第298話 ミオの息抜き

 気が付けば、十二月が終わろうとしていた。


 まあ、だから何だというわけなんだがな。


 年末年始は基本休みらしいんで、かなり楽だ。学園の仕事ないし。


 それに、個人としての仕事の方もかなり順調に進んでいる。


 ブライズの数はかなり減り、もう少しで全滅させられる。


 ……もっとも、それはあくまでも、現状的な解決であって、根本的な解決にはなっていないんだがな。


 なにせ、あいつらの発生源がどこかわからないからな。


 どこか、神の管理から外れた世界がそうなんじゃないか、とは思っているが、まだわからん。そもそも、そんな世界があるかどうかすら怪しいからな。


 もういっそのこと、親玉とか出てきてくんねぇかな? 出たら、ぶっ飛ばすんだが。


 そういや、十二月二十九日と、三十日はいないとか言ってたな。帰るのは、三十一日になるとか。

 なんだっけ? 冬〇ミ、だったか?


 この世界は、アニメやマンガ、ライトノベルと言った、娯楽物がかなり普及していたのが素晴らしかった。


 そりゃもう、あたしは色々見た。


 中でもあれだな。バトル系の作品はお気に入りだ。

 いい技が書いてあるしな。真似しやすい。


 しかし、異世界系が多いのがなかなかに面白かったな。

 たしか、こっちの世界では、異世界は空想上の物で、ファンタジーの産物だとか。


 妄想ってやつだな。


 あたしらの世界は……まあ、あれだ。異世界人召喚とかあったし、異世界の存在があることは明らかだったんで、そこまで驚くべきことじゃなかったんだが、まさか、その召喚者が住んでいた世界では、空想の物だとは驚きだ。


 ……ん? そういや、昔、あのクソ王国の、クソ国王どもが、異世界人を召喚したが、やはり、あれもこの世界の人間だったのか?


 なんか、見たことない鎧に、見たことない武器を使っていたから気になってたんだよなぁ。まあ、仲良くなったが。


 ……でもま、邪神討伐の時に、死んじまったんだけどな。


 どうにも、あたしの人生は、仲良くなった奴が死ぬ、なんてジンクスが存在しちまってる。


 ミリエリアは神だ。本来なら、寿命という概念がない以上、死なないようにも思えるんだが、あいつ、なぜかあたしを置いて死んじまったからなぁ……。


 あの時ほど、泣いたことはない。


 一番の親友は、あとにも先にも、あいつだけだったな。


 いつか、あいつの転生体を探したいものだ。



「あぁ~~~……マジで暇だぁ~~~」


 あたしは家のソファーで一人、ごろごろと過ごしていた。


 愛弟子であるイオは冬〇ミとやらに行っちまっていねえしよ、サクラコたちは何やら急用が入ったとかででかけちまったし……。


 くっ、何もすることがないぞ……。


 また、あの本でも読むか?


 あれ、面白いのはいいんだが、マジで考察する羽目になるからなぁ……。


 そういやあれだな、こっちの世界は、法の世界らしいが、まあ……そこはあれだな。物理法則とか、まあ、法則的な何かで色々と成り立ってるから、法の世界なんだろうが、なんであっちは魔の世界なんかね?


 字面がなんか嫌だぞ、魔の世界って。


 成り立ち、ねぇ?


 魔法普及しまくってたから、魔の世界なんかね、あれは。


 いやまあ、魔力がかなり満ちてるんだよなぁ、あの世界。

 だから、魔物、なんて奴らが生まれるわけでさ。


 被害しか出さねぇから、本当にウザい。


 殺しても殺しても、ポンポン沸いてくるからきりがないんだよなぁ、あれ。


 ……だが、あれだよなぁ。


 まさか、ステータスがバグだったとはなぁ。


 しかも、面白がって調整して、使えるようにしたとか、マジで神はクソだな。あいつら、どんだけ楽しいこと大好きなんだよ。いっつもいっつも、あいつらの娯楽に付き合わされてるこっちの身にもなってほしいもんだよ、ほんと。


 マシな神なんて、あたしはミリエリアくらいしか知らんぞ?


 あぁー、あいつに会いたいなぁ……死別して、軽く数百年近く経ってるが、マジで会いたいなぁ……。


 てか、そろそろ転生してるんじゃね? あいつ、神は何かに転生する、とか本に書いてたし、絶対どっかにいるって。


 やっぱあれか、向こうの世界にいるのか?


 そういや、ミリエリアってどんな容姿だったかなぁ……。


 性格やらなんやらは覚えてるんだが、どうにも思い出せない部分があるんだよなぁ、あいつ。


 一人称とか、髪色とか、目の色とか、目鼻立ちとか……ってか、ほぼ顔じゃねーか。


 なんだ、このあたしもあろうものが、大親友の顔を忘れているだと?


 あー、ちくしょー。マージで思い出せねぇ……何かこう、すげえ綺麗な髪色だったのは覚えてるんだよなぁ……金だったか? 銀だったか? それとも、プラチナだったか?


 あいつは、マジで綺麗だったからなぁ。


 背丈はちょっと小さめだったが、そこがよかったし。


 あいつ、小さいの気にしてなかったっけ? 身長。160くらいあった気がするんだがなぁ。いや、本当にそんなだったっけ? それ、小さいって気にするほど、小さいか? だめだ。マジで思い出せない。


 ……あー、くそう。思い出せなくてむしゃくしゃする。


 これはあれだ。ちょっと、体を動かしに行くか。


「おっし、そうと決まれば、早速行くか」



 暇になったあたしは、普段の気晴らしがてら、ラウンドツーに行くことにした。


 あそこは、いろんなスポーツがあるからな!


 気晴らしにはもってこいだ。

 どうせ、仕事で得た金はあるんだ、困らんだろう。


「さて……まずは、ボウリングからだな!」


 なんとなしに、ボウリングに行くことにした。いやあれ、メッチャ楽しいし。


 そんなわけで、ボウリングだ。

 一番重い球を選ぶ。


 ふむ……この程度の重さしかないのか。お手玉とか余裕だぞ、こんなんじゃ。

 まあいい。とりあえず、スタートだ。


 まずは肩慣らしだな。


 軽ーく、一球を……と!


 軽く投げたつもりの球は、結構な勢いで飛んでいき、ボウリングのピンをすべて吹っ飛ばした。というか……


「あ、やべ。粉々にしちまった」


 全部粉々になっちまった。


 これくらいなら行けるだろ、とか思って投げた球だったんだが……なんだ、脆いな。この程度も止められなかったか。チッ、こっちの世界の物は脆くていけないな。


『『『( ゚д゚)』』』


 ほれ見ろ、粉々になったピンを見て、周囲の客がポカーンとしちまってるじゃないか。もっと強く作ってほしいものだ。


 ……だが、さすがに壊したのはマジで申し訳ない。


 仕方ないので、軽く直しておくことにした。



 次にやるのは、まあ、ストラックアウトだ。野球ボールを九枚のパネルに当てるゲームだな。


 え? ボウリングのピンはどうしたってか? あれは、重さは同じで、ダイヤモンド以上の硬度を持ったピンに生まれ変わったよ。一応、凶器にすれば余裕で頭蓋を持って行ける代物だ。


 まあ、ありがたく思ってほしいものだな!


 ……とまあ、そんなことをは置いておくとしてだ。


 この程度の距離、余裕だな。


「ほれ、一球!」


 軽―くボールを投げる。今度は壊さないよう、ギリギリの力加減だ。


 すると、ドバンッ! とかいう音が鳴ったが……まあ、問題なし。


 そこそこの勢いがあったからか、ボールはあたしの所に跳ね返ってきて、それを掴むのではなく、逆に蹴り返して別のパネルへ。


 すると、パネルに当たったボールは再びあたしに戻ってきて、再び蹴る。

 これを繰り返した。

 ふっ、いい運動だ。



 ストラックアウトの次は、バッティングだ。


「ふむ。球は遅いな」


 正直、160キロとか、止まって見えるぞ? いや、あたしの場合、マジで雷とか止まって見えるし。


 それほどの動体視力を持つあたしだ。今更、こんなんでミスるわけがない。


 余裕だ。


 まあ、面白いんで、コントロール技術を身に付けるとしよう。


 バットなどいらん。

 脚で十分だ。


 蹴りは、いかに手のように動かせるかが肝だ。なにせ、足は腕の三倍の力があるが、腕とは違って細かく動かすのが難しい。


 ならばどうするか。んなもん決まってる。細かく動かせるように、修行すればいいだけだ。イオにはそうさせたしな。


 おかげで、あいつも蹴りは得意になっている。

 まあ、このあたしが教えているんだ、当然だな。


「さて、スタートだ」


 奥の人影らしきものを象った光が、投げるフォームを取り、同時にボールが射出。正直、遅い。遅すぎる。


 あたしだったら、最低でも十倍で投げるぞ?


 まあ、こっちの世界の人間にはそこまですることは不可能みたいだしな。別にいいんだが。


 横にまで来たボールをつま先で上手く蹴る。


 そして……バゴンッ! という音を立てて、ホームランの的にめり込んだ。


 しまった。やりすぎたか。


 てか、マジで脆すぎるんだが。何してるんだ、この店は。


 今の、全然力を入れてないぞ? なのに、めり込むとか……さては、ちゃんと仕事してないな?

 まあいい。

 今度は、そうだな……あのめり込んだ球を的にするか。


「よーし、来いよ!」


 この後、ボールが団子状にめり込んだ。



 次はローラースケート。


 正直、あたしには『滑走』というスキルがあるから、シューズなんて履かずとも、好きな場所で滑れる。なので、いらん。


 そんなあたしだが、今はと言えば……


「ふぅむ、障害物が欲しいものだな」


 壁を、走っていた。


 は? どういうことかわからない? 決まってるだろ。普通に、フィールドの壁を滑っているんだよ。能力もスキルも、何一つ使ってない、純粋な技術でな!


 イオでもできるぞ、こんなこと。


『な、なんだあの長身美女……』

『やべえ、壁を滑ってやがる!』

『てか、どうやってやってんだよあれ!』

『か、カッケェ!』


 ふっ、どうやらあたしのかっこよさがわかる奴がいるみたいだな。


 ……なんて言うが、こんなんでかっこいいと思うとは、やはり、レベルが低いようだな、身体能力の。


 この後、色々と技を披露したら、なぜか拍手喝采が起きた。



 次、射撃。

 まあ、簡単だよな。ちょっと撃って、最高得点叩きだしたくらいだ。

 特になし。



 次、ゲーム。


 個人的には、戦闘機のゲームが好きだったな。


 自機の動きに合わせて椅子が動くってのが、なかなかに面白かった。

 ちなみに、ノーダメージでクリアしてやったら、見ていたやつらにすげえ驚かれた。


 他には、ホラーゲームをやったな。あれ好きだったわ、ピラミッドのあれ。


 なんで、硬そうなピラミッド部分に銃弾を当てて倒せるのかわからん。明らかに、無理があるだろ、とか思ったものだ。


 あたしだったら、拳でピラミッドごと顔面を粉砕するところだ。


 あとは、あれだな。背筋力を測るゲーム。


 結果はもちろん……破壊だった。


 いや、まあ……ちょっと持ち上げるつもりだったんだ。ほら、物持って、ちょいと立とうかな、とか思って立ったら、意外と軽くてびっくり、みたいな?


 ……マジで申し訳ない。


 修理費を置いておいた。



 最後は、普通のゲーセンだ。


 まあ、やったのは主にクレーンゲームだがな。


 イオが可愛いもの好きということがわかったんで、あいつの土産に、何か獲って行こうかと。


 そんで、色々とやったら……ぬいぐるみが大量に獲れちまった。


 犬、猫、黄色い熊、なんか、ハハッ! とか言うネズミ、兎、アライグマ、フェニックス、なんか、やけに可愛い女がプリントされたクッション、その他もろもろ。


 いや、本当に獲ったわ。


 ああ、あとはヘッドホンとかも獲ったな。

 菓子も乱獲しまくったし。


 いやぁ、マジでいい収穫。


 菓子類は非常食にもなるしな! まあ、バランスはよくないんで、基本お勧めできないが、まあ、いいだろう。あたしが食べるだけだし。


 ぬいぐるみやらなんやらは、イオの部屋に置いておくとしよう。



 一日中遊んだら、なんかイライラが解消された。


 ぬいぐるみなどの戦利品を『アイテムボックス』に仕舞い、いざ帰ろうと思った矢先、


『〇Σ%#&β』


 ブライズがいたので、


「浄化」

『―――――ッッッ!』


 消し飛ばした。


 奴らに遠慮などいらん。どうせ、誰かに取り憑いて、ちょっと面倒になるだけだしな。


 これあれだな、日本にもそこそこいるんじゃね?

 ……そのうち探して、ぶっ飛ばすか。そうしよう。


 そんなわけで、あたしのだらだらーっとした一日は、うっすーいブライズ退治で幕を閉じた。

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