第492話 射的で本気を出す依桜ちゃん(妹絡み)
それから、お化け屋敷は大盛況状態が続き、気が付けば交代の時間に。
『依桜ちゃん、エナちゃん、休憩行ってきていいよー』
「あ、もうそんな時間なんだ。……ん~~~っ! はぁ。じゃあ、代わろっか、エナちゃん」
「うん! じゃあ、よろしくね!」
『任せて!』
『まあ、二人じゃないから、ちょっとは落ち着くと思うし、大丈夫大丈夫! 楽しんできてね! 依桜ちゃんは、妹さんと、エナちゃんは未果ちゃんたちと!』
「あはは、ありがとう」
「うん! 楽しんでくるね!」
ボクたちは、二人に任せて、学園祭に行くことにした。
「えーっと、この辺に……」
受付の仕事を入れ替わった後、ボクは衣服はそのままに(去年同様、女委によって征服を隠されていました)学園内を歩く。
目的地は、メルたちと待ち合わせ場所の噴水。
学園内はどこも賑わっていて、特に中央広場やグラウンドと言った、外であり尚且つ広い場所には特に人が多い。
ご飯系のお店が多くて、辺りはいい匂いが漂っているので、ちょっとお腹が空く。
他には、クラスや部室棟でやってお店や、ちょっと離れた位置にあるお店の生徒の人たちがこっちの方に来て宣伝しているので、コスプレした人や、クラスのユニフォームを着た人たちがそこらかしこで宣伝をしているのが目に入る。
なんだか、学園祭らしくて見ているだけで楽しくなれるね。
そんなことを思いながら、辺りを見ていると、最愛の妹たちの姿が目に入った。
「みんなー!」
「あ、ねーさまじゃ!」
噴水の前で待っていたメルたちに声をかけると、メルの声を皮切りに他のみんなも駆け寄ってきた。
「イオおねえちゃんきれいです!」
「にあ、ってる!」
「イオねぇかっこいい!」
「きれいなのです!」
「……もくひょう」
「ふふっ、ありがとう、みんな」
ボクの今の服装を見て、みんなはボクを褒めてくれた。
なんだろう、未果たちに褒められるのもすごく嬉しいけど、こうしてメルたちに褒められるのはもっと嬉しい……。
「それじゃあ、行かなきゃいけないイベントまで、まだ時間もあるし、早速行こっか」
「「「「「「おー!」」」」」」
噴水で集合したボクたちは、みんなで学園内を回る。
去年は未果たちと回っていたけど、その際は今ほど人はいなかったなぁ、なんて思う、
たしかに、去年も結構なお客さんが来ていたけど、それでもそこまで人で溢れていたわけじゃなくて、歩く分には全然問題ないくらいには隙間があった。
でも、今年は例年以上に大規模になったことで、かなりの人で溢れかえっていた。
この調子だと、グラウンドとかに行った方がマシかも? と考えるくらいには。
「みんな、はぐれないようにね」
「「「「「「はーい(なのじゃ)!」」」」」」
念のため、みんなにそう指示を出しておく。
まあ、あの指輪を持たせているし、みんなの気配は完璧に覚えているので、万が一はぐれてもすぐに見つけることができると思うけど。
もちろん、それらを過信しすぎず、常に気を張り巡らせてるけどね。
「おー、これが学園祭というものか。人がいっぱいなのじゃ」
「そうだね。みんなは、どこか行きたい場所とかあるかな?」
「お腹空いたのじゃ!」
「私もおなか空きました……」
「わた、しも」
「ぼくも!」
「私もなのです」
「……空ふく」
「もうお昼だもんね。それじゃあ、まずは何か食べに行こっか」
「「「「「「うん!」」」」」」
ボクの提案に、みんなは嬉しそうに頷いた。
そうとなれば、どこへ行くかだけど……。
「とりあえず、色んな所を回ってみよっか」
「「「「「「はーい(なのじゃ)!」」」」」」
その場で立ち止まっているわけにもいかないし、歩いてみることにした。
「すみません、焼きそばを七個ください」
『ありがとうございます! まさか、女神会長に買ってもらえるとは!』
「あ、あはは……」
ボクがその辺りにあるお店で何かを買うと、大体こうなる。
ちなみに、他のお店でもこうなりました。
例えば、オリジナルドリンク(一部は普通の物だったりします)を売っているお店では、
『め、女神会長!?』
「注文いいですか?」
『も、もも、もちろんです!』
「じゃあ……こっちのピーチジュースを二つ、グレープフルーツジュースを一つ、ミックスジュースを三つ、オレンジジュースを一つください」
『ありがとうございますっ! あ、あの、握手、いいですか!?』
「あ、握手、ですか? あの、ボクなんかと握手して嬉しいんですか……?」
『死ぬほど嬉しいです!』
「そ、そですか。じゃ、じゃあ……いいですよ?」
『あ、ありがとうございますっ! 俺、一生の宝物的思い出にします!』
ということがあったり。
なんと言うか……うん。ある意味、去年より酷くなってない? これ。
ボクが生徒会長になったから、なのかなぁ……。
「イオお姉ちゃん? どうしたんですか?」
「あ、ううん、気にしないで。ちょっと、周囲に対するボクの反応を考えていてね。……それで、焼きそばはどう? ボクが作ったわけじゃないけど、評判がよさそうだったから買ってみたんだけど」
「おいしいのじゃ!」
「私は好きです!」
「おい、しい」
「お肉ややさいがいっぱい入ってるから美味しいよ!」
「おいしいのです」
「……びみ」
「そっか。それならよかった。じゃあ、ボクも……ん、たしかに美味しい……!」
みんなの反応はよく、美味しそうに食べるので、ボクも試しに一口食べてみると、普通に美味しかった。
濃すぎず薄すぎず、ちょうどいいソース味。
肉や野菜もいい感じにソースが絡んでいて美味しいし、麺ももちもちしてて美味しい。
この麺……多分手作りかも。
ボク、色々な市販の焼きそばを食べてきたけど、ここまでもちもちしていた麺はなかったし……。
そう言えば、実家が定食屋さんの人が焼きそばの屋台を出してる、っていう話だったっけ。ここの焼きそば屋さんは。
そう考えると色々と納得。
むむぅ……これは、ボクも麺を打ってみようかなぁ。
それに、前々から麺打ちとかもしてみたいと思っていたところだし、ちょうどいいかも。
ラーメンとか、特にやってみたい。
その次は……蕎麦かな。蕎麦美味しいし。
もっともっとレパートリーを増やして、みんなを喜ばせたいからね!
うん、頑張ろう。
「そう言えば、みんなは行きたいところとかはないの?」
焼きそばを食べ終え、ボクはみんなにそう尋ねていた。
今年が初めての学園祭だし、行きたいところがあると思っての疑問。
その疑問に、みんなは迷い一つない笑顔で、
「ねーさまといっしょならどこでも楽しいのじゃ!」
「私もです!」
「イオおねえちゃんが、いれば、いい」
「イオねぇとなら、どこでも楽しいよ!」
「おなじくなのです!」
「……楽しい」
そう言ってきました。
「はぅっ!」
みんなの真っ直ぐな好意を受け、ボクは胸を抑えて思わず悶えた。
まさか、そこまで言ってくれるなんて……!
あぁ、ボクはなんて幸せ者なんでしょう!
大好きなみんなに、一緒ならどこでも楽しいって言ってもらえるなんて、これ以上の幸せがあるかな? ううん、絶対にないです!
それと同列として、未果たちと過ごす普通の日常かな。
ということはつまり……今の生活が一番、ということでは?
……幸せは、すぐそばにあるって言うけど、本当なんだね。
「ともあれ、どこか行こっか。せっかくの学園祭なんだし、楽しまないとね」
「「「「「「うん!」」」」」」
ボクの妹たちが可愛すぎます……。
というわけで、アトラクション系の出し物をしているところを回ることに。
とは言っても、あるのはお化け屋敷、ボルダリング、射的、宝探し、スタンプラリー、コーヒーカップ、パルクール(なんで?)、くらいかな。
それ以外はほとんど飲食店だしね。
もっとも、今挙げたのは現実の方で出ているお店であって、中にはボクたちのクラスのように、『New Era』で出しているお店もあるから、もっとあったりはするけど。
この中でまずどこへ行きたい? ってなった時、みんなは射的をご所望だったので、とりあえず射的をやっているクラスへ。
『いらっしゃい! って、め、女神会長!?』
時間帯が良かったのか、たまたま待つこともなく、中に入ることができた。
そうして、中へ入るなり、今のことを言われました。
ボク、そんなに驚かれるような存在……?
『も、もしかして、うちのクラスに遊びに……?』
「はい。まあ、ボクというより、ボクの妹たち、というのが正しいんですけどね」
『あ、そうでしたか。では、こちらへどうぞ!』
「ありがとうございます。みんな、行くよ」
「「「「「「はーい!」」」」」」
みんなはわくわくとした様子で、いい返事をした。
うん、可愛い。
「へぇ~、申請書で一応概要は知っていたけど、結構ちゃんとした作りなんだ」
奥に案内されると、思いの外、凝った造りになっていて驚いた。
なんか、遊園地でたまに見かける、本格的なものとかあるけど、本当にそんな感じだし。
小さい観覧車の上に景品が乗っていて、それがぐるぐる回っていたり、動く的もあるし、他には一定間隔で倒れる的、もしくは景品もあったりして、かなりすごいことになってる。
まあ、あれだけの予算を与えればできても不思議じゃないけど……あの回ってる観覧車とか、動く床とか、一定間隔で倒れる的とかって、誰が作ってるんだろう……? そこが気になる。
でも、この学園って、変な特技を持っている人って結構いるから、案外そう言う人がこのクラスにいても不思議じゃない、よね。
ボクのクラスにも、そう言う人、いるしね……身内に。
『そりゃぁもう! やるからには、全力で! ってのがうちのクラスのモットーなので!』
「ふふっ。学園祭ですからね、やっぱりいい思い出したいですもんね」
『そうっす! ……で、こっちが射的用の銃となります。基本的に、ハンドガン、ライフル、スリングショットの三つがあります。どれにしますか?』
「みんなは何がいい?」
「儂はハンドガンがいいのじゃ!」
「私は、スリングショットがいいです」
「らい、ふる」
「ぼくもライフルがいい!」
「私はハンドガンがいいのです」
「……スリングショット」
「だそうですので、全種類を二つずつお願いできますか?」
『かしこまりました!』
店員さんが笑顔で受諾すると、台の下からそれぞれの銃が出てきて、それらをメルたちに手渡した。
受け取ったメルたちの方は、キャッキャと楽しそうにしている。
『ところで、女神会長はやらないんですか?』
「あー……とりあえずいいです。あ、六人でいくらですか?」
『小学生料金なので、千八百円になります』
「じゃあ、ちょうどで」
『ありがとうございます。じゃあ、こっちが弾になりますので、どうぞお楽しみください!』
「ありがとうございます。みんな、弾だよー」
そう言うと、みんなが一斉のボクの所に集まって来て、それぞれの弾を持ち、射撃位置に立った。
このクラスは、出し物的な理由から、自分たちの教室じゃなくて、会議室でやっています。
まあ、こんな大掛かりな射的をやろうと思ったら、そうなるよね。
ちなみに、会議室は、毎年狙うクラスが多くいるので、激戦区なのだとか。
広いから、大掛かりなものができる、っていう意味だろうけど。
「むぅ、上手く当たらないのじゃ……」
「あ、ちがうところに行っちゃいました……」
「むず、かしい」
「外しちゃった……」
「むずかしいのです」
「……くせん」
各々の銃で的や景品を狙って撃っているみんなだけど、掠るくらいで命中しない。
惜しい時はあるんだけど、ほとんどあらぬ方向に言っちゃってたりするので、みんなは悔しそうだったり残念そうな表情。
「何か欲しいものがあるの?」
「あのぬいぐるみがほしいのじゃ」
「私はあのお人形が……」
「わたし、は、あの、絵本……」
「ぼく、あっちのおもちゃ」
「私は、あのゆびわがほしいのです……」
「……フィギュア」
みんな、それぞれが欲しいものを口にした。
なるほど。
メルが、カメのぬいぐるみ。
ニアは、女児向けの着せ替え人形。
リルは、絵本。
ミリアは、男の子向けの特撮ヒーローのおもちゃ。
クーナは、アクセサリーの指輪。
スイは、深夜帯アニメに出てくるヒロインのフィギュア。
ふむふむ。
「あの、高校生だと、どれくらいの距離になりますか?」
『大体二十メートルです』
「二十メートル……わかりました。じゃあ、六回分、お願いしてもいいですか?」
『ありがとうございます! 三千円になります!』
「じゃあ、これで」
『ちょうどですね! それでは、銃をお選びください』
「それじゃあ……ハンドガンを二丁お願いできますか?」
『うぇ!? に、二丁、ですか?』
「はい。もちろん、一丁でもできるんですけど、二丁の方が楽というか、同時に狙うこともできるので」
『そ、そうですか。で、では、こちらの二丁を』
「ありがとうございます」
微笑みを浮かべて、お礼を言いながら銃を受け取ったボクは、高校生用の射撃位置に立つ。
二十メートルは……うん、そんなに距離はないね。
というより、ボクにとって二十メートルは距離じゃない。
だって、修行時代、師匠に『十キロ先の縫い針の穴に、矢を通せ』なんてことをやらされたからね……。
まあ、できたんだけど……。
と、そんなことは置いておいて。
命中させることや、狙うべき場所は瞬時に理解したんだけど、問題があったり。
その問題というのが、ボクが持っているハンドガン。
ボクが使用する物は、おもちゃとか模造品なんかじゃなくて、本物の武器。
ハンドガンだって、今も『アイテムボックス』の中に入っているし、それ以外にも、マシンガン、ライフル、スナイパーライフル、ショットガン、RPG7が入っていたり。
何が言いたいかと言えば……つまるところ、威力が低い。
まあ、射的で使う物に威力を求めちゃダメだろうけど。
一応、魔力でハンドガンを強化して、それで撃ち落とす、なんてこともできるんだけど……それは卑怯なので、絶対にしない。
だから、二丁必要なわけで。
「じゃあ、まずは……あの指輪かな」
最初に狙うのは、多分、メルたちが望む景品の中で一番簡単な指輪。
だって、的が小さいだけだからね。
動いているならちょっと面倒くさかったけど、動いていないのなら余裕ですとも。
ただ、位置が悪くて、半分くらい台の縁に隠れちゃってるから、ちょっとしたテクニックが必要かな。
「とりあえず、この辺で多分……」
『女神会長? 一体どこを狙って……』
指輪を撃つことだけを考え、集中する。
そして、パパンッ!
右手に持ったハンドガンを水平から少し上の方で撃ち、左手に持ったハンドガンはやや斜め下辺りで構え、銃口を上向きにし、右手で撃ったほんのわずか後に撃つ。
カツンッ! カタンッ。
一直線に進んでいたそれぞれの弾は、ある一点でぶつかり、左手で撃った弾が、他の弾に当たった反動で少し下に流れ、それが指輪に命中し、落とした。
「ふぅ」
『……え、い、今何をしたんですか!?』
軽く一息つくと、店員さんが信じられないものを見た、といった様子でそう尋ねて来た。
「ただ、銃弾同士をぶつけて跳弾させて、それで指輪に当てたんですけど……
『いやいやいや!? 普通できないですよね!?』
「そう言われましても……やったらできたとしか……」
『ま、マジっすか……』
「……あの、ところで、あの指輪はゲット、ということでいいんですか?」
『え、あ、ま、まあ、落としましたし……ど、どうぞ』
言いながら、店員さんは撃ち落とした指輪を持って、手渡してくれた。
「ありがとうございます! はい、クーナ」
「ありがとうなのです! イオお姉さま!」
「いいのいいの。じゃあ次だね。次は……ぬいぐるみだね」
あれも簡単。
ちょっと大きいけど、この場合は……
「こうやって撃てば、落ちるよね」
そう言って、ボクはほぼ同タイミングで二発ずつ両手で撃った。
その弾は、カメの頭、首、尻尾、胴体に二ヵ所といった場所に当たり、落ちた。
『ま、また!?』
「えっと、あれも……」
『あ、は、はい! ただいま!』
ボクが声をかけると、慌ててカメのぬいぐるみを取りに行く店員さん。
なんだろう、ちょっと申し訳ないような……。
「はい、メル」
「わーいなのじゃ! ねーさま、カッコいいのじゃ!」
「ふふっ、ありがとう」
真っ直ぐ好意を伝えられるのは、嬉しいものです……。
それじゃあ、次。
次は……おもちゃかな。
幸い、おもちゃは景品と交換するチケットを落とすタイプのようで、BB弾よりも一回り大きい穴の後ろにある感じ。
これくらいなら……
狙いを定めて撃つと、それは見事に穴を通過し、後ろのチケットに当たった。
『あ、あれぇ? あれって結構小さい穴な気がするんだけどなぁ……?』
そう呟きながらも、店員さんは景品を取り出し、渡してくれた。
「はい、ミリア」
「やった! さすがイオねぇ!」
「みんなのためだからね」
次。
次は……うーん、フィギュアかな。
フィギュアの方も、ミリアが欲しがっていたものと同じで、チケットを打ち落とすタイプ。
ただ、今回は動いているチケットを撃つことになるので、ちょっとだけ大変。
しかも、割と早く動いているところを見ると、タイミングが重要だね。
まあ、音速レベルで動く的を撃つわけじゃないので、ボクからすれば止まって見えるけど。
「この辺りかな」
一発だけ撃ち、その弾は見事に動き回るチケットの中心に当たった。
『……これ、こんなにほいほい獲れるものだったかなぁ?』
少し沈みがちな店員さんからフィギュアを受け取り、それをスイに手渡す。
「はい、どうぞ、スイ」
「……イオおねーちゃん、さすが。やっぱり、世界一……」
「世界一は照れちゃうよ」
スイは表情が乏しいけど、それでも時たま見せる笑顔は、本当に可愛い。
あと、普通にべったりなところも可愛い。
っと、次々。
次は……着せ替え人形かな。
んー、あれも簡単そう。
スイの時と同じパターンだし。
だから……
「こうやって撃てば」
そう言いながら撃った弾は、先ほど同様、見事に中心に命中。
『……やべえよ。会長、容赦ねぇよ……』
目端に涙を浮かべ始めた店員さんから、着せ替え人形を受け取り、ニアへ。
「はい、ニア」
「ありがとうです! イオお姉ちゃん大好き!」
「はぅっ! こ、こっちこそ、ありがとう……」
妹からの大好きは嬉しいです……。
さて、最後、かな。
最後は、リルの絵本。
絵本は……なるほど、少しだけ本を開いた状態で置いてあるんだね。あの状態だと、結構大変なんだけど……そこは、師匠に鍛えられたボク。
「こう、かな」
ボクは両手に持ったハンドガンから、ほぼノータイムで残弾全てを発射。
それは連続して本上部に連続して当たり、本を倒した。
『うそーん……』
店員さんは、もう涙を少し流し始めていたけど、絵本を取って来て手渡してくれた。
それをリルへ渡す。
「はい、リル」
「ありが、とう。大事に、する、ね?」
「うん。そうしてくれると、お姉ちゃんは嬉しいよ」
取ったものを大事にしてくれるのは、やっぱり嬉しい事です。
さて、景品も獲ったことだし……あとは。
「あの」
『は、ひゃい!』
「えっと、すみません。つい、取りすぎちゃって……」
『あ、あぁ、いえ……気にしないでください……妹さんのため、ですもんね』
あー……やっぱり、やりすぎちゃった……。
だって、明らかにボクが獲った物って、目玉商品っぽいもん。
他にも目玉商品はあるみたいだし、一応まだ在庫はあるみたいだけど、それでも結構ダメージは大きい、よねこれ。
「えっと、本当に申し訳ないです……」
『本当に気にしなくていいですよ。まさか、本当に取られるとは思いませんでしたけど、面白いものが見れましたので』
「そ、そうですか?」
『そりゃもう。だって、あんな神業を見せられたら、ね?』
「そ、そうですか。……でも、こちらとしても、ちょっと申し訳ないですし…………あ、お詫びになるかはわかりませんけど……何か色紙でも何でもいいので、紙とペンありますか?」
『あ、はい。ありますけど……どうするんです?』
「そこは秘密で。後で、返却しますので」
『そう、ですか? じゃあ、どうぞ』
「ありがとうございます」
色紙とペンを受け取ったボクは、その二つをカバンの中へしまい込んだ。
あとで、エナちゃんにサインを書いてもらおう。後、ボク……というより、いのりのサインも書けば、お詫びになる、よね?
……なるといいなぁ。
「それじゃあ、そろそろ行きますね」
『あ、はい。ありがとうございました!』
「いえいえ、こちらこそ、楽しかったです。それでは」
ほとんど一方的に景品を獲って行っただけだけど、それでも楽しかったし、メルたちの喜ぶ顔が見られたので、楽しかったです。
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