第290話 五月八日:妹”s学園へ
みんなで遊園地へ行った次の日は、みんなの服を買いに出かけた。
と言っても、行ったのはショッピングモールで、そこでは平穏に服を買って終了。
明日は学園へ登校する日。
ボクたちが普段通りの生活をしている間、みんなは以前のメルと同じく、追いつくための勉強が必要。
一応編入準備は出来ているらしいので、問題ないとか。
と言っても、勉強する場所はニアとクーナの二人と、リルとミリア、スイの三人で場所が分かれるみたいだけどね。
年齢が同じ同士でやるとか。
試しに、家に帰ってきて、ちょっとした一年生の勉強をやらせてみたら、すんなり解いたので、そう時間がかからずにできるかも。
まあ、言語理解のおかげで、国語はまったく問題ないんだけどね。勉強するとしたら、この時の○○の心情を答えてください、とか、この時の一文は、どこのことを指していますか、みたいな問題だけだと思っていいかな。
算数も特に問題なし。
試しに九九をやらせてみたら、すぐに覚えたので、みんな地頭がいいみたい。
というより、異世界の子ってみんな頭がいいのかな……?
ちょっと気になる。
メルの時は、二週間くらいで終わったから、みんなもそれくらいかな?
三年生に編入する三人は、もう少し短いかも。
でも、これでちょっと安心。
あとは、メルみたいに友達を作ってくれれば、もっと安心かな。
できれば、いろんな人と友達になってほしい。同性、異性関係なく。
それから、引っ越しは明後日になりました。
日曜日だね。
昨日下見に行って、気に入ったから契約して来たとのこと。
ローンではなく、一括購入したそうなので、ローンの心配はない! だって。
十六年以上も住んでいた家を離れるのは、なんだかちょっと寂しいけど、仕方ないね。家族が増えちゃったんだし。
ちなみに、師匠は、
『ほう、広くなるのか。あたしとしては、住めればどこでもいいがな』
だそうです。
師匠らしい……。
この日は、明日の最終確認をして、就寝となりました。
五月八日、登校日。
昨日も寝る場所は和室。
みんな、ボクと寝たい! とずっと言っててね……まあ、ボク自身も別に構わなかったから、一緒に寝てました。
みんな、ボクにくっついてくるんだけどね……。
いや、可愛いから全然いいけど。
「みんな~、ご飯よ~」
朝は母さんがボクたちを起こす。
というか、母さんが起こしてくれないと、ボクが起きれなかったり……。
みんな、ボクにくっついて寝ている上に、気持ちよさそうに寝ているものだから、起こすのがちょっと忍びなくて……。
心を鬼にして起こさないと! とは思ってるんだけど……難しい。
一応母さんが起こしてくれると、みんなゆっくりながら起きてくれる。
でも、ボクがちゃんと起こさないとなぁ……。
朝ご飯を食べたら、学園へ向かう。
ボクの周りを、みんなが楽しそうに話しながら歩いているのが、なんだか微笑ましい。
今まで一人っ子だったけど、メルという妹ができて、ニアたちが増えたから、なんだか今幸せな気がするよ……。
姉妹がいるって、すごくいいね。楽しい。
道中、大勢の生徒たちが歩く場所があるんだけど、そこに行くと、周囲からの視線がすごくなった。
なんか、かなり注目されているような……。
ま、まあ、人が増えたしね……。
みんな可愛いし、注目されるのもわかる気がする。
そんな調子で学園に到着。
「それじゃあえっと、みんなはメルに付いて行って? ボクは向こうの校舎だから」
「「「「「はーい!」」」」」
「メル、みんなをお願いね」
「うむ! 任せるのじゃ!」
うんうん。みんなを任せても大丈夫そうだね。
メルはよくボクに甘えてくるけど、なんだかんだで面倒見がいいのかも。今だって、お姉さんとして頑張ろうとしてるんだと思うしね。
まあ、ボクに妹ができたのって、三月なんだけどね……。
……まさか、この歳で妹ができるとは思わなかったよ。
あ、それは、父さんと母さんもかな。
「それじゃあみんな、頑張ってね」
最後にそう言って、ボクはみんなと別れた。
「おはよー」
なんだか、久しぶりな気がする学園。
あ、なんだか、じゃなくて、本当に久しぶりなんだよね。
だって、みんなよりも一週間ゴールデンウイークが長かったしね。異世界にいたし。
ふと、向こうにいる分だけ、ボクってみんなより歳を取るんじゃないかなと思うようになった。
……あー、でも今更だね。だってボク、一応十九歳だし。今年で二十歳だけど。
「おはよう、依桜」
「おはよう」
いつも通りに教室へ入ると、やっぱりいつも通りに未果と晶が先に来ていた。
「おっすー」
「おっはよー」
と、ここでいつもより早く、女委と態徒の二人が登校して来た。
何かあったのかな?
「ねえねえ依桜君、ちょっと訊きたいことがあるんだけど――」
「あ、そうだ、みんなこれ」
ちょうどみんな来たし、ちょうどいいと思って、アニメの台本をみんなに渡す。
「あら、ありがとう、依桜!」
「本当にサインが書かれてる……」
「うおっ、やっべぇ、マジで嬉しい!」
「ぃっしゃあぁぁぁぁぁぁぁっ! 人気声優のサイン入り台本だぁぁぁぁぁあぁぁっ!」
よかった、みんな喜んでくれた。
なんだかちょっと嬉しい。
……まあ、ある意味この台本の代償がボクの声優活動なわけだけど……。
う、上手くできるかな……。
「あ、女委。さっき、何か言いかけてなかった?」
「ん? あ、そう言えば何か言った気が……あ、そうだ。ねえねえ依桜君、急に素晴らしい写真が送られてきたんだけど、これなんだい?」
「え? ~~~っ!!」
女委が操作したスマホに映し出されていたのは、いつぞやのボクの寝顔……というかこれ異世界にいた時のボクの写真っ!
「あ、それ私も送られてきた。可愛すぎたから、永久保存したわ」
「俺の所にも来たな」
「あ、オレも。依桜でも涎垂らしながら寝るのな! めっちゃ可愛かったけど!」
み、みんなの所にも!?
ま、まさか!
〈ふっふっふー! そう! イオ様のすんばらしい寝顔写真を送ったのは、何を隠そうこの私! 完全無欠スーパーAI、アイちゃんでっす!〉
「や、やっぱりぃぃぃぃぃぃっ!」
案の定というか、やっぱりアイちゃんだった!
な、なにやってるの、人のスマホで勝手に!
「え、依桜、なに今の声。なんか、依桜の方から聞こえた気がするんだけど……」
「うん、たしかに依桜君の方から聞こえたね。可愛い女の子の声」
「いや、あの……」
〈イオ様、イオ様―。ここはいっそ、私の存在を見せちゃいましょうよー。というか今、イオ様のポケットしか見えないんですよ。早く出さないと、イオ様の今日の下着の色、行っちゃいますよー?〉
『――ッ!?』
「それはやめて!?」
〈じゃあ、出してくださいよー〉
「わ、わかったから……」
できれば出したくなかったんだけど、さ、さすがに下着の色を言われるのは恥ずかしすぎるので、みんなの前に、アイちゃんを出す。
「え、えっと、その……数日前からボクのスマホに住みだした――」
〈どうも! 世界一キュートなスーパーAI、アイちゃんです! どうぞ、お見知りおきを!〉
「「「「……え、AI?」」」」
『はい、AIですよ! あ、私、そこらのAIよりも優れてますぜ? まず、感情がありますんで、その辺のアドバーイス! も、可能です。あ、赤外線やら、電話番号やら、LINNの連絡先やらを通じて、誰かのスマホにお邪魔することも可能です!』
それ、やっちゃダメじゃない?
「……ね、ねえ依桜。これって……誰かが遠隔操作で喋ってるわけじゃ、ないのよね?」
「うん」
「……感情があると言っていたが、本当なのか?」
「……うん」
「……なんと言うか、微妙にイラッとくる気配があるんだが……マジ?」
「………マジです」
「これ、マジもんの感情があるAI? で、本当にAIが喋ってるの?」
「…………全部、本当です」
『えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇっっっ!?』
その日、朝から、クラス内に驚愕の叫びが響き渡りました。
ボクたちの会話を聞いていたクラスメートのみんなも、ボクたちのところに集まってくる。
〈いやはや、創造主の学園と聞いていましたが、思ったより普通なんですねぇ〉
「逆に、普通じゃない学園って何?」
〈んー、やっぱこう、悪魔がいたりとか、校庭の地面が開いて、巨大ロボが出てくるとか、実は、人外がいたりとか〉
「アニメじゃないんだから……いるわけないでしょ?」
((((いや、それを依桜(君)が言う……?))))
「にしても、これどこで手に入れたのよ」
「え、えーっと、ちょっともらってね……。そしたら、なんかボクのスマホに住みついちゃって……」
「AIすら懐かれる依桜……」
あ、あはははは……。
本当、なんでボクのスマホに住みついちゃったんだろうね……。
『ねえねえアイちゃん。アイちゃんって、依桜ちゃんが好きなの?』
〈そりゃぁもう! 大好きですよ! というか、こんなにパーフェクツ! な主人もいませんって〉
『『『たしかに!』』』
なんで納得したの?
ボク、別に完璧でも何でもないよ?
『なんか、可愛いAIがスマホにいるとか、すっげえ羨ましいな』
〈ふっふーん! 私は、完全無欠で、最高に可愛いスーパーなAIですからね! そう思うのも、仕方のないことなのです! 故に、自然の摂理!〉
「……なんか、地味にウザくね?」
「……ああ。自信満々な上に、ドヤ顔もしてくるからな……その気持ち少しわかる」
「依桜も、また変なのに好かれたわね」
「そ、そうだね……」
創った人たちが、学園長先生の研究所の人たちだから、変なんだけどね……。
「ねえねえ、アイちゃん。この、素晴らしい依桜君の寝顔写真以外に、何かいい写真はないかい?」
〈もちのろんですよ! ちょうど、イオ様の生着替え写真がありますよ〉
「ほう!」
『『『――ッ!? ご、ごくり……』』』
「な、ななななななな何を言ってるの!? ない! ないから、そんな写真っ!」
〈おー、慌ててる慌ててるー。知ってます? みなさん。人って、こんなに慌てている時ほど、何かを誤魔化そうとしてるんですよ?〉
「あ、アイちゃんは変なことを言わないでぇぇぇぇぇ!」
な、なんだか色々とおかしいよ、アイちゃん!
あと、男子のみんなは生つばを飲み込まないでよ!
「アイちゃん、あとでその写真送って!」
〈おっけい!〉
「おっけいじゃありませんっ! 絶対にダメだからね!」
〈えー?〉
「えーじゃないの!」
「……依桜が珍しく翻弄されてるな」
「ええ。アイちゃん、恐るべしね」
そんな、朝の騒動も戸隠先生が来たことで何とか落ち着き、お昼。
今日は、みんなに異世界のお土産でもと思って、屋上でみんなとお昼を食べようということになったんだけど……
「ねーさま!」
「イオお姉ちゃん!」
「イオ、おねえちゃん……!」
「イオねぇ!」
「イオお姉さま!」
「……イオおねーちゃん!」
みんなが、ボクの教室にやってきました。
そして、
『『『――ッ!?』』』
クラスが、固まりました。
「ど、どうしたのみんな? お弁当は持たせてたはずだけど……」
「ねーさまと一緒に食べようと思ってきたのじゃ!」
「ダメ、ですか?」
「もちろんいいよ」
即答。
断る理由なんてないです。
可愛い妹のお願いは、答えてあげるのがお姉ちゃんの使命……!
「い、依桜? その娘たちは……誰?」
「あ、え、えーっと、みんなに紹介するね。メルは知ってるから省略するけど……焦げ茶色のショートボブの女の子はニアで、その隣の、長い黒髪の女の子はリル。その隣にいる明るい茶髪のツインテールの女の子はミリア。金髪の女の子はクーナで、水色髪の女の子がスイだよ。この娘たちは、えっと……ぼ、ボクの妹……です」
そう紹介した瞬間、クラスがさらに固まった。
そして、数瞬の後、
『うえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!?』
朝と同じく、そんな驚愕の叫びがクラスに響き渡りました。
……だよね。
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