第4話 - 続く試験、手伝いの方 -
-試験の翌日-
「ドウターが出たぞー!」
「またか、ほんとに最近多いな」
思考しながらも、ガードは普段通り門前の警備中だった。その目標であろう、女が全力でこちらへ走ってくる。
「そっちへいったぞ! 捕えてくれ!」
「異常ありま――」
言いかけたがそのまま捕える。ドウターの存在は許さない。
「あ……、まさかこれが、出会い――」
やたらと女はキュンキュンしていたが無視して牢屋へぶち込む手続きへ向かった。
・・・
数日して、先日の試験の体のダメージもほとんど癒えていた。ガードは自室にて、盆栽を愛でながら、手帳で予定を確認しいた。
「いよいよ明日、とその2日後、エルとの恐怖の2日間。その前日は建国祭の式典か。衛兵は国王の通る
エルも今現在部屋にいるようだ。相変わらず魔力がダダ
早めに寝た。
・・・
ほとんど寝れなかった。
仕方ないので起きて準備し、自宅を出て詰め所へ向かう。同僚、その他公人に所属する者の試験などの手伝いをする際は、手続きを済ませば出勤扱いとなる。エルから指定された屋内の施設へ向かった。
ドーム状の施設に入ると、以外と観戦者がいる様子が伺える。
「あ、ガードくん、おはよう」
相変わらず宙に浮いている。そして目がおかしい。魔王かなにかじゃなかろうか。あっという間に周囲に人がいなくなった。
「おはよう。意外と見に来る人がいるんだな」
「多分午後が目当てだとおもうよ、強い研究者の人、たくさん出るから。ん? ガードくん、なんだか心拍数と精神値が高いよ?」
「む、武者震いだ。相手をぶちのめしたくて仕方ないぜ」
「そうなんだ。この前のお昼も高かったけど、風邪じゃないよね」
「気のせいだろう。ところで今日俺はどういう風に立ち回ればいい?」
根掘り葉掘り追及される前に話題を変える。
「えっとね、勝ち負けで合否は決まらないんだけど、研究者はいくつか魔法を
勝敗よりも内容を見る試験か。免許更新試験ならこんなものだろう。
「子供の時みたいにやむ雲に相手の人を殴り倒しちゃだめだよ?」
「……」
ガードは地域の荒くれ者で喧嘩一番だった。逆にエルは虫も殺せない大人しい少女だった。
「じゃあ俺は準備してくる。時間に会場で会おう」
エルと別れロッカーに向かったあと、男性控室に入った。緊張で口が乾ききっていた。横に立ってるだけでも精神を吸い取られそうだった。
数十分後。
「エル=スラルさんのパートナーのガード=カベヤマさん、入場してください」
ざわっ
そのコールに周囲に一斉に振り向かれた。そしてすぐに目をそらされた。
――せめて、何か言ってくれ。俺を助けてくれ。たのむ。
慈悲はなかった。
・・・
入場し、会場中央へ向かう。相手の男女ペアも入場しているようだ。研究者初級の更新試験なので、歳も同じくらいだ。
エルは2階席からそのまま浮遊してガードの場所まで来た。
異様な光景に会場はすでに息をのんでいた。振り返ると案の定、対戦相手2人は震えあがっていた。
「それでは、エル=スラル組と、アツコ=イトー組の更新試合を開始します。」
ビー!
開始のブザーが鳴り響く。相手は構えたまま動かない、というか動けるはずもない。ガードも勤務用剣を抜き、構えを取ったまま様子を見る。主にエルの。
なぜか3人がエルに対して構えをとっていた。見かねた女性審判が前へ出て警告を出す。
「双方、早く始めなさい!」
「あ、今、前へ出ないでっ」
エルが待ったと手を審判に向けた。
その瞬間――
ゴトッ…… ドサッ……
女性審判の首と腕が飛んで床に落ちた。遅れて
・・・
――おい。 死んだぞ。
「うわああああああああああああああ!」
「逃げろおおおおおおおおおおお!」
会場がパニックになる。
――どうなってやがる!
審判員席のほうを見る。が、全員目を逸らして誰も動かない。自分は一切関わりたくない。それが答えだった。
――ク、クソヤロウ共が!
「あ、ご、ごめんなさい、今もどします」
エルが3つに分断された女性審判の肉片へ向けて手をかざす。するとブワッっと光に包まれ、女性審判は元通りに戻った。
「うっ! ゴホ! ゴホ!」
咳込みはしたのの、まったくの元通りとなった。本人は何が起こった? といった表情をしている。
――これは、先日の昼食のときに見せた復元……! 床の血や千切れた腕の服ごと元通りになっている。ありえない。もういろいろな次元でありえない。
客席でははまだ異様なざわつきが起こっている。相手の2人組は恐怖で青ざめていて、すでに構えすらとれていない。
「こ、降参します……!」
相手のアツコという選手が審判へ宣言した。
「……! ほ、ほんとに降参でいいのか?」
審判は
「はい! 構いません!」
!
「審判、降参だとこの試合、エルの合否はどうなりますか?」
ガードも
「一度も技能を披露しないで降参なら、試験無効で2日後に再試合が規定だ」
「――! そんな、明後日は花火が、お願い、降参しないで……!」
エルが言った瞬間――
「がはっ あががっ」
相手の2人が急に喉を押えながら
「……はい。……降参は、しません……」
――なんだこれは。チャーム系とかニューロン系の魔法か? 詠唱すらない言霊だけでか? 威力がありえなさすぎる。意識を乗っ取っている。
見ていられなかった。
ガシッ ガッ!
ガードは2人の武器と魔具を剣で叩き落とす。
「審判! エルは技能を出して相手は戦闘不能だ、こちらの合格ですね!?」
「あ……、そこまで! 試合終了!」
宣言を受ける。ガードはエルにおめでとうと声をかけ、すぐに会場をあとにした。ここ数日は一体何なのだと思案する。自分の望んだ平穏な日常とかけ離れている。
――どうしてエルはこうなった? 一瞬で殺して生き返らせて、まるでエルは化け物だ。だが本人にそんなこと言えるはずがない。あいつはただ一途に勉強してきただけだ。指導者はいるのか? 今まで何をしていた? 審判席は見て見ぬふりだった。どこかおかしいんじゃないか?
・・・
疲れ切っていた。
食堂へ行き、メニューを注文したものの、一口も食べられなかった。ガードは何も意識せずに、自然と教会へ足を運んでいた。現実から逃げ出したかった。
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