第262話 ギルドメンバー増量

 ミウさんのギルド加入が決まり、ボクたちはギルドへと向かった。


「ここが、ユキちゃんたちのギルドホーム?」

「そうですよ」

「何と言うか、ずいぶんと大きなギルドホームだね」

「あ、あはは……ま、まあ、いろいろとあって、このギルドホームになりまして……」


 本来なら、もっと小さいギルドホームを買う予定だったんだけどね……。

 残念ながら、小さい規模のギルドホームはもうすでに購入済みになっていたので、あえなくこのギルドホームに、って言う感じだったから。


「ねーさま、ミウ、早く入るのじゃ」

「あ、そうだね。それじゃあ、いきましょうか。みんないますし」

「うん」


 メルに急かされるように、ボクたちは敷地内へと入っていく。



「みんな、ただいまー」

「ただいまなのじゃ!」

「あら、おかえりなさい、二人とも」

「おかえり~」

「おかえり」

「お、おかえり!」


 マップを見て、みんなのアイコンが庭園の方にあったので、そっちに行くと、みんなでお茶会のようなことをしていたみたい。

 むぅ、ちょっと楽しそう。


「ずいぶん早かったわね?」

「うん。いろいろあってね。えっと、あたらしいギルドメンバーをつれてきたよ」

「……ユキが勧誘したのかしら?」

「うん。しりあいのひとだったから」

「へぇ、ユキの知り合いねぇ? んで? どんな奴よ?」

「ミサとヤオイはしってるひとだよ。ミウさーん!」

「はーい。久しぶり、未果ちゃん、ヤオイさん」


 ボクが呼ぶと、ミウさんが物陰から姿を現し、笑顔で挨拶をした。

 特に、ミサとヤオイに向けてが強い。


「あれ? もしかして……美羽さん!?」

「そうだよー」

「おー、本当に久しぶりぃ! えっと、一応LINNで連絡は取ってたけど、最後にあったのは……」

「うん、年末の冬〇ミだね」

「ですよね。そういえば、イベントの司会進行をやってましたよね?」

「よく覚えてるね。そうだよー。私、一応このゲームのイメージキャラクターをやらせてもらってるからね」

「それじゃあ、今日は仕事なのかい?」

「ううん。今日はオフ。リアルでもお仕事はない、完全なね」

「なる!」


 と、久しぶりに会ったためか、三人で仲良く話している。


 うんうん。よかったよ。


 ボク自身は、バレンタインの日に会っているけど、ミサとヤオイに関しては、冬〇ミが最後だったからね。


 ミウさんは声優さんだから、忙しくてなかなか時間が合わなさそうだもん。


 そんな中、ショウとレンは状況がよくわからず、ちょっと困惑気味。


「あー、ミサにヤオイ。この人は、知り合いなのか?」


 このままでは状況が進展しないと思ったショウが、直接ミサとヤオイに尋ねた。


「ええ、そうよ。リアルでの知り合い……というか、友人ね」

「へぇ、リア友か! んで? ユキが連れて来たってことはよ、ユキも友達ってことか?」

「うん」

「なるほどな。しかし……一体いつ知り合ったんだ?」

「冬〇ミさ!」

「冬〇ミ? もしかして、俺とレンが留守番をしていた時のことか?」

「そうそう。ちなみに、ミウさんは……あ、これ、言っちゃってもいいのかな?」


 ヤオイがミウさんの現実でのお仕事について言いそうになったけど、すんでのところで止め、ミウさんに行っても大丈夫かどうか尋ねる。


「大丈夫だよ。まあ、一応自分で言った方がよさそうだし、自己紹介しようかな」


 こほんと小さく咳払いして、華やかな笑顔を浮かべる。


「初めまして。現実では、宮崎美羽という名義で、声優業をしています。よろしくね、ショウ君に、レン君!」


 と、アニメ声と呼ばれる声を使って、簡単に自己紹介をした。

 ミウさんが自己紹介した直後、ショウとレンの二人が、驚き固まった。


「な、なななななな、なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」


 そして、最初に言葉を発した……というより、驚きの声を上げたのは、レン。


「ま、マジで!?」

「「「マジ」」」


 マジで、と訊いてきたので、ボクとミサ、ヤオイの三人でマジと答えると、わなわなと震えだし、


「は、初めまして、レンっす! 職業は、重戦士です! よろしくおねがいしゃす!」


 謎の自己紹介をしだした。


 あれ、もしかして、緊張してるのかな?


 ……うん、ミウさんってかなりの売れっ子声優さんらしいし、緊張するのも無理はないのかも。


「ショウです。正直、本物の声優が目の前にいるのは驚きですが、よろしくお願いします」


 反対に、ショウの方はかなり落ち着いていた。


 おー、さすがショウ。


 こういう場面でも、冷静だね。

 ……ボクも、ショウみたいに冷静沈着な人間になりたいものです。


「うん、よろしくね。一応、今日からは同じギルドメンバーなんだから、敬語は不要だよ。それに私、あんまり敬語って好きじゃなくて」

「い、いいんすか?」

「もちろん。その方が、気楽だしね」


 ちょっと照れたような笑みを浮かべながら、ミウさんが言う。


 ボクは、年上の人相手だと敬語になっちゃうからまあ……仕方ないということで諦めてもらってる。

 ミサも大体同じ理由かな。


「そんじゃあ、普段通りで」

「……すごいな、お前」

「いやさ、相手がいいって言うんだから、別にいいだろ、って感じだ。あと、ネトゲは、年齢関係なく対等だぜ!」

「なかなかいいこと言うね。私も、オンラインゲームをやる時はそうだから、共感できるな」

「マジ? いやー、人気声優の宮崎美羽にそう言ってもらえると、マジ嬉しいぜ」

「ふふっ、人気と言っても、あくまでも若手では、って感じだけどね。すごい人はもっとすごいもん」


 ミウさんが謙遜してそう言うけど、以前ヤオイが言っていたけど、ミウさんは相当人気があるらしくて、デビュー作でいきなりメインヒロインに抜擢されて、そのままどんどん売れていったとのこと。


 一応、デビュー時の年齢は、十六歳らしいです。


 高校一年生でプロとしてデビューしてたと思うと、本当にすごいし、尊敬できる。


 ……まあ、ボクもプロと言えば、プロけどね。暗殺の、っていう冠言葉が付くけど。


「まあ、話はここまでにして、ユキ、そろそろ登録して来たら?」

「あ、それもそうだね。それじゃあ、いきましょうか、ミウさん」

「うん!」


 このままここで話していたら、さすがに時間が過ぎちゃうもんね。


 一応、ミウさんがオフとはいえ、これ以上話していると、お仕事に差し支えができちゃうもんね。それだけは、避けないと。



「はい、これでにゅうだんできましたよー」

「ありがとう、ユキちゃん!」

「わぷっ」


 入団ができて嬉しかったのか、ミウさんが思いっきり抱き着いてきた。

 う、や、柔らかくて、いい匂いがする……って!


「み、みみみ、ミウさん!?」

「んふふ~、やっぱりこの姿のユキちゃんは抱き心地がいいなぁ……ねえ、これから一緒にお布団で寝ない? もちろん、朝まで」

「あ、あさまで!?」

「そうそう。一応、明日からお仕事があるからね。リフレッシュ的な意味でも、ユキちゃんを抱いて寝たいなーって」

「そ、そそそそんなこと! は、はずかしいですよぉ……」

「あれ~? ユキちゃん、顔が真っ赤だよ?」


 つんつんと、頬を突いてくるミウさん。

 表情も、ちょっと意地悪な笑みを浮かべている。


「でも、ユキちゃんの体ってすっごく柔らかくて、すごくいい匂いがして落ち着くんだよね。それに、このもふもふがすごくいいし!」

「ぁんっ!」


 いきなり、耳を触られて、変な声がまたでてしまった。

 うぅ、こっちでも敏感なんだもん……学園長先生、なんでこういうところも作りこむの……?


「ほれほれ~、尻尾さわさわだぞー?」

「ふゃぁぁぁぁぁぁぁ~~~……」


 み、ミウさんのさわさわ、すごく気持ちいぃ……。

 なんだか、本当に狼になってしまったみたいに、つい喉を鳴らすような声が出てしまう。


「おー、気持ちよさそうだね。それじゃあ……これはどうかな?」

「ふわぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~……」


 今までは、優しく撫でていたんだけど、今度は緩急をつけて撫でてきた。。

 それによって、まったく違う気持ちよさが出てきて……すごく気持ちいぃ……。


「ユキちゃん小さいから、すっごく可愛いよ~」

「そ、そうでもない、とおもうんで――はわぁぁぁぁ~……」

「あ、尻尾の付け根が弱いみたいだね。それじゃあ、さわさわ~」

「くぅん~~……」

「うわ、犬みたいな声だ。可愛すぎるっ!」


 あぅぅ、ミウさんのなでなで気持ちよすぎて、なんだか頭がふわふわしてきたよぉ……。

 な、なんだか、このままいくと、堕落しちゃう気がする……。

 でも、このままでもいいかも……


「うん、堪能した」

「……ふぇ?」


 なんて思っていたら、ミウさんが満足気な表情を浮かべて離れた。

 それがなんだか寂しくなって、つい、声が出てしまった。


「あれ? ユキちゃん、もしかして……もっとしてほしかったのかな?」

「い、いいいえ! ち、ちがいます! べ、べつに、きもちよかったから、もっとしてほしいとおもったわけじゃ……あ」


 慌てて否定したら、いらないことまで口をついていた。

 自分の心情をほとんど言ってしまい、かぁ~っと顔が熱くなる。


「なるほどー。ユキちゃんは、私のさわさわが気持ちよかったんだね?」

「いや、あの、えと……はぃ」


 誤魔化しても無駄だと悟り、素直に認めた。

 だって、もうバレちゃっているようなものなんだもん……。

 そ、それに、ミウさんのさわさわが気持ちよかったのは事実だし……。


「そっかそっか。ねえ、ユキちゃん」

「な、なんですか……?」

「ユキちゃんが耳と尻尾が生えた状態になったら、またもふもふしていいかな?」

「え!?」

「ダメ、かな?」


 う、うぅ、なんでそんなに潤んだ瞳を向けてくるの……?


 こ、断りにくくなっちゃうよぉ……。


 ……で、でも、ちょっと怖い部分もあるんだよね。


 ボク、尻尾とか耳を撫でられたり、さわさわされたりすると、なんだか頭がふわふわしてくるし……。

 その状態からさらに進むとどうなるのかわからない、という恐怖心がある。


 それに、未知の感覚ほど怖いものは無いし……。


 か、かと言って、ミウさんの撫でスキルが高いのも事実。


 あれは、その……かなり気持ちがいいし……なんと言うか、すごくリラックスもできるし……。


 う、うぅ……ほ、本音を言えば……し、してもらいたい……。


 でも、なんだか怖いし……。


 でもでも、気持ちいいし……。


 …………………し、仕方ない、よね?


「い、いいです、ょ……?」

「本当!?」

「は、はぃ……」


 ボクの顔は今、湯気で手そうなくらいに真っ赤なんだろうなぁ、なんて他人事のように思うけど、実際すごく熱い……。

 きっと、茹で上がった蛸みたいになってる気がするよ……。


「わーい! ありがとう、ユキちゃん! 私、もっともっと、上手になるからね!」

「……お、おてやわらかに……」


 ……ボク、失敗したんじゃないかな?

 なんて、今更後悔するボクでした。



 その後、みんなでお茶会をして、この日のゲームは終了となりました。

 話の内容的には、声優業の話とかか多かったかな? ヤオイとレンが一番興味津々で聞いてたよ。


 ボクも楽しかったです。


 ギルドメンバーが増えるのもいいね。


 まあ、入団申請が来ない限りは、勧誘とかはしなくてもいいかな、って思ってるけど。

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