第312話 おかしな点、色々
次の日のこと。
ブライズの世界から帰ったあたしは、次の日も平常通りに学園へ向かう。
いつも、イオの方が遅く出る。
まあ、あたしは教師だしな。生徒よりも早く行かなきゃいけないんでね。まあ、遅く来る奴もいるにはいるが、そう言う奴は、大抵近くに住んでいる奴だし。
あたしはまあ……そこそこの距離がある。別に、そう遠くはないが。
てか、あたしに距離とか無意味だな。『空間転移』があれば、一瞬で縮められるし。
向こうでの能力やスキルってのは、こっちだとマジで便利だからなー。
習得してよかった。
「……だが、やはり大変だな、教師ってのは」
職員室のあたしの席に座りながら、なんとなく呟く。
目の前にあるのは、去年の体力テストのデータ。
これは、体育祭の選手決めの為に行われる奴らしい。
一応、春にもある。たしか……五月だったな。
うちの学園は少し遅いと、クルミから聞いた。
大体は四月らしいがな。
まあ、よそはよそ。うちはうち、みたいな考え方なんだろう。多分。
っと、そんなことはどうでもいい。
問題は、この体力テストのデータだ。
ハッキリ言って……弱い。というか、頼りない。
運動部に所属している奴らは、そこそこの記録を出してはいるが、そうじゃない奴ら――文化部や帰宅部なんかに所属している奴らなんかは、そこまで高くない。
いや、中には、アキラやミカのように、それなりにいい記録を出している奴らがいるんだが……大体はそうじゃない。
てか、こう言っちゃなんだが、向こうのガキどもの方が、身体能力は高いぞ? いや、同年代でな。
まあ、騎士や、なんらかの戦闘職の家系のガキどもはかなり身体能力が高いが。
しかし、それ以外の奴らでも、こいつら以上の身体能力は持っている。
ふぅむ。これは、体育教師として、どう受け止めればいいんだろうか。
ここはあれだな。
同僚に聞いた方がいいだろう。
なら、あいつだな。
「アツイ、ちょっと訊きたいことがあるんだが、いいか?」
「お? 構わないですよ。珍しいですね、ミオ先生が訊きたいことなんて」
「ははは、あたしとて、万能じゃない。んで、訊きたいことってのなんだが……ガキどもの体力テストの結果でな。いや、去年だが」
「それが、何か?」
「いやな? あたし的にはハッキリ言って……全然ダメだ。ダメなんだが、こいつらにも個人差ってのがある。しかし、もう少しできるような気がしてならん。その場合、体育教師的には、どうすればいいのか、と思ってな」
「おお! ミオ先生もそう思いますか! いやはや。最近は、ゲームなどの室内できる娯楽が発展した影響で、子供が外で遊ぶことも少なくなってましてなぁ……。それに伴い、体力の低下や、肥満が目立つようになって……」
「あー、なるほど。たしかに、ゲームは面白いからな。ガキどもの気持ちはわかる」
だが、理解した。
そりゃたしかに、身体能力が低くなるわけだ。
家に籠って、ゲームばかりしていたら、そりゃ身体能力も低下するし、脂肪もつくわな。
向こうの奴らで、脂肪がつく奴らってのは、大抵貴族だけだ。あと、禿げも多い。
「なので、私どもでも気にしてまして。ですが……私たちはあくまでも導くだけです。結局は本人たちのやる気次第。私たちは、やる気が出るようにしないといけません」
「なるほど……そう言うことか。いい参考になった。ありがとな」
「ははは! こちらこそ。同じような思考をしていたので、嬉しかったですよ」
「ま、せっかくの教師生活だ。せめて、ガキどもが体で不自由しないようにしないとと思ってな。んじゃな」
しかしま、アツイはいい先生だな。
ちょいとばかし熱いところがあるが。
だが、導く側ねぇ。
あたしも、この仕事をする前は、イオに暗殺技術を教えていたからな。意味は分かる。
ただ、やる気を出させるってのは、なかなかに難しいんだよな……。
こっちのガキどもは、なんか俗的なところがあるし。
ふーむ……難しいな。
「ま、色々と考えてみるかね」
副担任であるあたしは、SHRには出ないことが多い。
教師によっては出ているみたいだが。
まあ、あたしは基本的に出ない。
なので、今日もいつも通りに、職員室でだら~っとしていると、不思議そうな顔をしたクルミが入ってきた。
時間を見るが、まだSHRが終わる時間じゃない。
「クルミ、どうした?」
「ちょうどよかった。ミオ、男女って学園へ行ったか?」
「ん? イオか? ああ、ちゃんと気配は感じ取ってるし、出てるはずだが……」
「そうか……」
「イオがどうかしたのか?」
「それが、まだ学園に来てないんだよ」
「何? ちょっと待て……」
急ぎ『気配感知』の範囲を拡大させ、あたしはイオの気配を探る。
だが……
「……ん? 変だな、あいつの気配がない……」
「え、マジ?」
「マジ。学園内にもないし、通学路にもない……あいつ、どこ行った?」
「……ちょっと、家に電話してみる」
「ああ」
そんじゃ、あたしは『感覚共鳴』で話しかけて……繋がらん。
おかしい。『感覚共鳴』は、同じ世界にいれば、どこにいても会話ができるし、なんだったら簡単に探すことができる。
だが、結果は不明。
つまり、この世界のどこにもいないことになる……。
おい、まさかと思うがあいつ……異世界に行ったんじゃないだろうな?
「……わかりました。ありがとうございました」
丁度、電話が終わったらしい。
「で、どうだった?」
「……一度、忘れ物を取りに行って、再び学園に向かったそうなんだが……」
「なるほど。朝までは普通にいたわけか」
つまり、忘れ物を取りに言った後に、行方不明になったってことだな。
そもそも、あいつの身体能力で遅刻なんざあり得んし、迷子なんてもっとない。
……やっぱり、異世界へ行った可能性がある。
しかし、まだ異世界へ行ったとも限らん。
他の可能性があるかも……と思ったところで、不意に電話が鳴った。
「はい、もしもし。叡董学園です。……はい。はい。……銀髪の学園生らしき人が、突然消えた、と。本当ですか? ……わかりました。ちょうど、情報が欲しかったところなので、助かります。……失礼します」
「イオの情報か?」
「そうみたいなんだが……なんか、突然消えた、とか何とか。にわかには信じがたいんだが……」
「いや、それは多分本当だろうな。あいつだし」
「……そうだな。男女だしな。とりあえずこの件は、椎崎たちにも伝えてくる。ついでに学園長にも伝えて来るんで、ミオは一応警察の方に連絡しておいてくれ」
「ああ、了解だ」
「頼んだぞ」
そう言って、クルミは職員室を出ていった。
ふむ……消えた、ね。
やはり、異世界に行った可能性が高い。
まあ、普通の異世界なら、明日辺りに帰るだろう。七日以内ならな。
それに、あいつは基本七日以上はいないんで、大丈夫なはず。
これでもし、明日帰ってこなかったら……ちょっと厄介だ。その場合は、エイコの手伝いをする必要があるかもしれんな。
「……まあいい。とりあえず、電話するか」
正直、警察に電話するのって面倒なんだよな、とか思いながら、あたしは受話器を取った。
まあ、結論から言おう。次の日、イオは帰ってこなかった。
これで確定したのは、あいつはやはり、異世界に行ったということだ。
長居しているだけなのか、それとも別の世界に行っているのか……そのどちらかだ。
しかし、あいつは帰ってくる場合、時間のずれが生じるはずだ。そこでわかるだろう。
ま、とりあえずはエイコの所だな。
あたしは学校をすっぽかしているエイコの所に転移した。
「エイコ、あたしだ」
「あ、ミオ。ちょうどよかった。お願いがあるんだけど……いいかしら?」
「どうせ、イオのことだろ? もちろん、そのために来たぞ」
「さすがね。……イオ君、やっぱり帰ってない?」
「ああ。全然。朝になっても帰ってないぞ。おかげで、メルが大泣きだった。あいつ、イオ大好きだからよ」
「……そうね。一刻も早く、依桜君を探さないと」
エイコの声音と表情は、真剣そのものだ。
やはり、生徒は大事に思うんだな、こいつは。
「で? 異世界の方にはいたか?」
「……それが、依桜君らしき反応がないのよ。どうも、普段の世界にはいなくて。いえ、そもそもそれは、依桜君が転移したとわかった時点で、違う世界にいるとわかっていたわ」
「ん? どういうことだ?」
「それがね? どうも、四月一日から、日本各地で空間歪曲が数多く確認されているの」
「普通じゃないのか?」
「ええ。しかも、多発している空間歪曲は、今までにないパターンでね……。どこに繋がっているかわかってなくて。で、今回依桜君はそれに巻き込まれちゃったの」
「……なるほど」
つまり、マジであいつは魔の世界じゃないところに行っちまった、ってわけだな。
めんどくせぇ……。
「てことは、今はイオがどこに行ったか探っているところ、ってわけだな」
「ええ。でも、大体の目星はついていてね。今は観測装置を創ってるわ」
「さすが、仕事が早いな、エイコは」
「さすがに今回ばかりは、ね? 依桜君が行方不明である以上、急がなきゃまずい。しかも、一日で帰ってこなかったことを考えると……尚更」
「ああ、そうだな。……そういやエイコ。一つ訊きたい。あいつが一日でいつも帰ってくることに対して、何か変だと思ったことはないか?」
依桜の異世界行きに何度も付き合っているエイコだ。
少なくとも、一日で帰ってくることに対して、少なからず変だと思っているはずだ。
「……言われてみれば、そうね。あの娘、七日向こうで過ごした! とか言ってる割には、一日で帰ってきてたわ。でもあれって、普通のことじゃないの? ミオだって、一日で帰ってきてたし……」
「……言っとくがな。あたしは、向こうの世界では一日しか過ごしてないぞ?」
「え!?」
驚いた様子を見るに、こいつはあたしが向こうで七日過ごしたと思っていたようだ。
まあ、わからんでもないが。
「じゃ、じゃあ、今まで依桜君が一日で帰ってきてたのって……」
「変だな。普通に考えて」
「ま、マジですかー……」
「マジだ。言っただろ? あいつは色々と謎だって」
「……まあ、言ってたけど……でも、そっか。そうなってくると、不思議ね」
納得したような表情を浮かべた後、エイコは少し考えるそぶりを見せる。
「そうだな。何せ、一日で帰ってきて、またしばらく時間を空けた後に向こうに行くと、こっちと同じ時間が、向こうでも経過している。だから、向こうでは齟齬が起きない。だが、こっちでは時間のずれが生じている。これが謎でな」
「……たしかに」
「で、あたしはその謎について一度考えたことがある。その時出した仮説がこうだ。あいつは、向こうで七日過ごした場合、出発した日の次の日に帰還するようになっている。で、帰還した時点の時間軸には、魔の世界に到着した次の日のイオがいる、ということになる。まあ、言ってしまえば同じ時間軸に、それぞれの世界にイオがいることになるってわけだ」
「ふ、複雑ね」
「さらに言えば、あいつはどうも、七分の一の時間に帰還するらしい。中途半端に帰って来たあの時がいい例だ」
「あの時って言うと……十数時間程度で帰ってきた時の?」
「ああ。それだ」
あいつは向こうで、四日間ほどしか過ごしていないという。
で、帰って来た時間って言うのが、二十四時間を七分の四にした時間だ。
これで確定したのは、あいつは魔の世界に行き、帰ってくると、法の世界では七分の一の時間しか経過していないことになる。
まあ、大体向こうでの一日が、こっちでは約三時間二十分になるってわけだ。
あの時の時間と照らし合わせると、そこそこの計算のずれが出るが、大きく外れてはいない。だから、七分の一の時間であっているはずだ。
「でも、それがルールじゃないの?」
「それなら、あたしが今回の並行世界で帰ってくる時間も、おかしいだろ? なぜ、七分の一の時間じゃないんだ?」
「……たしかに」
「いや、単純に、あいつにだけ起こっている事象のかもしれんが……まあ、今回の件でそれがわかるだろう」
「そうね。そのために、急いで探さないと」
「ああ。……それで、もう一つ、疑問がある」
「あら、何かしら?」
「あいつの最初の三年間だよ」
「初めて異世界に行ったときに、依桜君が向こうで過ごした時間よね?」
「ああ。あいつ曰く、女神が時間を停止させている、とか何とか言っていたが……正直、それはないだろ。いくら神と言っても、世界の時間停止とか、普通に考えて無理だ。そもそも、大規模すぎる。そんなもんをどうやって、止めるって言うんだ?」
実際、あたしは世界を管理している神に会って、時間の概念を少しだけ聞いたことがある。
その時言われたのは、こうだ。
『世界の時間を止めるのは、いくら世界を管理している神でも無理。できて、時間移動くらい。というか、停止の権利とか、与えられてないからね。それを持っているのは、その世界を創造した、創造神くらい』
だ。
つまり、創造神でもない限り、不可能ってわけだ。
なのになぜ、あいつは帰還した後、こっちでは時間が経過していなかったのか。
そんな、神が言ったことを、エイコに話す。
「でも、神なのよね?」
「いくら神って言っても、できることとできないことがある。世界の時間停止なんて無理だ。今言ったように、創造神ならできるんだが……あいつはとっくに死んじまってるからな。無理だ。だから実際は、停止していたのではなく、出発した時間に戻しているんじゃないか、と思った。……最初は」
「最初は? ということは、今は違うの?」
「ああ。もう一つの仮説が生まれた。……まあ、それを話す前に、エイコに一つ訊く。なんで、あいつが向こうで三年間も過ごしたのに、帰還した瞬間の時間から、こっちとリンクしているんだ? 時間の進みが」
「…………あ。言われてみればたしかに……」
「だろ? だからつまり……あいつは、向こうで三年を過ごして、出発した時間に帰還したわけじゃなく、三年前の魔の世界に転移させられ、そして、三年後……転移した瞬間の時間に帰還した、となる」
正直、突拍子のない話だが、そうでもしなきゃ、向こうとこっちの時間の進みが同じ理由の説明がつかん。
もし、出発した時点の時間に帰っているのなら、向こうでは三年後まで依桜がいることになる。
なのに、そうはならなかった。
それどころか、帰還して以降の時間で、流れていたのだ。
そうなると、絶対におかしい。
「でも、その仮説だと……」
「ああ。ちょっと説明がつかない部分がある。それは……」
「なんで、出発した時間に、帰れたか、よね?」
「正解だ。もし、上手く出発した時間に帰れるのなら、イオが三年間で魔王を倒せると知っていなければ不可能でしかない。それも、倒せる日を把握した上で、だ。だが、そんな予想、普通は無理だな。なにせ、あいつは初期の時点ではかなり弱かったと聞いている。……ま、急激に成長したみたいだが。二年目はあたしが鍛えているんだ。普通に強いに決まっている。……いや、それはいい。だからまあ、本来ならそんなことは不可能なはずなんだがな。時間と空間を超えての召喚なんざ。そんなことができる奴がいるとすれば……まあ、創造神くらいだろうな」
「え、でもさっき、元いた世界の、それも出発した時間に戻せるって……」
「そりゃ、召喚の痕跡があるんだからできて当然だ。だが、そんな痕跡もないのに、なんで、あいつは過去の魔の世界に召喚されている?」
どうにも、そこが腑に落ちない。
いや、そもそも、この説が確定したわけじゃない。
だから、違う可能性もあるんだが……現状、これが一番辻褄がある。
まあ、それでも説明がつかない部分があるのも事実だが。
「……じゃあ、その説に、ミオがさっき言った七分の一の時間のあれの説明を混ぜると……依桜君が転移した瞬間の三年前の時間には、両方の世界に依桜君がいたということになるわよね? 中学一年生の依桜君と、高校一年生依桜君がそれぞれ」
「そうだな。だがまあ、そこは正直言って、あまり害はないように思える。別に、別の時間の自分と会っているわけじゃないしな」
「それもそうね。でも……それでも、依桜君の転移は謎、ね」
「ああ。というかだな。イオはたしか、エイコの実験に巻き込まれたのと、向こうのクソ野郎がした召喚が上手く嚙み合って、異世界へと転移した。っていうのが、実際の理由だよな?」
「ええ。依桜君本人が言うにはね」
ふむ。ならば、間違いないだろう。
「だが……そもそもの話、あいつが巻き込まれたのは、偶然じゃないんじゃないのか?」
「必然って言いたいの?」
「ああ」
「必然、ね……。でも」
「ん?」
「でも、依桜君が巻き込まれたのが必然だと言うのなら、私が転移装置を起動させたのも、必然って言えるんじゃないかしら?」
「ああ。原因の半分は、間違いなく、エイコの装置だろう」
だから多分、そこも必然。
いや、そもそもの話、召喚されること自体が、必然だったんだろう。
エイコの父親が研究を始めたことも。それを、エイコが引き受けたことも。全て。
もっと遡って言うのならば、あいつが生まれること自体が、必然だった、ということになる。
なんてことをエイコに話したら、
「……あぁぁぁぁぁ~~~~ダメ。頭がこんがらがってきた」
処理が追い付かなくなってきたのか、エイコは頭を掻きむしりながら、嫌そうに……やや楽しそうにそう言った。
「そうだな……あたしも正直、わけわからん。ったく、なんで今になって、謎をだしてくるのかね、あいつは」
「私も、まさか自分の学園の生徒が、こうも謎だらけになるとは思わなかったわ……」
ほんとにな。
……ふーむ。だとするならば、イオが散々諸悪の根源、とか言っていたエイコは、間違ったことをしていないことになるな。
昨日のエイコの推測は面白かった。
この世界は、正解を選んで進んでいる。
そう言った。
仮に、あいつが異世界に行っていない場合は、ブライズの世界のようになる。
だがそれは、エイコが研究を引き継いでいなかったから、と言うのが実際の原因とも言える。
ということは……何か一つが欠ければ、確実に崩壊に転ぶかもしれない世界、ということになる可能性がある。
だが、イオが異世界に行き、無事に帰還したことで、この世界は崩壊しなかったと言える。
……しかし、そうなるといくつか腑に落ちない部分がまた出てくる。
ブライズの世界は、ある日突然、自然災害が世界で多発したと言っていた。
問題は、なぜ、多発したかだ。
さらに言えば、世界の資源が枯渇しだしたことを各国の首脳が知り、それで戦争が始まる、ということになっていた。
時間的には……イオが高校一年生の時だな。
ならば、今のこの世界も、資源が枯渇しだしていても不思議じゃない。
そのはずなんだが……あたしが軽く鑑定しても、そんな気配はない。というか、まだ問題はないし、何だったら余裕がある。
じゃあなぜ、向こうの世界は枯渇しだした?
で、イオが死んだあとってのが、一番の論点だ。
あいつが死んだ直後に、自然災害が発生し、急速に資源が枯渇しだした時点で、絶対に偶然じゃない。あいつ自身に何かあるのでは? と、つい思ってしまう。
だが、本当にただの偶然かもしれん。
単純に、テロリストどもが襲撃したのを見て、神がたまたまブチギレて、離れただけ、という線もある。というか、そっちの方が現実的。だってあいつら、超きまぐれだし。
それに、イオは男の時でも男女両方からモッテモテだったしな。神がイオを気に入っていても不思議じゃない。というか、普通にあり得る。
はぁ……謎だらけだぞ、ほんと。愛弟子よ。
「でも、その謎は、依桜君が帰還すればちょっとは解明されそうだし、なんだったら、ゴールデンウイークまでに完成予定の『異世界転移装置二式』の試運転でハッキリするはずね」
「ま、それもそうだな。……さて、エイコ。あたしは表向き、イオの捜索をすることにする。じゃないと、色々と面倒そうだしな」
「ええ。わかったわ。あ、一応手伝いよろしくね」
「当然だ。あたしらが力を合わせれば、効率は何倍にもなるしな」
「ふふっ、嬉しいことを言うじゃないの」
「ま、それだけエイコを信頼してるってことさ。じゃ、あたしはそろそろ行くぞ」
「ええ。よろしくね」
「任せな。んじゃな」
そう言って、あたしはイオの家周辺に転移していった。
そして、この日の約一週間後――四月十九日に、イオは空から学園の校庭に隕石の如く落下してきて、無事に帰還した。
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