第172話 初戦闘とアクシデント

 ミオの家の周辺は、セーフティエリアだったようなので、ユキたちは、近場にあった広場にて、初のモンスター戦闘をすることになった。


「えーっと、この辺りなら……あ、出てきたよ」

 周りをきょろきょろと見回しながら、ある一点を見て、そう言うユキ。

 その先には、一体のイノシシが。


「えっと、名前は……【フォレストボアー】レベルは1だね。HPは20くらいだから、今のみんなならほとんど一撃で倒せると思うよ。多分、スライムみたいな扱いかな?」

「敵の情報がわかるって、普通に考えて脅威だな」

「まあ、ユキだし。普通じゃない?」

「「たしかに」」

「あはは……」


 ちなみに、ユキが相手の情報を知れるのは、単純に【鑑定(低)】があるからだ。

 今回、五人が初めて戦うことになるのは、どうやら【フォレストボアー】という猪型のモンスターのようだ。


「とりあえず、五体いるみたいだし、一人一体で戦ってみよっか」


 と、ミサではなく、ユキが指示を出すと、全員こくりと頷く。


 実戦経験が豊富なユキなら、外れはないだろう、という意思の表れだろう。


 今回は、ちょうど一人一体、という風にモンスターが出現したので、ユキの言う通り、一人一体で戦うことに。


 向かい合うようににらみ合う五人と五体。


『ふごっ!』


 まず最初に動いたのは、フォレストボアーの方だ。

 五体中の一体が、ミサに襲い掛かろうと、突進してきた。

 ゲームとはいえ、初めての生物との戦闘に、思うように動けないミサ。


「ミサ、刀でとりあえず、切ってみて!」


 すると、ユキの方から指示が飛んできた。

 装備的にも、一度の攻撃程度じゃ、そこまで数回は耐えられるだろうが、それでは攻撃する前に倒されてしまう、と心配したユキからの指示だ。


「わ、わかったわ!」


 かなり緊張した面持ちで、刀を勢いよく抜刀し、すれ違いざまに切りつける。


『ふごぉ……』


 そんな鳴き声を発しながら、フォレストボアーが粒子となって消えた。

 装備含め、STR70のミサの攻撃は、見事にフォレストボアーを一撃で葬ったのだ。


「た、倒せた……」

「おーし、じゃあ次はオレが行くぜ!」


 ミサが上手く倒せたことで、勢いづき、今度はレンが攻撃を仕掛ける。


 レンが使うのは、大剣だ。個人的には、武術をやっている関係で、籠手がいい、と思っていたようだが、あいにくと、装備できそうなものをユキが持っていなかったため、大剣となった。


 と言っても、さして気にしておらず、むしろ、大剣も楽しそう、と思っている。

 レンは大剣を大きく振りかぶると、そのままフォレストボアーめがけて振り下ろした。


『ごぉっ……』


 奇妙な断末魔を挙げながら、真っ二つになったフォレストボアーは消えた。

 こちらも一撃。

 STR70で一撃なのだから、80でも当然一撃だ。


「じゃあ次、わたしー!」


 今度は、ヤオイが挑戦。


 ヤオイは調合士であるため、基本物理攻撃向きではなく、魔法攻撃向きの職業だ。と言っても、戦うのなら、の話であって、実際は生産職に近い職業だ。


 しかし、そこはやはり、ユキが持っていた装備。

 ヤオイが今回使用するのは、杖だ。


 魔法職なので、当然と言えば当然だが。


「じゃあためしに……《ファイアーボール》!」


 魔法名をヤオイが言うと、杖の先端から、バスケットボールほどの火球が出現し、フォレストボアーめがけて飛んでいった。

 着弾と同時に、ゴウッ! という音を立てながら、フォレストボアーが炎上し、


『ぶ、ぶひぃ……』


 燃え尽きた。

 果たして、粒子となって消えたのか、単純に燃え尽きて灰になったのか、どちらかわからないが、倒せたことだし、良しとしよう。


「次は俺か」


 次と言うより、最後と言った方が正しいような気もするが、続いて挑戦するのはショウだ。

 ショウは剣を鞘から抜くと、目の前に構えた。

 そして、剣を構えながらフォレストボアーに肉薄し、斜め下から切り上げる。


『ぶひっ!』


 が、フォレストボアーは切られることなく、跳んで躱した。

 すると、まだ振りぬいていない剣を見ながら、


「《伸縮》!」


 と叫ぶと、刀身が淡く光り、フォレストボアーを逃がすまいと伸びた。


『ぶひぃっ……!?』


 さすがに空中では逃げ切れず、フォレストボアーは真っ二つにされ消えた。

 そして、最後の一体だが……


「ふっ」


 一瞬で肉薄したユキが、手刀で倒していた。


((((武器なしかよ))))


 という四人のツッコミが、それぞれの心の中で見事にシンクロした。


 このCFOは、別段武器がなくとも攻撃はできるし、ダメージも与えられる。


 その代わり、あまり大きいダメージを与えることはできないが。

 ……つまり、レベル1のモンスターとはいえ、一撃で葬っている時点で、ユキはゲームでもおかしい、というわけだ。


「初討伐おめでとう! 感覚は掴んだ?」


 まるで、何事もなかったかのように四人にそう言うユキだが、四人は苦笑いを禁じえなかった。

 さも当然のことのように、手刀一撃で倒して、消えるのを見るまでもなく笑顔でそう言われたら、誰だって苦笑いをしたくなる。人によっては、ドン引きかもしれないが。


「まあ、なんとなくは。……でも、ゲームとはいえ、直接生き物を殺すのは、何と言うか……ちょっと気分はよくないわね」

「だね。わたしも、ちょっと」

「俺は、そこまで気にならなかったな。ゲームだと割り切っている」

「オレも特には。まあ、オレの場合は、よく試合とかするしな。ある意味、慣れていると言えば慣れてる。まあ、殺したことはないが」

「大体はそう言う感じだよね。ボクだって、最初は吐きそうになったもん」


 当時のことを思いだしているのか、ユキは苦々し気な表情を浮かべた。

 ミサたちの場合は、現実ではなく、仮想でのことだから、問題はないが、ユキの場合は現実でやっていること。そこには、明確な違いがあるだろう。


「……でしょうね。でも、あれね。多少気分はよくなくても、何と言うか……爽快感? に似たようなものはあったわ」

「わかるよ、ミサちゃん。わたしも、ちょっと楽しかった」

「それならよかったよ。……人によっては、ゲームで殺すのも嫌だ、という人がいるからね」

「そうだな。モンスターバスターとか、割とリアルな出来だから、人によっては嫌だしな」

「そうか? オレは全く気にならないぜ?」

「それは、レンの考えだろ? 世の中にはそう言う人もいる、ってことだ」

「おお、そっか。すまんすまん」


 いつものように軽口を叩きあっている姿を見て、ユキは内心ほっとする。


 現実と仮想と言う部分で、しっかりと線引きができているため、ユキは割と楽しくできている。

 多少の違和感などはあれども、ミサとヤオイも問題なく楽しめているようである。


 ショウとレンに関しては、さすが男子と言ったところだろうか。

 さっきの初戦闘など、ショウは意外とノリノリでスキル名を叫んでいたから。


 と言っても、このゲーム、スキル名、魔法名を言わないと使用できないのでしかたない。

 疑似中二病体験かもしれない。


「とりあえず、みんなレベル2になるまでやってみようか」

「「「「賛成!」」」」


 この後、全員がレベル2になるまでモンスターを狩った。



 そして、五人全員がレベル2になり、ゾールの森を出て、街に戻っている時のこと。


『うわああああああああああ!』

『こ、こっちくんな! や、やめっ――』

『ミング! ドリー! くそ! おい、サッチ、俺たちだけでも逃げるぞ!』

『お、おう!』

『おい! 向こうに、でけえモンスターが出てきて、大混乱だ! 俺たちも逃げるぞ!』


 と、草原は大騒ぎだった。


「なんだろう、何かあったのかな?」

「大きいモンスターって聞こえたけど……」

「お、おい、あれ見ろ。なんか、さっきオレたちが戦った猪のデカイ版がいるぞ!?」

「もしや、あのモンスターが原因?」


 遠くを見れば、たしかに10メートルくらいはありそうな巨大なイノシシが暴れまわっていた。

 さっきの会話を見る限りだと、すでに二人のプレイヤーが尊い犠牲となったようだ。


「えーっと、どうする? あれ、どうみても初期レベルで戦うようなモンスターじゃないわよね?」

「ユキ、あいつのステータスってどうなってるんだ?」


 ミサが嫌そうな顔を。

 そして、ショウがユキに、巨大イノシシのステータスについて尋ねていた。


「えっと……【キングフォレストボアー】レベルは12。HPは200。STRが90だね。あと、VITが100。AGIは60だから、それほど速くない、かな? でも、見た感じ、ここでモンスターを狩っていた人たちは、初期装備っぽかったから……普通は勝てないね」

「マジかよ……ってことはあれ、フィールボスか?」

「おそらく、似たような物だろうな。しかも、あのイノシシ、どうあがいても街の近くにいるせいで、全力で走っても、逃げられるのはユキとヤオイくらいだろう」

「むぅ、どうする?」

「……正直、STRが90ある時点で、勝てる気しないわ。というか、無理よね」


 ユキが言った、ステータスと、ショウの推測により、ミサが無理だと断言した。


 実際、その通りである。


 この中で一番VITが高いユキの次に高いのは、何気にレンだ。レンのVITは、装備なども含めて、80だ。

 耐えられたとしても、二度くらいが限度だろう。


「……じゃあ、ここはボクが囮になるから、みんなはその隙を突いて逃げて」

「……それが一番可能性が高いか」

「ユキ君、大丈夫なの?」

「あれくらいなら、逃げるのは簡単だよ」

「……わかった。じゃあ、ユキ。お願いね」

「うん。任せて」

「絶対、戻ってきてね」

「もちろん。じゃあ、行ってくるね」


 最後にそう言って、ユキはキングフォレストボアーのところへ走っていった。

 ちなみにその際、ミサたちは一斉に、


「「「「速っ!?」」」」


 と言った。


 実際、称号・スキル・装備品込みで、400を超えるAGIを持ったユキだ。速いのは当たり前と言えよう。

 この時点で、すでにチートだ。



『ブォオオオオオオオ!』

『ぐあっ!?』

『ミキヤ!』


 キングフォレストボアーの近くでは、また別のプレイヤーが攻撃受け、吹き飛ばされていた。

 しかも、そのプレイヤーは、攻撃を耐えきることができず、そのまま光の粒子となって消えてしまった。


『み、ミキヤ! く、くそっ!』


 キルされたプレイヤーの友人だろうか。友人と思しきプレイヤーは、一瞬だけ悔しそうなそぶりを見せるも、すぐに逃走を始めた。


 しかし、相手はレベル12のモンスター。

 サービス開始から、1時間程度しか経っていないプレイヤーが勝てるような相手ではなく、ステータスにも差があった。


 逃げるプレイヤーよりも、キングフォレストボアーの方が早く、すぐ近くまで迫ってきていた。それを見て、もう駄目だ、と死ぬのを待つプレイヤー。

 アリをつぶすかのように、足を上げ、つぶそうと迫って来た足は……


 ドゴンッ!


 という音と風圧と共に、止まった。


『な、なんだ……?』

「はぁ……間に合った……」


 そう言って、安堵するのは……両手に短剣を構え、キングフォレストボアーの足を受け止めているユキだった。

 顔がわからないよう、フードを被っていたのだが、今の受け止めた際に発生した風圧で、フードが取れてしまった。


 その、美しすぎる顔を見た男性プレイヤーは、


『め、女神様……?』


 と言ったそうな。


 そして、見知らぬプレイヤーが言ったことが耳に入り、


(……あ、あれ? もしかして、バレた?)


 別の意味で焦りを見せていた。


 本来なら、この状況で焦るのだが、如何せん、ステータス的に余裕があるものだから、まったく関係ないことに対し、焦っていた。


 ちなみに、今のを受け止める際に受けたユキのダメージは、5だ。

 ユキのHPの総量が200なので、一割も減っていないことになる。

 異世界産のステータスを基準にした世界最強の弟子は、やはり、強かった。


「え、えっと、とりあえず、ボクが押さえますので、早く街へ」

「……あ、は、はい!」


 一瞬、ユキの美貌に見惚れていた男性プレイヤーは、慌てて立ち上がると、そのまま一目散に街まで走っていった。

 それを見届けて、周囲に人がいないことを確認したユキは、


「まったく……開始直後に、なんでこんなモンスターを出すのかな……あとで、学園長先生に文句言わない……と!」


 ぶつくさと文句を言いながら、ユキはキングフォレストボアーの足を押し返した。


『ブゴォォォオ!?』


 まさか押し返されるとは思っていなかったのか、キングフォレストボアーは慌てたような鳴き声を発した。


「とりあえず、みなさんの迷惑になるので……倒しちゃいますね!」


 ユキは武器を構えると、キングフォレストボアーの足を切りにかかった。

 すると、切断したそばからHPバーが減り始める。


 今の一撃で、二割ほど削れた。

 それを確認してから、ユキはいける、と確信。

 そのまま腹の下を潜り抜けて、背後に回ると、高く跳躍。


「【身体強化:2倍】!」


 【身体強化】を2倍でかける。その直後、自身のMPバーが7割も減った。

 どうやら、2倍の際の消費MPは200なのだと確認できたとあって、ユキ的には収穫があった。

 物理法則に従って落下するユキは、そのまま無防備な背中を、二振りの短剣で思い切り切りつけた。


『ブゴォォォオ……!』


 一気に体力は削れ、見ればキングフォレストボアーのHPは残り一割ほどとなっていた。

 ミオという、地獄よりも恐ろしい師匠に教えられた、最後まで手を抜くな、全力でやれ、という教えの下、ユキは、


「【一撃必殺】!」


 一撃必殺を乗せた攻撃を、腹部に突き出した。


『ブゴオオォォォ……』


 という鳴き声を残して、ドズーン……という地響きと共に倒れた。

 その直後、キングフォレストボアーはきれいさっぱり消えてなくなった。


「ふぅ……何とかなった……」


 本来なら、ユキは倒すつもりはなかったのだが、囮になろう、キングフォレストボアーに向かっている途中、潰されそうになっているプレイヤーを見かけ、急いで助けに入った。その後、何とか逃げ出すための時間を稼ごうとしていた。


 ……のだが、戦ってみると、思いの外強くないとわかり、普段のストレスを発散させるかのように倒してしまった、というわけだ。

 当然、目立たないわけもなく……


『うおおおおおおおおおお!』

『すげえええええ!』

『や、やべえ! なんだ、あの娘!』

『あんなデカイモンスターをたった一人で倒しちまったよ!』

『しかも、数回の攻撃で倒してたよな!?』

『てか、なんだよあの可愛さ!』


 という、街の方から聞こえる声がユキの耳に届く。


 そして、ここでふと、ユキは自分の姿に目が行く。

 さっきまで被っていたはずのフードがないことに気づく。


 どうやら……


(あ、あれ!? もしかしてボク……フードなしで戦ってた!?)


 と知り、慌てた。


 そして、急いでフードを確認すると……フードは首の後ろの来ていて、被っていなかった。それを知り、ユキはがっくりと肩を落とした。


 この後、どうやってみんなのところに行こうか、と悩んだらしい。



《CFO公式掲示板 匿名プレイヤーたちのお話広場》

82:おい大変だ!


83:どうした、そんなに慌てて? 腹でも壊したか?w


84:そうだぞ、我慢は体に良くない。さっさとトイレ行けw


85:ちげえよ! そういうんじゃねえ!


86:どうかしたのかの?


87:やべえよ、ついさっきまで俺、ネッ友と草原でレベリングしてたんだけどよ


88:ほうほう。で、どこまで上がったよ?


89:それどころじゃねえんだって! フォレストボアーってモンスターがいるのは知ってるか?


90:いるでござるなぁ。たしか、森の付近にポップするやつでござるな?


91:あの、他ゲームで言ったらスライムに相当するようなモンスターがどうかしたンゴか?


92:それの上位種っぽいボスモンスターみてーな奴が現れたんだよ!


93:ファッ!?


94:おいおい、まだサービス開始から一時間ちょいしか経ってないぜ? んなことあるのかよ?


95:信じられんかもしれないが、レベル12で【キングフォレストボアー】ってモンスターが出てきたんだよ!


96:レベル12!? ちょと待つでござる!


97:なんで、サービス開始の1時間後に、初心者キラーなモンスターが沸くんだよ!


98:知らん! それのせいで、いくつかのPTが被害に遭った! てか、普通に死んだ奴もそこそこいる!


99:ま、マジか……


100:そ、それで、そのやべーモンスターは?


101:まだわからん……知り合いが言うには、今はそのやべー奴がいる場所の近くにいるプレイヤーが逃げまくってるって話だ……


102:この後、狩りに行こうとおもってたンゴが……


103:……まあ、しゃあない。とりあえず、デスポーンするまで、適当に会話でもするか


104:だな。あーあ。サービス開始と同時に、スタートできたから、後続よりも早く強くなれると思ってたんだけどなぁ……


105:しょうがないでござる。


106:お、そういや、なんかいい店知ってるやつおる? 美味しいもんがあるとこ


107:それなら拙者、いい場所を知ってるでござる。


 と、こんな感じに、数分ほど、雑談が続いたが……とあるプレイヤーが入ってきたことにより、掲示板は盛り上がることになる。


130:おまいら聞いてくれ!


131:どうしたどうした。デカ物モンスターなら知ってるぞー


132:いや、たしかにその話だが、ちょっと違うんだ!


133:ほほぅ、どれ、言うてみーよ


134:あ、ああ。話すぞ? オレよ……


135:む、どうした、回線落ちか?


136:ためてるのか?


137:いいから早く言うンゴ


138:……女神様と会話しちまったぜ!


139:なぬ!?


140:貴様! まさか、抜け駆けか!?


141:許せんッ! てめぇ、ちょっと情報教えろや。今すぐ、キルしに行くからよぉ……


142:待て待て待て! オレからじゃねえ! 女神様の方からだ!


143:なんだと!? 何と羨ましい!


144:やはり貴様は殺す! 情報教えろ!


145:待て待て待て! 今回は訳があるんだよ!


146:わけじゃと?


147:じ、実はオレ、デカ物に踏みつぶされそうになってよ……


148:うわ、最初の死がそれとか、トラウマもんじゃね?


149:いや死んでねーよ!? って、そうじゃなくてだな? オレ、踏みつぶされる、と思った瞬間に、女神様が助けてくれたんだよ


150:は? てめえまさか、女神様が犠牲になったと言うのか!?


151:貴殿は生かしてはおかぬでござる! やっぱり殺すでござる!


152:だー! 早まるな! 別に女神様は死んでねぇ! というか、普通に攻撃を受け止めてたよ!


153:マジ? 冗談じゃなく?


154:マジだ。しかも、レベルみたら、2だったんだぜ?


155:……は?


156:いやいや、レベル2? レベル2の女神様が、レベル12のモンスターの攻撃受け止めたん? マジで?


157:マジなんだよ……。しかもその後、たった数回の攻撃で倒しちまった……


158:ヘアァッ!?


159:つ、強スギィ……


160:しかもその際、【身体強化】とか【一撃必殺】とかって聞こえてきたんだが……


161:なんだそりゃ? スキルか?


162:すでにやばそうなスキル名なんだが……


163:それで、誰か知ってるやついるかと思ったんだが……おる?


164:知らんなぁ


165:拙者、【一撃必殺】は知らぬでござるが、【身体強化】は知ってるでござる


166:おし、情報提供よろ。


167:拙者、【身体強化】というスキルが手に入るスクロールを売っているNPCショップを見つけたのでござるが……それが、とんでもなく高額だったんでござるよ


168:高額とな? いくらくらいなんじゃ?


169:……1000万テリルでござる


170:高ッ!?


171:馬鹿じゃねえの!? んな高いもんがあんの!?


172:買わせる気ねーだろ、それ!


173:いやまて。もし、女神様がそれを持っているんだとしたら……相当やばくないか?


174:初期で手に入る金額は1000テリル……圧倒的に桁が足りん


175:わからぬ……


 それから、しばらく案を出しあったものの、これと言った答えは出ず、結局不明、ということになった。


190:お、そういや、おまいらこれを見せねば……


191:なんだ。お前の情報か? すぐにキルしに行くから早くしろや


192:オレに対する殺意強くね!? いや、見せたいのは、女神様のSSだよ!


193:早く見せたまえ


194:早くするのじゃ! 


195:見せるンゴ! 見せるンゴ!


196:わかってるわかってる! これだよこれ


 そう言って、挙げられたスクリーンショットは、フル装備のユキの姿だった。

 ちなみに、両手に短剣を持って立ち、風に吹かれて、髪がたなびいている、という一枚。


197:ふぉおおおおおおお! う、美しすぎるぅううううううう!


198:やっば! 保存しとこ保存!


199:拙者、マイホームを買ったら、これを引き延ばした写真を飾るでござる……


200:わかる!


201:やべえ、可愛すぎ……


202:てか、女神様の職業って……暗殺者?


203:短剣二本持ってるからそうじゃね? なんか、めっちゃ強そうだけど


204:それに、初期装備って、こんなんだったか? 俺、ぼろシリーズだぜ?


205:俺も


206:わしも


207:拙者もでござる


208:……え、じゃあこの装備たちは何?


209:……気になるでござるなぁ


210:あとさ、女神様、なんか暗殺者スタイル、異常なくらい似合いすぎてね?


211:たしかに


212:可憐すぎる姿には、むしろ似合わないような感じがするのでござるが……


213:なぜか違和感を感じないンゴねぇ


214:……色々と謎過ぎん?


215:たしかに。不思議すぎる……


216:なあ、お前ら。女神様なら、この一言で片づけられる。


217:言ってみ?


218:女神様だからだ


219:納得したわ


 この後、ユキのことで、掲示板が大賑わいを見せた。


 その結果、『女神様に暗殺され隊』という、なんだかド変態たちがいそうな謎のコミュニティが形成され、誰が一号会員かで、醜い争いが発生した。

 どこへ行っても、変態が多いようだ。

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