第281話 五月五日:異世界旅行5

 屋敷に到着。


 警備が甘いですね。


 正直、暗殺者を入れないようにするのが、警備の真骨頂だと思うんですね、ボク。まあ、師匠の受け売りなんだけど……。


 いきなり中に入るのはまずいので、屋根から中を覗く。

 中には、使用人の人たちがいたんだけど……


『あれ、どうみても奴隷ですよね?』

「うん……。多分、町中にいるのと同じ、違法奴隷かな」


 だって、腕輪着いてるし。


 この世界では、奴隷に着けるものとして、『誓約の腕輪』が着けられる。


 首輪じゃないだけましなのかもしれないけど、それでも結構えげつないものになってます。


 主人に逆らうと、即アウト。


 腕輪に内蔵された猛毒魔法によって、体内に魔法を放ち、一瞬で死に至る、なんていう最悪の腕輪だからね。


 これが、犯罪奴隷だったらいいんだけど、何の罪もない、普通の人が着けられたら、本当に最悪だし、見ているのも嫌になる。


 それに、『気配感知』で屋敷内部を確認しているけど、ほとんどが違法奴隷みたい。犯罪奴隷もいるにはいるけど、ほとんどは見張りとか兵のような扱いだね。


 でも、違法奴隷は違う。


 どうにも、虐げられている部屋……というか、明らかに拷問をしていそうな部屋がある。感じる気配が、あまりいい方じゃない。


 急がないと、本当に危ない。


『イオ様、腕輪はどうやって?』

「あれって、ちょっと厄介でね。特殊な魔法具がないとないと外せないんだよ」

『じゃあ、イオ様は持っているので?』

「さすがに、ボクでも持ってないよ。使ったことはあるけど……」

『それ、生成できないんですか?』

「……ど、どうだろう? 魔法具系のアイテムは創ったことないけど……」

『まあまあ、物は試し。イオ様って、帰ってきたあとが一番チートになってますし、絶対できますって!』

「さ、さすがにないと思うけど……まあ、一応……」


 以前使用した魔法具を想像しながら、『アイテムボックス』で生成……すると、何やら手に何かの質感が……って、


「で、できちゃったー……」


 普通に、できちゃいました。


 いや、あの……これはちょっと……。


 ボクって、どちらかと言えば、チート系じゃなくて、努力系の方だと思うんだけど……どうして、魔道具なんて創れちゃってるの? こういうのは、『魔道具士』の職業の人じゃないと創れないよね? ボク、暗殺者だよ? 絶対に、関係ないし、そもそも生成は不可能だよ?


 いよいよもって、『アイテムボックス』が謎になってきた……。


 本当、どういう能力なんだろう、ボクの『アイテムボックス』って。


『イオ様、完成したのなら、とりあえず、行きましょうよ。ここにいる間にも、もっとひどい仕打ちを受けてしまうかもしれませんよ?』

「あ、そうだね。それじゃあ……」


 今のボクは、『気配遮断』と『消音』を使用している状態。さらに、《ハイディング》も併用しているので、ほぼほぼバレません。


 その状態で、中へ入る。


 屋敷の中は、清潔ではあるものの、嫌な雰囲気が漂っていた。


 なんと言うか……悪意に満ちているというか、そんな感じの。


 入り口付近には、暗い表情のメイドさんがいた。


『――っ!?』


 後ろから忍び寄り、口元を押さえて物陰へ。


「しっ……静かにしてください。大丈夫です、あなたに危害を加えるつもりはないですよ」

『……あ、あなたは……?』

「え、えっと……と、通りすがりの普通の女の子、です」

『ど、どうして、こんなところに、普通に女の子が……? どう見ても、その……暗殺者っぽいんですけど……』

「ぼ、ボクの素性に関しては訊かないでもらえると助かります」

『わ、わかりました……。それで、あの、私、お仕事に戻らないと……』

「……あなたは、犯罪奴隷ですか?」

『違いますっ。わ、私は、突然誘拐されて、ここに売り飛ばされたんです……』


 やっぱり……。


 もしかしなくても、バリガン伯爵は裏でかなり酷いことをしているみたいだね。


 売り飛ばされた、とは言うけど、盗賊か人攫いと繋がっていて、そっちの人たちに依頼、そしてお金を払って攫わせているのかも。


「住んでいた場所は?」

『……もうありません。戦争中、魔族の襲撃に乗じて、襲ってきた人攫いたちに……』

「……そうですか。一つ訊きます。ここから逃げたいですか?」

『それはもちろんです……。こんなところから逃げて、自由になりたい……。でも、この腕輪のせいで……』


 そう言って、悲しそうな表情を浮かべるメイドさん。

 本当に、最悪だよ……。


「……腕輪、外しましょうか?」

『え、で、できるん、ですか……?』

「はい。あなたさえよければ、逃げることにも手を貸します」

『お、お願いします! どうか……どうかっ……!』

「わかりました。その代わり、ボクがすることと、助け方には、その……ご内密に」

『……もちろんです。助けていただけるのなら、それくらいはさせてください』

「わかりました。それじゃあ……『解除』」


 生成した魔道具を使って、メイドさんに着けられた腕輪を外す。

 すると、ぽろぽろと涙をこぼしだす。


『ありがとうっ……ございますっ……!』

「いえ、たまたまここの領主さんに、用事があっただけなので。えっと、今から安全な場所に入れます。その中にいれば絶対安全です。何か欲しいものがあれば念じれば出すことができるので、お腹が空いたり、喉が乾いたら、念じてください」

『わ、わかりました……でも、そんなところがどこに――きゃっ!』


 メイドさんの足元に、『アイテムボックス』の入り口を生成しその中へ。


「下の方に家がありますので、そこで休んでください」

『こ、これは一体……』


 ボクの『アイテムボックス』に驚いているようだけど、時間がない。

 ボクが『アイテムボックス』の入り口を閉じようとした時、


『あ、あの! ほ、ほかの奴隷たちも助けてあげてください! みんな、もうボロボロで……地下に、子供たちや若い女性も大勢……!』

「……わかりました。急いで助けに行きます。あなたは、ここに入ってきた人たちへの説明をお願いします」

『……はい』

「お願いします」


 最後にそう頼んで、ボクは入り口を閉じた。


『いやはや、ほんっとにチートですねぇ、イオ様の『アイテムボックス』は。というか、あれって『アイテムボックス』なんですか?』

「……ボクにもわからないよ。でも、今回はこれが役に立ってくれるから、ありがたいけどね」

『まあ、イオ様が死ななければ、問題のない世界ですからね。それで、次はどこへ?』

「……現在地は三階。一番悪い感情を抱いているのは、この回にいるけど、それ以外のさっきのメイドさんのような人たちは、たしかに地下に集中しているね。この階と二階、一階にもいるけど、ほとんどは犯罪奴隷ばかり。違法奴隷は三人くらい、かな」


 人数的には、二十人ちょっと、かな。

 屋敷の規模から考えると、少ない、かも。


『なるほどー。イオ様のその感知能力どうなってんですか? 普通、気配だけじゃそこまでわからないと思うんですけど?』

「え? でも、師匠が、『お前ならできる!』って言っていたから、できると思ってたんだけど……」

『あー、そうなんですね』


 もしかして、普通はできなかったりする……?


 ……なんか、そんな気がしてきた。だって、師匠の当たり前とかって、普通の人からすれば全然当たり前じゃなくて、むしろ、非常識すぎるんだもん。


「と、とりあえず、急ごう」

『ですねー』


 ボクは、他の違法奴隷の人たちを助けるべく、動き始めた。



 三階、二階、一階の人たちを助けつつ、地下へ。


 腕輪を外してから、『アイテムボックス』の中に避難してもらう。


 中の説明は、最初のメイドさんに頼んであるので多分大丈夫だと思う。


 そんな事を思いつつ、地下へ行くと……


『オラ! もっと、いい声で鳴けよ!』

『ああぁぁっ! い、いたいっ……いたいよぉっ……!』

『ひゃはははは! ほんっと、女のガキはいい声で鳴くな!』


 そんな、不快感しか感じない、最悪の声と、女の子の悲鳴が聞こえてきた。


 …………ほんっとうに、最悪だよ。


 ボクは、『身体強化』をかけ、高速で声がした方へ向かう。


「見つけたっ……!」


 移動していくと、その先に一つの木でできた扉があった。

 扉の中に入ると……


『いやぁ、いいストレス発散だよなぁ? どうせ、テメェみたいなガキなんざ、誰も助けに来やしねーし、俺達の役に立てるんだから、幸せだよな!』

『っあああぁっ! もうっ、やめてぇっ……』


 一人の女の子を鞭で叩く、男の姿が。

 その男の姿を見て、ボクの怒りは最高潮に達した。


 次の瞬間、


「殺しますよ?」

『へ? ぶげっ!?』


 ボクは思いっきり肉薄し、男の顔を勢いよく蹴った。


 男の顔から、何かが砕ける音が聞こえ、同時に歯も折れた。というより、折った。


 男は、今の一撃で壁に勢いよく衝突し、気絶した。


『な、なに、が……?』


 突然すぎる出来事に、女の子がガタガタと震える。

 ボクは『気配遮断』や《ハイディング》を解くと、女の子の所へ。


『お、お姉ちゃん、誰……?』

「ボクは……えっと、通りすがりの暗殺者だよ」

『あ、暗殺者……? も、もしかして、わ、わたしを、こ、殺す、んですか……?』

「そんなことはしないよ。ボクはちょっと、ここの領主さんに用があってね。まあ、それはついでに近くて、ここに違法奴隷の人たちが多くいると知ったから、今はその人たちを助けるのがメインだよ」

『じゃ、じゃあ、た、助けに……?』

「うん。ちょっと待って、すぐに傷を治してあげるから」


 『ヒール』を使って、女の子の傷を治療する。

 赤く腫れていた傷はすべて消える。


 女の子に傷跡は酷だもん。


「どう? 痛くない?」

『う、うん……』

「それじゃあ、拘束を解いて……腕輪も」


 拘束されていた女の子を開放し、そのまま腕輪も外す。


『わ、わぁ、腕輪が……』

「うん、これで自由だよ」

『お、お姉ちゃん……』

「とりあえず、今から安全な場所に入ってもらうけどいいかな?」

『う、うん』

「中には、他の人たちもいるから、色々と教えてもらって」

『あの、お姉ちゃんは……?』

「ボクは、他の人たちも助けないと」

『……うん。気を付けてね』

「もちろん、大丈夫だよ」


 軽く頭を撫でてあげてから、ボクは『アイテムボックス』の中に女の子を入れた。


 ……正直、ほとんど裸同然の格好だったから、ちょっと焦ったけど。

 まあ、中では欲しいものが出せるしね。洋服くらいなら、消費魔力はそうでもない。

 大丈夫。



 それから、地下を少し探索。


 すると、牢屋が並ぶエリアを見つけた。


 そこで『気配感知』を使用すると、このエリアには違法奴隷しかいないみたい。

 しかも、反応が小さいところを見ると、かなり衰弱してしまっている。


 ……急ごう。


 ボクは『武器生成魔法(小)』で鉄を軽く切れるほどの切れ味のナイフを生成。


 見張りの人たちがいないことを確認してから移動する。


 牢屋を見ていくと、やっぱりというかなんと言うか……子供や若い女性の人たちが十数人いた。


 一ヵ所の牢屋に集中させていたらしく、みんな体を寄せ合っている。


 『気配遮断』などの能力やスキルを解除すると、ボクは牢屋に近づく。


『――っ、だ、誰ですかっ?』

「怖がらないでください。あなたたちを助けに来ました」

『た、助けに……?』

「はい。ちょっと、鉄格子を切りますので、少し下がってください」


 そう言うと、牢屋の中にいる人たちが鉄格子から離れる。


「はぁっ!」


 素早くナイフを振ると、鉄格子がバラバラになった。


『す、すごい……』

『女神、様……?』

『自由になれるの……?』

「おいで、腕輪を外してあげるよ」


 しゃがみ込んで、笑顔でそう言うと、弱弱しくも子供たちや女性がボクの所へ歩いてきた。

 それから、順番に腕輪を外していく。

 そうすると、牢屋の中にいた人たちはみんな涙を流しだした。


『ありがとうございます……なんとお礼を言っていいか……』

「いえ。ですが、まだまだ危険なことに変わりません。説明する余裕もないので、今ここで、安全な場所に送ります。説明はそこにいる人たちに訊いてください」

『わ、わかりました』

「では、ゆっくり休んでください」


 そう言って、ボクはこの場にいる子供たちや女性たちを『アイテムボックス』の中へ避難させた。

 最後に『気配遮断』で屋敷内部を探る。

 もういないことを確認すると、ボクは立ち上がった。


『ずいぶん、上手いこと行きますねぇ。やっぱり、美少女だからですかね?』

「や、やめてよ。ボクは美少女じゃないよ」

『……………………そうですね。イオ様は美少女じゃないですねー』

「あの、今の間と最後の棒読みは何?」

『いえいえ、お気になさらずー』


 ……なんだか釈然としないというか……。

 アイちゃんは、色々とよくわからないことを言ってくる時があるから、ちょっと困る。


『まあ、ともかく、奴隷たちを助けたので、次はどうするんで?』

「この怒りを領主さんにぶつけに。道中、証拠も集めたしね」

『あー、そう言えばありましたねぇ。やっぱり、回収してたんですね』

「もちろん。というより、アイちゃんも見てたよね?」

『そりゃあねぇ』

「なら、やっぱりもなにもないと思うんだけど……」

『気にしない気にしない。それよりも、さっさとクソ領主をとっちめに行きましょうぜーイオ様!』

「そ、そうだね」


 それはアイちゃんの言う通りだ。

 さっさと済ませて、村長さんたちを安心させて上げないとね。



 違法奴隷を全員助けた後、ボクは三階の領主さんの部屋へ。


『ふひひひひ! あの村はなかなかにいい土地だなぁ。農作物は豊富に採れるし、王都からも近いから、金もたっぷりだ。いやぁ、戦争様様だ』


 ……なんというか、こんな人が貴族だと国が心配になるよ。

 とりあえず正面から入るのもあれなので、窓から侵入。


「しかも、貴族でいれば、一生遊んで暮らせるし、奴隷も手に入れ放題! まさに、俺のためにあるような生活だ!」

「――じゃあ、その生活は返上させましょう」

「いやいや、返上するわけには……って、だ、誰だ!?」

「初めまして、バリガン伯爵。ボクは……通りすがりの暗殺者です」

「あ、暗殺者だと……!? い、一体誰の差し金だ!?」

「いえいえ、差し金じゃなくて、単純に自分の意思で来ただけですよ。それに、殺すつもりなどありません」

「な、なら、何をしに来たというのだ!? ここが、バリガン伯爵の屋敷だと知ってのことか!?」

「もちろん。というより、さっき挨拶しましたよね? まあいいです。ボクの目的は、違法奴隷の解放です」


 さっき、バリガン伯爵の名前を言ったはずなのに……人の話を聞かないのかな、この人。


「ふんっ、そんなこと、するわけがないだろう! この屋敷……いや、街の者たちは、奴隷がいないとやってられないんだよ!」

「うーん、でも、違法奴隷を所持しているとバレたら、貴族位の剥奪どころか、酷すぎれば死罪ですよ?」

「そんなもの、バレなければどうということもない!」

「いえいえ、ボクがこれから、王様の所に証拠の品を持って行きますので、バレないことはないですよ」

「しょ、証拠だと!?」

「はい。えーっと……あ、ありましたありました」


 ボクは『アイテムボックス』の中から、持ち出した証拠を取り出していく。


 賄賂が絡んでいるであろう、支援に関する契約書に、基本所持が禁止されている『誓約の腕輪』、それから裏帳簿。あとは、人攫いや盗賊への依頼書に契約書、それから計画書まで。色々とあった。


 これ、アイちゃんに頼んでいた録音・録画に関するあれこれは必要ないかもしれないね。あ、かもしれないというより、必要ないね。


 まあ、使わないに越したことはないよ。


 異世界人と知っているものの、変に向こうの道具を見せて、狙われたら本末転倒だもん。


「なっ、なぜそれを!? それは、厳重に保管してあったはずだ!」

「あの程度じゃ、厳重とは言いません」


 少なくとも、見張りが四人に、扉を開けるのに必要な鍵が二つ、それから、これらの証拠品を仕舞うのに、二重底だったり、隠し部屋だったりするのは甘いよね。


 盗んでくださいと言っているような物です。


 まあ、窓を付けていなかったのは、よかったですね。


「くっ……お、おい! 侵入者だ! 捕まえろ!」


 わ、わぁ……本当に、アイちゃんの言う通りの状況になったよ……。

 バリガン伯爵が叫ぶと、私兵の人たちが中に入ってボクに武器を突きつけてきた。


「こ、こいつを捕まえるんだ!」

『伯爵様、みたとこ、えれぇ上玉じゃねーか。捕まえた後はもちろん……』

「ああ、好きにして構わない! それに、金も出すさっさとやれ!」

『そういうことなら、容赦しねぇ。おい、抵抗しないなら、痛い思いをせずに済むぜ?』

「いえいえ、むしろ、それはボクのセリフです。ボクは怒っているんです。罪もない人たちを奴隷にして、痛めつけているあなたたちが」

『はんっ! しったこっちゃねえな! 俺達がいい思いさえしてりゃ、いいんだよ!』


 いきなり、刺突を放ってくる男。


 だけど……


「遅いです」

『なっ!』


 ボクはすぐに男の背後に回っていた。


「まあ、迅速に、と師匠に教えられていますので、失礼しますね」

『な、何を言って――かはっ』


 もはや、聞き飽きた呼気を発しながら、男が倒れた。

 まあ、気絶させただけなんですけど。


「な、何をした!?」

「いえいえ、ちょっと針でちくっとさせて、眠らせただけです。さ、他に寝たい方はいますか? 優先的に寝かせてあげますよ」

『な、なめやがってっ……!』


 ボクのセリフに怒りの形相になる兵士の人たち。

 そうして、一斉に襲い掛かってきて――



『『『かはっ……』』』


 瞬時に眠らせた。

 一般的な強さで言えば、そこそこなんだろうけど、王国騎士団の人たちの方が、全然強いよね。


「それで? 他に何か手はあるんですか?」

「ち、近づくな! い、いいか! これ以上俺に近づいてみろ……こ、この屋敷にいるすべての奴隷たちの命が……!」


 そう言いながら、一つの水晶をボクに見せつけながら、脅しをかけてくるバリガン伯爵。


「どうぞ」

「は?」

「いえ、だから、どうぞ、と言ったんですけど」

「き、貴様、何を言っているのだ? 命だぞ? 命を落とすんだぞ?」

「はい。でも、もう意味をなさないですし……」

「な、なん、だと……?」

「みんな、救出した後です。もう、意味はないですよ、そのアイテム」


 だって、みんなボクの『アイテムボックス』の中で休んでるし。

 ちょっと魔力が減ったことを考えると、食べ物とか服を出したのかな?

 まあ、全然減ってないから大丈夫だね。


「く、くそっ! お、俺は、こんなところで地位を失うわけには――!」

「知りません。せめて、寝ている間に色々と懺悔しててください。さようなら」


 バリガン伯爵に肉薄して、そのまま針で眠らせた。


「ふぅ……これで終了、と。さて、王様の所へ行かないと」


 あ、その前に、違法奴隷の人たちの救出が先だね。



 あの後、街中をめぐって、違法奴隷の人たちを開放、ボクの『アイテムボックス』の中に入ってもらった。

 途中、ボクに襲い掛かってきた人たちもいたけど、問題なく撃退。

 その足で、ボクは王様の所へ向かった。

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