第250話 並行世界の学園通い終了

 何とか無事、帰還の目途が立ったボクたちは、みんなの所へ戻る。


 ちなみに、絶対にあと二日で完成させると言っていたので、一応、帰還は月曜日ということになりました。


 日曜日でもいいのでは? と言ったのだけど、


『力尽きて死ぬから無理』


 だそうです。


 ちなみに、その発言を聞いて依桜が、


『元々お前の不始末なのに……自分の都合を優先してんじゃねぇ!』


 って怒ってました。


 まあ、うん……確かにその通り。

 元々、今回の一件の原因は、こっちの世界の学園長先生なわけだからね……。

 でも、一応反省してるみたいだから、月曜日でいいと言ったんだけどね。


 一応、朝帰還することになりました。


 というわけで、帰還することをみんなに伝える。


「えっと、ボク、来週の月曜日に帰ることになったよ」

「と、唐突ね」

「なら、さっき依桜と一緒に出てたのは」

「うん。帰る方法が見つかったから、それの打ち合わせとかをちょっと」

「打ち合わせねぇ。んで? その方法を見つけた相手って誰よ?」

「え!? あ、え、えっと、あの……ぼ、ボクの世界にいる、し、師匠、だよ?」

「なぜに疑問形?」

「ま、まあ、帰れるんだし、問題はないだろう」

「……それもそうね」


 なんとか誤魔化せた。


 みんなには学園長先生が異世界の研究をしているという情報は伝えていない。


 だって、ボクが異世界に行く原因を作ったのが自分が通ってる学園の長だとは予想もできないし、何があるかわからないし……。


 それに、異世界の研究については、他言しないで、って言われてるから。


 その割には、体育祭で、佐々木君を異世界送りにしてたけど。


「でも、そっかぁ。桜ちゃんと一緒にいられるのは、今日を入れてあと三日だけなんだねぇ」

「そう言うが、桜にも、向こうの俺たちがいるんだ。仕方ないさ」

「てか、桜がいなくなったことで、かなりえらいことになってそうだけどな」

「あー、なんとなくわかるわ。依桜がいなくなったら、絶対落ち込むわよね、私たち」

「僕たちだぞ? 心配してくれるのは嬉しいけど、そこまで心配はいらないと思うんだが……」

「う、うん。師匠に仕込まれてるからね。ボクたちが勝てないとすれば……まあ、師匠くらいだと思うよ」


 だから、あんまり心配はいらない――


「それでも、私たちからすれば心配よ。今は、身体能力の高さも、魔法も、いろんなことを知っているけど、もし知らなかったら、私たちは相当心配汁に決まってるでしょ? それとも何? 私たちは心配するなって?」

「い、いや、そこまでは言ってないが……」

「というか、普通に考えて行方不明になってるのに、心配しない幼馴染や友人がどこにいるのよ!」

「「す、すみません……」」


 未果のお説教に、ボクと依桜は舌を俯きながら、すぐに謝る。

 お説教されるのは、こっちでも向こうでも変わらないみたいです……。

 で、でも、そっか……こんなに心配してくれてるってことは、


「元の世界の未果たちも、心配してくれてるのかな……」

「当たり前でしょ。何せ、私たちよ? 絶対心配してるわよ。というか、心配しないわけがないわ」


 一応、ボクが知っている未果とは別人なんだけど、その言葉には、かなりの説得力があった。

 容姿、性格、考え方、何もかもがボクの知る未果と同じだから、きっと説得力があるんだろうなぁ……。

 これでもし、一つでも違っていたら、ちょっと信じられなかったかもしれないけど……。


「ま、俺たち自身は、桜の世界の俺たちを見ていないから何とも言えないが、同じでいいんだろう?」

「うん。ボクの世界でも、みんなは同じことを言うかも」

「さっすがわたしたち。どこへ行っても、仲良し五人組なんだねぇ」

「いいな、それ。仲がいいってのは、いいことだと思うぜ、オレも」

「というか、むしろ私たちが心配しないとでも? それに、私たちだけじゃなくて、メルちゃんにミオさんだって、絶対心配するわよ。あと、源次さんに桜子さんも」

「うっ……」

「なのに、心配はいらない、みたいに言って……ほんっと、自分でしょいこむわ、一人でボロボロになるわ……馬鹿よね、二人とも」

「「ぐ、ぐぅのねもでない……」」


 未果が言ってることが正論すぎて、何も言い返せないよ……。

 というか、なんだかんだで大切に思ってくれてるってことだよね。

 ……うん。やっぱり、すごく嬉しいな。

 こんなボクでも、大切に思ってくれている人がいると思うと、救われる思いだよ。


「まあでも、ちゃんと帰れるのよね?」

「うん。大丈夫だよ。一応そっちの方面に関してはプロだし」


 まあ、その人最近、VRMMOゲームも創っちゃってるから、よくわからない人なんだけど……。


 それはともかく、自分でプロって言ってて思ったけど、異世界のプロって何。


 そもそも、そう言う研究をしている人って、学園長先生しか知らないよ? ボク。


 存在を知っている人はそれなりにいるみたいだけど、結局それまでだしね。

 たしか、各国の首脳陣や、裏稼業の人たちの一部が知ってるって話だけど。


「そ、ならよかったわ」

「でもあれだねぇ。五日くらいしか一緒にいなかったとはいえ、ちょっと寂しくなるね」

「そうだな。俺たちがしる依桜とは、微妙に違うから、なんだか新鮮だった」

「あ、あはは……」

「てか、依桜が女の時って言えば、外見だけはすげえ美少女だったけど、いざ中身を見ると、ものすごい男らしかったからなぁ」

「そうね。そんな姿で見慣れていたのに、まったく同じ容姿で、女の子らしい依桜を見ているのは、すっごく不思議な気分だったわ」


 うんうん、と未果の言ってることに納得したそぶりを見せるみんな(依桜は除く)。

 そ、そんなにこっちのボクって男らしかったんだ。

 う、羨ましい……。


「そういや、学園側には言ったのか?」

「学園長先生には言ったから、多分帰りのHRで伝えられると思うけど」

「短かったわねぇ。しばらく通う、って火曜日に言ってたけど、実際かなり短いわ」

「そうだね。ボクもなんだかんだであっという間だった気がするよ」

「だろうな。まあ、桜はクラスの女子に弄られているだけだったように思えるが」

「た、確かにそうかも……」


 思い返してみれば、女の子たちにはかなり弄られた気がする。


 小さくなった時は、抱きかかえられて、お菓子を食べさせられたり……。大きくなった時は、なぜか胸を揉まれたなぁ……。あれ、本当に危ない気がするんだけど……。


 なんなんだろう……。


 それに、窓から落っこちた女の子を助けたり……。


 なんで、一週間だけで、こんなに濃いんだろう。

 巻き込まれ体質、ってだけで、ここまでなるかな、普通。


 この後も、みんなで色々と話しました。


 話したと言っても、ボクがこっちに来てからの四日間と、ボクの世界とこっちの世界の話だけどね。



「まあ、学園側からの連絡事項は以上だ。んで、こっちはまあ、ちょっとした私情に近い。あー、男女は今日でこの学園からいなくなる」

『『『えええ!?』』』

「元々、一時的に通うだけだったからな。で、来週の月曜日にはもう別の学校に行くそうだ」


 別の学園じゃなくて、別の世界にあるこの学園なんだけど。

 でも、学園長先生、ちゃんと戸隠先生に伝えてたんだ。


「というわけで、まあ……あれだ。今日でお前たちとはお別れになる。男女、とりあえず、なんか挨拶を頼む」

「わかりました」


 戸隠先生に言われて、ボクは立ち上がる。

 そして、みんなの方を向き、口を開いた。


「えっと、突然のことですみません。ボクは、今日を最後に、この学園から去って、別の学校に転校することになりました。突然転校して来て、突然転校する、という状況になってしまいましたが、この一週間はとても楽しかったです。新しい学校に行っても、みなさんのことは忘れません。そして、この学園のことも。一週間、ありがとうございました」


 最後にお礼を言って、ボクは一礼した。


『マジか……一週間だけで転校か』

『桜ちゃん、いい娘だったのになぁ』

『ちょっと寂しくなるね』

『くっ、クラスの清涼剤が……』

『狙ってたのに……』


 みんな、ちょっと寂しそうな反応をしていた。


 やっぱり、この学園は変態な人が多いけど、いい人も多いよね……。

 たった一週間しかいなかったボクがいなくなると知って、寂しそうにしてくれるんだから。


 なんだか、気分的にはもう少しいても……なんて思っちゃいそうだけど、それはダメ。


 昼休みに、未果に言われた通り、元の世界のみんなもきっと心配しているはず。


 だから、ここで残るのは、未果たちに悪いもん。


 それに、父さんや母さんもいるし、師匠もメルも。


 メルなんて、いつも一緒に寝ていたから、すごく心配だったり……。

 だ、大丈夫かな。夜、ちゃんと眠れてるかな? 寂しがってないかな……?


「とまあ、そう言うことなんで、男女は今日でお別れになる。まあ、最後に挨拶とか写真を撮ったりとか、悔いが無いようにしとけ。以上だ。気を付けて帰れよ」


 いつものように、少しだるそうにしながら、戸隠先生が教室を出ていった。

 その瞬間、クラスメートのみんなが、ボクの所へ集まってくる。


『ねえ、桜ちゃん、写真撮ろう!』

「しゃ、写真?」

『うん。今日でお別れなら、撮っておきたいなって』

『私も!』

『俺も!』


 と、みんな写真を撮りたいと言ってくる。

 写真かぁ……。

 まあ、断る理由もないし……思い出になる、かな。


「うん。じゃあ、みんなで撮ろう?」


 そう言うことになりました。



 というわけで、早速みんなで写真を撮ることに。


 並び順としては、ボクが真ん中で、隣に依桜。

 ボクと依桜の周りには、未果や晶たちが並ぶ。


 あとは、みんな自由にという形になり、その並び順で写真を撮った。


 ボクは自分のスマホを使って撮り、他のみんなは依桜のスマホを使って写真を撮ってから、LINNのグループチャットに後で送るとのこと。


 この後、みんなと軽く話して、この日はお開きになった。



 いつものメンバーで帰宅。

 途中で、依桜とボクだけになって、二人で並んで歩く。


「やっぱり、こっちのクラスのみんなもいい人だね」

「僕はそっちの世界を知らないからあれだが、桜が言うならそうなんだろうな。僕だし」

「うん。いい人たちばかりだよ」


 もちろん、未果たちも含めて。


「それで、楽しかったか?」

「もちろん。ちょっとした事故でこっちに来ちゃったけど、楽しい一週間だったかな。って、まだボクが帰るまで、二日もあるんだけどね」

「それもそうか」


 でも、土日は外に出ないかも。


 一応、家でお別れ会的なものをやろう、って未果たちが言ってたからね。

 それは日曜日を予定している。


 土曜日はその準備とか。


 だから、ボクはやることがなくてね。


 ふと、外に出て何かしようかな、って思ったりもしたけど……むやみやたらに外に出ると、ボク自身、何が起こるかわからない。


 巻き込まれ体質だもん……。


 だから、明日は外に出ずに、家でのんびりしようかなと。

 どの道、あんまり休める暇とかないからね、ボク。


「まあ、お別れ会は楽しみにしていていいと思うぞ」

「うん。みんな、ああいうのはちゃんとやってくれるから、安心してる」

「そっか」


 それからは、なんとなく言葉を交わさずに、家に帰った。

 会話はなかったけど、やっぱり気楽な時間でした。

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