第441話 やっぱり謎だらけ

 ルエアラの町を出て、今度はムルフェの町へと向かって歩くボクたち。


 ニアが住んでいたという町。


 旅行中に、みんなの孤児院を回れそうで、ボクとしてもありがたいよ。


 孤児院側からしたら、誘拐されてから音沙汰なしなわけだしね。前の二人の町と村を見ていた限りだと、かなり心配されてるだろうから。


 みんなもみんなで、自分の故郷に行けるとわかったら、かなり嬉しそうな顔をしていたし、悪い事じゃないはず。


 でも、クーナとスイの二人の村と町に関してはともかく、他の三人が住んでいた場所には一度も行ったことがないんだけどね。基本的に襲われてなかったみたいだし。


 だからちょっと困ったわけで。


 だって、知らない間にボクらしき人がリルとミリアの住んでいた場所に行っていた、って言うんだもん。


 それも、九ヶ月前に。


 でも、記憶がない二日間があるのも事実。


 異世界から帰ってきてからというもの、ボクには、ボク自身でもわからない謎みたいな部分が出てくるようになっちゃった。


 結局、ボクって何なんだろうね? っていう疑問が出るように。


 自分でもよくわからない。


 そもそも、神気がある理由だって不明だし、『アイテムボックス』もなんかよくわからないし、先祖に異世界人がいたみたいだし……。


 ……どうしよう。本当に謎すぎて困る。


 まあ、別段困るようなことにはなってないし、むしろ助かっている面があるからまだいいんだけど。


 師匠に訊く方がある意味早いような気がするんだけど、どうにも話したがらないみたいなんだよね、師匠。昨日だって、神気のことについて何か知っていそうだったのに、誤魔化されたし……。


 師匠、もしかしてボクのこと色々と知っているんじゃないのかな?


 でも、師匠はそれを隠しているわけで……。


 ……師匠が書く仕事をする理由って、実質二択で、一つは自分にとって都合が悪い時。もう一つは、ボクを気遣っている場合。


 今回は多分……後者なんじゃないかなぁ。


 だって、前者特有の焦りとか見えなかったもん。


 気遣っている時ほど、師匠って若干素っ気なくなるからね。


 一年間、ずっと一緒に暮らしていたら、当然わかるよ。


 これでも、師匠の弟子だからね。


 だけど同時に、どうして師匠が言いたがらないのかがわからない。


 何か理由があるんだろうけど……うーん。


 まあともかく、今は考える必要はない、かな。


 いつか話してくれると思うしね。今はまだ、その時じゃないって言うだけかもしれないもん。


 すごく気になりはするけど。


「依桜、どうした?」

「あ、えと、ちょっと考え事をね」


 歩きながらずっと考えていたからか、晶がボクに声をかけて来た。


「考え事って、やっぱりさっきの村でのことかな?」

「はい。どうにも、九ヶ月前のことが気になってて……。ボク自身には記憶がないのに、こっちで色々と動いていたって言われると、実感とかないですし、ちょっと怖いなと」

「まあ、自分が知らない内に、勝手に動いていたかもしれないと思うと、怖く感じるだろうな」

「たしかに、怖いかな。言ってしまえば、夢遊病で知らない間に動いている、って言うのと同じなわけだしね。依桜ちゃんじゃなくても、怖いと思いそう」


 美羽さんの言う通り、夢遊病のようなもの、なのかな、これって。


 いや、そもそもボク自身が動いていたのかどうか不明だから、何とも言えないんだけど……。


 あれって、本当にボクが動いていたのかな?


 記憶はぼんやりとあるみたいだけど、どうにもね。


「あ、イオお姉ちゃん、あそこです!」


 と、ここでニアがパッと表情を輝かせると、少し先にある街を指さしてきた。


 ニアの言う通り、たしかに町がある。


 見たところ……普通の町、だよね?


「それじゃあ、行ってみよう」



 町が見えてきて、少しだけ足を速める。


 そうこうしている内に、町に辿り着き、ボクたちは町に入った。


「なるほど、ここはなんだか落ち着いた町なんだね」

「はい! いい人が多くて、育ててくれた先生は、『ここは犯罪がほとんどない』って言ってたんです!」

「へぇ~、とすると、結構平和な町なんだね」


 まあ、平和と言う割にはニアが誘拐されちゃったみたいだけど……。


 でも多分、こっちでも予期せぬ事態だったのかも。


 平和だった、ということは少しだけ心に余裕が生まれてしまうもの。決してそれが悪いわけじゃないけど、それが行き過ぎると事件が発生してしまう。


 まだ中身を知っているわけじゃないけど、概ねそう言った理由なんじゃないかな? 多分だけど。


「ニア、この町はどんな場所なの?」

「んーと、魔道具の生産が活発、って言ってました!」

「魔道具の生産かぁ」

「なんだか、女委が喜びそうな町だな」

「たしかに。女委ちゃん、そう言うの大好きだもんね」

「あはは、そうですね。……ニア、魔道具ってどういうものが作られているかわかる?」

「普段の生活で使う物、って教えられました! 町の灯りとか、お風呂とか!」

「なるほど」


 たしかに落ち着いた町になりそう。


 ボクが今まで出会って来た魔道具の職人の人たちって、なんだか落ち着いた雰囲気の人が多かったし。


 そうなると、たしかにこの町では落ち着いた人が多くなりそう。


 それにしても、日常的な魔道具かぁ。


 こっちの世界の生活水準って、向こうの世界と大差ないんだよね。


 強いて言うなら、向こうの世界の方が料理や移動手段が発展しているだけであって、それ以外ではこっちの方が発展している場合もあるし。


 ちなみに、シャワーとか普通にあります、この世界。


 魔道具だけどね。


 でも、この町が魔道具産業が活発となると、意外とニアを育てた人は落ち着いている人なのかも。


「ニア、孤児院はどこかな?」

「ここをまっすぐ行った先にある、おっきな家です!」


 おっきな家……ちょっと『気配感知』と。


 ……あ、たしかに子供らしき気配が多く発せられている場所があるね。


 見たところ、かなり広めかな?


「うん、わかった。じゃあ行こ。ニアも早く行きたいだろうからね」

「うん!」


 うんうん、いい笑顔です。


 さて、どんな人なのかな。



 孤児院に辿り着いた。


 リルとミリアの時は、外で子供たちが遊んでいて、そこに孤児院の先生とかがいたんだけど、今回はどうやらいないみたい。


 中にいるのかな?


 気配とか探ってみると、その中に子供とかいるし。


 ともあれ、早く中に入ろう。


「ごめんくださーい」


 ドアを軽くノックして、外からそう言う。


『は~い』


 すると、中から間延びしたような声が聞こえてきた。


 イメージ的には、希美先生っぽい。


「はい~、どちら様ですか~?」


 中から出てきたのは、二十代後半くらいの、おっとりとした雰囲気を持つ女性だった。


 普通に美人さん。


 あと……胸が大きい。女委よりも大きいくらい、かな?


「あ、初めまして。イオ・オトコメと言います」

「初めまして~。シャロと申します~。……あらあら~? そのお名前~……もしかして、勇者様ですか~?」


 あ、うん。やっぱり知ってるんですね。


 まあ、手間は省けるけど。


「はい、そうです」

「こんな場所に、何か御用でしょうか~? こう言っては何ですが、ここは孤児院なので、孤児しかいませんよ~?」

「あ、それは理解しています。この娘を連れて来たんです」

「あら~、もしかしてまた孤児~……って、あら~?」

「先生、お久しぶりです!」

「……もしや、ニアちゃん~?」

「はい!」

「ほ、本当に~?」

「本当です!」

「ニアちゃん~!」

「わぷっ」


 おっとりとした雰囲気からは想像がつかない速度で、ニアを思いっきり抱きしめた。というか、抱っこした。


 動きが俊敏……この人の職業って、何なんだろう。


「よかったです~。ニアちゃんが無事で~……!」

「イオお姉ちゃんに助けてもらいましたから!」

「なるほど~。勇者様がニアちゃんを助けてくださったのですね~。ありがとうございました~」

「あ、いえいえ。たまたま通りかかっただけなので……」


 このセリフ、何回言ったんだろう?


 言うことは同じ、なんだね。



 色々とお話がしたいということで、孤児院の中へ。


 孤児院の中に入ると、子供たちが勉強をしていた。


「ここでは、勉強をさせているんですね」

「はい~。孤児だからと言って、将来を狭めさせていいわけじゃありませんからね~。わたしが教えられる範囲で、こうして勉強を教えているんです~」

「そうなんですね。えっと、主に何を教えているんですか?」

「魔道具や魔法についてですね~。元は、魔道具を作っていましたからね~」

「あ、もしかして《魔道具士》なんですか?」

「はい~。そうですよ~」


 それなら納得。


 この町は魔道具産業が活発みたいだし、そう言う意味ではこの町らしい勉強と言える。


 ということは、ニアも勉強していたのかな?


「ささ、お座りください~。お連れの方も遠慮なく~。すぐに、お茶の用意をしますので~」

「「ありがとうございます」」


 なんだか、本当におっとりしている人だね。


 ちなみに、メルたちはここでも子供たちと遊ぶように言ってます。


 さすがに、真面目な話だからね(多分)。


「どうやら、こっちには依桜は来ていなかったようだな」

「そうだね。前の二つの村と町では、孤児院に着くか、孤児院に入る前に言われたもんね。さすがに、ないと思うな」

「依桜ちゃんは変なことに巻き込まれやすいみたいだけど、さすがにもうなさそうだね」

「はい」


 これでもし、この町でもここに来ていたなんてことがわかったら、おそらくクーナとスイの二人の所にも行ってそうだもんね。


 なんて。さすがにないよね!


「お待たせしました~。え~っと、お茶請けはケーキでよかったでしょうか~?」

「大丈夫です。でも、ケーキなんて大丈夫なんですか? ここ、一応孤児院なんですよね? その……お金とか」


 数分して、人数分のお茶とケーキを乗せたお盆を持って、シャロさんが戻って来た。


 相変わらず、おっとりとした笑顔を浮かべている。


 ただ、孤児院なのに、そう言うのは金銭的に大丈夫なのかと尋ねると、シャロさんは答えた。


「はい~。九ヶ月ほど前に、色々とありまして~」


 ……………………九ヶ月、前?


 なんだろう、嫌な予感が……!


 両サイドにいる二人を見れば、こちらも微妙な表情を浮かべていた。


「あ、あのー、九ヶ月前に何かあったん、ですか……?」

「あら~? 勇者様は覚えていらっしゃらないんですか~?」


 …………え、まさか、本当に?


「……もしや、九ヶ月前にここにボクが立ち寄った、って言う話じゃないですよね……?」

「いえ、その通りですけど~……」


 あぁ、やっぱり!


 パターンが違っただけだよ、これ!


 こ、今度は一体、何をしたんだろう、ボク。


「あの、すみません。その時のボク……っぽい人って、何をしていた、んですか?」

「おかしなことを聞くんですね~。でも~……そうですね~。その時の勇者様は、この町に入り込んだ指名手配中の殺人鬼さんを捕まえてましたね~」

「「「ええぇぇぇぇぇぇぇ……」」」


 シャロさんの口から飛び出したのは、なんかもう……頭がおかしいとしか言いようがないことをしでかしていたボクの行動だった。


 ちょっと待って。ボク、一体何をしているの?


 殺人鬼を捕まえるって……。


 そもそも、そういう人がいたことに驚きだよ、ボク。


「その際に、王都の兵士の方に引き渡してまして~、同時に多額の報奨金を貰ったんですけど、こちらの孤児院に寄付してくださったのですよ~」

「……依桜、一体何をしていたんだ?」

「依桜ちゃん、さすがにそれは……」

「待って!? ボク、その事について記憶ないからね!?」


 若干引いたような二人に、思わず叫んでしまった。


「あら~? もしや、その際の記憶がないのですか~?」

「あ、は、はい。実はその……九ヶ月前に関しては、一部記憶がないと言いますか……他の村や町でも同様のことがあったらしく……」

「なるほど~。それは困りましたね~。お礼ができると思いましたのに~」

「お礼はいいですよ。その代わりと言っては何ですけど、その時のボクについて色々と教えて頂ければ……」

「そんなことでいいのですか~?」

「はい。結構大事なことでして……」


 それが聞ければ、いいかなと。


 ……いくらわからないことでも、謎を解明しない理由にはならないからね。できるなら、わかるところまでは解明したい。


「わかりました~。では、なんでも聞いたください~」

「ありがとうございます。えっと、そうですね……じゃあ、どういう経緯で来たのかというのと、あとボクが使用していた魔法や能力、スキルがあればそれを。それから……去り際に何か言っていたかどうか。これらを教えて頂ければありがたいです」

「わかりました~。では、まず最初の質問ですね~。わたし自身は、当時その場にいなかったのですけど、ふらりと勇者様が立ち寄ったのです~。しかもちょうどその時、この町に凶悪な殺人鬼さんが入り込んでおり、騒然としていたのですよ~。しかも、その殺人鬼さんは、孤児院の子供を人質に取っていまして~……。偶然ここに立ち寄った勇者様が子供たちを助け、殺人鬼さんを一方的にタコ殴りにしていたんですよ~。あの時の勇者様、子供が人質に取られているのを見た瞬間、ものすごい殺気を放っていましたからね~」


 何してるの、ボクっぽい人。


 いや、当然のことをしているけど。


「……なんか、キレるポイントが依桜と同じじゃないか?」


 と、シャロさんから告げられた九ヶ月前の出来事に、晶はそう言った。


「そうなの?」

「はい。依桜は何と言うか……自分のことよりも、他の人に対して怒るタイプで。特に、今の依桜の妹であるメルちゃんたちや、俺達のような普段から仲がいい人、それ以外だと、子供が何らかの危害に合っている場合だと、心の底から怒るんですよ。それこそ、見ているこっちが思わず息が止まるくらいに」

「ちょっ、あ、晶!?」

「へぇ~、依桜ちゃんって誰かの為に怒るタイプなんだね。まあでも、納得かな?」

「あ、あははは……」


 なんだかちょっと恥ずかしい……。


 でも、自分のことよりも、身近な人が傷つけられる方が怒らない? 普通。


 ボク的にはそうです。


 って、今は続きを。


「シャロさん、続き、お願いできますか?」

「はい~。え~っと、続きでしたね~。あ~、使用していた魔法や能力、スキルについてでしたね~。わたしが見ていた限りだと~……転移とか、重力に関する魔法? 能力? スキル? を使用していましたね~。殺人鬼さんから子供を助けるために、使用していた気がしますね~」

「じゅ、重力って……」


 ボク、そんなチートの代名詞みたいなものは持ってないよ。


 というか、重力に関する力とかあるの? この世界に。


 ボク自身、聞いたことない。師匠は知っているかもしれないけど……でも、師匠ですら使ったことがなかったような気がするんだよね。


 じゃあ多分、ない、ということにしておこう。うん。


「あの、本当に重力に関するものだったんですか?」

「はい~。なにせ、殺人鬼さんの武器とかをよくわからない力で引き寄せたり~、子供たちを安全なところにまで移動させていましたからね~」

「……それで、依桜ちゃん。使えるの?」

「さ、さすがに使えませんよ」

「だが、依桜らしき人は使ったんだろ? なら、そうなんじゃないのか?」

「そ、そう言われても……」


 知らないものは知らないし……。


 そもそも、ボクは師匠から多くの知識を叩き込まれているからと言って、この世界にあるすべての能力、スキル、魔法を知り尽くしているわけじゃない。本当に、必要最低限レベルの知識しかない。


 師匠の知識量は異常だけど。


「え~っと、次に行っても大丈夫でしょうか~?」

「あ、は、はい。お願いします」

「最後の質問は、去り際に何か言っていたか、でしたね~。ええ、ええ、言っていましたよ~。その時に行っていたのは『九ヶ月後にまた来ます。攫われた子供を連れて』ですね~」

「「「……また、それかぁ」」」


 もうお決まりと言ってもいいそのセリフに、ボクたち三人は形容しがたい表情を浮かべ、そう呟いた。


 本当、どうなってるの?


 正直、これでクーナとスイの二人の方に行って、同じことが起こっていたら……いい加減しつこいと思っちゃうよ? ボク。自分のこと(?)だけど。


「その時は冗談かと思ったのですけど~……まさか、本当にニアちゃんを連れて訪れるとは思いませんでした~」


 それはボクもです。


 でも、本当にどういうことなんだろう?


 九ヶ月前、一体何があったのかな……?


 ボクに記憶があれば、すぐにわかったんだろうけど、ないからなぁ……。


「あの、一つ聞いてもいいですか?」

「はい、わたしが答えられることでしたら~」

「ありがとうございます。えっと……その、その時のボクらしき人の雰囲気というか、そう言うものを教えて頂ければ」

「雰囲気……そうですね~、わたしとしましては、とても安心感がありましたね~」

「安心感?」

「はい~。何と言いますか、そこにいるだけで何も心配はいらないんじゃないかな~、みたいな感じですね~」

「あー、それはたしかに普段の依桜からもあるかもしれない」

「そうだね。私も、依桜ちゃんとお仕事に行く時はあるけど、その際って妙な安心感があるから」

「そ、そうかな?」


 もしかして、こっちの世界で鍛えていたから、かな? 熱いバトル漫画風に言うと、あふれ出る強者感、みたいな?


 ……いや、今のボクの外見じゃ、絶対ないね、そう言うの。


 そもそも、そう言った気配は出すな、って師匠に言われてるし。


「それと、安心感によるものでしょうけど~、勇者様が近くにいると精神的な落ち着きも得られましたね~。そのおかげで、周囲の人たちはパニックになることはありませんでしたから~」


 何それすごい。


 もしかしてボク、そんな力があったり?


 ……って、ないね。ないない。


 だってボク、人間だもん。


 人間にそんな力があるとは思えないしね。


「と、こんなとこでしょうか~。少なくとも、勇者様が知りたいことは全て話したつもりです~」

「……そうですか。ありがとうございました」

「いえいえ~。ただ、不思議ですね~。以前お会いした勇者様とは別人のようです~。口調とか~」


 別人……そう言えば、師匠がぽろっと漏らしてたっけ。


 九ヶ月前の記憶が、ボクの記憶じゃないみたいって。


 うーん、ボクが知らないだけで、多重人格なのかな、ボクって。


 でも、多重人格ってたしか周囲の環境によって生まれるもので、一種の防衛本能のようなものだったはず……。


 だから多分、違うと思うんだけどなぁ。


「そう見えるんですね」

「ええ~。そう見えちゃうんですよ~」


 ボクが苦笑いをしながら聞くと、シャロさんは変わらないおっとりとした笑みを浮かべて返してきた。


「……さて、ボクたちはそろそろ王都に戻ろうか。女委たちが何かしているかもしれないし」

「……そうだな。俺も嫌な予感がしている。だからこっちに来たんだが……」

「女委ちゃん、知らない間に何かをやってるしね。昨日なんて、同人誌を頒布するくらいだったから」

「あははは……。それじゃあ、シャロさん。ボクたちはそろそろ行こうと思います」

「そうですか~。勇者様、ニアちゃんをよろしくお願いします~」

「もちろんです。立派な大人に成長させますよ。あと、たまに遊びに来ますから」

「それは嬉しいですね~。いつでも、お待ちしていますよ~」

「はい。お話と、お茶、ありがとうございました。それでは」

「はい~。またいつか~」


 最後に挨拶を交わして、ボクたちはムルフェの町から去った。


 なんだか、余計に謎が増えただけな気がするよ……。


 そんな事を思いながら、ボクたちは王都へと戻った。



 そして……王都で起こっていたことに、ボクたち――というか、ボクと晶は、酷く困惑することになった。

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