第151話 依桜ちゃんの誕生日会(当日) 下

「んじゃ、オレたちは先に帰ってんぞー」

「うん。また明日ね」

「じゃねー」


 今日は、みんな用事があるそうで、早々に帰って行った。

 ボクはボクで、お買い物を母さんに頼まれ、商店街に行くところです。


「さて、ボクもお買い物を済ませて、家に帰ろう」


 そう言えば、母さんが、ゆっくりでいいわよー、って言ってたけど、どういう意味だったんだろう? お買い物を頼むくらいなんだから、早めに、って言うと思うんだけど……。


「まあ、母さんだし、変なところがあるのはいつものことだよね」


 まあでも、ゆっくりでいいのなら、ゆっくり行こう。



「えーっと、買うのは……シャンプーと、たしか食器用洗剤に……あ、そう言えば石鹸とボディソープも切れてたっけ」


 一応、何を買えばいいのか、というのはメールで送られてきているからわかるけど、いくつか切れているものがあると思いだす。

 送られてきたリストを見ていると、生活用品が切れてるし、もしかすると、他にもあるかも。

 うーん……そう言えば、柔軟剤と食用油も切れてた気が。

 それから、ゴミ袋も。


「……意外とある。母さん、忘れてたのかなぁ?」


 まあ、いつお買い物があってもいいように、ってお金は二万円近くは持ち歩いているけど。

 普通だったら危険かもしれないけど、ボクの場合はすぐわかるからね。問題なしです。

 リストにあったものと、思い出したものを買って、他にはないかと考える。


「えーっと、生活用品は多分ないし……食用品は……あ、そう言えば、牛乳とコーヒー、卵もなくなりそうだった気がする」


 なら、そっちの方も買いに行かないと。


 

「うん。これで問題ないね。じゃあ、帰ろう」


 お買い物も終わり、家に向かう。


 そういえば、商店街のみなさんがボクを見るなり、『おめでとう!』って言って、色々な物をくれたんだけど……何だったんだろう?


 何かおめでたいことでもあったのかなぁ。

 まあ、そのおかげで荷物が増えちゃったわけだけど……。


「それにしても……お酒はないよね……」


 肉屋さんのおばさんからは、コロッケとメンチカツを。

 魚屋さんのおじさんからは、お刺身類とぶりのあらなどを。

 八百屋さんのおじいさんからは、色々な野菜を。

 そして、なぜか酒屋さんのお兄さんからは、高そうな日本酒をもらってしまった。


 ボク、まだ未成年なんですけど、と言ったら、


『いいんだよ! どうせ、二年後には二十歳なんだから!』


 って言われて、押し付けられた。

 日本酒って、置いておくと熟成とかするのかな?


「まあ、これは師匠行きかな」


 なんだかんだでお世話になってるし、師匠、日本酒を気に入ってたからね。


「……それにしても、随分荷物が増えちゃったなぁ」


 別に重くはないけど。


 商店街で買ったものと貰ったもの。

 シャンプー。食器用洗剤。石鹸。ボディソープ。柔軟剤。食用油。ゴミ袋。牛乳。コーヒー。卵。コロッケとメンチカツ。お刺身類とぶりのあら。野菜。日本酒。


「……これ、普通の人だったら、かなりの量、だよね?」


 だって、道行く人が見事な二度見をしてくるんだもん。

 ボクの場合、異世界で鍛えてたから全然重さを感じてないけど、普通に考えたら相当な荷物だよね?


 うーん、一応リアカーを勧められたけど……リアカーを引いてる女子高生、って画になっちゃうからなぁ。

 結構シュールじゃない?


「……そう言えば、ボクって今制服だけど、日本酒なんて持ってて大丈夫なのかな?」


 ボクが飲むためではないにしろ、未成年が持っていていいものじゃないような……?

 途中、警察の人とすれ違ったけど、なぜか何も言われなかった。それどころか、笑顔だった。

 言われないに越したことはないけど。


「うーん。まあでも、この街って割と能天気な人が多いし、珍しいことじゃないよね!」


 ……なんて言うボクも、最近毒されているのかも。



「ふぅ、やっと着いた……えーっと、鍵鍵……あった」


 一旦荷物を地面に下ろして鍵を取り出す。

 今日は母さんたちがいない、って言ってたからね。


「やっぱり、冬は日が沈むのが早いなぁ。それに、ちょっと寒くなってきたし」


 と言っても、向こうの豪雪地帯に比べれば、日本の寒さなんてなんのそのだけど。

 とはいえ、油断ができないのも事実。

 実際、最近風邪引いたしね。

 ……できれば、あんな恥ずかしい姿を見せたくないので、風邪には気を付けよう。

 一応、十二月に入ってから、念のためマフラーとか手袋をしてるけど。


「でも、学園の制服って、スカートが短いから、ちょっと寒いかも」


 一応、ニーハイソックスを穿いてはいるけど、それでも寒いものは寒い。薄いしね。

 ……と言うか、服装について、ほとんど違和感を持っていないのって、元男としてどうなんだろう?

 原因はすべて、中学校だけど。


「っと、そんなこと考えてないで、さっさと入ろう」


 荷物を持って、中に入る。

 誰もいないせいか、真っ暗だ。

 そう言えば、師匠も少し用事がある、って言ってたっけ。

 見事にみんないないから、家の中ががらんとしてるよ。


 ……この感じ、向こうでの三年目を思い出す。

 住んでいる場所に戻っても、誰もいなくて、灯りもない。


 ただただ無機質な空間があるだけで、帰っても苦痛だったっけ……。

 そう考えたらやっぱり、誰かがいるって、幸せなことなんだな、と強く思うよ。


「えーっと、とりあえず、部屋に戻る前に、リビングに荷物を置いて行かないと」


 荷物を置いたら着替えて、少し家事をやって、と考えながらドアノブに手をかけ、リビングの扉を開けた瞬間……


 パンッ! パンッ!


 という破裂音が、何度も鳴り響き、


「「「「「「「依桜(君)誕生日おめでとう!」」」」」」」

「……ふぇ?」


 ボクに祝福の言葉が向けられた。

 見れば、未果たちに、師匠、父さんと母さんもいる。

 みんな揃って、手にはクラッカーを持っていた。

 あ、え、ど、どういうこと……?


「おいおい、どうしたんだー? 依桜。今日は、お前の誕生日だろ。まさか、忘れてたのか? 父さん、びっくりだぞ」

「た、誕生日……? あ」

「あ、って……依桜、本当に忘れてたのね。毎年、晶たちとお祝いしていたのに」


 ボクの反応に、未果が呆れつつも苦笑いでそう言う。

 そ、そう言えば、今日ってボクの誕生日だったっけ……。

 向こうで三年間も過ごしていて、誰にも祝われなかったし、そもそも、そんなことに気を回している余裕がなかったから、すっかり忘れてた……。


「で、でも、みんな用事があるって……」

「当然、依桜の誕生日会をするために決まってるよ」


 ボクの言葉に反応したのは晶。

 と、当然って……。


「いやはや、依桜君いい反応だねぇ!」

「つーか、自分の誕生日を忘れてるって、普通に抜けてるよなぁ」

「……暗殺者だというのに、サプライズに気づかないとはな。ま、今回はそれが功を奏したと言ったところか」


 いつものように、呆れている師匠は、柔らかい笑みを浮かべていた。

 それに、女委も態徒も笑っている。

 三人だけじゃなくて、ここにいる人みんなが笑顔で。

 その光景を見て、ボクは、


「……ひっぐ、ぐすっ……」


 泣き出してしまった。


「ど、ど、どうしたの依桜? もしかして、嫌だった? クラッカーにびっくりしすぎて怖かった? お母さんが頭を撫でてあげましょうか?」

「ち、違う、の……う、うれし、くて……」


 だ、だって、向こうでは誰も祝ってくれる人がいなくて、それどころか忘れていたようなボク。

 誰一人として、称賛はしても祝うようなことはなかった。

 無意識のうちに、寂しさを感じていたのかもしれない。

 向こうでは、ずっと孤独に感じていたのかもしれない。

 だから……


「あ、あり、がとうっ……えぐっ……」


 泣きながら微笑み、みんなに感謝した。



 ボクが泣き止むのを待ってくれて、誕生日会と相成った。


「と、言うわけで……まずはプレゼントよね! 未果ちゃん、よろしく!」

「はい。……はいこれ。私たち四人とミオさんで選んだものよ」

「わ、わわっ」


 いきなり、三つも渡されて、わたわたとしてしまった。

 そのうちの一つが結構大きくてびっくりした。


「開けていい?」

「ええ、どうぞ」


 まずは、一番小さい包みを開ける。


「これは……リボン?」


 中には、水色と白のストライプ柄のリボンが入っていた。

 よく見ると、他にも雪の結晶や、桜をモチーフにした飾りのついたヘアゴムに、月下美人をかたどったヘアゴム、そして、紅葉がプリントされたリボンが入っていた。


「そうよ。依桜、髪をまとめるものが欲しい、って言っていたのをミオさんが聞いていたらしくてね。ちなみに、リボンやヘアゴムは、ミオさんからよ」

「お前、髪が長いからな。運動する時なんて、邪魔になるだろ?」

「あ、ありがとうございます!」


 まさか、師匠からプレゼントをもらえるなんて……どうしよう。すっごく嬉しい!

 やっぱり、理不尽でも、本当にいい人だよね、師匠。

 あと、照れているのか、ちょっと頬を赤くして、そっぽを向いているのも、何と言うか……ちょっと可愛いと思ってしまった。


「それじゃあ、次は大きめの包み……これって……」


 大きめの包みの中に入っていたのは、


「くまさんだ!」


 大きいくまさんのぬいぐるみだった。


(((((((くまさんって……言い方、可愛いな)))))))


 こう見えてもボク、昔から可愛いぬいぐるみとかが好きで、よくお店で買ったり、クレーンゲームで獲ったりしてたんだよね。

 だから、このプレゼントはすっごく嬉しい。

 ベッドに置いておこう♪


「それじゃあ、最後のを開けるね。えっと……こ、これは……」


 最後の包みを開けて絶句した。


 一個目、髪留め。

 二個目、くまさんのぬいぐるみ。

 三個目……下着。しかも、微妙に際どいデザインだし、透けているのも入ってる。


「って、な、ななななななななにこれぇぇぇぇぇっっ!?」

「何って……下着?」

「そうじゃなくて! これはどういうこと!?」

「うーむぅ……エッチな下着?」

「こんなの、誰が選んだの!?」


 みんなが一斉に、女委を指さす。


「わかってたけどっ。わかってはいたけどっ……これはないよっ!」


 一個目、二個目との落差が激しすぎて、フリーフォールレベルだよ! ひもなしバンジーだよ!


「えー? やっぱり、気に入らなかった―?」

「そう言う問題じゃないよ! なんで、こんなに恥ずかしい下着を買ってきたの!?」

「喜ぶかなーって」

「喜ばないよっ! ボクを何だと思ってるの!」

「天然系エロ娘」

「どういうこと!?」


 もぉやだぁ……。

 なんで、誕生日にこんなおかしなものをプレゼントされてるんだろう……?

 ま、まあでも、一応、プレゼントなわけだし……。


「あ、ありがとうね。その……できれば、こう言うのはやめてほしいけど」

「善処します!」


 ……怪しい。

 でも、ここは信用しよう。……一応。


「ちなみに、ぬいぐるみは晶と態徒から。下着は、私と女委からよ」

「未果も共犯だったの!?」

「「てへ☆」」

「二人とも可愛いけど、こういうのはやめてね!」


 最近、未果も結構悪ノリするようになってきた気がするよ……。

 まともなのは、晶だけに感じる。


「あ、お母さんとお父さんからのプレゼントは依桜の部屋に置いてあるから、後で見てね♪」


 ……なんだろう。嫌な予感しかしない。

 去年までは比較的普通だった気がするけど、今年に入ってから……と言うか、ボクが女の子になってから、母さんは本性を現し始めていることを考えると、碌なものがない気がする。


 ……だ、大丈夫だよね? さすがの母さんでも、誕生日くらいはまともなものをプレゼントしてくれるよね?


「さ、プレゼントも渡し終えたわけだし、ご飯にしましょ。今日はお母さん、かなり頑張っちゃったからね。期待していいわよー!」


 そう自信満々に言う母さんが作った料理は本当に美味しそうだった。

 そして、量も尋常じゃなかった気がする。


「はい、依桜。あなたの好きな、えんがわよ」

「わー! ありがとう、母さん!」


 中でも一番嬉しかったのは、ボクの大好きなえんがわのお刺身が出たこと。

 回転寿司のお店に行っても、お寿司の半分以上はえんがわを食べるくらいに、えんがわが大好きです。


「あ、そうだ。商店街の人が、色々とくれてね」


 ボクは、放置気味だった袋の中から、魚屋さんのおじさんからもらったお刺身類を持ってきてテーブルに乗せる。


「さっすが、我が娘! まさか、大トロに中トロ、しかも、カマトロまで……魚屋のあいつ、随分奮発しやがったなぁ!」


 ……お、おじさん、普通に希少部位を入れてたんだ。

 相当高いと思うんだけど……あ、もしかして、『おめでとう』って、ボクの誕生日のこと!?

 だとしたら、すごすぎない!?


「それから、えっと、こっちも」


 そう言いながら、ボクは肉屋さんのおばさんからもらった、コロッケとメンチカツをテーブルに乗せる。


「お、あそこの肉屋のコロッケとメンチカツ美味いんだよなぁ」

「だよねぇ。わたしも、あそこのコロッケとメンチカツ大好き!」


 そう言えば、肉屋さんのコロッケとメンチカツはすごく人気があったっけ。

 実際、すっごく美味しいもん。


「ほかにも、野菜とか、ぶりのあらももらったんだけど、そっちは明日ぶり大根でも作るね」

「ほんと? 助かるわぁ」


 と言っても、あらの使い道は、煮物にする以外ほとんどないけど。


「あ、それから、これも。こっちは、師匠と父さんかな」

「ん? おお! 日本酒じゃないか! いいのか、イオ!?」

「はい。貰い物ですし、ボクは飲めませんからね。それに、師匠にはお世話になってますからね」

「持つべきものは、優しい弟子だな! ありがとう、イオ!」


 普段なかなか見れない、師匠の満面の笑み。

 と、そんな師匠とは正反対の反応を見せているのが、父さん。

 何やら、もらってきたお酒を見て、ぷるぷると震えていた。


「い、依桜、その酒……幻の日本酒と言われている、『幻灯篭げんとうろう』じゃあないか……?」

「そう、なの?」

「ああ。すまん、ミオさん。ちょっと見せてもらっていいかい?」

「ああ」

「ありがとう。……ま、間違いない。『幻灯篭』だ! お前、これをもらったのか!?」

「う、うん。酒屋さんのお兄さんが……」

「マジか! これはな、五十年に一本出回るかどうかというレベルの代物でな、酒好きの間では、生涯に一度は飲みたい酒と言われているんだよ!」

「えええ!?」


 そ、そんなに貴重なものを貰ったの!?

 さ、酒屋さんのお兄さん、何者……?


「しかもこれ、最低でも数千万。やばい時には、億を超えるんだぞ?」

「いや、それお酒!? 本当に、お酒の値段なの!? おかしくない!?」

「いや、五十年に一本出回ればいい方だからな」


 こ、怖い!

 も、もしかしてボク、数千万円以上するものを、軽々しく持っていたの……?

 お、落としたら、とんでもないことになってたよね、これ。


「まあいいじゃないか! いい酒が飲めるのなら、あたしは全然かまわん! イオ、これ貰ってもいいんだよな?」

「あ、はい、どうぞ。師匠、日本酒気に入ってましたから」

「依桜、俺も飲んでいいか?」

「うん。いいよ。母さんも飲めば? すっごく貴重なものみたいだし」

「そうねぇ。私も少しもらおうかしら」

「なら、あたしらは酒盛りと行くか!」


 今までに見たことがないほどのテンションの高さで、師匠たちが酒盛りを始めた。

 喜んでもらえて何よりだよ。


 ……そう言えば、魚屋さんと酒屋さんでこれなら、八百屋さんからもらった野菜も、すごいのが入ってそうだよね、これ。


 ……後で確認しよう。


「にしても、依桜はすげぇなぁ」

「そうね。普通、一人の高校生に、ここまでする商店街もなかなかないわよね」

「もしかして、何かしたりしたの?」

「え? う、うーん……魚屋さんでは、魚を捌いたり、肉屋さんでは、肉の解体。八百屋さんでは、おじいさんが腰を痛めて困っていたから、マッサージと言いつつ、魔法で治したり、畑を手伝ったり。酒屋さんでは、普通にお手伝いをしていたけど……」

「「「「あー……なるほど」」」」


 昔から知っている人たちだし、かなりお世話になっていたからね。

 少しでも、恩返しを、と思ってやっていたんだけど……。


「つまり、依桜が陥落させたわけか。……末恐ろしいな」

「私、依桜が本物の女神って言われても信じるわ」

「と言うより、天使じゃね?」

「依桜君の優しさは、底なしだね!」

「えっと、普通に、恩返しのつもりだったんだけど……」

「……これを素でやっているからモテるわけだ」

「そうね。ネットの反応を見る限りだと、中には、猫を被ってるだけ、なんて言っている人がいたみたいだけど……そもそも、依桜は猫を被ることとは無縁よね」

「まあでも、依桜は芸能人じゃなくて、一応一般人だからなぁ。そう言う奴が出ても不思議じゃないだろ」

「大体は、僻みや嫉妬だと思うけどねー」


 う、うーん? みんなの言っていることがよくわからない……。


「え、えっと、猫を被るって……?」


 と、気になってボクが質問をしたら、


「「「「依桜(君)はそのままでいて(くれ)」」」」

「う、うん?」


 なぜか、慈愛の目で言われてしまったので、

 猫を被るの意味はわかるけど、みんなが言っていたのはどういう意味だったんだろう?

 そう気になるものの、なぜか言及する気になれなかった。



 途中、ボクが師匠から貰ったリボンで、ためしにポニーテールやツインテールにしてみたところ、


「「「「ぐはっ……」」」」


 母さんと父さん、女委、態徒の四人が胸を抑えて倒れた。なんで?

 料理をあらかた食べ終えると、誕生日ケーキが出てきた。

 ……ウェディングケーキサイズで。


「「「これは無理だろ!?」」」


 と、晶、態徒、父さんの三人がツッコんでいたけど、ボク、母さん、未果、女委、師匠の五人でぺろりと平らげました。美味しかったです。


 その後も、例の日本酒で酔っぱらった師匠が服を脱ぎだした時は、本当に焦った。

 父さんと態徒が鼻血を噴き出して、倒れたからね。

 態徒はともかく、父さんは何してるの? と言いたくなった。


 ちなみに、母さんがかなり怒っている感じでした。

 満面の笑みで父さんに詰め寄っていた。ちなみに、目は全く笑ってませんでした。


 そう言えば、師匠ってかなりお酒に強かったはずなんだけど……もしかして、すっごく美味しいお酒だから、酔った、とか? ……実際にありそう。


 そんなこんなで、楽しい時間は過ぎていき、夜九時に近くなると、解散となった。

 ボクも、お風呂に入ってから、すぐに部屋に戻って寝ることにした。

 そう言えば、母さんと父さんからのプレゼントがあるって言ってたっけ?


「えーっと……あ、これかな?」


 部屋に戻ると、机の上に大きめの包みが置いてあった。

 触った感触的には、衣類系。

 なんだろうな、とわくわくした気持ちで包みを開ける。


「…………」


 そして、固まった。


 中に入っていたのは……小学生用のスクール水着(旧式)と、ゴスロリと言われている服(小学生用)だった。


 この後、ボクの中で何かが切れて、母さんと父さんをお説教したのは言うまでもないです。


 ……でも、すっごく楽しかった。

 最高の思い出になったよ。

 ……最後が全てを台無しにして行った気がするけどね。

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