第529話 妹たちの学校生活【メル編・上】

 ほんの少しだけ時間を進め、ティリメルが、ティリメル=ロア=ユルケルではなく、日本に暮らす、男女ティリメルになってからの話。


 その日は叡董学園の入学式兼、始業式だった。


 そしてそれは、叡董学園の初等部、中等部が開校されることでもある。


 依桜は一年生から二年生に。


 ティリメルこと、メルはその日、初めて学校へと通うことになる。


 依桜と共にこちらの世界へやって来てからは、叡董学園にて小学一年生~三年生までの授業内容を急ピッチで覚えていた。


 一応、時間はどんなにずれ込んでも問題ない、とはなっていたのだが、魔王としての地頭の良さや、『言語理解』というある種チート級のスキルによって、メルはまるで乾いたスポンジの如く知識を吸収していき、そして入学式兼始業式当日に間に合わせることができた。


 そんなメルは、依桜とミオの二人と共に、うきうきな様子で自宅から学園までの道程を歩いていた。


 こちらの世界にやって来てからは、依桜と一緒に市内を見回ったりしているので、ある程度慣れてはいたものの、自分と同じ背丈の者や、依桜くらいの歳の者、それ以上の者など、多くの人間がいることに、メルは興味津々だ。


 向こうの世界での暮らしと言えば、基本的に魔王城内での生活が多かったので、こうして大勢の人が歩くという光景は、それなりに新鮮に映る。


 一応、時たま城下町を歩くこともあったが、そこに比べると、人の数は雲泥の差だ。


 あっちも十分多かったが、こっちも多い。


 大人よりも子供の割合の方が多い気もする。


 さて、叡董学園へと登校する子供が多い中、メルも子供らしい恰好をしている。


 異世界にいた時はゴリゴリのゴスロリ衣装だったのだが、今では可愛らしいワンピースを着て、ツインテールにしているリボンもごく普通(依桜の手作りである)の物だ。


 色は黒と赤で、なんと言うか……ちょっとだけ、ゴスロリっぽくあるのだが、そこはそれ。


 少なくとも、ごく普通の子供という風には見られている。


 それに何より、今はランドセルを背負っているのだ。


 髪は紫紺色で、瞳は深紅。


 しかも、よくよく見れば、毛先に向かうほど赤くなるというメッシュが入っているので、もしかすると奇異に映るかもしれないが……本人自体がとても人懐っこい笑みを浮かべているので、変に思われることはないだろう。


 それに、ここは美天市。


 多少変な人がいても、そこまで騒ぎになることはない。


 現に、サンタクロースが現れるわ、VRゲームの試運転が行われるわ、テロリストが現れるわ、極めつけはなんか何でもありな白銀の女神がいるわで、メルの容姿くらいじゃどうという事もないのである(大半が某銀髪の人が関わっているのだが)。


 ただちょっと、人よりも髪色が特殊で、グラデーションがかかってるくらいなのだ。


 なので、少し物珍しい程度で済む。


 とはいえ、メルの容姿は人目を引く。


 それは別に、不思議な髪色やら瞳の色が理由などではなく、単純にその可愛らしさからだ。


 何せ、とても可愛い。


 メルと同じくらいの歳頃(外見的な方)の子供、特に男の子が赤い顔でメルを見ていたりする。


 そんなメルは、視線を受けてもあまり気にした様子はなく……というより、気付いておらず、周囲を興味深そうに、それでいて楽しそうに笑みを浮かべながら見ていた。


 そうとも知らず、一行は楽しそうに会話をしながら、学園へと向かった。


 ……尚、これは余談なのだが、魔王は全魔族を統合したような存在だ。その中には、サキュバスのような淫魔と呼ばれる存在もいるわけで……つまり、メルは魔性の女になるかもしれない。



 学園へ到着後、メルは依桜たちと別れて一人で自分の教室になる場所へ向かう。


 周りは自分と同じくらいの背丈の子供や、自分よりも背の高い子供、もしくは低い子供がおり、その誰もが期待と不安が入り混じったような表情を浮かべていた。


 通常であれば、二年生以上の子供はあまりそのような表情をしないと思われるのだが、今年から叡董学園は初等部と中等部が新設される影響で、市内だけでなく、全国から子供が集まっている。


 中には友達同士で入学、もしくは編入できた子供もいることだろう。


 しかし、ほぼすべての子供は初対面で、新しく人間関係を構築しなければいけない。


 それによる不安と期待が子供たちの中にあるわけだ。


 当然、メルも同じような心理状態だ。


 いくら異世界で魔王として生まれたとはいえ、精神性はまだまだ子供で未熟だ。


 それに、今までと環境が違う。


 魔王としての立場からか、メルは基本的にかしずかれる側であるため、対等な立場の人がいなかった。


 そんな状態で過ごせば、少なからず人格形成に影響を与えただろう。


 しかし、こちらの世界では魔王ではなく、ごく普通の少女として過ごすことができ、対等な立場の人もできることだろう。


 依桜はそこまで考えていたわけではないが、友達ができることはメルにとってすごくいいことだろう、という事は思っていたりする。


 さて、そうこうしている内に、メルは初等部の校舎へ入って行った。



 メルが編入することになるのは四学年だ。


 一年生から二年生、二年生から三年生へと移っていき、ある程度精神が確立してくる頃と言える。一年生から三年生の間はやんちゃであったり、元気いっぱいだった子供が、ほんの少し落ち着いたり、ませたりする頃でもある。


 ついこの間までは普通に異性同士で遊んでいたけど、周りにからかわれて遊ばなくなる時期でもあるかもしれない。


 ともあれ、小学校における折り返し地点であると同時に、ある種のターニングポイントとも言えるこの時期に編入することになったメルは、ある意味大変かもしれないが……まあ、見知らぬ土地で、見知らぬ人たちと接することになる他の子供たちにとっても、大変なことに変わりは無いので、あまりハンデはないだろう。


 さて、初等部・中等部・高等部の昇降口入ってすぐ近くには掲示板がある。


 これはどこも共通であり、高等部の生徒はここでクラス発表があることを知っている。


 しかし、初等部・中等部の生徒はそれを知らないので、そこに自分がどこのクラスにいるのかが書かれているとわかると、一気に子供が群がる。


 少し広めの造りになっているので、多少の余裕はあるが、如何せん、二年生~六年生までの子供がいると考えると、わりと手狭になる。


 クラスを確認した後は、すぐにその教室へ向かう子供もいれば、友達と一緒に向かう者、なんとなく意気投合した者と向かう者もいるなど、まちまちである。


 メルは自分のクラスを確認。


「うむ、四年一組じゃな!」


 そして、自身のクラスがわかると、足取り軽く、教室へ向かった。



 それから始業式やら入学式を終え、初めてのHRに。


「はい、初めまして。今日からこのクラスの担任になります、石動響子です。みんな、よろしくね」

『『『よろしくお願いします!』』』


 担任が挨拶をすれば、子供たちの方も元気よく挨拶をする。


 なんとも小学生らしい姿だろうか。


 ちなみに、四年一組の担任である石動響子は、他県から来た教師である。


 つまり、響子自身も今年から叡董学園に勤務することになったということなので、編入生たちと変わらない。


 ちなみに、年齢は25歳で、彼氏はいない。


「それじゃあ、まずはみんなの自己紹介をお願いします! お名前と、好きなことを言ってね。じゃあ、一番から!」

「はいっ。えと、甘井巴です! 好きなことは、お菓子を食べることです! よろしくお願いします!」


 出席番号一番の女の子が元気いっぱいな自己紹介をすれば、他の子供たちがパチパチと拍手をする。


 少し照れくさそうにしながら、女の子は席に座る。


 それから三名ほど自己紹介を終えた後に、メルの順番がやってくる。


「次の人、お願いします」

「はいなのじゃ! 儂は、男女ティリメルじゃ! 好きな物は、ねーさまじゃ! よろしく頼む!」


 天真爛漫なメルの自己紹介に、クラス内から割と大き目の拍手が上がる。


 メルの席は一番後ろであるため、全員から見られる席と言え、そのため、かなり注目されているわけで。


 特に男の子からの視線が妙に熱っぽく、中にはぽーっとする子までいる始末。


「はい、元気いっぱいでいいですね。では、次の人お願いします」


 と、メルの元気いっぱいな自己紹介には、担任もにっこり。


 そんなメルの自己紹介に触発されてか、この後の子供たちの自己紹介は、それはもう元気いっぱいだったそうな。



 簡単な自己紹介の時間も終わり、続いては今年度の大まかな流れと、書類の配布。


 それから、ノートや筆記用具、教科書等の配布が行われた。


 さすがに一度に持って帰るのは難しい(特に教科書)ため、少しずつ持って帰ってもいいということになっている。


 中には、一日で持ち帰ろうとする猛者がいたりするが、大半は少しずつ持って帰る方針である。


 そんなHRが終わると、今日の学校はおしまい。


 帰りの会を経て、全員帰宅となる。


 とはいえ、今日は初日であり、お昼まで時間があるということで、ほぼ全員が教室に残って話していた。


 ちなみにこれ、学園側が許可している事であり、お昼頃には帰宅を促す放送が入るようになっている。


 何せ、今年編入、及び入学した生徒の約八割は寮生なので。


 さて、そんな会話で溢れている教室内にて、メルは正直浮き気味だった。


 何せ、飛びぬけて可愛らしい容姿をしているのだ。


 子供とはいえ、さすがに話しかけるのが躊躇われる、と言った状態にもなるだろう。


 しかし、ここで勇気を出してメルに話しかける生徒が現れた。


「あ、あの、男女さん」

「む、おぬしは……甘井さんじゃな! なんじゃ?」


 話しかけてきたのは甘井巴。


 茶髪でショートボブをした、可愛らしい少女だ。


 そんな巴は、ちょっとだけ頬を赤くさせながら、メルに話しかけていた。


 初めて自分に話しかけてきたので、メルは嬉しそうな笑みを浮かべながら用件を尋ねる。


「え、えっと、あのね? わ、わたし、男女さんとお話してみたいなぁ、って思って……だ、大丈夫……?」

「うむ! もちろんじゃ!」


 恐る恐ると言った様子でお話したいと言ってみると、メルはそれはもう満面の笑みで二つ返事で了承した。


 すると、巴はぱぁっ! と少し不安げな表情から一転して、年相応の可愛らしい笑みを浮かべた。


「ありがとう! じゃあじゃあ、男女さんってどこから来たの? 日本じゃない気がするんだけど……」

「あー、うむ……えーっとじゃな……」


 いきなりどこから来たのかと尋ねられ、メルは頭を悩ませた。


 何せ、メルはこの世界の人間ではなく、異世界の存在なのだ。


 ここで馬鹿正直に、クナルラル、と言っても好奇心旺盛な子供のことだ。きっとネットで調べるだろうと、依桜たちは予測している。


 しかし、ここで隠し事をするのはどうなのか? とメルは思った。


 それに、初めて話しかけてくれた相手だ。


 正直に言ってもいいだろうと結論付けて、メルは話すことに決めた。


「クナルラルという国じゃ」

「くなるらる?」

「うむ。自然豊かで果物が美味しい国じゃ」

「へぇー! そんな国があるんだね! でも、苗字が日本っぽいよね? 男女さんって」

「うむ。色々あって、今はねーさまの妹なのじゃ」

「ねーさま?」

「うむ、ねーさまじゃ」

「そういえば、自己紹介でもお姉ちゃんが好きって言ってたもんね」

「うむ! 大好きじゃ!」


 満面の笑みで言うと、巴も釣られるように笑みを浮かべる。


「そっかー、そんなに言うってことは、すごく大事な人なんだね」

「そうじゃな。あ、んーと、甘井さん」

「なぁに?」

「名前で呼んでもいいかの?」

「名前?」

「う、うむ。儂、同い年の友達という者がいたことがなくてのぅ……その、甘井さんに初めての友達になってほしいと思って、じゃな……ど、どうじゃろうか?」


 恥ずかしそうに、頬を染めながらメルは巴にそう申し出ていた。


 まさかそんなことを言われるとは思わず、巴はかなり面食らう。


 しかし、こんなに可愛い子が友達がいたことがなく、自分に初めての友達になってほしいと言われたことは、それはもう嬉しく。


「もちろん! じゃあ、わたしもティリメルちゃんって呼ぶね!」

「――うむっ! あ、ティリメルじゃと長いから、メルでよいぞ!」

「うんっ、メルちゃん! これからよろしくね!」

「こちらこそじゃ!」


 入学初日、メルに早速友達ができた。



 早速友達ができたという事で、午後に一緒に遊ぼうということになった。


 二つ返事で了承したメルは、お昼を食べてから学園の前で待ち合わせをし、集まったところで遊びに向かった。


 場所は美天市内にある公園だ。


 こちらに越してきた子供が公園内を駆け回っており、なかなかの賑わいを見せている。


 二人はベンチに座ると、おしゃべりを始めた。


「ねーねー、メルちゃんはどうしてそんなしゃべり方なの?」

「む、これか?」

「うん、それ。不思議だなぁって。わたしのおじいちゃんもそんな感じのしゃべり方なの」

「むー、不思議と言われてものぅ……儂、気が付いた時からこれじゃからなぁ……」


 自身の喋り方について訊かれ、メルは何とも言えない表情でそう話す。


「そーなの?」

「うむ。しかし、おかしいかの? もしそうであれば、直さねばならんが……」

「ううん! よくわからないけど、メルちゃんにすごくあってると思うよ!」


 変なら直すとメルが言うと、巴は直さなくてもいいと言い、さらにはそれが合っているとメルに笑顔で告げた。


「そうかの?」

「うん!」

「ならばよいか! しかし、こっちは不思議な遊び道具が多いのぅ」


 目の前にある遊具の数々を見て、感心したようにメルは呟く。


「そーなの? どこにでもある普通の遊具だよ?」

「そうなのか。じゃが、儂が住んでた国はあまりこういうのがなかったからのぅ……てれび、とやらも驚いたぞ」

「え、メルちゃんの住んでたところって、テレビもなかったの!?」


 テレビが無いという発言に、巴が目に見えて驚きを見せた。


 まあ、それも当然と言えば当然である。


 魔力なんて言う不思議パワーで発展したのだから、科学の結晶であるテレビなど存在するはずがない。


 というより、向こうの世界では映像を撮るという発想が無いので、そもそもそう言った方面の娯楽は皆無なので、致し方なし。


「うむ、なかったぞ?」

「じゃあ、インターネットも?」

「いんたーねっと……情報がいっぱいあるあれかの?」

「わぁ……メルちゃんって、すごくたいくつな場所にいたんだね……」

「いや、そうでもないぞ?」

「そーなの?」

「うむ。勇者の話を聞いて、よく妄想しておったしの」


 思い浮かべるのは、まだ依桜と出会う前だった時期。


 その時期は勇者の話に夢中で、何度もジルミスや魔王城の者に尋ねていた。


「じゃあ、おとぎ話が好きなの?」

「いや、おとぎ話ではなく、実際に会った話じゃぞ?」

「え?」

「え?」

「……メルちゃんって変わってるね」

「むー、比べる者がいなかったからわからないが……まあ、巴ちゃんからすると、そうなのかもしれぬな!」


 あはは! と元気いっぱいに笑うメルに、巴ちゃんはちょっとだけ苦笑いをした。


 でも、特に気にした様子もないメルに、さらに好感を持ったが。


「メルちゃん」

「む、なんじゃ?」

「メルちゃんってお姉ちゃんが好きなんだよね?」

「うむ! 大好きじゃ!」


 巴の質問に、メルはそれはもう華やいだ笑みを浮かべて、ほぼノータイムで肯定した。


「そのお姉ちゃんってどんな人なの?」

「ねーさまか? そうじゃなぁ……強くて、優しくて、綺麗で、かっこよくて、あと料理がすごく美味いぞ!」

「じゃあ、大人のおねーさんなの?」

「いや、ねーさまは高校二年生じゃぞ」

「え、そうなの!?」


 料理が美味しいという発言や、綺麗でかっこいいという発言から、巴はねーさまこと、依桜のことを大人の女性と想像していたのだが、まさかの高校生とあって驚いた。


 とはいえ、小学生からすれば、高校生は半ば大人みたいなものだと思うので、あながち間違いではない気がする。


 それに、依桜の実年齢は十九歳(今年で二十歳)なので、あながち間違いとも言えない。


「うむ。じゃから、一緒に登校しているのじゃ」

「へぇ~、そんなお姉さんがいるんだぁ……うらやましいなぁ」

「巴ちゃんは、兄弟はおらんのか?」

「うん。わたし、一人っ子なの。だからうらやましいなぁって」

「なるほどのぅ……。じゃが、その気持ちはわかるぞ!」

「え? でもメルちゃん、お姉さんがいるんだよね?」

「うむ。じゃが、儂とねーさまに血のつながりはないのじゃ」

「……そ、そうなの?」

「うむ」


 いきなりの爆弾投下に、巴は思わず気まずそうな表情を浮かべて聞き返し、メルは何でもないように肯定した。


「じゃから、儂は巴ちゃんの気持ちがよくわかるぞ! 一人っ子は寂しいからのぅ!」

「う、うん。……ねぇ、メルちゃん」

「なんじゃ?」

「えっとね、会ったばかりで聞くのは嫌かもしれないけど……メルちゃんのお父さんとお母さんって……」

「あー、その話か。んー……かーさまのことは、実はよく知らないのじゃ」

「……知らない、の?」

「うむぅ……何分、とーさまが言うには、儂を産んですぐに死んでしまったようじゃからなぁ……」

「……じゃ、じゃあ、お父さんは?」

「とーさまは……儂が産まれて少しして死んでしまった」


 父親の存在についての質問に、メルは少しだけ考えてから、そう答えた。


 何せ、メルの父親は、メルが産まれてから一ヶ月ほどで亡くなっている。


 なので、馬鹿正直に言えば、こちらの世界においては、かなりの矛盾を生じさせてしまう。


 そのため、仮にもし、メルがこのようなことを訊かれた場合は、このように返すことになっているのだ。


「そ、そうなんだ……ご、ごめんね、辛いことを聞いちゃって……」


 まさか、両親が既に亡くなっているとは思わず、巴はばつが悪そうな顔で謝った。


 しかし、メルはいつもの笑顔で首を横に振ると、気にするなと告げる。


「気にしなくてもいいのじゃ! 今は、ねーさまやねーさまのとーさまや、かーさまがいるからのぅ!」

「……ありがとう」

「いいのじゃ! それに、ねーさまのおかげで、巴ちゃんと友達になれたと思えば、悪いことばかりではないからのぅ!」

「メルちゃん……!」


 出会って数時間な自分に対して、そこまで言ってくれるとは思わず、巴は思わず涙が浮かびそうなくらいに感動した。


 それに、巴自身も他県からの編入生であるため、友達0からのスタート。


 もちろん、両親も一緒にこちらへ引っ越してきてはいるが、それでも友達がいないのは子供的にキツイ。


 そんな中で、出会ったばかりのメルにこうも言われれば、嬉しくなるのも何らおかしくはないわけで。


「わたし、もっとメルちゃんのことが知りたいなっ!」

「うむ! では、もっとおしゃべりするのじゃ!」


 なんか意気投合した二人は、日が暮れるまでお喋りをした。

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