第537話 林間・臨海学校の裏側2
自由時間を終え、旅館に戻って来て少しすると夜飯になる。
飯は確かに美味く、あまり食べたことがない料理なんかが出てきて面白かったな。特に、湯葉、だったか? あれはなかなかに良いな。
イオに聞けば、どうやらそう難しいものじゃないらしいんで、今度作ってくれるそうだ。
ありがたい。
夜飯が終わると、少しだけ部屋で休息をとる。
今回の部屋割りも、あたしとクルミ、トウコの三人だ。
なんつーか、前回のスキー教室でもこんな感じだったな。
あたしたち三人は、荷物を適当に置くと、畳に腰を下ろし寛ぐ。
「はぁ、美味しかったですね~」
「そうなだな。ほんと、この学園に赴任してきてよかったぜ、私は」
「ですね~。あ、そう言えばミオ先生ってどうしてうちの学園に来たんですか? 外国人ですよね? 他にももっとあった気がするんですけど……それに、体育の実技担当ですし」
「ん、あぁ、まぁ色々とな。エイコと知り合いっつーか、叡董学園で体育教師をしてくれって頼まれてな。そういう理由だ」
「へぇ、あの学園長と知り合いなのか」
「あぁ」
まあ、最近お灸を据えたがな。
いやー、あれはなかなかに酷いもんだったし、仕方ない。
「そういや、この後は風呂だったか?」
「そうですね。いやぁ、ここのお風呂いいですよね~……お肌がすべすべになりますし、冷え性や肩こりにも効きますし……」
「そうだなぁ。私も、ここの風呂はいつも楽しみにしてるよ」
「気持ちいいしな、ここの風呂。あたしも好む。……あー、酒飲みたい」
「唐突だな……ミオ」
「ミオ先生、お酒好きですもんね」
あたしが酒を飲みたいとぼやくと、二人は困ったような笑みを浮かべながら言葉を返す。
いやまぁ、唐突だけどさ。
「前に行った飲み会とか、いろんな男性教師の人たちからお酒を勧められまくってたのに、全然酔いませんでしたもんね。あれ、すごかったですよね」
「ミオはうわばみだよな」
「あの程度じゃ全然酔わん。もっと強い酒じゃないとな」
一応、スピリタスなんかも飲めなくはないが、あれはあんまり好まんな。
ただアルコールが強いだけって感じがするんで。
「でもミオ先生が飲んでいたお酒って確か……」
「度数20%以上の物も平気でなかったか?」
「ん? あれくらい全然ジュースだろ」
「「それはない(です)」」
「そうか?」
「ミオ先生、結構変なところありますよね」
「あー、わかる。普段は冷静沈着だが、妙なところで天然っぽさを発揮するんだよな」
「おいおい、あたしは天然じゃないぞ? それはイオのことを言うもんだろ」
「「それはそう」」
あいつの扱い、やっぱ生徒教師関係なく共通なのか……。
まぁ、あいつは天然と言や、天然だからな。
あと、すんごい鈍感。
「……お酒、少しだけ飲みます?」
「ん、いいのか?」
「はい、学園長先生曰く、『まぁ、次の日に響かないように飲めばいいんじゃない?』だそうなので、他の先生方も軽く飲むって言ってましたし」
「おいおい、一応私らは教師で、引率者ではあるんだが……さすがに羽目を外すのはまずくないか? ってか、あの学園長、やっぱ自由だな……」
「ふむ、まぁ、エイコが良いってんなら飲むか。どれ……お、あったあった」
「ミオ、今自然な感じでカバンから酒を出さなかったか?」
「常備だ」
「アル中……」
「生憎と、中毒症状はあたしにはないぞ」
そもそも、『猛毒無効』でアルコールが体内に残るなんてことがないしな。
むしろ、効果を一時的に切って酒に酔う感覚を楽しんでるくらいだ。
「んで? 二人も飲むか?」
「じゃあ、折角なので……」
「なら、私も貰うか。日本酒か? これ」
「日本酒もあるが、世界各地の地酒もあるぞ」
「え、なんで?」
「まぁ、ちょっとした仕事で世界各地を回っていたんでな」
「それは、前職か?」
「んや、エイコに許可貰って、今もたまに海外に行くんだよ」
「え、そうなんですか? でも、ミオ先生っていつも仕事に来てますよね? どうやって……?」
あ、しまった。
考えてみりゃ、向こうと違って長距離移動ってのは乗り物が基本なんだよな……。
となると、あたしの長距離移動は変か……ミスったな。
まぁ、適当に誤魔化すか。
「いやなに、休日を使って移動してるんでな。だから、仕事には間に合うんだよ」
「休む時間とか削ってまで……すごいですね」
「大したことじゃないさ。……ほれ、飲むぞ」
「そうだな。それじゃ、ありがたく貰うよ」
「私も!」
そんなわけで、簡単な酒盛りが始まった。
……つってもまぁ、
「ですからねぇ? 酷いんですよぉ、私の元カレがぁ……!」
主に、トウコの愚痴りがほぼ全てなんだがな。
「わたしがいっつもい~~~~~っつも! 家事をしてるのにぃ、ちょ~っとでも悪い部分があると、すっごい文句言うんですよぉ~!」
バンバン! と机を叩きながら、元カレについての愚痴を零すトウコ。
というか、元カレいたのか。
「そうか」
「それでそれでぇ、わたしが嫌なら自分でやれ~! って言っても、そんなのは女の仕事って言うんですよぉ~……ひどくないですかぁ!?」
「そうだな。今時、そういう差別的発言はダメだよなぁ……」
「同意見だ。あたしとしちゃ、できる奴がやりゃいいと思う。両方できない場合は……まぁ、何とかなるんじゃねーの? 練習すりゃいいんだからよ」
「お二人は優しいですねぇ……うぅっ、わたしだってぇ、わたしだってぇ! 優しい彼氏が欲しいんですよぉ~! うわ~~~~ん!」
などと叫びながら泣き出してしまった。
大の大人がガチ泣きか……。
「冬子先生は泣き上戸だったか……」
「みたいだな。クルミは大丈夫なのか?」
「弱いわけじゃないが、普通だよ。自分の許容量は理解してるんだ」
「まともだな」
「それだと、冬子先生がまともじゃないみたいな言い方だぞ?」
「ははっ、それもそうだ」
「あぁ! 二人だけで話してるぅ~! わたしも混ぜて下さ~い!」
がばっ! とトウコが抱き着いてくる。
これは、泣き上戸だけじゃなさそうだなぁ、おい。
ってか、酒臭い。
「にしても、たったの二杯でアウトとは……とことん弱いんだな、冬子先生」
「わたしは寄ってな~いで~すよぉ~!」
「いや、どう見ても酔ってるな」
酔ってる奴は大抵酔ってないって言うもんだしな。
その典型に漏れず、トウコもそうらしい。
「えへへぇ~、ミオ先生あったかいです~……」
「はぁ、トウコ、酒を飲むのはそろそろやめた方がいいんじゃないか? この後、風呂だぞ?」
「えぇ~、いいじゃないですかぁ、こういう機会はめったにないんですからぁ~」
「め、めんどくせぇ……」
「ミオ、気持ちはわかるが馬鹿正直に言うのは……」
「酷いですぅ、ミオ先生がわたしをめんどくさいっていったぁ~! うえ~~ん!」
ぐっ……ま、マジでめんどくせぇ……。
あたしは基本、一人飲みかイオと話しながら飲んだりすることが多かったんだが……こうして酒に弱い奴と一緒にいるってのは、マジでめんどくせぇ……。
「悪かったよ」
「ぐすん……許しません……」
「おいおい、ずっとくっつくってのは無理があるだろ? あたしも風呂に入りたいし」
「じゃぁ、ぎゅってしてください……」
「なぜそうなる」
「ミオ、抱きしめるくらいはいいんじゃないか?」
「……まぁ、女同士だしな」
別に嫌ってわけじゃないが……まあいいか。
たったそれだけのことでこのめんどくささが無くなるんなら、安いもんだしな。
「仕方ねぇな……ほれ、これでいいだろ?」
トウコの希望通りに、ぎゅっと抱きしめる。
身長差はそこそこある上に、何気にトウコはスタイルは悪くないんで、抱きしめると普通に柔らかい。
だがしかし、イオの方が柔らかいし、抱き心地がいいからな!
「あぁ~……なんでしょう、この安心感……わたし、もう、彼氏とかどうでもいいかもしれません……」
「何を言ってるんだ」
「ミオ先生、もういっそ、わたしと付き合いません……?」
「それは無理だな」
「むぅ~、いけず~……」
「あたしは、イオ一筋なんでな」
「ミオもミオで結構アレだよな」
「アレってなんだアレって」
あたしのはこう、純粋なあれだからな?
元々、異世界でのあれこれとかで好きになったわけであって、別に女だから好きになった、とかじゃないからな。
あたしは別に同性愛者というわけではなく、たまたま好きになった奴が、たまたま女になっちまっただけだから。別に女が好きだ―――! みたいなわけじゃねぇから。
だからクルミ、その生暖かい目をあたしに向けるのはやめろ。
「ぐぅ……ぐぅ……」
「おい、トウコの奴寝始めたんだが」
「泣いて疲れたんじゃないか?」
「その可能性が高いが……あたしとしちゃ、マジで離れてほしいところだ」
その後、なんとかトウコを起こし、こっそり解毒魔法でアルコールを消すことで、何とかした。
酒盛りが終わり、あたしたちも温泉へ向かう。
時間帯的には、あたしらは二年生のガキどもに合わせて入ることになっている。
まぁ、つまるところは、イオたちと一緒の時間ってわけだな。
「はあ~、いざこうして見ると……ミオ先生って、本当にスタイルいいですよね……」
「ん? そうか?」
「同じ女として、羨ましく思うよ、まったく」
「まぁ、そう言われて嬉しくないと言えば嘘になるな」
つってもまぁ、あたしは贅肉が付きにくい……というより、普段から動きまくってるから、大体が筋肉になるんだがな。
「運動神経がものすごいのに、こんなに胸が大きいなんて……反則です!」
「そう言われてもな……だが、実際動き回る時めんどくさいぞ? 揺れると痛いし。というか、あたしとしちゃ二人の方が羨ましいぞ? バランスが取れてるからな」
「そ、そうか?」
「そうですかね?」
「あぁ。実際、二人みたいな奴は割とモテてたからなぁ」
「「マジで!?」」
「あぁ。なんかこう、大きすぎず、小さすぎないような女ってのは、案外モテるもんだ。やっぱ、バランスは大事だぜ? 例えば……胸がでかすぎるが、身長は低い、みたいな体系の奴が好きな奴ってのは、言っちゃ悪いが、特殊だろ?」
「「たしかに……」」
まぁ、それを言ったらイオも当てはまるには当てはまるが……あいつはもう、なんか例外だろ。
顔はいい性格もいい、スタイルもいい、家事もできる、そんな奴だぜ? モテない方がおかしいだろってもんだ。
実際、イオは気づいていなかったが、向こうの世界でも割とモテてたしな。
「まあ、そういうこった。ほれ、さっさと入るぞ」
「あ、はーい」
「そうだな」
雑談もほどほどに、あたしたちは浴場に入る。
すると、先に入っていたであろうガキどもから視線が集まる。
まぁ、教師の裸とか、通常なかなか見ないからな、新鮮に映るんだろう。
あたしたちは適当に分かれて、頭と体を洗い終えた後、各々好きな湯舟へ。
あたしはと言えば、イオたちを見つけたので、そちらへ向かう。
「おーっす、しっかり浸かってるか?」
あたしは、いつもの面子で仲良く風呂に入るイオたちに声をかける。
「あ、師匠」
あたしを認識するなり、イオはすんすんと匂いを嗅いだと思ったら、ジト目をあたしに向ける。
「師匠、お酒飲みました?」
「ん? ああ、軽くな。まあ、問題ない。すぐに消える」
別に隠すことでもないし、馬鹿正直に答える。
「……そうですか」
微妙な表情をイオは浮かべたが。
しかし、小言を言わないというのは珍しいな……いつもならもっとこう、『教師なんですから飲まないでくださいよ!』くら言いそうなんだがな。
「ミオさん、こんばんは」
「こんばんは、ミオさん!」
「こんばんは、ミオ先生」
そんなやり取りを終えた後、ミカ、メイ、エナの三人が挨拶をしてくる。
そういや、今日はあまり会ってなかったっけか。
ほぼほぼ別行動だったからな……。
「ああ。ここは本当にいい場所だな。日頃の疲れが取れる」
「師匠って、そんなに疲れてるんですか?」
きょとんとした顔でそう言われたが、あたしは頷く。
「そりゃ、あたしだって人間だ。疲れないわけないだろ? それに、色々とセーブするっていうのも、神経を使って疲れるんだよ。それに、こんな重いもんをぶら下げてれば、肩も凝る。お前と、メイだってそうだろ?」
あたしがそう言えば、二人は苦笑いを浮かべる。
「まあ……はい」
「そりゃあね」
「むぅ~、依桜ちゃんと女委ちゃんだけでなく、ミオ先生も、おっきい……」
そんなあたしたちを見ていたエナは、自分の胸とイオ、メイ、あたしと見比べて、頬を膨らませていた。
こいつもアイドルをやるだけあって、普通に可愛いよな。
そりゃ、モテるわ。
「何言ってるの。エナも十分大きいじゃない。というか、あれだけ歌って踊ってるのに、胸が大きくなるって、なかなかすごいんじゃないの?」
「そーかな? たしかに、うちが所属している事務所の中では、おっきい方だけど」
「そうなのね。……でも、エナってサイズはどれくらいなの?」
「えっと、Dくらいかな? 今もちょっとずつおっきくなってるけど」
「なんだ、私と同じくらいなのね」
「あ、未果ちゃんもD?」
「そうよ。というか、普通に考えて、高校二年生でDは普通に大きい方なんだけどね。そこの二人が異常なだけで」
「いやー、照れますなー」
「い、異常って……」
ミカのセリフに、メイは本当に照れているのかわからない笑みと言葉を放ち、イオは異常と言われたことに対して納得できない、みたいなそんな感じだな。
「じゃあじゃあ、依桜ちゃんたちってどれくらいなの? 大きさ」
ふと、単純に気になったであろうエナが胸のサイズを尋ねてきた。
「わたしはFだねー」
「あたしは、Eだったはずだぞ」
あたしとメイは特に恥ずかしがることもなく、普通に自身のサイズを話した。
いやまぁ、別に隠すようなもんでもねぇしな。
『くっ、やっぱりあの二人もすごい……!』
『ミオ先生なんて、体育教師をしているのに、どうしてあんなに大きいんだろう……?』
『やっぱり、美人? 美人だから!?』
そんなあたしたちのサイズを聞いた他のガキどもが、なぜかはわからんが戦慄していた。
これはあれか、胸が大きいのが羨ましいってとこか?
なぜか女ってのは、胸が小さい奴ほどやたらと大きいサイズを羨む傾向があるからな。
だが、ミリエリアは言っていた。
『胸のサイズは関係ありません。大事なのは、その人の魂と可愛さと、可愛さです』
だとさ。
可愛さ二回言ってるんだが……まぁ、あいつは変な奴だったから仕方ないな。うん。
「依桜ちゃんは?」
恥ずかしそうにしていたイオに対して、エナがずばっと切り込むが如く、イオにサイズを尋ねていた。
それに対して、イオは恥ずかしそうにしながらも、小さな声で答える。
「え、う、あの……その……じ、G、だよ……」
「わ、やっぱりおっきい!」
「ちなみに言うと、依桜は今現在も成長中で、もうすぐHよ」
ミカの突然の暴露に、イオがバッ! とミカをガン見した。
「え、そうなの!? 依桜ちゃんって、すっごく成長してるんだね!」
「あ、あはははは……ボクとしては、胸よりも、身長が欲しいんだけどね……」
遠い目をしながら、身長が欲しい……と言うイオの姿は、なんというか、哀愁が漂う。
こいつ、本当に身長のことを気にしてるからな……。
「あー、依桜ちゃん、背が低いもんね」
「うん……」
「そうそう、依桜君のおっぱいって、大きいだけじゃなくて、すっごく揉み心地がいいんだよ!」
「め、女委!? 余計なこと言わないで!?」
突然、メイがイオの胸が柔らかいと言うことについて割とでかめな声で言い放つと、エナの瞳がキラリと光る。
あれは、獲物を見定めた時の目だな。
ミリエリアがよくしていた目だ。
「も、揉み心地……」
「え、エナちゃん? どうして、その……ちょっと怪しい目をしているの? ねえ、聞いてる? それと、なんでそんなににじり寄ってくるの……?」
手をわきわきとさせながらにじり寄ってくるエナから逃げるように、後ずさるイオ。
しかし、壁に背中がぶつかってしまう。
「大丈夫だよ、依桜ちゃん」
「ほ、本当に?」
「うん! 一瞬……一瞬で終わるから!」
「どういうこと!?」
「隙あり!」
イオがツッコミをして気が緩んだ隙に、エナがイオにとびかかり、イオの豊満な胸を揉みだす。
「ひゃぁんっ!」
いきなり胸を揉まれたイオは、随分と可愛い喘ぎ声を漏らす。
「わ、ほんとだ! すっごく張りがあるのに、ふわふわもちもちだ! や、病みつきになりそう……!」
「ゃっ、ぁんっ! え、エナ、ちゃんっ、そ、それ、は、だめぇっ……! んっ、ふぅっ……ぁっ!」
エナはイオの胸を揉み続け、その間イオはひたすら喘ぎ声を零す。
心なしか表情も少しとろんとしている気がする。
「……相変わらず、依桜はエロいな。あいつ、あれで何の知識もないんだろ?」
そんな様子を見て、あたしはすぐ近くにいるミカに、そう尋ねる。
あいつ、一応性知識とかないはずなんだが……なんでこう、普通にエロいのか。
個人的にすんごい気になるところだ。
「みたいですね。なんで、ああなったのか……よくわかりません」
「……そうだな」
ミカも苦笑い交じりに良くわからないと返し、その言葉にあたしも同意する。
やはり、幼馴染でもわからないことなのか……。
「は、話してない、でっ、た、たすけっ……んぁんっ!」
話をしているあたしたちを見てか、イオが涙目であたしたちに助けを求め、やれやれとばかりにミカが二人の元へ移動する。
「はいはい。そこまでよ、エナ。これやったら、依桜がとんでもないことになるわ」
「あ、うん。堪能しました。依桜ちゃん、ありがとうございました」
「な、なんでお礼っ……? はぁっ、はぁっ……」
ようやく解放されたイオは、荒くなった呼吸を整える。
同時に、なぜかお礼を言って来たエナに向かって、ツッコミを入れていたが。
「……もっとも、周囲の人たちは手遅れみたいだけどね」
「手遅れ? ……え! な、なにこれ!?」
メイが手遅れと告げ、それに反応したイオが辺りを見回すと……
『『『ぶくぶくぶく……』』』
そこには、鼻血を出して風呂に浮かぶガキどもの姿があった。
どうやら、イオがエロ過ぎて鼻血を出してのぼせたようだ。
ってか、同性相手でも興奮させるとか、マジでどうなってんだよ、いやほんとに。
「依桜、急いで温泉から出すわよ! 女委とエナ、ミオさんも手伝って!」
とんでもない光景に慌てたミカがイオだけでなく、あたしとメイ、エナに引き上げる手伝いを指示を出し、すぐさまあたしたちは動き出す。
「う、うん!」
「了解!」
「わかったよ!」
「あいよ」
五人でせっせと湯舟から引き上げ、床に寝かせる。
その間、イオがあたしら以外の教師を呼びに行き、ガキどもは事なきを得た。
だが、ガキどもの表情は……それはもう、安らかな笑みを浮かべていたが。
……やっぱイオ、おかしいだろ。
あたしは、同性すらも興奮させるイオに対して、内心戦慄するのだった。
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