第206話 スキー教室9

 覗きをしようとした態徒たちをお説教して、夕食を食べてから就寝。

 さすがに、二日目はかなり動き回っていたこともあって、布団に入ったら、すぐに眠ってしまった。

 そして、三日目の朝。



「……ん~ぅ……すぅ……すぅ……」

「……Oh」


 今度はわたしですかー。


 美少女の気配と、美少女の柔らかさを感じ取ったわたしは、それで目を覚ました。


 感じたのは、わたしの左腕。

 おっぱいの柔らかさと温かさのダブルコンボ。

 しかも、依桜君の至上のおっぱいに挟まれてるよ、わたしの左腕!

 谷間! 谷間にわたしの腕が!

 ふにゅりと、腕の形に合わせて形を変える……ふへへ、エロいなぁ……うん。イイ!


 しかも、この寝顔よ。


 安心しきった顔だよ。


 可愛いなぁ……。何で依桜君、最初から女の子じゃなかったんだろう?

 少なくとも、最初から女の子で生まれたとしても、性格とかは変わらなかっただろうからねぇ。


 ……その場合、美少女が美少年になったと思うけどね!

 いや、それはそれでありだけど。


 はぁぁ~~、依桜君にぎゅってされながら寝るの、本当に快適~~。

 しかもさ、足も絡めてくるんだよ?


 これ、本当に寝ぼけてるだけなのかな?

 二度ほど泊まりには行ったけど、こうして抱きつくことはなかったはずなんだけどねぇ。


 何か、心情の変化でもあったのかな。


「なんて思うわけですが……最高っす……」


 思わず口をついていた。


 いや、本当に最高で、幸せなんだって。

 しかも、昨日も浴衣で寝たから、素晴らしいんですよ、光景が。


 はだけて露わになった、依桜君のおっぱい! おへそがキュートなお腹! くびれイイね!

 それから、浴衣のスリットから覗く、すべすべで柔らかなおみ足!

 ついでに、パンツが見えてるのがイイね!


 それにしても……あれ、依桜君、ブラしてなくない?

 道理で、なんかものすごーく柔らかいなぁ、と思ってたら、ブラしてないやんけ。


 ま、まさか依桜君、寝る時はノーブラ派だと言うのかい!?


 さ、さすが天然系エロ娘……!

 戦慄したぜ……。


 考えてみれば、昨日未果ちゃんに抱き着いていた時も、着けてなかった気が……。


 ……まあ、直に依桜君のおっぱいを感じられるから全然いいけどね!

 それにそれに……綺麗な桜色の蕾も見れるし!


 依桜君、ほんと綺麗だなぁ。

 むしろ、汚いところなんてないよね、これ。

 というかあるの? そんなとこ。

 日焼けもないし、胸の桜色の蕾も綺麗だし、下は生えてないし……どうなってるんだろうね、ほんと。


 うん。まあ、可愛いからいいけどね!


 さて、そろそろ依桜君を起こした方がいいのか……いや、もう少し、この至福の時を過ごしたいからやめよう。うん。


 おっぱい最高!


 と、わたしがそんなことを思っていたら、


「めい……?」


 とろーんとした目の依桜君がわたしを見ていた。

 心なしか、顔が赤いような?


「はいはい。依桜君の永遠の恋人、女委さんだよ~」


 なんて、いつものおふざけで言ったら……


「ほんとぉ? じゃあ、ず~~っといっしょにいてくれるの~?」


 あ、あれ? なんか反応違くない?

 いや、待てわたし。これはチャンス?

 それに、寝ぼけているだけだから、記憶に残らないよね!


「ほんとほんと。女委さん、一生依桜君といてあげるよ~」


 どうせ、記憶にないだろう、なんて高を括って言ってみたら、


「うれしぃ……めい、だぁいすき……」


 思いっきり抱き着いてきた……というか、わたしの上に乗っかって来た!

 しかも、この上なく顔を赤くさせて、はにかんだような笑みを浮かべているよ!


「おうふ!?」


 ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 い、依桜君のおっぱいが! わたしのおっぱいにぃぃぃぃぃ!

 す、素晴らしい! 乳合わせ! 乳合わせだ!


「んぅ~……めいぃ~……すぅ……すぅ……」

「おう、寝ちゃった」


 依桜君ってもしかして、抱き着き魔?


 あと、寝ぼけている間は、気持ちに素直になるのかな、これ。

 未果ちゃんの時も、大好きって言ってたみたいだし……。


 まあでも、すごくいい思いができるたから、いいや!

 我が生涯に一片の悔いなし!


 あ、どうしよう。すごく襲いたい。依桜君、すごく襲いたい。

 あの、純粋ピュアで性知識の欠片もない依桜君に、色々と教えてみたい……。

 できれば、あんなことやこんなことを……。


 ……そう言えば、依桜君ってどちらかと言えば、Mよりな気がするし……ふへへ。それもいいなぁ……。


「ふぁあぁ……おはよう、女委……って、ん!?」


 いっそのこと、襲ってしまおうかと考えていた矢先、未果ちゃんが起床してきた。

 そして、わたしの状態を見るなり、驚きに目を見開いていた。


「え、め、女委、これはどういうこと……?」

「事後」

「馬鹿言いなさい」

「にゃははー、冗談冗談。寝ぼけたのか、依桜君がこうやって乗っかってきてねー。いやあ、おっぱいとおっぱいがくっつく様はいいですなー」

「はいはい。とりあえず、さっさと起こすわよ」

「えー、でも、すごく幸せなんだけど……」

「いいから、起こす!」

「ちぇー」


 ここまで言われちゃったら仕方ない。

 わたしもそろそろ、この幸せ状態を手放すかー。


「依桜君、依桜君。起きて起きてー」

「ん……ふぁれ……女委?」

「はいはい、女委さんですよー」

「……なんだか、女委に永遠の恋人って言われて、ボクも嬉しい、なんて言ったような気がするんだけど……夢……?」

「ぶっ!」

「うん、夢です」


 ……あかん。これ、わたしが本当に言ってました、なんて言ったら、何されるかわからない。

 というか、未果ちゃんの視線が怖いんですが。

 ライオンすら殺せそうな殺意が混じってるんですが。

 これはあれか、


「未果ちゃん、ヤキモチ?」

「~~~っ! 違うわよっ!」


 あ、ガチだ。ガチでヤキモチだこれ。


「み、未果? なんで怒ってるの?」

「怒ってないわよ! ……とりあえず、起きなさいよ。いつまで、女委にくっついてるの?」

「え? ……うわわわわ! ご、ごめんね女委! 重かったよね……?」

「いや全然。依桜君、すごく軽かったよ」


 重そうなおっぱいを持っているのに、依桜君、すごく軽かったんだよね。

 まあ、無駄な脂肪がなさそうだもんね、依桜君。

 暗殺者だからかな?


「さて、と。愛希、志穂、そろそろ起きなさい」

『うっ、もう朝……?』

『起きたくないぃ……』

「あっそ。じゃあ、あなたたちは別行動で買えるって、戸隠先生に言っておくわ」

『ごめんなさい、起きますからそれは勘弁!』

『あの人、本当にやりそうだから怖いんだよ!』


 あ、起きた。

 戸隠先生、どう思われてるの?

 ふと、疑問に思うわたしだった。



 朝食を食べたら、宿泊していた部屋の片づけ。


 布団を綺麗に畳んで置いたり、テーブルの上を拭いたり、軽く掃除をしたり。

 片づけ終わったら、荷物を持って、外に出る。


 三日目は、遊ぶなんてことはなく、ほとんど帰るだけ。


 途中、お土産を買ったりするくらいで、基本はバス。


 まあ、一日目と二日目は、かなりはしゃいでいたからね。さすがに、三日目も動き回る余裕なんて、ほとんどない、みたいな感じかな?


 あ、ボクは全然体力あります……と、言いたいところだったんだけど、昨日の雪合戦が尾を引いていて……。

 師匠、手加減なしなんだもん……。

 おかげで、まだ少し、疲労が残っている気がする。


 本当、災難だったよ……。ボク的にも、あそこにいた人的にも。

 師匠の雪玉マシンガンで視認が出かけるレベルだったし……。

 ボク以外にはちゃんと手加減はしていたけど、あれ、気絶するレベルだったし、当たればかなり体力を持っていかれたから。


 なんて、一日目と二日目のことを思い出していた。


 熊さんたちに、また会いたいなぁ。たしか、臨海学校と林間学校で来ることになるはずだから、少なくともあと二回会えるはず……うん。楽しみ。


 そして、最後に旅館の人たちにお礼を言って、ボクたちはバスに乗り込んだ。



 バスに乗ってからは、特に特筆すべき点はなく、ほとんど行きと変わらなかった。

 ……また、カラオケをして、変な盛り上がり方しちゃったけど。

 と、色々とありつつも、バスでの移動をしていると、


「ふぁぁ……むー、眠い……」


 女委がすごく眠そうにしていた。

 見れば、こっくりこっくりと首を上下させていた。


「女委、眠いの?」

「ちょっとね……」


 ちょっとと言うけど、すぐにでも落ちちゃいそうなくらい眠そうなんだけど……。

 ここは、行きのお返し。


「女委、ボクの膝でよかったら、眠っていいよ?」

「……ほんと?」

「うん。行きの時とか、その前でも女委にはなんだかんだで膝枕してもらってたからね。そのお返しってことで」

「やったぁ……じゃあ、お言葉に甘えて……」


 こてんと、女委がボクの膝に頭を乗せて眠ってしまった。

 頭と言っても、上半身のほとんどが乗ってるんだけどね。


「すぅ……すぅ……」

「ふふ、こうして見ると、女委の寝顔って可愛いなぁ……」


 いつもは、あれな発言が多くて、元気いっぱいな女委だけど、こうして寝ているを見ると、可愛い、なんて思ってしまった。

 だからか、つい、頭を撫でていた。


「ふへへへぇ~……」


 ……頭を撫でだしたら、変な声を出してきたんだけど。

 なんだろう、ボクの微笑みを返してほしい。


「あら、依桜が膝枕するなんて羨ましいわね」

「あ、うん。女委がすごく眠そうだったから。あと、何度か女委には膝枕されてるからね」

「そうなの? ……なるほど、そう言うところで地味にポイントを稼ぐ、というわけか。意外と、したたかなのね、女委」

「えっと、ポイント?」

「ああ、気にしないで、こっちの話よ」


 どうしたんだろう?

 女委を見て、なぜか難しい顔をしているんだけど……。

 何かあるのかな?


「それにしても……依桜の膝枕、ね。……羨ましい」

「あれ? 未果も、膝枕してほしかったの?」

「あ、い、今のは、ちが……くはない、けど……」

「なんだ、それじゃあ、今度未果にも膝枕してあげるよ」

「え、いいの?」

「うん。幼馴染だもん」

「……そう。ありがとう。期待してるわ」


 別に、膝枕するくらいなら、減るものじゃないからね。


 それに、未果には何時も助けられたりしてるし。


 ……正直、未果と出会ってなかったら、今のボクはいなかったのかなぁ、なんて。

 一番最初の友達が未果で、その次が晶。


 そう言えば、思春期と呼ばれる時期に入っても、ボクたちはいつも通りだったっけ。


 考えてみれば、ボクがいじめられたりしなかったのって、二人のおかげだと思うし。

 偏見持たなかったからね、二人とも。


 晶は、元々ハーフだから、って言うのもあったんだろうけど。

 よくよく考えたら、未果って純日本人なのに、変にいじったりしなかったんだよね。


 あれ? そうなると、ボク含めた幼馴染三人組って、日本人に見えるのって、未果だけじゃない? ボクは隔世遺伝で銀髪碧眼の、北欧風になってるし、晶はたしか、イギリスと日本のハーフだっけ? そのせいで金髪だし……。


 あ、本当に日本人に見えるの、未果だけだ。


 そう考えると、すごい組み合わせだったんだね、ボクたち三人は。


 やっぱり、助けられてばかりだったんだなぁ、昔のボクって。

 今は、助けられる力があるから、全然いいよ。


 もちろん、後から輪に加わった態徒と女委にだって、すごく感謝してるし。

 態徒は、言動と行動こそ変態だけど、すごく優しくていい人だからね。そのおかげか、態徒のことが好きな人がいるくらいだし。


 女委も、態徒とは違った方向性の変態だけど、気配りはできるし、のほほんとしているところはあるけど、よく見てるからね。


 二人も、ボクの銀髪碧眼を見ても、距離を取ったりしなかった。むしろ、変に踏み込んできたくらいだしね。


 ……ボクって、友達には恵まれてたんだなぁ。

 うん。そう考えたら、ボクは結構幸せだね。


 来月は確か、バレンタインがあるはずだし、日ごろの感謝を込めて、みんなにチョコレートでも作ろうかな。


 今は女の子だから、周囲なんて気にする必要もないし。


 あ、でも、男でも作る人は作るんだっけ?


 まあいいよね。


 うん。今のうちに色々と考えておこう。


「依桜、何考えてるの?」

「ふふふ、なーいしょ❤」


 口元に人差し指を当てて、微笑みながらそう言う。


『ぐはっ』


 あ、あれ? なんか、みんな胸を抑えて悶えだしたんだけど……どうしたんだろう? お腹痛くなったのかな?


「依桜、ますます女の子してきてるわね」

「え? そ、そう?」

「ええ。男の時だった全く考えられない行動してるわよ」

「そ、そうなんだ……」


 ど、どうしよう。

 それはちょっと考え物かも……。


 ……でも、女の子というのも悪くないかなー、なんて思ってたり……って、ダメダメ! ボクは男だから!


 ……って、誰に言ってるんだろう。


 う、うーん、受け止めなきゃいけないのはわかってるんだけどなぁ……。

 往生際が悪いのかも……。


 そう思いながらも、バスは学園に向かって走る。



 そして、一時間くらいした頃、ようやく学園に到着。

 最後に軽く学園長先生がお話をして、解散となった。


 その後は、みんなでいつものように話しながら家路に就いた。

 家に帰ってからは、父さんと母さんにお土産を渡して、夜ご飯を食べて、就寝。


 こうして、色々とあった二泊三日のスキー教室は終わりとなりました。

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