第435話 ギルドでのお仕事終了……からの
それからギルドに戻り、お仕事再開。
容姿に関しては……バレちゃったとはいえ、さすがにあの姿のままでいるのは落ち着かなかったので、変装した姿へと変えました。
あれ以上騒ぎを起こしたくないしね……。
お仕事の方は、そこまでというほど問題は発生しませんでした。
いや、問題を起こそうものなら、ボクかテッドさんが何かしらの制裁を加えていたので……。
制裁と言っても、ただちょっと平和的にお話をしただけですよ。
さすがに、いきなり手が出るのはダメだからね。師匠だったら絶対しそうだけど……。
そんなこんなで、ボクの方のお仕事も終わり、営業時間終了に。
「今日は助かったよ、イオ殿」
「いえいえ、こちらこそ、楽しめましたので」
「そうか。そんじゃ、これは今日の給料だ。一日とは言え、結構な働きをしたことを考量して、そこそこの額が入っているが、ま、気にすんな」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
テッドさんから受け取ったおかねがはいっている袋は、すごくずっしりときた。
これ、いくら入ってるの……?
正直、すごく気になるところではある。
「今日一日、イオ殿のおかげで馬鹿共が減って助かったぜ。しかも、トラウマだったのかまた来た時はびくびくしてたしな」
「あ、あはは……」
個人的には、ちょっとやりすぎちゃったかなぁ……と後悔してるけどね。
でも、これで被害が減るのなら、それはそれでよかったとも思う。
「また頼む、とは言い難いんで、これっきりかもしれないがな」
「そう、ですね。一応、今は気軽にこっちの世界に来れるようになったとはいえ、そう何度も来れるわけじゃないですから。それに、こっちに来る時のほとんどは、魔族の国の方に滞在しそうですからね」
主に、女王的なあれで。
あとは、メルも向こうの住人……どころか、今代の魔王なので連れてこないといけないしね。
まあ、メル自身は全然嫌がる素振りを見せてないし、むしろ嬉しそうにしている素振りすらあるので、全然問題はなさそうだけどね。
「ま、それもそうだな。んじゃ、今日で終わりかね?」
「気が向いたらここに来ますよ。まあ、その時はボクが色んなことから解放されて、一人で旅をしている頃かもしれませんけどね」
「そうか。……それじゃ、改めて言おう。今日はありがとう、イオ殿。おかげで、助かった」
「いえいえ。テッドさん、これからも頑張ってくださいね。それでは、失礼します」
「おう、それじゃあな」
『『『お疲れ様でした』』』
最後に職員のみなさんにそう言われつつ、ボクはギルドを出ました。
外に出ると、みんな待っていてくれていたみたいで、ボクに近づいてきた……と思ったら、それよりも早く、メルたちがボクに抱き着いてきた。
「わわっと」
「お疲れ様なのじゃ! ねーさま!」
「お疲れ様です、イオお姉ちゃん!」
「お疲れ、さま、です、イオおねえちゃん」
「お疲れ様だよ!」
「お疲れ様なのです!」
「……お疲れ様」
「ふふっ、みんなありがとう。でも、ここだとちょっと邪魔になっちゃうから、一旦離れてね」
「「「「「「はーい(なのじゃ)!」」」」」」
うんうん、素直でいい娘たちです。
「依桜ちゃん、お仕事はどうだったの?」
「そうですね、意外と難なくこなせていた気はします。一応、女委のお店で接客業をしていたので、それもあるとは思いますけど……」
「あ、そう言えばゴールデンウイークにやってもらったけ。いやー、あの時は助かったよ、色んな意味で」
「あ、あはは……」
あの時と言えば、強盗が入ってきてかなりピンチになってたもんね。
幸いにも、変声術とか『変装』や『変色』とかのスキルでボクだとバレなかったけど、もし使ってなかったら、きっと変に目立っていたんだろうなぁ……。
まあでも、友達の命に比べたら、ボクが目立つことなんて安いものだけどね。
「みんなは何をしていたの?」
「そうね……まあ、普通に観光かしら? 途中、女委が暴走しかけたけど、まあ……大丈夫だったわ」
「ちょっと待って? なんで暴走しかけてるの?」
「にゃははー。いやー、ついついテンション上がっちゃってねぇ。あ、大丈夫だよ、騒ぎは起こしてないから!」
ぐっとサムズアップをしながら、ウィンクをする女委。
「いや、なんで問題を起こす前提で話してるの……?」
その反応にそこはかとない不安を抱くんだけど。
ある意味、女委はこっちの世界に連れてきちゃいけない存在なんじゃないか、と思えてくる場面があるよ、ボク的に。
「ああ、大丈夫だ、依桜」
「えと、晶? 大丈夫って言ってる割には……なんでそんなに目を逸らすの? あと、なんでそんな曖昧な笑みなの? 本当に、何があったの?」
「……それは、まあ……あれだ。後で話すよ」
「……本当に何があったのか、すごく心配なんだけど」
旅行に来て二日目、もうすでに色々と不安です……。
一抹の不安を抱きながらお城へ向かって歩いていると……
『きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
女性の悲鳴が聞こえてきた。
「おい、今のって悲鳴じゃね? なんかあったのかな?」
「あー……うーん……こう言ったらなんだけど、こっちの世界ってこういう事態がちょこちょこあってね……。その度に、街に常駐している騎士団の人たちが解決に乗り出すんだよ」
「へぇ~。ねね、依桜ちゃん。それって、基本的にどういうことが起こってるの?」
「えーっと……多いのだと、下着泥棒とか」
「「「「「えぇ……なんか、しょうもない……」」」」」
女委以外の地球組のみんながものすごく呆れていた。
「いや……ボクも一時期、騎士団の方に所属……というか、修行の意味で在籍していたことがあってね。その際に街の見回りとかもしていたんだけど……そういう事件が一番多いと知った時は、本当に困惑したよ……。だって、異世界なのに、そういうところだけ無駄にあっちの世界みたいなんだもん」
「どこにいっても、変態は多いんだね!」
「そんなにテンション高く言うことじゃないからね?」
というか、碌なものじゃないよね、下着泥棒って。
「ちなみに、それ以外だとスリや、誘拐などがあるかな」
「……地味に怖いわね」
誘拐などがあることを言ったら、女性陣(未果、美羽さん、エナちゃん)がちょっと怖がるそぶりを見せた。
「あ、大丈夫だよ。何が何でもボクが絶対に守るからね」
「……相変わらず、そういうところはイケメンね」
「依桜ちゃんって、ジゴロなのかな?」
「平気でカッコいいこと言うよね! 依桜ちゃんって!」
「か、カッコいいって……ボクは当たり前のことを言っただけだよ? それに、この場に師匠がいる以上、そうそうみんなに危害が起こるとは考えにくいけどね」
「ま、あたしは常に街を覆うほどの『気配感知』を使用しているからな。当然だ。というか、こいつらに何かあったら、依桜がなにするかわからんからな……」
「「「「「「あぁ、納得」」」」」」
「なんで!?」
ボク、そこまで何をするかわからない人って思われてるの!? なんかちょっと、悲しいんだけど!?
「というか、あの悲鳴、放っておいて大丈夫なのか?」
「そうだね……一応、騎士団の人たちが介入するとは思うから、大丈夫だとは思うけど……」
そうボクが言った直後、
『『『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』』』
そんな声が聞こえてきた。
「……大丈夫、なのよね?」
「……これは、多分ダメかも……」
この国の騎士団の人たちはそこまで弱くないはずなんだけど、さっきの声を聴いちゃったら……多分、相当な強敵が出てきちゃった、のかも?
思い当たるとすれば……悪魔かなぁ……。
「師匠、あの、何がいるかわかります……?」
「ああ、当然だな」
「えーっと、それって悪魔だったり……します?」
「んー……ああそうだな。これは、あくまで間違いない」
「あぁぁぁ……やっぱりぃ……」
本当に悪魔だったよぉ……。
それなら、騎士団の人たちが苦戦しても不思議じゃないよ。
あれ、強いもん。
はぁ……行かないわけにはいかないよねぇ……。
「師匠、ちょっと行ってきます……」
「嫌そうだな、お前」
「いえ、嫌って言うか……単純に、ドタバタに巻き込まれて、ちょっと困惑してるなぁくらいですよ」
「まあ、お前だしな」
「その言葉の真意を知りたいです」
「いや、お前と言えばトラブルだろ? それ以外なくね?」
「……否定できない」
「ほれ、助けに行くならさっさと行った方がいい……って、ん? なんだこの反応」
手をひらひらと振った直後、師匠が一瞬不思議そうな顔をする。
「どうしたんですか?」
「いや、なんか変な反応があってな。……正直、あたしもこれは見たことがないって言うかだな……まあ、あれだ。マジで知らん反応が出てる。しかもこれ、悪魔と対峙しているような気がするんだが……」
「え!?」
なにそれ、すっごく気になる!
と、とりあえず、ボクも『気配感知』を使ってみよう。
……あ、ほんとだ。たしかに師匠の言う通り、変な反応がある。
なんと言うか……神々しい? それとも、聖なる何か?
……よ、よくわからない。
でも、邪な感情は一切感じない。それどころか、正の感情しか感じないのが不思議。
どういう人なの? これ。
「あれ? あれって……」
「美羽さん? どうかしたんですか?」
「あ、うん。ちょっとあそこの辺りが気になるんだけど……」
不思議そうな表情でとある方角を指さす美羽さん。
つられてボク以外のみんなもそっちを見ると……
「ん? なんか、あの辺ちょっと明るくね?」
「ほんとね。何かあるのかしら?」
「魔法とか?」
「それにしては、微妙に温かみのある明るさな気が……」
「綺麗なのじゃ!」
未果たちだけでなく、メルたちもどうやら見えているらしい。
周囲を見れば、路上にいる人たち全員が明るくなっている場所を見ていた。
でもあの方角って、悪魔たちがいる方向な気が……。
「師匠、行った方がいい気がしてきたんですけど……」
「そうだな。あたしとしても情報が欲しいところだ。……仕方ない。イオ、あたしは『分身体』を一体出す。それと一緒に、向こうへ行け」
「あ、はい。わかりました」
「よし。なら……ほれポンと」
軽い声で言うと、師匠の横にもう一人の師匠が出てきた。
……なんだろう、師匠が二人いるって、相当怖い絵図な気がしてきた……。
「おい弟子、さっさと行くぞ」
「あ、は、はい! えと、じゃあ、ちょっと行ってくるねみんな!」
「気をつけてな」
「うん!」
「イオお姉ちゃん、怪我しないでくださいね?」
「大丈夫だよ! じゃあ、行ってきます!」
みんなに心配されつつも、ボクは分身体の師匠と一緒に問題が起こっているであろう場所へと向かった。
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