第259話 学園長からのお願い(押し付け)
今日はみんなと遊ぶことが目的だったため、なんだかんだでお店は休みにしました。
やろうかなとは思ったんだけど、今日はやめた方がいい、ってみんなに止められました。
理由は、
「今お店開いたら、入団希望者が殺到するわよ。それこそ、お店どころじゃなくなるわ」
って。
さ、さすがにそれはどうだろう?
ボクなんかがマスターをしているギルドなんかに、入りたがる人なんているのかな?
実際、ボクはそこまでリーダーシップとか、カリスマ性? とかはないし、あまり戦闘面に携わる方じゃないし……。
ギルドマスターって言うのはこう、みんなをまとめたり、常に前線で闘う人、っていうイメージがボクの中にはあるんだよね……。
だから、基本生産職のようなことをしているボクなんかのギルドに入る人はいないと思うし。
そもそも、ギルドの名前も何とも言えないよね。
だって、『ほのぼの日和』だよ?
自分でも、ネーミングセンスを疑うレベルだったもん。
まあ、○○騎士団、みたいな名前に比べたら全然マシだとは思うけど。
なんて言うことを言ったら、みんなが呆れてました。
酷くない……?
と、そんなこんなで,みんなと遊んだボクたちは、12時くらいにログアウトしました。
ログアウト後、すぐにメルが目を覚ます。
「ねーさま!」
「あ、おはよう、でいいのかな? メル」
「うむ! すごかったのじゃ! 夢の中で自由に動けたのじゃ!」
お、おー、すごくテンションが高い。
一応、夢の中で自由に動けるようにする、みたいなことを言ったけど、本当にそう思ってるからね、メル。
本当はちょっと違うけど、ボクも詳しいことはわからないから、説明できないので仕方ない。
「ふぁあぁぁ……んにゅぅ、ねむぃ……」
「こんな時間だからね。そろそろ寝よっか」
「うむぅ……」
ゲームをする時は、ベッドでやっていたので、コンタクトや腕輪、ヘッドセットを取ればすぐに寝られる。
メルが着けていた腕輪やらヘッドセットを外し、机の上に置く。
コンタクトは、自力で取ってもらった。
当たり前だね。
メルを先に寝かしてから、ボクも寝ようとしたところで、
『~~~♪』
「あれ? 電話?」
電話がかかってきた。
誰だろうと思いつつ、スマホを見ると『学園長先生』の文字が。
「なんだろう? ……もしもし」
『あ、もしもし、依桜君? 夜分遅くにごめんね』
「いえ、問題はないですけど……どうしたんですか?」
『ちょっと、CFOの方で連絡をね』
「CFO、ですか?」
『ええ。多分、称号が増えていたから気付いていると思うけど、もうすぐ魔族の国が実装されるわよ』
「え、ほんとですか?」
『ええ』
魔族の国……と言うことは、クナルラルがあのゲームに出てくるんだよね?
でもたしか、あそこは結構遠かった記憶が……
『それと、イベントも近いわね』
「それ、ボクに言っていいんですか? 一応、プレイヤーですよ? さすがに、こっちが有利になっちゃうんじゃ?」
『まあ、別に明日には告知されるから問題なしよ。依桜君には、色々と助けられてるし、これくらいどうってことないわ』
「そ、そうですか」
こっちは、助けているというより、巻き込まれてる、の方が正しい気がするんだけどね。
まあ、いつものことなんだけど……。
『と言っても、依桜君に連絡したのは別の理由があるんだけど』
「別の理由、ですか?」
『ええ。依桜君は今回、参加する側と言うより、運営寄りになりそうでね』
「……え?」
『今回のイベントはね、プレイヤー対抗のイベントってわけじゃなくてね。一回目のイベントで依桜君は『城の招待状』なんてアイテムをもらったでしょ?』
「そう言えば……」
たしか、特別報酬か何かでもらった気がする。
その時はあれの使い道がわからなくて、ストレージの中に放置してるけど。
『あれは、次のイベントで使う物でね。あれは多分察してると思うけど、お城に入るための物でね。一つにつき、最大六人まで入れるのよ』
「意外と多いんですね」
『ええ。で、このお城は今後も開放状態にするの。一応、定期的にクエストで手に入れられるようにする予定よ』
「なるほど」
そう言えば、メルはなくても入れる、みたいな効果を持った称号があったはず。
ボクと師匠の場合、そう言ったものがなくても入れそうな気さえするけどね。
「でも、どうしてボクが運営よりと言うことになるんですか?」
『ちゃんと説明するわ。今回のイベントは、まあ、言ってしまえば、魔族の国に行けるようにするための物でね。招待状を得て、お城に入るとイベントが発生するのよ』
「イベント、ですか?」
『内容は……まあ、言ってしまえば、あれよ。護衛イベントに近いかしら?』
「なる、ほど?」
『一応、私は異世界観測装置で少し見たけど、魔族の国と人間の国が国交を開いて、貿易を始めたそうじゃない?』
「らしいですね」
多分今は、ジルミスさんが頑張ってるんじゃないかな。
『それで、あの街から魔族の国まで物資を運ぶのが今回のイベントになるのよ』
「そうなんですね。でも、それがどうしてボクに関係があるんですか?」
『依桜君、向こうの国だと女王様でしょ?』
「ま、まあ……そう言うことにはなってます」
あれはもう、成り行きだとか、必要があったから、だけど。
『依桜君が女王様じゃなかったら、普通に参加してもらったんだけどね』
「じゃあ、どうして普通に参加できないんですか?」
『NPCのモデルとなる人がいないのよ』
「え? でも、ジルミスって言う人をモデルにすれば……」
『無理よ。観測はできても、向こうの人の名前とか、私たちには知る術がないからね。それに、依桜君が持ってる称号の内片方は、国の運営をできるようにするもの。だから、必然的にゲーム内でも、あの国の国主は依桜君ってことになるのよ』
「それってもしかして、システム的に……?」
『ええ。システムもそう認識しているわ。というか、書いてあったでしょ? 国の運営が可能になる、って』
「あ」
そう言えば、称号にそんなことが書かれていたっけ……。
国の運営か……。
「えっと、一応訊くんですけど、国の運営って……」
『そこは、見てのお楽しみということで』
「中途半端に言っておいて、そこは秘密なんですね」
結構次のイベントについて言われちゃったけど。
『まあ、さすがに言いすぎると問題だしね。まあ、それはそれとして、ほら、こう言うのって、アイテムを届ける際、相手国の王がいる場合があるでしょ?』
「その辺りはよく知らないですけど、多分」
現代に生きている限り、自分で調べようと思わなければ、国の運営の仕方とか、貿易の基本などに関する知識はないと思うよ。
『まあ、だから依桜君にはそこを手伝ってもらいたくてね』
「え」
『あ、安心して? 今回のこのイベント、プレイヤーの対抗戦ではないとは言ったけど、実は先着順なのよ』
「えっと、どういうことですか?」
『簡単な話、一つのパーティーにつき、一とカウントして、合計二十組が達成できるのよ。と言うか、これで参加者全員達成できるようにしたら、依桜君が何もできなくなるからね』
「とりあえず、ボクが何をすればいいのか教えていただけると助かるんですけど」
『あ、それもそうね。やってもらうことは、ただ一つ。女王様役をやってほしいの』
「え、えーっと」
どうしよう。いまいちわからない……。
女王様役って言うか、ボクすでに女王様なんですけど……いや、向こうの世界での話だけどね?
『まあ言ってしまえば、その日は一時的に運営アカウントにして、いわゆるゲームマスターに近い存在に依桜君のキャラを設定するから、その間、向こうでプレイヤーたちの対応をお願いしたいの』
「大体わかりましたけど、一体何を言えば? ボク、ごく普通の高校生だったので、そう言った言葉遣いとか全くできませんよ?」
『まあ、適当に敬語使っておけばいいわよ。まあ、大体のセリフはこっちで用意しておくわ。詳細については、向こうの世界で、ってことになるかしら』
大体、学園長先生の頼みの内容はわかったけど……
「……そもそも、プレイヤーにイベントの運営に関することを任せるって、なんかちょっとおかしくないですか?」
ボク、普通のプレイヤー……とは言い難いけど、なるべく目立たないように、料理屋さんと洋服屋さんとしてプレイしてるし……。
まあ、最初のイベントのせいで、ボクの姿は結構広まっちゃったらしいけど……。
『そ、それを言われると痛い……。いやだって、こう言うイベントってよくあるじゃない? 護衛イベントみたいな』
「ま、まあ、護衛イベントはよくありますけど……」
護衛イベント系は結構難しかったイメージがある。
敵を倒しつつ、味方を守らないといけないから。
『次のイベントはそう言うのにしよう! とか思いながらやってたら、こう言うのしか思い浮かばなくてねぇ。で、いざ国に王様役を立てようと思ったら、すでに所有権を持ったプレイヤーが二人もいたからね……』
「……それってもしかしなくても、ボクとメルですか?」
『そう。依桜君は単純に国の所有者。メルちゃんの方は、【魔王】という称号のせいで、色々とね。だからまあ、ある意味メルちゃんもこっち寄りになっちゃうのよねぇ……。メルちゃんの方は、基本依桜君にべったりだから、普通にこっち来てくれそうだけど』
「それ、ボクが引き受ける前提で言ってませんか?」
『だって、そうしないとイベントが破綻しちゃいそうだし……』
「……そうなるのがわかってるのなら、プレイヤーであるボクに頼まないでくださいよ」
そもそも、称号はAIが作成してくることを知ってるはずなのにね。
それなら、ボクが向こうでしていたことを含めて知ってそうなんだけど……。
『でも、運営側としてプレイできる、っていう貴重な経験ができるわよ?』
「それはそうかもしれませんけど、それって体よくボクに押し付けようとしてるだけじゃないですか?」
『そ、そう言われると……あ、あははははは……』
「……まったくもう……。わかりました。引き受けますよ」
『ほんと!?』
「はい。でも、今後はもっと早く言ってください。ボクだって、お店をやったりしてるんですから」
今日は、みんなに止められたからできなかったけど。
うぅ、できれば営業したかったなぁ。
『もちろん。イベントは、今週の土曜日と日曜日の二日間を予定しているわ』
「えっと、それは、土曜日と日曜日でやることが違うっていう感じですか?」
『そうね。土曜日はお城に入るための『招待状』を手に入れて、クエストを発生させるため。日曜日は、そのクエストをこなすための日。一応、長丁場になるはずよ、まあ、早く出発したところで、確実に到達できるわけじゃないけどね』
「それはどういう……」
『というわけで、依桜君には日曜日そっちに行ってもらいたいのよ。あ、もちろん転移するためのアイテムはこっちで支給するし、特別報酬も用意しておくから、期待しててね。あれよ。ちょっと話すだけで、ゲーム内で何かがもらえるバイトだと思えばいいわ』
「そんな簡単に……」
『それじゃあ、細かいことは依桜君のPCにメールを送っておくから見ておいて。それじゃあ、おやすみなさい』
「あ、はい。おやすみなさい」
通話終了。
「はぁ……。普通に、プレイヤーとして遊びたいんだけど」
いつも、こういう風に何かに巻き込まれたり、押し付けられたりするよ……。主に全部、学園長先生だけどね、原因。
学園長先生だったら、
『依桜君! ちょっと私の研究やらなんやらでパーティーを海外でやるらしいから、一緒に来て!』
とかなんとか言って来そうだよね。
それで、テロリストにまた襲撃されたりとか。
……テロリスト襲撃は前例があるだけに、何とも言えない。
一応、あの時の人たちは、全員警察に捕まったわけだしね。
今も平和に、なにも問題は起きてないから、大丈夫だと思うけど。
まあ、もし危害を加えてきて、ボクの大切な人たちを傷つけたら、問答無用で潰すけど。
「ふぁあぁぁ……ボクも寝よう」
色々と考えていると、睡魔が来たので、ボクも布団に入り、その日は就寝となりました。
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