第169話 合流と初掲示板
まさかすぎるボクのステータスに、絶句通り越して、ボクは沈んでいた。
なんで、初期からあんなおかしすぎるステータスになっちゃってるの?
ねえ、なんで?
しかも、レベルが10とかならわかるよ? でも……普通にレベル1なんだけど。
初期なんだけど。初期なのに、あんなにスキルとか魔法を持っちゃってるんだけど。
あと、スキルと魔法にレベルがあるのもすごく気になるんだけど。
普段よく使っていたりするスキルとか魔法は、レベルが10なんだよね……。ということはこれ、レベル10が最高? 多分、そうだよね?
……いや、ちょっと待って? そう言えば……なんで、【鑑定(低)Lv2】で、他人のステータス、丸裸にしちゃってるの? 普通、こういうスキルって、アイテムを鑑定するのに用いるようなものだよね? なんで、プレイヤーのステータスが見えちゃってるの? 大丈夫? これ。
それに、ボク【睡眠耐性】なんて持ってないよ? 現実には、『毒耐性』と『精神攻撃耐性』しかないよ? なんで?
もしかして、ボクの体が変化する際、いつも強すぎる睡魔に襲われているから、知らず知らずのうちに手に入っていた、とか?
……ログアウトしたら、一度確認しておこう。
それにしても……スキルはともかく、この称号四つはどういう意味? あと、何かしら効果とかってあるの?
……ちょっと、見るのが怖いけど見よう。
【最強の弟子】……世界最強の人物を師匠に持つ者に与えられる称号。効果:レベルアップ時、取得できるFPとSPが増える。
【神に愛された少女】……文字通り、神に愛された少女に贈られる称号。効果:常時、LUCが上がり、隠しダンジョンが見つけやすくなる。仮に、一撃必殺の攻撃を受けたとしても、HPが1残り、一度だけ耐えることができる。
【純粋無垢なる少女】……心が純粋な少女に贈られる称号。効果:状態異常を受けにくくなる。知らず知らずのうちに周囲が味方してくれるため、買い物をする際、値段が三割引きになる。
【変幻自在】……様々な姿に変化をする者に与えられる称号。姿によって、ステータスが変動する。場合によっては下がることも。
…………いや、壊れてるね、これ。
特に、最初三つ。
いやこれ、かなりとんでもないことになってるよね? 初期キャラでこれは……確実に目立つ……。
そもそも、さっきの戦士職の人が今のボクに追いつくためには……最低でもレベル29は必要なんだけど。
いや、そもそも、上げにくいステータスがあることを考えたら、ボクのステータスは相当おかしいよね? HPとVITが上がりにくい、とか書かれていた割には、かなり高くない?
ボク自身、初期からすでに勝ち組みたいなことになっちゃってるんだけど……。
というかね、一番ツッコミを入れたいのは……少女って認識されてることなんだよっ!
ボク、完全に少女扱いされてるんだけど! 完全に、少年じゃないんだけど!
世界から少女認定を受けていたけど、ゲームでも少女認定!?
いや、そもそも作る際に、思いっきり女の子キャラしか作れなかったから、当然かもしれないけど……ボクの場合、男で作ってもいいじゃん! 項目なかったから、スルーしてたけど!
「うぅ……酷い……」
あまりにも、酷すぎる状況に、がっくりとうなだれる。
すると、
「……あー、ユウキか?」
ふと、頭上から誰かの声が聞こえてきた。
というか、この声は……
「えっと、あき……じゃなかった。ショウ?」
「よかった、ユウキみたいだな。……なんか、頭上の名前がユキになっているから焦ったぞ? なんで、名前が違うんだ?」
「いや、その……ちょっとタイピングミスしちゃって……」
「ああ、なるほど。Uが一個抜けたんだな。よくあることだ」
「あ、あはは……おかげで、女の子っぽい名前になっちゃったけどね」
「その姿だと、まったく違和感もないし、いいんじゃないか?」
「……それ、ボクの境遇知ってて言ってる?」
「……悪い」
ショウにジト目を送ると、気まずそうに謝った。
いや、うん。実際似合ってるのが何とも言えないんだよ……。だって、銀髪の女の子の名前が、ユキなんだよ? 似合わないどころか、むしろぴったりなんだよね……。
「……そういえば、ショウは外見を変えてないんだね?」
目の前にいるショウは、現実の晶とほとんど変わらない外見をしていた。
さらさらの金髪に、整った顔立ち。
普段よく見る、イケメンな幼馴染。
「まあな。クリエイトは苦手でな。というか、俺たちのメンバーは、基本リアルにするだろうな」
「まあ、その方がわかりやすいもんね」
別に、クリエイトモデルの方でもいいとは思うけど。
でも、どちらかと言えば、リアルモデルの方がわかりやすくていいよ。
「それで? 俺は、ユキと呼べばいいのか?」
「まあ、うん。プレイヤーネームは、ユキだからね……そっちでお願いするよ」
「わかった。……ところで、他の三人はまだなのか?」
「みたいだよ。ボクが一番乗りだったみたいで」
「そうか。ユキは、職業は何にした?」
「暗殺者だよ」
「……聞くまでもなかったか」
「現実だと、普通にそうだからね」
と言っても、向こうの世界では、だけど。
一応、ステータスとか、能力、スキル、魔法構成的には、向こうもこっちもないけど。
とりあえず、ショウと世間話をしていると、
「おっすおっす! えーっと、ショウとユウキか?」
なにやら、やや筋肉質で長身の男性プレイヤーが話しかけてきた。
「「………どちら様?」」
見たこともない人に声をかけられたものだから、素でそう切り返していた。
いや、見たことはないけど、おおむね誰かわかってるんだけど……一応、ね?
「おいおい、オレだよ! レンだよ!」
「……どちらで?」
「ちょっ、ひ、酷くね!? オレたち、噴水に集合って言ったよな!?」
態徒だった。
この反応は、間違いなく、態徒だ。
「あー、たい……じゃない。レンは、クリエイトモデルにしたのか?」
「おうよ! 正直、リアルモデルでもよかったんだが、やっぱゲームだしな! ちょっとくらい、いじりたくなるぜ!」
「そうか。……だがまあ、現実より筋肉盛ってないか?」
「この方が、強そうだろ?」
「……そうだな」
あ、ショウが呆れてる。
呆れられている態徒……もとい、レンを見ると、たしかに強そう。
やや筋肉質の体に、180以上はある長身。顔立ちも、歴戦の格闘家、みたいな感じになっていて、いかにも強そう。ちなみに、短髪。
「にしても、二人はあんま変わんねーのな」
「まあな。……ふと思ったんだが、リアルモデルだと言うのはやめた方がいいんじゃないか?」
「えと、どうして?」
「いや、このゲームをやっている人は、リアルモデルとクリエイトモデルの違いが判っているからな。だから、リアルモデルと聞けば、現実と同じと気付くだろう?」
「なるほど……たしかに」
「てか、ユキの場合は、無理じゃね? 髪色的に」
「……そう言えば、そうか」
「え、じゃあボクだけバレてるの?」
「「多分」」
……そ、そんな……。
た、ただでさえ、ボクは色々と目立っているのに、これ以上目立つなんて……勘弁してよぉ……。
じゃあ、ボクが一人で歩いている時、なんだか視線を感じると思ったのは、ボクがリアルモデルだと気付いたから?
……ぽいよね。
ど、どうしよう?
「お待たせ」
「おまたー」
と、今度は二人の女の子がやって来た。
目の前にいるのは、黒髪の女の子と、オレンジ髪の女の子だった。
どう見ても、普段会っている二人だね。
身長とスタイルも現実と変わっていない。
「えーっと……人違いじゃないわよね?」
「あ、大丈夫だよ。えっと、ミサとヤオイだよね?」
「ええ、そうよ。よかったわ、人違いじゃなくて」
「だねー。もっとも、ユウキ君を間違えるなんて、まずありえないけどね」
「そうね。……って、ユウキじゃなくて、ユキ?」
「あ、えっと、この名前は、タイピングミスしちゃって……だから、ユキって呼んで?」
「なるほど、了解」
「おっけー!」
なんとなく、理解してくれたような表情をしてから、了承してくれた。
別に、この名前が嫌とかはないんだけど。
「……それで? そこにいる、筋肉質の男は? いや、言わなくてもわかるけど。一応」
「おう、レンだぜ!」
「……OK。理解したわ」
「うん。間違いなく、クマ吉君だね」
「ちょっ、その名前はあん時のだろ!? 今は、レンだ!」
「ふふふー。まあでも、みんな集まったみたいだし、これからどうする?」
「そうね……とりあえず、どこかでステータスの確認でもし合わない? 一緒にプレイするなら、情報を知らないと連携なんてできないもの」
「そうだな。……お、あそこにいい感じの喫茶店があるな。そこはどうだ?」
そう言って、ショウが示したのは、落ち着いた雰囲気を放つ、小さな喫茶店だった。
……あれ、なんだろう、やっぱり見たことがある。
気のせい?
「いいわね。とりあえず、入りましょうか。所持金は、一人千テリルあるみたいだし」
「飲み物くらいな大丈夫だよね!」
「んじゃ、行こうぜー」
と、喫茶店に入ることになった。
……て、テリル? その通貨、すっごく聞きなじみがあるんだけど。
もしかしてこのゲームの舞台って……。
「ユキー行くわよー」
「あ、う、うん!」
ミサに呼ばれて、ボクの思考は中断された。
《CFO公式掲示板 匿名プレイヤーたちのお話広場》
1:おーし、世界初のVRゲームの掲示板立てたぜ!
2:ナイス!
3:ラノベとか見てて、マジこう言うのやってみたかった
4:サービス開始直後に立てるの草
5:ふっ、世界最初の掲示板立ての称号は手に入れたぜ
6:は? そんな称号あんの?
7:いや、ない。ただ言っただけ
8:つか、称号とか持ってるやつおる?
9:少なくとも、俺は持ってねえ
10:つーか、開始直後で称号持ちとか、どこのラノベ主人公だよって話だな
11:いや、わからんぞー。もしかすると、とんでもない称号持ちのプレイヤーがいるかもしれん
12:まあ、まだ未知な部分もあるし、不思議じゃねーわなー
13:お、とんでもないと言えば、とんでもない美少女プレイヤーを見かけたンゴ
14:kwsk
15:スタート直後に、銀髪碧眼のめっちゃスタイルのいい美少女がいた。何の迷いもなく、噴水に向かっていたンゴ
16:ん? 初期の髪色に、銀髪なんてあったか?
17:いやない
18:てことは……ガチで存在する美少女ってことか!?
19:おそらく
20:ちなみに、その美少女のスクショ、オレ持ってんぜ!
21:なぬ!? うpを希望する!
22:同じく!
23:ちょっと待ってろ。……これだこれ
と、プレイヤーの一人が噴水の前に立っている、銀髪碧眼の美少女のスクショを投稿
24:え、何この女神……
25:ふ、ふつくしい……
26:こんなん美人すぎて、むしろ笑う
27:銀髪美少女ふぉおおおおおお!
28:是非とも、お近づきになりたい!
29:途中から入った者だが、この美少女はすばらしすぎるでござる
30:ちなみに、この後二人の男性プレイヤーと女性プレイヤーと仲良さそうに話して、喫茶店に入っていった
31:くっ、その男二人が羨ましぃっ!
32:そしてこちらが、その男女四人のスクショです
今度は、四人の男女が映し出されたスクショが投稿された
33:くっ、普通に片方イケメンじゃねえか……!
34:てか、こっちの二人も美少女じゃね?
35:た、たしかに……類友ってやつか?
36:いや、この筋肉質の奴はちょっとあれやろ
37:でもよー、金髪なんていっぱいいるぜ? このイケメンとか、普通にクリエイトモデルなんじゃね?
38:そういや、リアルモデルどうこうって言ってたぜ?
39:は? じゃあ何か? この金髪イケメンは現実でもこれだと?
40:らしいのう
41:でも、これ見てる限りだと、リア友か?
42:いや、こんな人数で集まっておいて、リア友じゃないはないわ
43:……つか、この銀髪美少女、女神様っぽくね?
44:ああ、あのネット上で、騒がれてた?
45:おう。まあ、銀髪の時点で間違えようがない
46:てことはなにか? もしかすると、この女神様とお近づきになれる日が来る可能性があるってことか!?
47:やべえ、テンション上がって来た!
48:今思えば、最初の掲示板の話の内容が、美少女に関する話題だけってあれだな
49:たしかに
50:まあ、美少女だからな! 話題にならない方がおかしい!
51:ふむ。ならば、今後はとりあえず見守っていく方針かの
52:異議なし!
というような、会話がサービス開始直後の掲示板で行われていた。
やはり、どこの世界でもユキは目立つようだ。
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