第339話 百合百合しいロリ姉妹
師匠の記憶改竄によって、大怪我をした生徒がいた、という事実がなくなり、なんでもなかったように球技大会が再開。
観客の人たちはやらなくていいのかな? とか思っていたんだけど、後で師匠が弄ったそうです。単純に、指定するのを忘れてたとか。
そうなんだ。
なにはともあれ、危険な状態だった人は無事に治療されました。
まあ、魔法を使ったのはあれだったけど、いたしかたなしです。
それで、魔法を使ったから、ということでボクの仕事は終わり。
希美先生も申し訳なく思ったみたい。
だから、ボクは暇になりました。
暇になったら、もちろん行くのは初等部。
メルとクーナはやってるかな?
「んーと、メルは……あ、いたいた」
初等部のドッジボールが行われているコートに行くと、ちょうどメルが試合をしていた。
間に合ったみたいだね。
「てかげん……てかげんなのじゃ……えいっ!」
と、可愛らしい掛け声で投げられたボールは、ビュンッ! という音共に相手チームの子に向かって飛んでいく。
……って! あ、あれは危険球!
ボクは能力、スキルなしの疑似的な縮地を使用し、ボールに接近するとそのまま真上に蹴り上げた。
ちなみに、バレたら色々とまずいので、『気配遮断』と『消音』の二つを使ってます。
騒ぎになっちゃうからね。
一応、姉とはいえ、部外者だもん、この試合においては。
『えええ!?』
『今、上に向かったよ!』
『どうやったの!?』
蹴り上げたボールが地面に落ちて、何度かバウンドした後、子供たちは今の光景に驚き、騒いでいた。
誰一人としてボクが見えなかったらはずだから、みんなにはメルが投げたボールが、突然真上に曲がったように見えたはず。
本当は、ボクが蹴り上げただけだけど。
うーん、メルには悪いことをしたかも……これ、結構目立っちゃうよね。
でも、怪我をさせなくてよかった。
さすがに、あの威力のボールだと、確実に怪我してたよ。
当たり所が悪ければ、骨折も考えられたし。
そうなったら、試合どころじゃないもんね。
まあ、何もなかった、ということで。
何食わぬ顔で元の場所に戻ると、メルがこっちを見た。
……あ、気づいてるね、あれ。
やっぱり、メルは魔王だからか、今は幼くとも潜在的な能力が相当高そう。
とはいえ、こっちを見て、にぱぁと笑ったところを見ると、全然そんな風に見えない。というか、可愛い。さすがメル。自慢の妹。
魔王とか正直どうでもいいしね。可愛ければいいしね。メルは可愛いから、全然おっけーです。異論は認めません。
なんて。
ともあれ、ちょっとした騒ぎはでちゃったけど、大問題に発展することに比べたら可愛いものかなと。
でも、一応は注意しておかないと。
「ねーさま!」
試合終了後、いつものようにメルが勢いよく抱き着いてきた。
うん。大変元気でよろしい。
「おつかれさま、メル」
「ねーさま、ありがとうなのじゃ!」
「なにが?」
「儂が危ない球を投げた時に、ねーさまが止めてくれたじゃろ? もう少しで、相手の子を怪我させるところだったのじゃ……」
と、反省した様子を見せるメル。
うん。ちゃんと、自分で危ないとわかっていたんだね。
これでもし、わかっていなかったらどうしようかと思ったけど、やっぱりメルはその辺りはしっかりしているみたいだね。
「ほんとだよ。ボク、すっごくあせったよ? いい、メル。てかげんは大事。とくに、メルはこっちの世界だと、すっごく力が強いんだから、気を付けないとあぶないよ?」
「うむぅ……」
「と言っても、ボクもたまにコントロールに失敗してちょっとあぶないことになっちゃうから、あまり人のことは言えないから、ボクも一緒に、こんどてかげんのれんしゅうにつき合ってあげるよ」
「ほんとかの!?」
「うん。さいきん、ボクの方もちょっと甘くなってきちゃってるしね。それなら、いっそのことまだそのあたりがみじゅくなメルといっしょにれんしゅうした方がいいかなって」
「わかったのじゃ! ねーさま、約束じゃぞ!」
「うん。もちろん」
そう言うと、メルはパァッ! と笑顔を咲かせた。
はぅぅ、やっぱり、可愛い……。
「……とりあえず、しあいには勝ったみたいだし、このあとのしあいは気をつけてね?」
「うむ!」
「うんうん、いい娘だね」
「んにゅ~……ねーさまのなでなでは、姿が変わっても気持ちいいのじゃぁ……」
「ふふっ、ありがとう」
ボクとしても、メルの撫で心地は最高だと思ってます。
なんというか、こう……小さいからこその触れあいってあるよね。
ある意味、みんなと接する時って、こっちの姿の方がいいのかな? って、不覚にも思ってしまった。
って、これ以上身長が縮むのはさすがに勘弁です……。
「ところでメル、クーナはしあいをしてるのかな?」
「クーナかの? うーんとじゃな……うむ、もうすぐだったはずじゃぞ?」
「そっか。じゃあ、見に行こうかな。メルもいっしょに行く?」
「うむ! ねーさまと行くのじゃ!」
「うん、じゃあいっしょに行こっか」
「ならば、手を繋いでもいいかの? ねーさま」
「もちろんいいよ。はい」
ボクは右手を出すと、メルは嬉しそうにはにかんで、左手でぎゅっと握った。
うん、いいね、これ……。
「じゃあ、行こ?」
「うむ!」
仲良く、ボクたちはクーナの所へ向かった。
一方、そんな様子を見ていた人(高校生以上の人)たちはと言えば……
(((ロリ姉妹の百合百合しい光景……尊すぎぃ……)))
と、ものすごくほんわかしたような笑みを浮かべていた。
恐るべし、美幼女姉妹。
メルと一緒にソフトボールが行われている場所へ。
手を繋ぎながら歩いている途中は、なぜか視線を集めたけど、気にしないで歩いた。
いつものことだしね、視線が来るのは。
とまあ、ソフトボールが行われている場所に到着。
と言っても、ソフトボール何て言うのは名前だけで、実際はティーバッティングなんだけどね。
さすがに、小学生でやるのは危険と判断したのか、初等部のみ、ティーバッティングに変更されていたりします。
まあ、コントロールが上手くない子が投げて、それで大怪我に! なんてことになったら、目も当てられないしね。
それでよかったんじゃないかな?
それに、ティーバッティングなら、そこまで難しくもないし、みんな楽しめるようなスポーツだから、全然いいんじゃないかな?
「お、ねーさま、あそこにクーナがいるぞ!」
「どれどれ……あ、ほんとだ。クーナ!」
メルが指した方を見ると、そこには試合の準備をしているクーナの姿があった。
ボクがクーナを呼ぶと、クーナは周囲をきょろきょろ見回し、ボクを見つけると、てててて! と駆けて来た。
「イオお姉さま!」
「わわっと」
いつものように抱きついてきた。
ボクの妹たちって、抱き着き魔なのかな? って最近思うようになりました。
なんだか、会う度に抱き着かれているような気がするし。
でも、可愛いから許せます。むしろ、いつでもどうぞ! って言う感じです。
「見に来てくれたのですか?」
「うん。メルといっしょにね」
「ほんとなのですか!? ありがとうなのです! イオお姉さま! メル!」
「おうえんしてるから、がんばってね?」
「頑張るのじゃぞ! クーナ!」
「はいなのです!」
ボクとメルで応援の言葉を言うと、クーナは可愛らしい笑顔を浮かべた。
すぐにクラスの所へ戻ると、真剣そうな表情に。
おー、クーナってああいう感じなのかな? いいね、真剣そうな表情って言うのも。
……そう言えば、何事もない所を見ると、クーナとスイの二人はちゃんとネックレスを着けてるのかな?
一応、二人はサキュバスだから、力が暴走したら色々とまずいことになるみたいだし。
ジルミスさんの話だと、今の二人だとネックレスを着けていない場合、力が駄々洩れになっちゃうらしいからね。
向こうの世界では、幸いにも年齢的による力の総量が低かったから周囲に影響がなかったけど、こっちの世界ではそうもいかない。
魅了の力に対する耐性がほとんどないに等しいせいで、こっちの人はすぐに魅了されちゃうとか。
スイも言ってたしね。
ボクが天敵、って言ってもいたけど。
なんで、ボクが天敵だったんだろう?
うーん……わからない。
ちょっとした疑問はあるものの、目の前のこととは関係ないと思い直したところで、試合が始まった。
いざ試合が始まってみると、クーナのクラスの方はちょっと押され気味だった。
どうも、地域の野球チームに参加している子がいたらしく、その子に苦戦しているようだった。
やっぱり、経験者がいるっていうのは、かなりの強みだよね。
いくら身体能力が高くても、一人が集団に勝つのはほとんど不可能。
ボクはまあ……師匠の地獄の修行で多対一をこなせるけど……そういうのは相当な身体能力がないと実現しないからね……。
でも、あれは戦闘面であって、それがスポーツにも通用するかと言われれば、そうでもないけどね。
だって、集団戦で一人で戦うのは実際無謀だもん。
だから、さすがに勝つのは難しいかなぁ……なんて、思った直後のこと。
「やぁっ!」
という、可愛らしい掛け声と共に、クーナがボールを打つと、ボールは綺麗な放物線を描いて飛んでいき、守備範囲外にまで行ってしまった。
その隙にクーナが走り、他の進塁していた子たちも走る。
進塁していたのは二人。
二人は見事にホームに帰ってきて、同時にかなりの速さで走っていたクーナもホームに帰ってきたことによって、合計で三点入った。
「おー! さすがクーナなのじゃ! すごいのじゃ!」
うん。今のは普通にすごかったよ。
さすがに、個人だけでどうにかするのは難しい、とか思っていたんだけど……ちょっと予想外。
やっぱり、魔族って身体能力が上がりやすいのかな?
そう考えると、ちょっとだけアンフェアに思えてくる。
……まあでも、クーナは別にスポーツの経験があったわけじゃないし、純粋なセンスと身体能力でやっていただけだもんね。
もっと言うなら、ゴールデンウイークまで、みんなはやせ細っていたから、多少不利なわけだし、問題ないよね!
結局のところ、可愛ければいいかなと。
そんな、得点を入れるきっかけとなったクーナはと言えば、とても嬉しそうに笑い、クラスの子たちとハイタッチを交わしていた。
……ただちょっと気になったのは、クーナとハイタッチした男の子たちが、顔を赤くして、ちょっと熱っぽいような視線を向けていたことかな。
……まだ小学生だから、大目に見よう。
これがもし、高校生になってからもだったら、ちょ~~っと考えるけど。
ふふふふふ……。
「ねーさま。何やら、黒いオーラが漏れておるぞ? 大丈夫かの?」
いけないいけない……つい、変なことを。
「だいじょうぶだよ。さて、おうえんしよっか」
「うむ!」
みんなのこととなると、ほんの少しだけ暴走しそうになるけど、普通だよね!
「イオお姉さま!」
「おつかれさま、クーナ」
「ありがとうなのです!」
試合終了後、やっぱり抱き着かれる。
なんというか、みんな癖になってるんじゃないかな、この行動。
咎めるつもりなんて一切ないけど、これが大人になっても続くと思うと……あ、うん。それはそれでありかも?
みんなが可愛い妹であることは、未来永劫覆ることのない事実だし。
むしろ、お姉ちゃん的にはありかな。うん。
「イオお姉さま、勝ったのです!」
「うん、ちゃんと見てたよ。おめでとう」
試合の結果はと言えば、クーナのクラスが勝ちました。
かなり接戦だったけど、最後、クーナが点を入れてサヨナラ勝ちしました。
なんというか、異世界出身のみんなはすごいね。
さすがに、みんなよりもすごい子供は世界を探せばいっぱいいるんだろうけど、それでも十分すごい。
このまま成長すれば、もっとすごくなりそう。
……できれば、健康的に育ってほしいけどね。
こっちの世界は、娯楽が多いから。
「メルも、応援ありがとうなのです!」
「うむ! 儂も姉じゃからな! 当然なのじゃ!」
年齢自体はメルが一番下なんだけど、精神年齢的にはみんなよりも年上に感じるので、メルがみんなの中で一番上、という風になってるけど、意外と合ってたり。
みんな、メルを慕ってるしね。
特に、クーナとスイかな? 二人は魔族だから、魔王であるメルが大好きみたいだし。
ニアたちもメルのことが好きだけどね。
姉妹仲はかなりいい。
今迄の境遇が境遇なだけに、今の生活はすごく嬉しいんだろうね。
実際、みんな孤児だったわけだし。
……なんだか、孤児院みたいに思えて来た、ボクの家。
いっそのこと、向こうで経営してみる?
意外といいかもしれないし。
「イオお姉さまは、どうだったのですか?」
「もちろん、勝ったよ」
……相手チームの人たちが気絶しての勝利だったけど。
ドッジボールなのに、ルール以外での勝利になっちゃったもんね。なんというか……あまり勝った気になれない。不思議。
「さすがねーさまなのじゃ!」
「すごいのです!」
「あ、あはは……。でも、二人も十分すごかったよ? これなら、ゆうしょうできるかもね」
「頑張るのです!」
「優勝するのじゃ!」
「うんうん、その意気だよ。頑張ったら、ご褒美があるからね。みんなに」
「あ、そうじゃった! なら、いっそう頑張るのじゃ! のう、クーナ!」
「はいなのです! 絶対、優勝するのです!」
「ふふっ、期待してるね?」
「「はーいなのじゃ(なのです)!」」
はぁぁ~~~……癒しだよぉ~~……。
最近、みんながいない生活が全く考えられません……。
守りたいこの笑顔、という言葉が頭の中に浮かびました。
なんだか、みんなの笑顔を見ただけで、不眠不休で頑張れそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます