第301話 ミオのスキー教室 上

 冬休みが終わり、学園が再開。


 それと同時に、スキー教室なるものに行くらしい。


 あたしも教員な上に、イオたちのクラスの副担任なんで、あたしも同行することになっている。まあ、クルミもいるしな。


 イオたちと放課後買い出しに行ったりもした。


 その際に、イオのでかい胸がまだ成長していることを聞いた。


 あいつ、どこまで成長するんだ?

 むしろ、背じゃなくて、胸が成長するとか、マジで不憫なんだが。あいつ、前からずっと身長欲しがってたしな。


 まあ、男で、160に到達してないとか、マジできついもんな。精神的に。


 あたしは女だし、その辺りはどうでもいいんだが……こう見えて、170はあるからな。


 普段からイオに、


『師匠、どうしたら、そんな風に背が高くなるんですか……?』


 なんて、切実な感じで言われてたよ。


 でもさ、あいつってマジで女らしかったから、身長が高いのは似合わなかったんだよなぁ……。だって、エプロンが似合う男だぞ? 家事万能だったし。


 そんな姿だからよかったわけであって、背が高くなったらちょっとがっかりするわ。


 必要な物を買った後は、昼飯。


 今回はあたしが奢ってやった。


 イオがなんか馬鹿にするようなことを言ってきたのが、ちょいとイラッと来たが、まあ、黙らせてやった。


 まあ、どのみちそれなりの金があるしな。

 計画的には使っている。


 酒も買うが。



 準備が終われば、あとは当日を待つだけになり、あっさり当日になった。


 朝はイオと共に学園へ向かい、バスに乗って移動。


 なんでも、学園が所有する土地で行うらしい。


 向こうじゃ、あたしは結構な金持ちだが、エイコも異常だよな? これ。


 一体、どれだけの金を持っているんだか。


 バス内では、レクリエーションなるものをして盛り上がった。主に、イオが何かやってる時に。


 手品……に見せかけた『アイテムボックス』を用いて何かを出したり、イオが歌ったりな。あいつって、歌も上手いんだな。声綺麗だし。


 あいつの恵まれ度半端じゃなくね? いや、異世界に行って魔王討伐させられてる時点で、恵まれてるかどうかと訊かれれば……全然恵まれていないような気がするが。


 あいつが恵まれているのは、そういうのじゃなく、単純に人に、だろうな。


 見れば、あいつを慕う連中ってのは、どいつもこいつも、性格がいい奴らばかりだ。


 特に、ミカたちだな。あいつらは、イオとの付き合いが長く、女になって以降も態度を変えることなく接していると聞く。


 それに、両親も優しい。


 教師だって、クルミはマジでいい奴だ。

 あいつは、口調はやや粗いが、生徒想いのいい教師だ。


 その他にも、いい奴らは多い。クラスメートの奴らも、悪い感情を向けていない。それどころか、良い感情向けていた。まあ、恋愛感情を向けていた男どもは許さんが。


 商店街の奴らも、昔から通うイオを可愛がってると聞く。


 なんでも、色々なことをイオが手伝ってくれるんだとか。


 さすがだな、我が弟子。


 他は……まあ、エイコは色々とやらかしまくってはいるが、それでもしっかり生徒を想える奴だ。


 あたしの知る限り、イオに対し、悪い感情を向けている奴は皆無だ。


 そこはやはり、あいつの性格がそうさせているんだろう。


 あいつは、ちょっと優しさが異常だ。


 すげえよ。人を殺すことに特化した暗殺者に対する才能がとんでもなく高かったのに、決して殺人鬼のような存在にならず、それどころかどんな時でも人は殺さないよう動くんだ。あいつほど、芯が強い人間もそうはいないだろう。


 自責の念に苛まれているはずなのに、あいつはすごいな……。


 ただ、ちょっと押しに弱いところは、減点だがな。少しは抵抗するということを覚えてほしいものだ、あいつは。


 ……しかしまあ、嫌われないというのは、すごいことだ。


 いかに性格がよくても、誰かしらは嫌うと思うんだがね。


 そこはあれだろうな。イオ、すっげえ可愛いし。


 あの可愛さは反則だろ。いやマジで。


 あいつ、こっちの世界じゃ『白銀の女神』なんて呼ばれているが、実際女神にも引けを取らない容姿してるんだよなぁ。


 というか、下手な神より綺麗だぞ。あいつ。


 神に愛されてる、って奴かね?


 まあ、幸運値が7777って時点ですでに神に愛されている、とも言えよう。


 むしろ、その幸運値がなかったら、イオは生きて帰還することができなかったんじゃないだろうか。実際、重要なステータスみたいなもんだしな、あれ。


 高ければ高いほど、起こる確率が低い物を、引きやすくなるみたいなステータスだし。


 まあ、ある意味、不運に近いんだけどな。あいつの場合。


 今もバス内は、イオの一人ライブで大盛り上がり。


 あいつはちょっと恥ずかしそうにしているが、可愛い声で可愛い歌を歌ってる時点で、すげえと思う。


 もういっそ、職業を『暗殺者』から『アイドル』に変えた方がいいんじゃね?


 なんて、割と本気で思った。



 スキー教室とはなんだ、と思ったら、どうやら二本の細長い板に乗って、雪山を滑るスポーツだった。

 なんだ、『滑走』を能力もスキルもなしでやることを、スキーって言うのか。


 どうやら、スノーボードと呼ばれるものもあるみたいだが。


 イオたちの班は、スノボらしいな。


 ま、あたしは適当に参加するとしよう。



 旅館に到着後は、決められた部屋に荷物を置く。


 あたしら教師は、ガキどもがしっかり部屋へ行くのを見た後で、割り振られた部屋に移動する。

 と言っても、教員は人数が少ないんで、三人部屋だ。


 女性教員がそんなにいるわけじゃないしな。

 ちなみに、あたしはクルミとトウコの二人と同じ部屋だ。

 クルミはあいつらのクラスの担任で、トウコは社会の教員だ。主に、歴史を担当している。


 外見だけ見たら、あたしらは歳が近いということで、一緒になった。


 まあ、別段問題があるわけじゃないんで、いいがな。



 その後は、適当にスキーかスノボで雪山を滑る。


 インストラクターが付くみたいだが、まあ、イオに限って言えば、必要ないだろう。似たようなことはさせていたしな。


 この程度の雪山くらい、目を閉じてたって滑れるだろ。


 あたしなんて、余裕過ぎてちょっと遊んじまったよ。


 木を登ったり、途中滑っている奴らの頭上を飛んだり(安全に配慮している)、木に積もった雪で滑り、木から木へと飛び移っていたりな。


 この程度、朝飯前ってやつだ。


 それに、スキー教室で泊まる旅館ってのは、なかなかに料理が美味いと聞く。ならば、今のうちに動いて、腹を空かせて、万全の態勢で臨むのがいいというもの。


 まあ、その間に風呂らしいがな。


 露天風呂ねぇ……ふむ、楽しみだ。


 これで、酒も飲めれば、言うことなしなんだがな。

 あたしは、やろうと思えばアルコールを消すくらい、わけないしな。

 一応、エイコもいるみたいだし、ちょいと頼んでみるかね。



 とか思ってたら、エイコから連絡がきた。


 エイコからメールで、


『ちょっと今すぐ旅館に来て』


 と書かれていたんで、旅館へ戻る。


 どうせ、エイコの気配はもう記憶済みなんで、どこにいるかはまるわかりだ。


「呼んだか、エイコ」

「いらっしゃい、ミオ」

「んで? あたしに用ってのはなんだ?」

「いえね、とりあえず、ブライズのいる世界は一応見つけたわ」

「ほんとか?」

「ええ」

「仕事が早いな……三月までにどうにかする、とか言ってなかったか?」

「そうね。でも、あくまでも、見つけただけであって、今は転移装置の作成中よ。それを含めて、三月までって言ったの」

「なるほど、そういうことか」


 見つけるのわけない、ってことだな、エイコは。


 こいつもこいつで、異常な頭脳してないか?


 正直、時空間を司ってる神とか言われても、あたしは信じるぞ?


 まあ、こいつの種族は人間ってわかってるから、そんなことはあり得ないんだがな。


 ……固有技能はあったけど。


 その固有技能は、どうも頭脳に関わる何かだったんで、問題はなさそうだったけどな。というか、こっちの世界にもあるのな、やっぱ。


 持ってる奴は滅多にいないしな、あれ。

 イオは持ってるのは確実だと思うが。


「しかし、その世界はどうなってるんだ?」

「うーん、まだそこ専用の観測装置は創ってないから、まだ不明でね……。でも、これだけは言えるわ。少なくとも、人間が住めるような環境ではないわね」

「ほう、なぜそう言い切れる?」

「なんて言うのかしら……データを読み解いた限り、空間歪曲がかなり発生していてね。それが原因で環境は悪化。普通の人ならそこにいるだけで、四肢爆散。生きていられるのは、そこそこ強い人くらいでしょうね」

「なるほどな」


 これで、ブライズがどんな存在かが大体は確定したな。


 おそらく、神の手を離れた世界にいた生物……人間たちで間違いないだろう。


 まあ、だからと言って、本当にそうとは限らない。確定した、とは言うが、あくまでも、あたしの予想が確定したわけであって、現実がそうとは限らん。


 あとは、その世界へ行かなければならないな。


「で、作製状況はどうなってる?」

「そうね。基本的な転移理論は、依桜君のおかげでほぼ完成していると言っていいわ。それを用いて、観測装置を創り、座標、世界の位置、それらを探る。そして、人や物を転移するためのシステムを作って、それを組み込む装置を作成しなきゃいけない。今は、観測装置を創っているところよ。本当は、別の異世界の情報を入手できれば、もっと早かったんでしょうけど」

「仕方ないさ。通常、この世界から行ける世界は、イオが行った世界だけらしいしな」

「へぇ? ミオ、何かわかったの?」


 ま、エイコなら伝えても問題はないだろう。

 少なくとも、イオから異世界のあれこれは聞いているだろうしな。

 ステータスも含め、ある程度は伝えておこう。


「ああ。実はな――」


 あたしは軽く、例の本に書かれていた情報をエイコに伝えた。

 話し終えると、興味深そうな顔……というか、すっげえきらっきらした目をしていた。


「なるほどなるほど! 世界とは、そう言うものなのね! いやぁ、対の世界かぁ。神様がいるのは、ちょっと前にミオから聞いたけど、まさかまさか、一つの世界には必ず対となる世界があるなんてねぇ……! いいこと聞いたわ!」


 うっわ、テンションたけぇ。

 異世界のこととなると、途端に元気になる上に、かなりはしゃぐんだよな、こいつ。


「でも、そのミリエリア、という女神は気になるわね」

「そうか? あいつは、あたしの唯一の親友でな。生涯忘れることのない、いい神だったよ」

「へぇ、そうなの。ミオが言うってことは、よっぽどすごい神様だったのね」

「まあな。いつか、そいつの転生体を見つけるのが、今のあたしの目標でな」

「転生体かぁ。でも、死んだら死んだ世界にしか転生できないのよね?」

「まあな。だから多分、あいつは向こうの世界で、何かに転生して生きているはずさ」

「なるほどねぇ」


 問題は、何に転生したか、だが……。


 まあ、今はあいつとの生活が楽しいしな。


 そうだな……探すのは、あいつが逝ったらでいいだろう。最後まで、師匠としてあいつを見守るつもりだしな。あたしは。


「でも、この世界にも魔力ってあったのね。まあ、ミオや依桜君が普通に使っているから、あるのかな? とは思っていたけど」

「ああ。だが、こっちの世界は魔力があるってだけで、人間が魔力回路を生成するには至らない魔力量子化なくてな。魔法が使いたければ、妊娠してすぐ、向こうの世界で過ごさないといけないな。まあ、使えるのは子供だけだが」

「なるほど。しかしあれね、法の世界に魔の世界か。それぞれは、全く違うもので発展しているように見えて、根本的には同じなのかもね」

「ほう?」


 なかなかに面白いことを言うな。


「だって、魔の世界の人たちは、魔力というものを使って、魔法という形で自然現象を引き起こすでしょ? 逆に、法の世界の人たちは、科学というものを使って、疑似的に自然現象を発現させている。どういうものを使用して、自然現象を発現させるかの違いじゃない? 魔の世界は、魔力を使用した魔法を。法の世界は、魔法が使えないから、世界の法則、物理法則やらなんやらを用いて、科学を。ほら、実際にやっていることは違くても、最終的な結果そのものは同じ。まあ、一例を挙げるとすれば、焚火を起こす際に使用する方法ね。そっちは魔力を火に変化させて火種を作り、焚火を起こすけど、こっちでは摩擦や引火する液体や粉などを用いて火種を発生させる。ほら、同じ」

「なるほどな。面白い話だ」


 エイコの説明通りで、この世界と向こうの世界は成り立っているのかもな。


 向こうにも、燃える液体や粉はあるのかもしれないが、基本的にほとんどの奴は使わない。使うとすれば、魔力を火に変え、それで焚火をするか、火を発生させる魔道具を使用するかの二つだ。


 だが、それは魔力を使う必要がある。


 こっちは反対に、魔法が使えないから、自然界の法則を用いて焚火をしなければならない。


 どちらにも、長所に短所はあるな。


 火を起こすのは、確実に魔法が早いが、魔力切れになったら、即アウト。しかし、こっちの世界では、火を起こすのが遅くとも、魔力は必要なく、必要な道具さえあれば火は起こせる。


 ふむ。エイコに話して正解だったな。


「でも、あれねぇ。そんな話聞いちゃったら、依桜君が謎よねぇ」

「やっぱり、エイコも思うか?」

「ええ。私、魔法が使えた理由は、異世界に行ったからだと思っていたけど、それはあり得ないんでしょ?」

「ああ」

「じゃあ、なんで依桜君は魔力回路を持っていたの?」

「さあな。考えられるパターンは三つ。一つは、単純に向こうの人間が、こっちの世界で死に、転生した姿。二つ目は、生まれた場所が、魔力回路が生成されるほどの魔力で満ちていたか。そして三つ目は……まあ、現実的に考えたら、ちょいとあり得ないが、たまたま魔力回路生成に必要な魔力が少なくて済んだ場合。この中で一番可能性が高いのは……まあ、二つ目ってところだろう」

「あらどうして? 私としては、一つ目を推してるんだけど? 一応、向こうにも異世界転移に関わる魔法はあったんでしょ?」

「まあな。だが、あくまでもあれは、こっちの世界から人を召喚し、契約が完了したら送還させる、というものであって、自由に行き来できるわけじゃない」

「でも、こっちの世界に、向こうの人たちが来てるけど?」

「今でこそ、エイコの研究の影響で、向こうの人間がこっちに来ているが、昔はそんな話聞かなかったからな。いや、単純にあたしが知らないだけかもしれんが」


 だが、暗殺者たるもの、情報は必要だった。

 こまめに情報は仕入れていたあたしからすれば、まったく聞いたことはない。


「ふーん。まあ、ミオが言うなら、そうなのかもね。でも、依桜君は可愛いから何でもOKよね」

「……そうだな。一応、これもエイコに伝えておこう」


 どのみち、こいつなら信用できる。


 こっちの世界の言葉では、マッドサイエンティストと言うんだろうが、口止めすれば絶対に言わないだろうしな。


「あら、なにかしら? 依桜君に関わること?」

「ああ。まあ、端的に言おう。あいつ、人間じゃない可能性がある」

「…………………………え、マジ?」


 若干笑っていたエイコの表情が固まり、そのままそう聞き返してきた。


「マジ」

「それは、あれかしら? 美貌が最早人間じゃない! 的な?」

「いや、種族が」

「ほんとに? でも、どっからどう見ても、人間よ? たしかに、依桜君の性格は天使みたいで、美貌は女神のようだけど……」

「そこはあたしも否定せん。あいつ、クッソ可愛いし」

「あら、わかってるじゃない」

「まあな」


 だって、あたしの弟子だし。

 あいつと三年間も過ごしていたんだが。当然だ。


 …………ん? 三年?


 ちょっと待て。今何となーく思ったが、向こうに三年いて、こっちで一日……どころか、一瞬たりとも経過してないって、普通に考えて変じゃね? ちょい前に、神がその時間に転移させたと思っていたが……。


 いや待て。今はそんなことを考えている場合じゃない。


「じゃあ、正体はは?」

「わからん」

「わからんて……じゃあ、なんで人間じゃないかも、って言えるの?」

「あたしの『鑑定(極)』で、あいつを覗いたことがあるんだ。体育祭にな」


 今は、『鑑定(覇)』になったから、もしかした、ちょっと変わってるかもな。


「どうして、体育祭?」

「思い出してみてくれ。あいつが自陣を応援している時のこと。応援されたガキどもは、どうなってた?」

「えーっと……ああ、そう言えば、みんな普段以上の力を出してたわね。……え、あれって単純にフィクションで、ギャグ時空だったからじゃないの?」

「言っている意味がわからんが……絶対違う」


 なんだ、ギャグ時空って。


「あれは、何らかの能力によるものの可能性があってな。まあ仮名を『応援』にしておくとして、だ。似たような能力やスキルはあったんだが、あいつに教えた覚えがなくてな」

「へぇ」

「で、さすがに気になって、あいつのステータスを深いところまで見たんだが……種族が見れなくなっててなぁ」

「え、それほどプロテクトが強かったってこと?」

「多分」

「へぇ。で、予想は?」

「そうだな……正直、あたしも困惑したが、とりあえず、魔王が施した呪いのせいで若干変質した、と考えてはいる」

「とりあえず、って言うことは、別の線も考えてるの?」


 ……鋭いな。

 まあ、エイコだしな。こいつ、普通に頭いいし。


「あー、正直、世界ってのは不思議でなぁ。神はいるし、天使に悪魔も実在する。この世界にもいるかは知らんが、世界は不思議に満ちている。だからまあ、あいつがガチもんの天使だったとしても、不思議じゃない」

「どうして、天使?」

「いやな? あいつって、神が発する気……神気を微弱だが放っていたんだよ。さらに言えば、だな。お前、最近ゲームを創っただろ?」

「ええ。『CFO』ね。それが?」

「『女神の布』なんてアイテムがあったんだが」

「え? そんなアイテムがあったの? マジで?」

「なんだ。製作者なのに知らないのか?」

「いえ、あのゲームは基本AIで作成してるんだけど……そんなアイテム、リストにあったかしら?」


 いや、そこからかよ。

 てか、AIに任せきりなのか、イオたちがやっているゲームは。


「まあ、あたしだって、全部把握してないし、運営に携わっている人が知ってるかも。で、それがなに?」

「どうやら、懐かしくて、手に馴染むらしいぞ」

「ふーん? じゃあ、天使じゃなくて、女神じゃないの?」

「女神にしては、なんか微妙でな。だって、あたしの『鑑定(極)』は世界を管理する神のステータスすら見れるんだぞ? ないない」


 それに、封印状態とはいえ、記憶は残るみたいだしな、転生しても。


「ふーん、そっか。じゃあ、依桜君は天使か何かだと?」

「まあ、神気を放ってたと言っても、異世界転移した時に、今の管理者の神に会ったらしいんで、そいつが原因かもな」


 なんでもありだし、あの世界。


「そっかそっか」

「まあでも、死んだらその世界にしか生まれないという法則を加味したら、あいつは単なる突然変異体である可能性もある」

「なるほどねぇ。まさか、帰ってきた後が、一番謎を多くしちゃったわけだ、あの娘は」

「あたしもびっくりだ。魔法が使えるか、なーんか変だなー、くらいには思っていたんだがな」


 まさか、こんなことになるとは……。

 面白いから全然ありだが。


「まあ、こんなとこだな。あ、一応この話は、誰にも言うな。多分、あいつショック受けるかもしれんし」

「了解。依桜君、ああ見えて繊細だもんね。自分が、人間じゃないと知ったら、傷つきそう」

「だろ? そんじゃま、あたしはそろそろガキどものとこに戻るかね。ブライズの世界の件、頼んだぞ」

「ええ、なるべく急ピッチで進めるよう、頼んでおくわ」

「ああ。ありがとな」


 さて、戻ってあたしも楽しむかね。

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