第128話 生徒・教師対抗リレー(酷い)
数分前
『二日目の午後、最初の競技は、生徒・教師対抗リレーです! こちらの競技は、生徒と教師がリレーで対決するだけの競技なので、得点に関係はありません! この競技は思い出作りが一番の目的なので、楽しみましょう!』
得点に関係ないんだ。
それもそうだよね。
だって、生徒と先生が競っても、得点なんてないから。
「誰が出るのかしらね、生徒のほうは」
「やっぱり、運動部の人とか、かな?」
「たしか、体力測定の記録も考慮されてるらしいな」
「てことは、三年だけじゃなくて、一年も選ばれる奴がいるってことか?」
「らしいな」
「へぇ~。じゃあ、もしかすると、わたしたちの中からも選ばれてる人がいるかもね~」
「あはは。さすがにないとおもうよ」
なんて、笑って否定していたら。
『では、生徒側の出場者を発表します! まずは、三年一組の御手洗君。三年三組、小林さん。同じく、三年三組、渡辺君。三年四組、藤堂さん。二年三組、深山君。二年七組、四月一日さん』
「たしか、七人だったか。選手を聞いてると、部活で活躍したような生徒が多いな」
「だね~。インターハイに出た人とか、県大会で好成績を収めた人とかばかりだね。二年生のほうも、そう言う人ばかりみたいだね」
『そして……一年六組、男女依桜さんです!』
「…………えぇぇぇぇぇぇぇっっ!?」
思わず、素っ頓狂な声を上げちゃったけど、なんでも!? なんでボク!?
「そりゃ、選ばれるわよね」
「依桜、だからな」
「がんばってね、依桜君!」
「そ、そんな……」
なんで、ボクが出ないといけないんですか……。
うぅ、出ることはないと思ってたのにぃ。
『呼ばれた生徒は、グラウンドに集まるよう、お願いします』
「いってらっしゃい、依桜」
「……いって、きます」
足取り重く、憂鬱な気持ちで、ボクはグラウンドに向かって行った。
そして、そのあとボクがアンカーと言われ、今に至ります。
「ま、安心しな。お前の力に合わせてやる」
「そ、そうですか? よ、よかったです……」
「ま、今のお前の本気で、だが」
「……安心したボクがバカでした」
ボクの今の本気って言ったら、通常時の素早さを三分の一にした数値。
たしか、1529だったから……約500。
そこに身体強化をかけたら、1000を超えることになっちゃうんだけど。
その状態で走ったら、一瞬で一周が終わってしまう。
そして、その状態に師匠が合わせるというけど……それ以上のスピードで走るつもりだよね?
通常時のボクに師匠が合わせるように、師匠も三分の一の出力で走るってことだよね?
……か、勝てる気しないよぉ。
「本気で走れよ?」
「む、むりです! そんなことをしたら、グラウンドがボロボロになっちゃいますよ! このあと、ぼうたおしとかあるんですから!」
「だが、こういう機会でないと、お前を負かすことができないしな……」
「ま、まかすって……。あの、ボクは別に、しょうぶがしたいわけじゃないんです。あくまでも、思い出作りなんですよ、このきょうぎは」
「そうは言うが、あたしだって思い出作りがしたいんだよ」
「え、師匠が、ですか?」
それはちょっと意外……というか、似合わないような……?
だって、思い出を振り返るどころか、現在を理不尽を纏って驀進するような人だよ?
さすがに……。
「おい弟子。今、失礼なことを考えなかったか?」
「そ、そんにゃことはにゃいですよ!?」
「……ふむ。まあ、今のお前をどうこうするのは、絵面的にアウトなんで、見逃してやろう」
……この姿だから助かった、って言うのが何と言うか、複雑なんだけど……。
もしかして、この姿のほうが利点が多かったり……?
って、だめだめ! ボクは小学生じゃない! 小学生じゃない!
「……ところで、師匠」
「なんだ?」
「あの、なんでそのかっこうなんですか?」
「なんでも何も、動く時はいつもこの格好だろ? 何を今さら」
で、ですよね。
師匠は相変わらず、タンクトップに、ホットパンツ。それから、ニーソックスに、ブーツという姿。
幸い、昨日今日は暖かいからいいけど、冬でもこの姿……なんだろうなぁ。だって、向こうの世界でも、仕事をしたり、運動をしたりするときは、基本この服装だったし……。
師匠に、寒くないんですか、と訊いても、
『あたしは別に寒くないぞ。というか、厚着したら動きにくいだろうが。効率が悪くなる』
って言われてしまった。
……実際、本当に寒くなさそうなんだもん、師匠。
もしかして、神様的存在だから、なのかな?
神気、とかを纏ってるのかも。
「というか、それを言うなら、お前もなんでその格好なんだ?」
「……着替える暇がなくて……」
ボクの服装は、体操着ではなく……例の、チアガール衣装。
ボクだって、事前に出場させられるって言うことを知っていれば、体操着だったんです。
でも、どういうわけか、この競技は直前になって知らされるから、着替える暇がなく……結局、この服装に。
うぅ、恥ずかしいよぉ……。
「可愛いな、お前」
「や、やめてくださいよぉ……ふ、ふつうです」
「……相変わらず、自己評価の低い弟子だ」
いつも思うけど、自己評価は普通だと思うんだけどなぁ。
ボクって、そんなに自己評価低い?
『さて、ルール説明に移ります! まず、このリレーでは、アンカー以外の六人が半周――150メートル走り、最後のアンカーの人が一周し、ゴール、というルールとなっています! 出場している先生方は、大体が体育科の先生なので、ある程度のハンデを設けます! まず、一走目の生徒がスタートしてから、十秒後に先生がスタートします。そして、バトンパスをする際、生徒は±それぞれ10メートルの飛び出しが許されますが、先生方は、その場でしか受け取ることができません! これは、なるべく拮抗するようにする措置ですので、先生方はご了承いただければ幸いです』
意外と、ハンデが大きい。
普通なら、生徒側が有利なんだけど……。
「ふむ。温いな」
ちらりと師匠の方を見ると、わずかに笑みを作りながら、そんなことを呟いていた。
師匠がいる限り、ハンデは全然ハンデにならない。
もし、拮抗した勝負にしたいのであれば、スタートは、一走目の人が二走目の人にパスをして、半分過ぎてからが重要だと思う。
それくらいじゃないと、勝てないもん、この人に。
……まあ、それくらいでも師匠に勝つのは難しかったりするんだけど。
だって、ゴールテープから10メートル手前にいたとしても、師匠、一瞬で追い越しちゃうもん。
「なあ、イオ。この程度のハンデで勝負するのか?」
「ふ、ふつうなら、これでも十分なハンデなんですけどね……」
師匠、規格外すぎるんだもん。
「そうか。こっちの世界の常識は、よくわからんな」
あの、すでにこっちで暮らし始めて、二週間は経ってますよね? もしかして。まだ理解していないのだろうか、師匠。
「師匠は、もう少し、こっちのせかいのじょうしきをりかいしてください……」
「善処しよう」
……そう言う部分ばかり覚えなくても……。
日本語の綺麗なところは覚えて、なんで常識は覚えてくれないんだろう。
『では、そろそろ始めたいと思います! それでは、先生、お願いします』
「それでは、位置について。よーい……」
パァン!
二日間、何度も聞いた音が鳴り響き、一走目――御手洗先輩がスタートダッシュを決めた。
『速い!
実況がおかしい気がするんだけど!
なんで、競技のことを実況するんじゃなくて、走ってる人の身の上話をするの!?
ボクの時もそうだったけど!
『さあ、十秒経過し、先生側の一走目の先生も走り出しました! 一走目に走りますは、
こ、濃い! すごく濃い先生なんだけど!
小和杉先生は、ボクたちのクラスの体育を受け持ってなかったから、怖い先生だと思ってたけど、まさかそんな趣味があったなんて!
あと、なんで『くまさん先生』? もしかして、ガタイが良くて、くまみたいだから、とか?
それと、その前の紹介のせいで、インパクトが薄れちゃってるけど、陸上競技の元日本代表って、かなりすごいと思うんだけど。なんで、そんな人が、この学園で先生をやってるんだろう?
あと、警察も逃げ出すって……なんだか、可哀そうに思えてきた。
自作のぬいぐるみとキャラ弁、ちょっと見てみたいかも。
『さあ、生徒側は、もう二走目にバトンが移っております! 二走目は、小林さん! 彼女は、女子ソフトテニス部のエースで、こちらもインターハイに出場したほどの猛者です! 美人でもあり、行内でもファンが多いらしく、週に二度告白され、週に三回は下駄箱にラブレターが入っている人です! ですが、当の本人はまさかの百合らしく、現在は男女依桜さんのファンクラブの幹部をしている模様!』
ええ!?
なんか、今すごくとんでもないことを聞いたんだけど!
あの先輩、ファンクラブに入ってたの!? あと、幹部って! そもそも、非公式ファンクラブに幹部なんていたの!? 驚きなんだけど!
「……お前、ファンクラブなんてあるのな」
やめてください! そんな、『え、お前そんなことになってんの? 引くわー』みたいな目を向けないでくださいぃ!
『おっと! 小和杉先生が少しずつ追い上げながら、二走目の先生にパス! 二走目に走るのは、
さ、最悪だよ!
まさか、女委の本の愛読している人が、先生のほうにもいたなんてぇ!
と言うか、度々化学室から爆発音が聞こえてきてたのは、この先生のせいだったの!? 一体何を実験してるの!?
あと、実験のために体を鍛えてるって、かなりおかしい気がするのは、ボクだけ……?
『さあさあ、逃げる生徒側も、三走目に移りました! 三走目は、渡辺君! 渡辺君は、野球部で背番号四番を任されるほどの人ですが、かなりのおっぱい星人としても有名です! 本人曰く『Eカップ未満は胸にあらず』だそうです! 完全に女の敵ですね! 爆ぜればいいと思います! ちなみに、理想は男女依桜さんのおっぱいだそうです』
いらないよ、そんな情報! というか、またボク!? なんで、さっきからボクの名前が出てくるの!?
あと、言ってることが本当に酷い!
本当に全世界のDカップ以下の女の子を敵に回してるよ!
あと、なんでボクが理想なの!? た、たしかに、Gはあるけど……。
……そう言えば、最近ちょっときつくなってきてたっけ。
だ、大丈夫、だよね。うん。大丈夫。
『先生側もかなり近くに迫っていましたが、おっぱい星人、渡辺君によって少し距離を話されています! そんな中、竒外先生が三走目の先生にバトンパス! 三走目に走るのは、
そんな先生がいたの!?
ボクが知らないだけで、すごくとんでもない先生がいるんだね、この学園って!
生徒も大概おかしい人が多いけど、先生方にもおかしな人っているんだね!
『ふにゃ様』って! 一体何を司ってるのか、すごく気になる!
『さあ、また追い上げて来ている先生側ですが、生徒側のほうは、四走目に移りました! 四走目に走るのは、藤堂さんです! 藤堂さんは、周囲からは『普通』、『常識人』と言われているような人です!』
あ、よかった。普通の人ってちゃんといたんだ……。
『ですが、裏ではかなりのエロゲマニアで、過去から現在に至るまでに存在、もしくは存在していたエロゲ会社の名前、そして、声優全員の名前が言えるほどの筋金入りで、特典がいくつかある場合は、全力でアルバイトをして資金をため、全種類コンプリートをすると言う、かなりの猛者です! ちなみに、割とその事実は知られており、『普通の皮を被ったド変態』と言われています。なお、本人は、『エロシーンは見てないから! 見てるのは、ストーリーと導入部分だけだから!』だそうです。ちなみに、バレーボール部のキャプテンをしておりました』
……全然、普通じゃなかったよっ……。
おかしい、やっぱりおかしいよこの学園!
あと、実況がすでに実況じゃなくて、その人の紹介になっちゃってるんだけど!
大丈夫? ねえ、割と恥ずかしいような話を赤裸々にしちゃってるけど、大丈夫なの!?
『真植先生がかなりの追い上げを見せ、また距離を縮めたところで、先生側も四走目の人に移りました! 四走目に走るのは、獅子野先生です! 獅子野先生は、体育科の先生で、かなりの実力を持った先生です! 獅子野先生は、たまにサバンナに行き、野生の猛獣と戦い、ガチのサバイバル生活を送ることができる人で、生徒間では、『無人島にもっていくなら、獅子野先生がいい』と言うほどです! ちなみに、ライオン十匹に、一斉に襲われたことがあり、それを死闘の末撃退したこともあるようです』
……それは、おかしくない?
あの、なんでサバンナでサバイバルなんてしちゃってるんですか? なんで、ライオン十匹に勝っちゃってるんですか……? そしてなんで……この学園で、体育科の先生なんてやってるんですか……?
この学園に、化け物みたいな先生がいたなんて……。
怖いんだけど、本当に。
『かなりの追い上げを見せる中、生徒側は五走目に移りました! 五走目に走るのは、深山君です! 深山君は、重度の中二病で自分のことを『
な、なんで当て字が、ボクが倒した魔王と同じ名前なのっ……?
わ、笑っちゃだめっ……。で、でも、丸被りしてるせいで、わ、笑いがっ……。
『距離十メートルほどにまで縮めた獅子野先生からバトンを受け取ったのは、国語科の
たまに、誰かに見られたような視線が来てたけど……犯人、この先生だったの!?
傍から見たら、完全にストーカーなんだけど! 先生が、生徒をストーキングするって、相当まずいよね! 教育委員会に訴えられてもおかしくないよね!?
『なんとか逃げ切ろうと必死になっている生徒側! 五走目も何とか逃げ切り、六走目にバトンパス! 六走目に走るのは、
め、女委の同業者がいたよっ!
しかも、留年……留年って!
同人誌に熱を入れすぎですよ、四月一日先輩!
せめて、普通の学業のほうもちゃんとしましょうよ!
『ここで、先生側がかなり近づきました! 六走目に走るのは、
……ひ、酷い。酷すぎる……。
この学園に、まともな人はいないんですか……?
……お、女の子になって、よかったかもしれないよ……。
そんなこと、初めて思った。
「よーしイオ。どうやら、お前の方が有利みたいだが、あたしが勝つ」
「……さいしょから、かてると思ってないんですが」
「ま、目立たない程度の本気で走れ」
「……わかりました」
……ここで食い下がっても、師匠に理不尽なことをさせられるか、言われるだけなので、了承することにした。
……酷い話です。
「い、依桜ちゃんっ、お願い!」
「は、はいっ!」
四月一日からバトンを受け取り、走り出した。
出力的には……大体、90くらい。
大体、世界最速のあの人の最高時速が100くらいなので。
ボクはできるだけ、こっちの世界でも可能なレベルのスピードで走った。
「チッ、その程度しか出さないのか……」
と言う、師匠の不機嫌そうな呟きが聞こえてきたけど、無視です!
『さあ、生徒側の七走目! この学園どころか、全国的に有名となった、男女依桜さんです! 九月ごろに、突如として男の娘から超絶美少女になったという、かなり特異な人で、現在は、小学三、四年生ほどのロリっ娘になったり、ケモ耳ケモ尻尾が生えた、小学一年生くらいのケモロリっ娘に姿が変わる体質の持ち主でもあります! 現在は、小学三、四年生ほどの状態、通称『天使モード』と呼ばれる姿で走っております! しかも、露出度が高いチアガール衣装を着ての参加! ロリコン大歓喜の姿です! 可愛い! 可愛すぎます! ですが、できることなら、昨日のようなボンキュッボンの姿でその服を着てほしかったです! あの見事な乳揺れが見たいがためだけに来場した人もいますので! まあ、可愛いからいいんですが』
なんか、すっごく失礼で、恥ずかしいことを言われているような気がするんだけど!
ボクの胸が揺れるのが見たいがためだけに来た人がいるの? 暇なの!?
そ、そんなにいいものじゃないと思うのに……。
『そして、そんな『天使モード』の男女依桜さん、速い! ……って、本当に速い! ものすごい、スピードで疾走しております! これはもしかすると、このままぶっちぎりでゴールできるか――ッ!?』
ようやく、まともな実況をした気がする。
……できれば、終始その実況をしてほしかったです……。
それはそれとして。
師匠がいる以上、ぶっちぎりでゴールするのは難しい……というより、ほぼ不可能だと思うんだけど……。
多分、もうそろそろ。
『おー!? ついに、先生側のアンカー、ミオ先生にバトンが移りました! とんでもない速さで走っている男女依桜さんよりも、圧倒的に速く走っております! そんなミオ先生は、つい二週間ほど前に赴任してきた先生で、初日からその美貌とさっぱりした性格によって、生徒だけでなく、先生の間でもかなりの人気を誇っています! そして、現在は知っている男女依桜さんの師匠であるとの情報もあり、さらにはひとつ屋根の下で暮らしているとのこと! これには、おねショタ、ならぬ、おねロリ的なシチュエーションに、大興奮する人が多く存在しています! 正直、私も好物です!』
待って! なんで、ボクと師匠の関係性が露見しちゃってるの!?
……あ、でも、普段から師匠って呼んでるし、バレないほうがおかしい、のかな?
って、そうじゃなくて、おねロリってなに!?
どういう物なの!?
「追いついたぞ、イオ」
「し、師匠!」
『おーっと! ここでついに、ミオ先生が男女依桜さんに追いつきましたーッ! 師弟対決です! グラウンドでは、師弟対決が行われております!』
「あ、わ、わわわわ!」
突然師匠が話しかけてきたことにより、びっくりして転んでしまった。
「うぅ、いたいぃ……」
『これはどうしたことでしょう! 男女依桜さん、転んでしまいました! これには、会場にいるロリコンたちも、かなり心配――! と、おや?』
「まったく。ほんと、抜けてるな、イオ。しょうがない。よっ、と」
「ふ、ふぇ?」
起き上がろうとしている最中に、師匠が近寄ってきて、気が付いたら体がふわり浮き上がっていた。
そして、近くには師匠の顔が……って!
「し、ししししし師匠!?」
『おーーー! お姫様抱っこ! お姫様抱っこです! なんと、転んでしまった男女依桜さんを、ミオ先生が優しく抱き上げました――ッ! これには、会場も大盛り上がり!』
「お、おろしてくださいぃ!」
「嫌だ」
「な、なんでですか!?」
「だって、お前をこうして抱っこできる機会とかなかなかないしな。まあ、あれだ。昨日のキスの礼だ」
「そ、そんな、あれはおだいだからやっただけでっ。そ、それに、師匠がなんでおれいを言うんですかっ?」
「そりゃまあ……あれだ。役得、ってやつだ」
「や、やくとく?」
「ああ。まあ、んなことはどうでもいい。さて、このまま行くぞ! しっかり捕まってろ!」
「え? きゃっ!」
突然かなりのスピードで走りだし、慌てて師匠の首に手を回してしがみつく。
うぅ、お姫様抱っこは向こうでも一回されたけど、まさかこっちで……しかも、この姿でやられるとは思わなかったよぉ……。
ボク的に、すごく恥ずかしい状態のまま、師匠は走り、
『ゴール! まさかの、同時ゴールです! しかも、ミオ先生が男女依桜さんをお姫様抱っこしてゴールするという、ごちそうさま案件でのゴールです! この場にいる人たちを代表して言います! ありがとう! 素晴らしい画をありがとう! そして、思い出に残る物をありがとうございましたーッ!』
実況の人がそう言うと、周囲からは歓声が上がった。
そんな中、ボクは顔を真っ赤にしながら、終始恥ずかしい気持ちでいっぱいでした。
……うぅ、師匠の馬鹿ぁ……。
心の中でそう思った相手である師匠は、すごくいい笑顔でした。
……ぐすん。
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