第535話 ゴールデンウイークの前と後
時間は遡り、視点も変わる。
それは、依桜が平行世界から帰ってきてから少しの頃。
「ふむ、異世界旅行に行くから、自分の髪色やらなんやらをどうにかしたい、と」
「はい。ほら、ボクって勇者として有名なので……」
イオが平行世界から帰って来てから約一ヶ月、明日から大型連休に入ると言う日の夜、依桜があたしの部屋を訪ねてくるなり、異世界旅行に行くから目立たない方法を教えてほしいと尋ねてきた。
「なるほどな。たしかに、お前の場合その髪は相当目立つ。変装するにも、お前の髪を切るのも、染めるのももったいない」
実際、こいつの銀髪は見事なもんだ。
傷んでいる場所なんて何一つなく、さらさらでふわふわという、わけのわからん素晴らしい触り心地だし、何より髪が長い姿がよく似合っている。
ショートカットなんかも似合うんだろうが、やはりこいつはロングだろ、ロング。
「そ、そうですか?」
「ああ。もったいない。そこで、だ。お前には、能力とスキルを一つずつ、伝授してやろうじゃないか」
そこで、あたしがこいつに能力とスキルを伝授することにした。
ちょうどいいのがあるしな。
「……え」
「当然、『感覚共鳴』だ」
「お、おやすみなさい!」
にっこり爽やかに言えば、依桜は大慌てで部屋から出ようとし……
「逃がさんッ! 結界!」
あたしの結界に阻まれていた。
ガチャガチャとドアノブを回す姿なんとも面白い。
「なぁに。いつも通り、ちょっとした激痛と、快楽がお前を襲うだけだ。問題あるまい」
「い、いやいやいやいや! 問題だらけです! あ、あの感覚だけは、嫌なんですよぉ!」
開かないドアを背に、イオは嫌々と首を横に何度も振りながら、涙目になる。
やはり、こいつのこういう表情はいいなぁ。可愛いし、ついいじりたくなる。
「大丈夫だ。お前の体も、あれに慣れたはず。それに、これからお前に伝授する能力とスキルは、一生役立つものになるだろう。だから……やるぞ」
まぁ、当然やるわけだが。
逃がすつもりなど毛頭ない!
「し、師匠、なんでそんなに笑ってるんですか……?」
「ははははは! 何を言っている。あたしは常に笑顔だろう?」
「い、いえ! 師匠がいい笑顔をする時は、決まってボクにとっていいことをする時じゃないです!」
「ええい、往生際が悪い! やるぞ!」
「あ、ちょっ、ま――いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」
問答無用だ!
「しくしく……もう、お嫁にいけないよぉ……」
例によって、いつもの伝授方法を使用したあと、イオは相変わらず色っぽい……というか、実際事後だろこれ、と言わんばかりの様子で少しだけ泣いていた。
ふぅむ、前ほど乱れなくなったが、それでもあれだな……。
「お前、平行世界から帰って来てから、そう言う事普通に言うようになったよな」
「……色々、ありましたので……」
「そうか」
たしか、こいつの話では、向こうの依桜に色々と言われたとか。
うぅむ、そこはやはり自分だからこそ、すんなり聞き入れることができた、ってところなのかね?
「さて、今回お前に伝授したのは、『変装』と『変色』だ」
「どういう効果なんですか?」
ようやく落ち着いたのか、起き上がりざまに効果内容について訊いてくる。
回復も早くなったらしい。これも成長ってことだな。
「『変装』は、簡単に言えば自分の姿をある程度変えるってものだな。髪の長さやら、体型とかだな」
「体型……はっ! ということは、ボクの胸も小さくできるんですか!?」
うおっ、眼がきらっきらしてやがる……!
ってかお前、未だにそれ気にしてんのかよ。
あー、なんつーか、こうも純粋な喜びようを見せられると、事実を告げるのが心苦しくなるな……。
まあ、仕方ない。
「それは無理だ」
「え、なんでですか!?」
「『変装』変化に伴った魔力量を消費する。そもそもこの能力はマジで燃費が良くない。髪の長さを変える程度であればさほどじゃないが、自分の体型を大幅に変えるとなると相当だし、お前の胸を小さくするってなるとかなり厄介だ。そもそも、小さくしている間、その小さくした分の胸はどこに行く? という話にもなる」
「……じゃ、じゃあ、身長も……?」
「当然だな。正直な所、体型を大きく変えるのは、相当な魔力消費なんで、お勧めしない。ま、お前はどうせ体がでかくなったり小さくなったりするんだ。それでいいだろ?」
「でもあれ、不定期なんですけど……」
「別にいいだろ。ってか、魔力消費どころか、何のスキルも能力もなしであそこまで体格が変わるってのは、結構レアだし、ありがたいことだぞ? 普通なら、よっぽどの能力やらスキル、魔道具が無きゃできないしな」
「うぅ……」
個人的には、小さくなったこいつとかかなり可愛いと思う。
ってか、イオの可愛さは、男の時から異常だと思う。
さすがだ、愛弟子。
「話を進めてもいいか?」
「はい……」
どんだけ胸を小さくしたいんだよこいつは。
すっげぇがっかりしてるし。
とはいえ、こればっかりは仕方がないんで、話を続けよう。
「『変色』のスキルだが、これはその名の通り、自身の体の色を変える、という物だな」
「具体的には、どういった?」
「そうだな、例えば……こんな感じだ」
そう言って、あたしは自身の髪色を黒から赤、赤から緑、緑から再び黒、と変化させていき、黒髪に戻したところで、今度は自身の肌の色なんかを褐色に変化させた。
「こんな風だな」
「へぇ~、こんなスキルが……つまり、自分の体なら、どこでも色を変えることができる、っていうことですか?」
「そういうことだ。あと、『変装』と『変色』の二つとも、一度変更すれば魔力消費はないんで、結構便利だぞ」
「それはいいですね。ありがとうございます、師匠」
「いいってことよ。さて、お前は明日から予定があるんだろ? なら、そろそろ寝た方がいいんじゃねぇのか?」
「あ、そうですね。それじゃあ、ボクはそろそろお暇しますね。おやすみなさい、師匠」
「あぁ、おやすみ」
適当に挨拶を交わしてから、イオはあたしの部屋を出て行った。
「ふむ……とりあえず、経過的には何も無し、だな」
イオがいなくなった後、ポツリとあたしは呟く。
一ヶ月前、イオがミリエリアの子孫であることがわかった。
それがきっかけで、あたしはあいつのステータスを定期的に覗いている。
だが、別段今すぐどうこうという変化は見られず、何事もないくらいだ。
おかげで、あたしとしては安心なんだが……正直な所、イオがなぜあいつの子孫なのかが不明であり、個人的にはそこを解明したいとは思っている。
が、そう簡単にわかれば苦労はしないというもの。
「ま、地道に行くかね」
ふっと笑みを口元に浮かべ、あたしは布団に入って眠りに落ちた。
さて、ゴールデンウイーク中のあたしと言えば、調べ物をするべく、日本各地、そして世界中を放浪していた。
だが、これと言って目ぼしい情報はなく、ほとんどが各国の地酒を味わうと言う、飲み歩きになってしまったが……まぁ、有意義だったな。
酒はやはり美味い。
そんなこんなで、イオが異世界旅行から帰ることになっていた日の夜、あたしはイオの家に帰宅し……
「イオおねえちゃん! これ美味しいです!」
「こっち、も、すごく、おい、しい!」
「イオねぇイオねぇ! これはなに!?」
「不思議な箱なのです……この中に人がいるのですか?」
「……美味」
なんか、増えていた。
いや、まあ、なんだ。
……何があった?
というか、すんごい既視感のある光景だなぁオイ。
たしか、前にイオが異世界に転移した時も、帰って来たら魔王を連れて来てたよな?
今回はなんだ、どういうことだ?
なんか知らんうちに、イオが見知らぬ幼女を五人連れて来てるんだが……マジで、どういうことだ?
奴の女たらしな部分は、幼女にも適用される、という事なのか?
うわぁ、マジか……。まあいいや、とりあえず、事情説明を求めるか。
「あー、んんっ! イオ、ちょっといいか?」
「あ、お帰りなさい師匠!」
「おう、ただいま。……じゃなくてだな! お前、一体何があった? なんで、五人も見知らぬ幼女を連れてるんだ? しかも、五人中三人が魔族じゃねぇか」
「いやぁ、あはは……その、色々とありまして……とりあえず、夜ご飯を食べた後でいいですか?」
「あぁ、それでいい。あたしは、部屋で待ってるよ」
「ご飯はいいんですか?」
「適当に食べてきた。気にするな。じゃ、また後でな」
「あ、はい」
とりあえず、五人がやたらイオにべったりだったんで、あたしは部屋に戻ることにした。
なんと言うか、邪魔できない雰囲気だったからな……。
それから少ししてイオがあたしの部屋にやってきた。
酒も持参で。
「どうぞ、お納めください」
「どういうシチュエーションだよ」
「いやぁ、あはは……その、説明のために、お酒を、と」
「そうか。ま、ありがたくもらうわ」
酒に罪は無い。
あたしはいそいそと受け取った酒を空け、早速と言わんばかりに流し込む。
「んっんっんっ……ぷはぁっ! 美味いな、この酒」
「あ、実はそれ商店街の酒屋さんのお兄さんからもらったもので、どうせなら師匠にと思いまして」
「ほう、言い心掛けだ。それで? 早速事情を説明してもらうぞ」
「あ、はい。えーっと、なんと言いますか……結論から言った方がいいですか?」
「そうだな。手っ取り早く頼む」
「わかりました。そうですね……まず、今回の旅行の目的は、学園長先生が作った異世界へ行くための装置の試運転がメインでした」
「あぁ。正直、あたしですら未だに己の身一つで異世界に行けないってのに、あいつはなんか知らんけどできるようにしてるのが謎だがな」
「あ、あははは……」
あたしはよく、イオだけでなく、ミカたちやエイコなんかに規格外だなんだ言われてはいるが、あたしから言わせりゃ、エイコの方が規格外だ。
少なくとも、魔法が無い世界において、異世界へ行くための装置を作るなどという事は通常あり得ないし、普通じゃない。
できるとすりゃ、神や天使、悪魔といった、異界の連中や神くらいのもんだ。
あたしだって、未だにできちゃいない。
……とはいえ、実を言えばエイコの異世界転移装置の理論を最近知ることができたんで、実現可能段階にかなり近づいてはいるが……まだ言わなくてもいいだろう。
今のペースで行けば、そうだな……大体、今年の十二月、早ければ十一月下旬くらいには実現できそうだな。
もしそうなれば、自由に行き来ができるし、かなり楽になる事だろう。
……ま、今のあたしの居場所はこっちの世界なんで、無理して実現する必要はないが。
「それで? 話の続きは?」
「あ、すみません。えーっと、そうですね……まず、異世界へたどり着いた後、適当に過ごしていたんですけど、ちょっと色々あって悪徳領主を捕まえるようなことをして、それで――」
「ちょっと待て」
今しがた、ものっすごい気になる言葉を吐いたイオの話を一旦遮る。
「あ、はい、なんですか?」
話を遮られたイオの方はと言えば、何でもないかのような表情だ。
こいつ……。
「なぜ幼女が増えているのか、という話を差し置いて、なんでお前はいきなり大事なことを話すんださらっと」
「あ、え、ええっと、その……以前あの世界を旅していた時に行った村に行きまして……そしたら、悪い領主に虐げられていたんです、その村。それで、どうにかしようと思って行ったら、まあその……奴隷にされていた人たちを助けたんです。あ、その領主さんは鉱山送りになりました」
あはは、と困ったような笑みを浮かべながら、事の顛末を話すイオ。
こいつのトラブル体質には呆れるほかないな、マジで。
「はぁ、お前、マジで何やってんだよ……いや、いい。お前らしいっちゃらしいしな。んで? 続きは?」
とりあえず、このままじゃ先に進まないってことで、俺はイオに続きを促す。
「そうですね。んー、その後は普通に過ごして、盛大に歓待を受けて、その後クナルラルを目指してたんですけど……その途中、アイちゃんが小さな小屋に何かの反応がある、って言って来たんです」
「……ん? おいちょっと待て」
「はい、今度は何ですか?」
「確か、アイがいるのはお前のスマホ、もしくは異世界転移装置の中だったよな?」
「そうですね」
「なら、なぜ小屋に何か反応がある、なんてわかったんだ? 普通、あり得ないだろう。向こうに衛星なんてもんはねぇ。なのにどうやったんだ?」
「え? それはこう、付与魔法で『気配感知』の能力をちょいっと……」
「……そ、そうか。え、マジで?」
「はい。何かおかしかったですか?」
「……いや、なんでもない」
おいおい、こいつどうなってんの? なんで能力を付与しちゃってんの?
普通、付与魔法ってのは、様々な魔法を道具に付与したり、肉体に付与させる物であって、間違っても能力なんかを付与するなんざ不可能なはずなんだが……どういうこった?
やっぱあれか、子孫パワー的なアレか?
いやしかし……ふぅむ。よくわからん。
まあいい、とりあえず保留だ。
「じゃあ、続きを話しますね」
「あぁ、頼む」
「それで、その反応がある小屋に入ったら、あの五人がいて、助けたんです。それで、戻ってきた人攫いの人たちを倒して、そのままクナルラルに引きずって行って、最初はそこで暮らさせようと思ったんですけど、その……ノックアウトされまして……それで、ボクが姉となることで、こっちの世界で暮らすことになりまして……」
「なるほどな。つまり、あの五人がやたら懇願してくるもんだから、お前も折れてこっちに連れてきた、ってとこか」
「はい、そうです」
「ふむ……お前、実は幼女キラーだったりしない? こう、たらし的な」
「そんな物騒なものじゃないですよ?」
「……そこで天然を発揮するなよ。いや、いい。なるほど、理解した。だが、あの金髪と水色髪のガキは魔族、しかもサキュバスだろう? 大丈夫なのか?」
「師匠、クーナとスイです」
にっこり、と魅力的な笑顔で訂正を求められるが、その笑顔の圧がものすごい。
「いやしかしだな、ガキであることに変わりは――」
「クーナと、スイです」
圧が増した。
なんかこいつ、既にシスコンになってないか?
元々、メル相手にかなりのシスコンかましてはいたが、出会ったばかりのはずの他の五人に対してもこの始末……ヤバいな。
今後、マジで気を付けよう。
あのガキどもに危害があれば、こいつは何をしでかすかわからないからなぁ……。
「……クーナとスイは、サキュバスだが大丈夫なのか?」
「あ、はい、大丈夫ですよ? ジルミスさんが、サキュバスとしての力を抑えてくれるネックレスを渡してくれましたから」
「そうか。ならいいが」
サキュバスという種族は、こいつのような奴を除けばかなり厄介と言えよう。
魔族ではあるため、魔力量なんかが多く、ものすごく秀でている、というわけではないが、魔法もかなり優秀だ。
しかも、幻覚系の魔法や能力、スキルなんかとはかなり相性が良く、何気に相手がめんどくさい存在でもある。
というか、あいつらの最も恐ろしい点と言えば、やはり性的な部分と言えよう。
奴らは相手の性欲を増幅させ、正常な判断能力を奪ってから、じわじわと精気なんかを搾り取ってくる。
しかも、サキュバスは見目が良い奴らばかりだからな。
おかげで、どんなに強い男でも、大体は搾りかすにされるなんてのはざらだった。
何度も見たしな。
だがしかし、サキュバスは基本、相手の性的な部分を増幅させ、そう言う面に持ち込むことで真価を発揮するんだが……正直言って、イオはあいつらにとっての天敵だ。
だってこいつ、性的な知識ないし、そもそも天然だからよくわかってないしな。
下手すりゃ性欲ないんじゃね? とか思うわけで。
いやまぁ、そういうことを知れば少なからずあるとは思うんだが……そもそもこいつ、誰かに対して欲情する、なんてことがなさそうだしなぁ。
余談ではあるが、戦場において、男たちの間で最も幸せな死因というのが、サキュバスだったりする。
どうでもいい話だ。
「あ、それでなんですけど」
「ん、なんだ?」
「実は引っ越しを考えていまして……この家だと、ちょっとだけ手狭なんです」
「あー、たしかにこの家は平均的な家屋よりかは広いが、十人以上となると手狭だな」
「ちなみに、これが検討中の家です」
そう言ってイオが渡してきた紙には、家の見取り図らしきものが描かれた、数枚の紙だった。
なるほど、三階建てで、かなり部屋数もあるな……。
バルコニーなんかもあると。
「いいんじゃねぇの?」
イオに渡された見取り図を見て、あたしは賛成の言葉を告げる。
なんだかんだ、広い家ってのもいいもんだしな。
「師匠もそう思います? ボクもここはいいなぁ、って思ってて」
「あたしは暮らせりゃどこでもいい」
「あはは、師匠らしいです」
「まあな」
そもそも、あたしは色々とできるからな。
雨風をしのぐのであれば、結界魔法でどうとでもなるし、プライベートを見られたくないのであれば、暗殺者としての能力をフルに活用すりゃどうとでもなる。
ハッキリ言って、あたしに特定の住居など不要なんだがな。
とはいえ、こいつと一緒に暮らせるってのはメリットがかなり多いからな。
飯とか、飯とか、あと飯とか。
「なら、お前は明日辺りに見に行くのか?」
「あ、いえ、そこは父さんと母さんが行くみたいです」
「じゃあ、お前はどうするんだ?」
「ボクは、みんなを連れて遊園地にでも行こうかなと」
「あー、そういや人攫いに遭ったんだったか。なら、そういうマイナスな部分を払拭するのなら、こっちの世界の娯楽施設はかなり効果的だろうな」
事実、こっちは向こうと違いかなり平和だ。
いや、国によっては紛争なんかもある以上、世界的に見ればさほど平和、とは言い難いかもしれんが……この国の子供はかなりいい環境だろうな。
もちろん、細かい所を見ればそうでもないが。
「ま、引っ越しについては理解した」
「師匠も来ますか?」
「いや、あたしはいい。あいつらはお前を慕ってこっちに来たんだ。なら、お前とだけの方があいつらもいいだろ」
あたしがいたら、気も休まらないだろうしな。
「……ありがとうございます、気を遣ってもらって」
「気にすんな。……さて、あたしは少しやることがあるんで、お前はもう部屋に戻りな」
「あ、はい。じゃあ、おやすみなさい、師匠」
「ああ。おやすみ」
バタン。
「……さて、と」
イオがいなくなった後、あたしは結界を部屋に張る。
侵入を遮断するための結界と、防護結界の二種類だ。
「ふむ、妹を連れて来るのは予想外だったな」
まさか、前回に引き続き妹を連れて来るとは、さすがのあたしも予想が出来なかった。
一体どんな人生を送ったらあんな奇妙奇天烈な人生を歩みんだかさっぱりわからん。
だが、異世界から帰ってきたあいつのステータスに大きな変化はなかった。
しかし、妹が新たに五人、か。
「……わけがわからん」
あの数、偶然か?
いや、しかし……あの五人には間違いなく、何らかの加護が付与されていた。
その加護の正体は全くわからん。
だが、少なからず孤児になり、人攫いに遭って尚生きていられるという事は、間違いなく加護が理由だろうが……うぅむ、わからん。
わからんが……何かあるのは間違いない。
一人ならまだしも、五人に加護があるとか、どんな確率だ?
そもそも、加護ってのはそうそう付くもんじゃねぇ。
加護の種類にも色々あるが、一般的な加護ってのは超常の存在からの物を指す。
主に、天使や悪魔、精霊、妖精、妖魔、それ以外では神なんかも該当する。
だが、両世界共に、かなりの年月そう言った奴らは現れてねぇ。
にもかかわらず、加護があると言うのは謎すぎる。
「はぁ……まったく、あいつもとんでもねぇのを連れてきたもんだ」
まあいい。
あいつがあいつである限り、あたしは手助けするさ。
「ごくっ、ごくっ……はぁ。よし、あたしも寝るか」
あたしは残っていた酒を一気に飲み干すと、結界を解除してベッドに横になって目を閉じた。
意識が落ちる直前、メルにはなぜ加護が無いのか、ということを思ったが……結局深く考えることはせず、あたしの意識は眠りに落ちて行った。
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