第407話 変化して林間学校

「……Oh」


 朝起きたら、なんか……ものすごく可愛いケモロリがわたしの上に乗って眠っていた。

 抱き着くようにしてわたしの巨乳に顔をうずめるようにして眠っている姿がいいぜぇ……。


「んみゅぅ~……すぅ……すぅ……」

「寝顔いい……」


 この、無垢な寝顔。可愛らしい幼女の、安心しきった表情と言うのは、可愛すぎてヤバいですなぁ。お持ち帰りしたくなる。


 しかも、ケモ耳ケモ尻尾も付いているから尚更だね!


 あぁ、この何とも言えない重みがいい。


「なで、なでぇ……」


 うん? なでなで? これはつまり、頭を撫でて欲しい的なあれかい?

 ……ふむ。よし! ここはなでなでだ!


「よしよし」

「……んみゅぅ~……えへへぇ……なでなでぇ~……」


 はぅあ!


 な、なんという素晴らしい寝言!


 本当に気持ちよさそうな表情をしているし、わたしのハートにパイルバンカーがドズンッ! だぜ!


 ふりふり……。


 ふと、わたしの視界の端に、ものすご~く気になるものが映っていた。


 そう! 依桜君の尻尾!


 もっふもふな狼の尻尾。


 あれの触り心地はどんな動物よりも素晴らしいと思ってます!


 というか、是非ともお持ち帰りして、わたしの妹に会わせたいなぁ。


「んっ~~~~……! おはよう……」

「おふぁよ~……」

「お、おっすおっす、二人とも」

「……ん? それは……ああ、なるほど、今回はそれね」

「イエスイエス」

「おぉ! そ、その姿が……」

「そうとも! これが依桜君の変化形態の一つ、ケモロリモードさ!」

「す、すごい! 可愛い! もふりたい!」

「……あなたたち、とりあえず、今依桜は寝てるのよ。もうちょっと静かにしましょ」


 おっと、そうだったそうだった。


 しかしまあ、なんとも可愛い寝顔。


 ついつい頬を指でつっついちゃうよ。


「お、おー、ぷにぷにしてる」


 すっごくぷにぷにしてた。


 さすが、小学一年生くらいの姿。


 頬のハリがすごいね! いつまでも触っていたくなるようなぷにぷに感!


「ねえ未果ちゃん。そろそろ起こさないと準備遅れちゃうんじゃないの?」

「そうね。……まあ、その前に一つ、思うことがあるわ」

「あ、それわたしも」

「うちもかなぁ」


(((依桜(君)(ちゃん)素っ裸なんだけど)))


 多分、小さくなったからなんだろうけど、着ていた浴衣が脱げちゃってるんだよね、これ。

 うーん、明らかに未果ちゃんとエナっちから見えちゃってるよね? 主に、股の部分。


「未果ちゃん、依桜君のあそこってどうなってるの?」

「ちょっ、一体何を聞いてるのよあんたは!」

「えっとね、すっごく綺麗だよ!」

「エナも何言ってるの!?」

「はっはっはー。未果ちゃん、朝から元気だねぇ」

「あんたら二人がド直球の下ネタを言うからでしょうが!」

「えー、うちは別に言ってないけど」

「女委の発言に乗った時点で同罪よ……まったく」

「ん……んゅぅ~……あしゃぁ……?」


 ここで、目をくしくしとこすりながら、依桜君が起きた。


 もぞもぞと動きながら起き上がったので、わたしのおっぱいに依桜君の顔でこすれてちょと気持ちいい。


 朝から興奮しちゃいそうだぜ。


「あしゃだよ~、依桜君」

「んんぅ……めい?」

「女委お姉さんだよー。さあさあ、お洋服を着て、早く準備しちゃおう!」

「……およーふく? ……っ!」


 やや寝ぼけていた依桜君だけど、わたしが洋服の事を伝えると、徐々に目が開いてきて、自分の状況を理解。


 その結果、みるみるうちに顔を真っ赤にして……


「きゃ……きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」


 いやぁ、なんかもう、お約束だねぇ。



「……あぅぅ。え、エナちゃん……?」

「なぁに~?」

「あ、あの……い、いつまでさわってるの……?」


 裸の状態で女委の上に乗って眠っている状態から目が覚めて、朝一番の悲鳴を上げた後、ボクは今の姿に合わせた普段着を着ると、エナちゃんに捕まり、膝の上に乗せられて、耳をもふもふされていました。


「だって、依桜ちゃんの耳、もふもふしてて気持ちいいんだもん~」

「「わかる」」

「で、でもぉ……」

「んー、ここかな~?」

「んふぁぁぁ~~~~……」

「おぉ、本当に気持ちよさそうにしてる! 可愛いね、依桜ちゃん!」

「はぅぅぅぅっ~~~……!」


 は、恥ずかしい!

 ついつい気持ちいい声を出しちゃうのが、本当に恥ずかしい……!


「恥ずかしがり屋さんだね~」

「はいはい。もふもふするのはその辺にして、そろそろ朝食の時間よ。早く行きましょ」

「あ、もうそんな時間なんだ。仕方ない。後でもふもふするね!」

「あ、あはははは……」


 ……昨日、自分でもふもふしてもいいよ、と言った手前、断りづらい……。



 朝食を済ませると、昨日と同じく軽く準備の時間。


 朝ご飯を食べに、広間に行った時は、まあ……姿が変わっていたから、結構驚かれた。


 球技大会の最終日に、一応この姿になっていたからか、かなり驚く、と言ったような人は少なかったけどね。


 それでも、あまり見たことがない人……というか、一度も見たことがない人(主に一年生など)は、相当驚いていたけど。


 だよね。


 だって、小さくなった上に、狼の耳と尻尾がが生えるんだもん。驚かないわけがない。


 ともあれ、準備を終えたら、林間学校へ。


 林間学校は、旅館からすぐ近くの広場。


 なので、臨海学校とは違い、徒歩での移動に。


 ただ、その道程がちょっと大変。


 と言うのも、その広場に行くのに、そこそこの数の坂を上り下りしないといけないから。


 普段運動をしている人なら、ちょっとだけ疲れたかな? くらいなのに対し、運動をしていない人は林間学校前からすでにきつい、という状態に。


 ボクは……余裕です。


 向こうの世界では、山の上り下りは普通だったし、そもそも森に住んでいたからね。こう言った自然環境の中での生活はお手の物です。


 むしろ、落ち着く。


 ……うーん、将来、自然豊かな場所で、のんびり暮らすのもいいかも。


 その時は多分、おばあちゃんになってるかもね。


 魔力のあれこれで、姿が変わらない可能性があるにはあるけど。


「ぜぇ……ぜぇ……ま、まだ、着かない、の……?」

「まったく。少しは運動しなさいよ、女委」


 広場へ向かう道中、女委はすでに疲れていました。


「い、インドアの、わたし、には、辛いぜ……と、というか、なんでみんなは平気なん……?」

「私は日頃からジョギングとかしてるし」

「俺も、週に何度かはジムに通ってるな」

「オレは実家の影響だぜ」

「うちはアイドルだからね! 体力が一番必要なの!」

「ボクは、まあ……しってのとおりです」

「……わたしたちのグループ、なんだかんだでアウトドア派多くない……?」


 疲れた表情で、そう言う女委。


 たしかにそう……かも?


 でも、アウトドア派、と聞かれたらそうでもないような気がする。


 どちらかと言えば、ほとんどはインドアに近い気がするし。


「でも、あれだね! 一番年下に見える依桜ちゃんが、一番疲れてないよね!」

「汗一つかいてないしな」

「つか、依桜の体力はほぼ無尽蔵みたいなもんだろ」

「そんなことはない、よ? このすがただと、ふだんのごぶんのいちくらいのしんたいのうりょくだもん。たいりょくてきにも、けっこうおちてるよ」

「それでも、依桜の身体能力は異常でしょうが。少なくとも、五十メートル五秒以下で走れるんじゃないの?」

「ま、まあ……」


 それくらいは余裕というか……。


 通常時だったら、ほぼ一瞬でゴール出来るんだけどね。


「そう言えば、依桜ちゃんっていくつかの状態に変化するんだよね?」

「うん」

「そうなると、その姿に合わせた身体的特徴とかあるの?」

「あるには、ある、かな? いまのすがただと、聴力と嗅覚、それから視覚が普段よりも向上していたりするかな。でも、通常時に耳と尻尾が生えた姿の方が、もっと向上しているけど」

「本当に狼みたいなんだね!」

「かざりじゃないからね、これは」


 そう言いながら、軽く耳と尻尾を動かす。


「便利そうだよね、その尻尾」

「うん、結構便利だよ。もう一つ手がある、みたいな感じかな?」

「ちょっと羨ましい」


 なんだかんだで、日常的にも使えるしね。


 あ、林間学校だし、熊さんに会いたいなぁ。



 それから数分後に広場に到着。


 広場のすぐそばには少し大きめの川がある。


 意外と深そう。


 多分……ボクが沈むくらい?


『とりあえず、今から二十分程休憩及び自由時間とするので、各自休むように! その後、この後やることについて説明する! では、一時解散!』


 そう言うと、四割くらいの人たちは近くに座り込み、三割はその辺りを探索。残った三割の人たちは川の方へ向かった。


「涼しい場所だなぁ、ここ」

「だねぇ。こう言う場所は、いい背景の参考になるぜー。特に、野外プレイのシチュエーションにピッタリ!」

「「何を言ってるんだ(のよ)、お前は」」


 女委の発言に、なぜか未果と晶の二人がツッコミをいれていた。

 え? 今のどこに、ツッコミをいれる場所があったんだろう?


「おっと失敬失敬」

「昨日言ったこと、もう忘れたの?」

「いやいや、そんなことはないさー。でも、つい口に出ちゃうんだよね」

「……依桜、下ネタを言ったら痛みが発生するツボ、女委にお願い」

「え」

「あ、うん。よくわからないけど、りょうかいだよ!」

「あ、あの依桜君? さすがにそれは――」

「えいっ!」

「あふんっ!」


 軽く跳躍して、下ネタを言ったらダメージがくるツボを刺した。

 都合がいいよね、このツボ。


「依桜君、容赦ないなぁ……。まあでも、これはわたしが悪いってことにしとくぜー」

「しとくって言うか、今のは明らかにあなたが悪いわ」

「女委ちゃん、相変わらずだね~」


 下ネタ、言ってたの?

 よくわからない……。


「にしても、臨海学校では海でのサバイバルだっただろ? 林間学校って何するんだ?」

「あー、妥当なところで言えば、山でのサバイバルじゃないのか? たしか、この学園の入学説明会の時、林間・臨海学校について軽く触れていたが、そのコンセプトはどうやら『自然の厳しさを体験する』だったはずだからな。十中八九、こっちもサバイバルと思っていいだろう」

「なるほど。つまり、山、海、それぞれの特性に合わせたサバイバルを学ばせる、ってことね。それならたしかに、学習と言う面でピッタリと言えるわね」

「でも、山の方が難しくないかな? うち、山菜とか詳しくないよ?」

「普通はそうじゃね? むしろ、依桜がおかしいくらいで」

「さ、さすがにボクもちしきはそこまでないよ?」

「でも、食べられるかどうかはわかるんでしょ?」

「ま、まあ……」


 一応『鑑定(下)』は持ってるし……。


 あれって、何かと便利なんだよね。


 一番上は『鑑定(極)』だと思います。師匠が持っていたから。


 それよりも上ってあるのかな?


 まあでも、普通に生活するくらいなら『鑑定(下)』で十分。


「やっぱ、ある意味じゃチートだよなぁ、依桜は」

「どりょくしたけっかといってほしいかな」

「それもそうね。最近は、努力もなしに、どんどんチートになりつつあるような気もするけど」

「……ひ、ひていできない」


 魔王討伐時点と、現時点でのボクの全体的なスペックの差はかなり大きい。


 師匠曰く、ステータスも向上しているらしいし、師匠の『感覚共鳴』による、能力、スキル、魔法の三種類の習得も多かったし……。


 でも、どうしてステータスが向上したんだろう?


 特に修行も何もしてないんだけどなぁ……。


 そう言えば、師匠のステータスの数値、すごく気になる。どういうステータスになってるんだろう? あの人。


 訊いたら教えてくれるかな?


 ……意外と教えてくれそう。


 その内訊いてみようかな。


「さて、時間までまだ少しあるし、女委のためにも軽く休憩しておきましょうか」

「「「「「賛成」」」」」


 時間になったら、森の中に行きたいものです。

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