラスそのものが違う強さだ。


 尚も鋭くエスティナがガードを見据える。


 ――仕方ない。


 槍をエルの居る客席に向けて差し出す。意図に気づいたのか、エルはスっと人差し指をかざす。槍が消失した。


 懐からそれを取り出す。ナックルナイフが2本。握りこみ、くるくると回す。順持ち、逆持ち、ナイフ部分の方向をテクニカルに変えられる。


 ――俺の本来の武器だ。ガキっぽくて使いたくはなかったがな。


 勤務時の武器は剣と槍のため認められず所持ができなかった。祖父の庭園をずっと手伝って以来、ハサミと共に最も手になじんでいる武器だ。そして衛兵としての甲冑もすべて脱ぎ捨てる。


「それが本来の武器ですか。なるほど、卑しさが増しましたね」


 ――抜かしてろ。


「いくぞ……異常な前衛シスターめ、品の無さを教えてやる」


 一足飛びで飛び込む。エスティナがハンマーを正面に向けた所で、すかさず側面に回る。


 ――――斬撃!


 カッ!


 ハンマーが間に合わずナイフを柄で交わす。


「シッ」


 ――!


 もう片手のナックルがエスティナのボディに入る。


「うぐっ!」


 エスティナから苦痛の表情が伺えた。


「ほー、見違えた速さじゃの」


「あんたも速いが、これでスピードは五分だ。今度はそっちのデカイ獲物がハンデになるな?」



ガード      ■■■ ■■■■ ■■■■

エスティナ ■ ■■■■ ■■■■ ■■■■

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