第171話 装備を整えよう!
「おー、やってるやってるー」
「サービス開始直後だから、モンスター狩りをしている人が多いねぇ」
街を出ると、ヤオイが言うように、モンスター狩りをしている人が多く見受けられた。
パーティーを組んでいる人や、ソロでやっている人、さまざまだ。
中には、かなりの大人数でやっているところもある。
「うーん、こうも人が多いと、やっぱり取り合いになりそうね」
「そうだな。よく見ると、喧嘩しているプレイヤーもいるみたいだ」
「えーっと、草原みたいに広くはないけど、いい場所があるけど、行く?」
「立ちっぱなしってのも、さすがに嫌だしな。よし、じゃあ頼むぜ」
「うん。ちょっと歩くけど、こっちだよ」
ボクが先導して、前を歩く。
その際、AGIにとんでもなく差があるので、みんなに合わせて歩く。
気を抜くと、かなり進んじゃうからね……。
そうして、歩くこと約30分。
目的地に到着。
「ユキ、ここは?」
「ゾールって言って、ボクが修業時代に住んでた森だよ。……あるかはわからなかったけど、あってよかった」
「修業時代って言うと、ミオさんの?」
「うん。多分、師匠の家もあるんじゃないかなぁ」
あったら、いよいよこの世界がミレッドランドをモデルにしていることがわかる。
だから、それの確認もかねて、という理由もあったり。
「じゃあ、行こ」
ちょっと暗めの森に入り、師匠の家があるであろう場所を目指す。
あってもなくても、その周辺にはいい感じの広場があるしね。そこなら、モンスターを狩るのもちょうどよさそう。
と思って、森を歩いていると……
「あ、あれ家じゃない?」
「ほんとだー。ユキ君、あれがそうなの?」
「そう、だね。あれが、ボクが一年間住んでた家だよ」
ありました。
本当にありました、師匠の家。
しかも、どこも変わったところがない、木造二階建ての家。
「あー、えっと、ちょっと待ってて。たしか、中にいいものがあった気がするから」
「それじゃあ、私たちはここで待ってるわね」
「うん。じゃあ、行ってくるね」
一言断ってから、ボクは師匠の家に入ていった。
「う、うわぁ、き、汚い……」
家の中に入ると、やっぱり汚かった。
ボクだけで入ったのは、これが理由。
だって、こんな汚い部屋を、みんなに見せられるわけないよ……。だってこれ、身内の部屋だよ? 綺麗だったらまだしも、汚かったら、さすがに、ね?
こう言ったらあれだけど、身内の恥を見られるような気がしてね……。
師匠は、理不尽だけど、割としっかりしてる、みたいなイメージが、みんなには定着しているみたいだから、壊したくない。
……甘やかしすぎかなぁ。
「それはそれとして、えーっと、アイテムは……」
ごそごそと、家の中を漁る。
師匠のをもらっていくわけにはいかないので、ボクが向こうの世界に滞在していた時の物を探す。
一年目に使っていた普通の武器とか、二年目と三年目に使っていた武器などが、たしかあったはず。
三年目に使っていた武器は、再び異世界に訪れた際に、ここに置いてきている。
もし、あの世界が舞台で、あの一週間を基にして作っているのなら、あるはず……。
「あ、あったあった」
ちょっと苦労はしたけど、意外とすぐに見つかった。
とりあえず、みんなに必要そうなものを持っていこう。防具も人数分かな。
ボク自身の武器は……まあ、あった方がいい、よね?
「みんな、おまたせ」
「おかえり。それで、何を持ってきたのかしら?」
「うん。もし、この世界がもう一度異世界に行った一週間のデータを基にしているなら、ボクが持っていた武器とかもあるかなー、と思ってね。探したら、見つかったから、みんなに上げるよ」
と言って、地面に武器と防具を出す。
「うお、すげえ……いいのか?」
「いいよいいよ。どうせ、ボクには使えない武器だし。それに、初期装備だと、すぐに壊れちゃいそうだからね」
「……それなら、ありがたくもらうわ」
「うん。もらってもらって」
ミサが受け取る気になったことで、みんなも各々選びだした。
今回、ボクが取り出してきたのは、みんなに合わせた武器と防具。
武器は、ブロードソードが一本。大剣三本。短剣一本。杖が一本。そして、刀が一本だ。
短剣が一本なのは、これはヤオイ用だから。
ボクのは別で持っているので、問題なし。
防具は、鎧が二つ。ローブが一着。和装が一着、靴が人数分となっている。
なんで和装があったのかは、わからないけど、師匠がぽろっと漏らしていたけど、ボク以外の異世界の人が来たんじゃないかなって。多分それが、日本人だったんじゃないか、とボクは思ってる。
まあでも、日本に似た世界がある、別の異世界かもしれないけど。
ちなみに、持ってきたアイテムの名前と効果を挙げると、こうなる。
【
【白ノ鎧】……純白と言って過言ではない、
【黒ノ大剣】……黒一色の180センチはあろう大剣。《戦士》《重戦士》が装備可能な武器。STR+30。《武器スキル:地波》前方に地面を這う衝撃波を放つ。威力は、STR由来。装備条件:STR50。
【
【調合士ノ杖】……よくわからない木でできた、魔法の杖。《魔法使い》《調合士》が装備可能な武器。MP+10・INT+30《武器スキル:魔力増幅》放った魔法の威力が1.5倍になるパッシブスキル。装備条件:INT50
【調合士ノ白衣】……かつてどこかの研究者が身に着けていた衣服。シャツとスカートでワンセットの代物。《調合士》が装備可能な防具。装備部位:体・腕・足。VIT+25・INT+30。《防具スキル:効率上昇》調合の際、必要な時間が半減される。装備条件:INT60
【
【
【
と言った感じです。
ローブと言いつつ、どう見ても白衣ですが、まあ、この世界の中ではローブです。
ちなみに、【白の鎧】が二つ、【黒の大剣】が三つですね。同じ武器です。
えーっと、見てわかる通り、序盤でこれらは割と強いです。
というか、普通の武器とか防具には、スキルなんてそうそう付いていないんだけどね。
この武器や防具は、たまたま助けた人からもらったり、洞窟内の宝箱に入っていたりしたものです。いつか使えるかも、と思って取っておいたけど、結局日の目を見ることはなく、異世界から帰還した、という経緯があります。
仮想空間だけど、これなら眠っていた武器や防具たちも報われるよね。
ちなみに、ボクは、
【
【魔殺しノ短剣】……魔の者たちを殺すために創られた、漆黒の短剣。《暗殺者》《調合士》が装備可能な武器。STR+40。《武器スキル:
【天使ノ短剣】……不死者や亡霊を浄化するために創られた、純白の短剣。《暗殺者》《調合士》が装備可能な武器。STR+35。《武器スキル:
【悪路ブーツ】……どんな場所でも走れるようにと創られた、黒のロングブーツ《暗殺者》が装備可能な防具。装備部位:靴。AGI+50%《防具スキル:悪路走破》どんな地形の影響も受けないパッシブスキル。装備条件:AGI200・INT100
と言った感じです。
これらは、ボクが二年目後半から、魔王討伐まで、ずっと使用していた愛用の装備品たちです。
あの頃でも十分すぎるほどに強かったけど……こっちでも、その強さは健在だったみたいです。
……ただでさえ、異常なステータスが、さらに異常になった気がすごくするよ……。でも、これは思い出の装備だから、肌身離さず身に着けていたくて……。
「へぇ、いいわね、これ」
「てっきり鎧は重いのかと思ったが、むしろ軽いな」
「おう! しかも、めっちゃ動きやすいぜ!」
「白衣、いい! まさか、こっちに白衣があるとは思わなかったよ!」
「それを言うなら、和服もね。これ、綺麗ね。気に入ったわ」
「よかった。最初なら、それで十分だと思うよ。どんどん先に進んで行って、厳しいと感じるようになったら、強化したり、もっと強い武器や防具にすればいいと思うよ」
まあ、他にも武器とか防具はあるんだけど……みんなのステータス的に、全然装備できないからね。
もし、必要になったら、その時聞いてみよう。
「ありがとう、ユキ。おかげで、楽しめそうよ」
「それならいいけど……。最初から強いと、つまらなくなりそうなんだよね……」
特に、ボクなんてそうだよ。
ステータスが異常だもん。装備は……まあ、思い出の品だし、その……ね?
目立たないよう、自重して過ごさないとね。
「いいんじゃね? どの道、強いのなんて最初だろ。それによ、これってレア装備なんだろ?」
「た、多分」
「やっぱ、MMORPGの醍醐味的に、優越感に浸れるってもんよ!」
「そ、そうかな?」
あんまり、そう言うタイプのゲームはやってこなかったから、醍醐味とかよくわからない。
「まあ、たしかにそれはあるかもねー。超激レア装備を身に着けている人って、結構羨望の的になったりするしね。それに、やりすぎはよくないけど、有名になれるもん」
「……目立つけど、いいの?」
普通、有名になるのって嫌じゃない?
「私は別に。正直、ユキが一緒にいる時点で、今更よね。目立つのなんて。ユキとプレイする時点で、覚悟はしてるわよ」
「そうだな。そもそも、銀髪っていう目立つ姿をしているどちらかと言えば少なめの女性プレイヤーと一緒にいる時点で、目立つだろう」
それ、ボクのせいで、みんなが目立つってことなんじゃ……?
「ユキ君、可愛いからね~。やっぱり、どこ行っても目立つよ。今まで、目立たないことなんてあった?」
「うっ、そ、それを言われると……」
どこに行っても、ちょっと目立っていたような……。
学園祭とか、モデルとか、ハロパとか、体育祭とか、冬〇ミ? とか……なんだかんだで、いつも視線を多く受けていた気がする。
……そう思ったら、みんなに申し訳なくなってきた。
「……ごめんね、いつも」
「さっきも言ったけど、今更よ、今更。正直、一ヶ月で慣れたわ」
「俺もそれくらいだな」
「オレは、別に気にしてなかったぜ」
「わたしもー」
「……ちょっとは気にしたほうがいいと思うよ」
でも、そっか。
考えてみれば、みんな目立つような状況が多かったのに、一緒にいてくれてるんだもんね。今更、と言われても、たしかにそうかも。
それに、みんなに頼る、って約束したもんね、あの日。
「よーし、装備も整ったし、気を取り直して、狩りに行こうぜ!」
「「「「おー」」」」
と、意気揚々と、ボクたちは出発した。
あれ。そう言えば、街を出る前も、こんなことをしていたような……き、気のせいだよね。気を取り直して、だもんね。
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