第379話 依桜ちゃんたちとレジャープール11
ちょっとした疑問は残ったけど、ともあれ『変装』と『変色』を切ってみんなの所へ。
「ただいまー」
「お帰りなのじゃ、ねーさま!」
「メル、こういう場所で走ると危ないよ」
「む、たしかにここは滑りやすいの……」
「でしょ? だから気を付けないとね」
じゃないと、メルが転んだ拍子に、地面が割れちゃう可能性があるもん。
「イオお姉ちゃん、さっきはすごかったです!」
「歌、上手かった、よ」
「イオねぇって、何でもできるんだね!」
「あはは、何でもはできないよ。歌も上手いかはわからないし」
「でも、イオお姉さま、歌も踊りも上手だったのです」
「……すごい」
「そうかな? でも、そう言ってもらえると嬉しいな」
みんなに褒められるとなんだか、すごく嬉しい。
やっぱり、妹だからなのかな?
「お疲れ、依桜」
「あ、未果」
「はい、飲み物。喉乾いたでしょ?」
「うん、ありがとう。もらうよ」
未果から飲み物を受け取って口を付け、こくこくと喉を鳴らして飲む。
「はぁ。美味しい。みんな、ご飯は?」
「全員、依桜が戻ってくるのを待ってたから、まだ食べてないわ。だから、あそこにいる三人なんて、ほら」
「「「……」」」
あ、三人ともすっごくぐでっとしてる!
遊び疲れた、のかな? 見た感じ。
「待ってなくてもよかったのに」
「そうは行かないでしょ? 依桜が仕事をしていたのに、それを差し置いて呑気に食べられるわけないじゃない。それに、メルちゃんたちが一番待っていたんだし」
「そうなの?」
と、メルたちに尋ねると、みんな嬉しそうに頷く。
あぁ、なんて優しい娘たちなんだろう……お姉ちゃん、すごく嬉しいよ。
「そっかそっか。じゃあ、食べよっか。師匠たちもお腹空いてるだろうからね」
「そうね。特に、あそこで死んでいる三人なんて、今にも死にそうだもの」
「あはは……」
……そう言えばあの三人、というより、晶と態徒の二人って、師匠と遊んでいた気が……もしかして、それであんなに疲れてる、とか?
……あり得る。
師匠と遊ぶのって、相当体力いるもん。
ボクだって、全力の師匠と遊ぶのは、骨が折れるし。
それを、普通の人がやるって、なかなかにすごいことだよ。
異世界に行く前のボクだったら、十分も持たないでへばっちゃってると思う。
それくらい、師匠の体力は無尽蔵だから。
ともあれ、お昼ご飯だね。
それから、お昼ご飯をみんなで食べて、少し休憩をしたら、再び遊びに。
アイドルをやっていたため、みんなと遊べなかったので、午後からはみんなと遊ぶ。
何で遊ぼうとなった時、少し話した結果、ウォータースライダーになった。
年齢制限はあるにはあるけど、保護者同伴だったら特に問題がないみたい。
なので、メルたちは、ボクと一緒なら滑ることができるわけです。
それで、一応このウォータースライダーは最大三人まで同時に滑ることができるみたい。
それを聞いたメルたちが取った行動が何かといえば……それはもちろん、どの順番でボクと滑るか、という話し合い。
三人ずつで滑れるので、結果的の、ボクは三回程滑ることになるわけで。
って、そう思っていたんだけど、
「ん、面白そうだな。あたしも滑ろうかね」
「あ、師匠も滑るんですか?」
「ああ。というわけで、あたしはお前と滑る。ちなみに、拒否権はない」
「え!?」
こんな感じに、師匠とも滑ることになったので、結果的に四回滑ることになりました。
……並ぶ時間もあるんだけど。
でも、異世界組はそんなことお構いなしに話し合っている。
あー、これは本当に拒否権ないんだね……。
まあ、メルたちのお願いなら、ボクが断る、なんてことあるはずがないんだけどね。可愛い妹たちのお願いだもの。
師匠は、普通にお世話になった人だし、好きだから別にいいしね。
と、気が付けばみんなが滑る順番と、どういうペアで行くのかを決め終えていました。
そうして出来上がったペアが、メルとミリア、ニアとスイ、リルとクーナの三ペアになりました。
ちょっと面白い組み合わせ。
メルは妹の中で一番上(実際は一番下だけど)なため、後から来たニアたち全員と仲が良く、特定の誰かという意味合いじゃ、あまりないので、メルとミリアという組み合わせはちょっと意外化も。
ニアとスイの二人も、ちょっと珍しい。
ニアはどちらかと言えば、リルと一緒にいることが多いからね。
スイの方は、クーナと一緒にいる場面をよく見かけるから、ニアと一緒、というのは珍しかったり。
そして、リルとクーナ、というのも珍しい。理由はさっき言ったことと同じ。
でも、こう言う組み合わせもいいね。
どんな組み合わせでも可愛いけど、珍しい組み合わせだと、みんなの可愛さもさらに倍増だよね! いいと思います!
この三ペアと滑ったら、師匠と滑る、みたいな感じになるみたい。
師匠がトリ……。
ちょっと心配。
というわけで、ウォータースライダー。
幸いなことに、そこまで人は並んでいなかった。
待ち時間としても、一回頭五分~十分くらいかな?
なんで、こんなに空いてるんだろう? って疑問だったけど、多分これ、イベントが影響してるんじゃないかなぁ。
あれって、ちょうどお昼時に行われてたから、お昼食べてるのかも?
だけど、普通のお客さんもいたはず、だよね? どうしてだろう?
あれかなついついイベントを見に行っちゃって、そ俺でお昼を食べてない、とか。……うん、そっちの方がなんだかしっくりきそうだね。
まあ、ともあれ、待ち時間がそんなにないというのは、ボクとしてもすごくありがたい。
だってボク、四回滑らないといけないからね。
『次の方、どうぞー』
「あ、ボクたちだ。行こ、メル、ミリア」
「「うん!」」
笑顔、可愛いです。
『えーっと、身長制限はありますが、保護者同伴ですので問題なしですね。それでは説明させていただきます。このウォータースライダーでは、三人一組になった場合、滑り方が二種類あります。と言っても、実質的な滑り方は一つだと思ってください』
それ、二種類って言う意味あるのかな?
説明としてあるんだろうね、多分。
『今回、保護者のあなたが一番大きいので、真ん中に座ってもらい、その前後をお子さんたちが挟んで座る形になります』
お子さんって……。
メルとミリアは普通に妹なんだけど……。義理ではあるけど。
『お子さんたちが座る時、前の方のお子さんは、向かい合って座るか、もしくは保護者の方が後ろから抱きしめる形になります』
「なるほど……」
まあ、そう言う感じになると……。
「じゃあ、メルねぇが前だね!」
「いいのかの? ミリア?」
「うん! だってメルねぇ、イオねぇ胸好きだもん」
「うむ! これ以上のものは無いと思っておるぞ!」
「……恥ずかしいから、外で胸の話をするのはやめて……」
しかも、本人の前で。
見てよ、説明係のスタッフさんなんて、ちょっと笑ってるよ。
微笑ましいっていうことなんだろうけど。
『では、滑る準備をしてくださいね』
「わかりました」
というわけで、三人仲良く座る。
ボクが中に座り、メルがボクに背を向けてボクの両足の間に座り、ボクは後ろからメルを抱きしめる。そして、ミリアがボクの背中がに座って、その小さな手をぎゅっとボクの腰に回して座っています。
何だろう……天国。
可愛い妹たちに、こうして挟まれて座るのって、すごく幸せです。
生きててよかった……。
『それでは、準備OKですね? では、いってらっしゃーい!』
スタッフさんが嬉々としてそう言いながら、ボクの背中を押し、滑り出した。
「「「きゃーー♪」」」
いざ滑ってみると、思わずそんな悲鳴がボクたちの口から漏れた。
ウォータースライダーなだけあって、かなりの速度が出ていて、水しぶきが舞う。
それなりに長いようで、なかなか終わりが見えない。
カーブをしたり、少し凸凹したような感じの坂があったりだとか、そんな感じ。
このスピード感はいいね!
修行時代に、斜度五十度以上の坂から油を流された時くらいのスピード感だよ!
ただ、問題点があるとするならば……む、胸が痛い!
さっきから、カーブとか凸凹の坂を通る度に、胸が揺れてすごく痛い!
も、もしかして、胸が大きい人って、ある意味ウォータースライダーも天敵……?
これをあと三回繰り返すと思うと……あ、でも、みんなと滑れるのなら、これくらいの痛みは代償だよね? うん。なら問題ないね。
なんてことを考えているうちに、気が付けば出口から出ていました。
そして、プールから出て、再びウォータースライダーに並ぶ。
他のニアのペアと、リルのペアの二つとも滑った感想。
天国過ぎて、ボクの魂がどこかに飛んでいっちゃうんじゃないかな、って思いました。
本当に天国でした。
ニアは若干怖がってボクにぎゅっとしがみついてきたり、スイは普段は表情がちょっと乏しいけど、この時は目を輝かせてキャッキャととても楽しそうにボクの背中に抱き着いていました。可愛い。
そして、リルはニア以上に怖がったため、ぎゅっではなく、ぎゅぅっとぷるぷる震えながら、ボクにしがみついていました。正直、天国でしかなかったです。クーナの方は、比較的普通で、ボクに抱き着きながら楽しそうに滑っていました。
みんな可愛すぎて、やっぱりどうにかなっちゃいそうでした。
そして、みんなと滑り終えたらあるのが……師匠とのウォータースライダーです。
不安しかない。
というわけで、師匠と一緒に並び、順番がやって来た。
『あ、またあなたですか。好きなんですか? ウォータースライダー』
「あ、あはは……というより、一緒に来ている人と全員滑ることになっているものですから」
『大変なんですね』
本当にね。
まあ、ボクとしてはすごくいい時間だったから、大変という気持ちよりも、天国という気持ちの方が強かったから、全然問題ないです。
まあ、だからこそ、師匠の時間になった途端、天国から地獄に行ったんですが。
「ほう、これがウォータースライダーか。面白そうだな」
「師匠、お願いですから、変なことはしないでくださいよ?」
「大丈夫だ。あたしを何だと思ってるんだ、お前」
少なくとも、師匠が大丈夫と言って、大丈夫じゃなかったためしなんてほとんどないよ。
『お二人さんはなんだか仲がよさそうですね。でしたら、いい滑り方がありますよ』
「「いい滑り方?」」
『はい! えーっと、そちらの長身美人さん、ちょっと足を延ばして座ってもらってもいいですか?』
「ああ、構わんぞ」
スタッフさんに言われた通り、師匠が足を延ばして座る。
『そして、そちらの銀髪碧眼の可愛らしい方がこちらの方の太腿に、自分の足がクロスするように座ります。で、そちらの長身美人さんの首に手を回してしがみつく』
言われた通りに、座ってみる。
って、あ、う……。し、師匠の顔が近い!
すっごくドキドキするし、なんだか恥ずかしい!
……でも、なんだろう。ちょっといいかも……って! 違う違う!
「ふむ。なかなかいいじゃないか、この座り方。こいつをお姫様抱っこした時と同じような感じだ」
『そこまで仲がいいんですね! でしたら、やはりこの滑り方はピッタリかと』
「どうしてだ?」
『だってこの座り方、恋人の人たちがするような座り方ですから! じゃあ、行ってらっしゃーい!』
「え、スタッフさん、今なん――きゃああああ!」
スタッフさんの、とんでもないセリフに気を取られて、突然スタートした瞬間、ボクはそんな悲鳴を漏らしていた。
「ハハハハ! これは楽しいな! なあ、弟子よ!」
「そ、そそそ、そうですね……」
師匠、ボク今、それどころじゃないですよぉ……。
さっきから、師匠の顔が近くて、ドキドキしてるんですって!
あと、なんかこの体勢、微妙に怖いんだけど! 正面じゃなくて、横を向いちゃってるから、普通に怖い。
だから師匠にちょっとしがみついちゃうわけで……すると、師匠の体の温かさや柔らかさなんかが直に伝わってきて、やっぱりドキドキする。
多分これ、未果と女委、あと美羽さんに……多分エナちゃんとでもこうなったような気がしないでもない……。なんでだろう。
終始、ドキドキしっぱなしだったウォータースライダーが終わる頃には、ボクはすごく顔を熱くさせていました。
は、恥ずかしかったぁ……。
ウォータースライダーを滑った後は、みんなで遊びました。
波のプールで態徒が流されたり、流れるプールで態徒が流されたり、一定量の水が溜まると、一気に水が出てくるバケツの水に、ちょうど態徒が当たって、やっぱり流されたりしたりと、とにかく楽しかったです。
態徒がやけに不運に遭っている気がするけど。
時折休憩を挟みつつ、なんだかんだで五時まで遊び倒しました。
アイドルをするという、アクシデント? があったにはあったけど、それでもみんなで楽しく遊べて、いい思い出になったよ。
やっぱり、いいね、こうして遊びに行くのって。
途中、ナンパされたけど、師匠に瞬殺された、なんていうことがあったけどね。
まあ……それも思い出ということで。
家に帰り、いざ荷物を置くと、気が付けばメルたちが仲良く固まって眠っていました。
「ふふっ、ずっと遊んでたもんね」
一応、ボクがアイドルをしている時は、メルたちも見ていたみたいだしね。
アイドルをする前後の時間ではみんなで、たくさん遊んだから、疲れちゃったんだよね、きっと。
「でも、風邪を引いちゃうから、毛布でもかけてあげようかな」
微笑ましい光景を見ながら、ふとそう思ったボクは、自分の部屋から毛布も持ってきて、メルたちにかけると、夜ご飯を作りにキッチンへと行った。
なんだか、いい生活になったね、本当に。
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