第6話 新しい生活
あの後、下着を四セット程買って、ランジェリーショップを後にした。
お会計の際、店員の人から『可愛いですね』と笑顔で言われたのは、ちょっと複雑で、引き攣った笑みでしか返せなかった。
そのあとは、私服を買いに。
一応、今までの服も着れないことはないけど、身長がちょっとだけ縮んで、体格も少し小柄になったおかげで、ちょっとぶかぶかしているのだ。
だから、買わざるを得ない状況に。
洋服屋に行くと、店員さんと母さんが意気投合してしまい、着せ替えショーのような物が始まった。
その過程で色々な服を着せられ、結果的に十着ほど買ってしまった(母さん買いすぎ)。
そして今は、その内の一着を着ている。
上は、可愛らしいウサギや花などがプリントされたTシャツに、ピンク色のパーカー。
下は、赤を基調とした、ミディスカート(膝丈下、膝が隠れるくらいの丈のスカート)に、なぜかニーハイソックス。
シューズだけは、そのままで大丈夫だった。
なぜに?
なかなかにファンシーな服装だけど、これ、よほど自分に自信がある人じゃないと着ない気がする……。
「はぁ……とりあえず、一人で歩いてるのはいいものの……」
んー? なんだか、視線が多いような……?
現在、ボクは一人で街を歩いていた。
と言うのも、
『今の内に慣れておきなさい』
と母さんに言われたから。
まあ、確かにそうなんだけど……昨日の今日でこれだし……初日から外、しかも人通りの多い場所を一人で歩くとか……結構難易度が高い。
それに、さっきも言った通り、周囲からの視線がすごい気がする。
『な、なあ、あの子メッチャカワイクね?』
『どれどれ? うわ、何だあの子、モロタイプなんですけど!』
『あんな目立つ子、今までいたか?』
『いやいない。外国の子なんじゃね?』
『でもまあ……おっぱいは大きいし、顔は可愛いしで、最高じゃね?』
『おい、お前声かけて来いよ!』
『お、お前が行けよ』
なんて会話が聞こえてきた。
今のボクが『男ですよ』なんて言っても信じてもらえないだろうなぁ……まあ、今だと、精神は男で、体は女の子って感じだけどさ。
それにしても……やっぱり、この髪だったり目だったりすると、外国人だと思われちゃうのかな? 昔からこの髪色に、この目の色だったし……。
実際、ボクが周囲から浮かなかったのって未果や晶たちのおかげなんじゃないだろうか?
「はぁ……早く慣れないと、先が思いやられるよ」
慣れたら負けな気がするけど、この際仕方ない。
元に戻る方法がない以上、女の子としての生を受け入れなきゃ……。
「とりあえず、疲れちゃったし、どこかで休憩でも――」
『は、離してください!』
『へへへ、良いじゃねえかよ、ちょっとくれーよ?』
なんだろう、この会話。
ふと、気になる会話が耳に入ってきた。
周囲の人は、ボクを見ているか、喧騒で聞こえていないらしい。
しかも、二つの声の内、一方はすごく聞いたことがあるって言うか、知り合いの声に聞こえるというか……。
聞いてしまった以上は様子を見に行かないと思ったボクは、一度気配遮断を使用。
使えるかわからなかったけど、使った瞬間視線が無くなった。
どうやら、魔法や身体能力だけでなく、能力やスキルも問題なくこっちで使用できるみたいだ。
ボクは人ごみの間をうまく縫って、声のした方――路地裏に向かう。
物陰に身を潜め、様子を伺うと、そこには三人のガラの悪い男たちに絡まれている女の子の姿が。
しかもあの子は、未果?
もしかしてこの状況は……
「だから私、これから行くところがあるんです!」
『別にちょっとだって言ってんだろ? 大した時間はとりゃしねーよ。ま、もしかすると、そっちから帰りたくなくなるかもしれねーが』
「ひっ!」
『兄貴、そりゃ言いすぎ!』
『女が怖がっちまってるだろ? こういうのはよ、スマートに行くんだよ』
男の一人が、未果の胸に手を伸ばそうとしていた。
ボクはそれを見た瞬間、一瞬で未果の前に飛び出し、
「何してるんですか?」
『ぐあっ!? な、なんだ!?』
伸ばしていた手を軽く蹴り上げた。
『なにしやがんだ……って、おお! 何だこの子、メッチャ可愛いじゃねえかよ!』
『うっわ、マジじゃん。俺たちゃついてるな!』
『これなら、一生楽しめるんじゃねえか?』
……うわぁ、何だろうこの人たち。ものすごく不快だ。
顔も見たくないどころか、一切触りたくない。
こういうのを、生理的に無理、っていうのかな?
あ、うん。なんか腑に落ちた。
こんなのに未果は迫られていたのか。
……よく泣かなかったね、未果。
ボクだったら、泣きながらサブミッションをキメる自信があるよ。
『お嬢ちゃん。概ね、そこのカワイ子ちゃんを助けようとしたんだが……こっちは男三人。小さい君に、何ができるって言うんだい?』
「……っ! そ、そうよ、あなたは関係にないわ、私はいいから早く逃げて!」
男の一人が言ってくると、未果がボクに逃げるように言ってきた。
……普通、こういう時って助けてほしいんじゃないだろうか? だというのに、自分の危険にほかの人を巻き込まいと、逃げるよう促してくる。
普通の人だったらできないだろうね。
それに、何の力も持っていないんだったら、ボクだって警察を呼ぶし。
けど、それだと意味がない。
注意だけで終わっちゃいそうだからね。
だから、
「大丈夫だよ、未果。見てて」
「え……どうして、私の名前……」
あ、しまった。
そう言えば今のボクって、姿が変わってるから……
ま、まあ、とりあえず、そんなことはどうでもいいか。
まずは、目の前の人たちをどうにかしないと。
「お兄さんたち、ボクに勝てると思ってるんですか?」
あれ、傍から聞いたら、ボクの今のセリフって、思いっきりあおっているようにしか聞こえないぞ? あれ?
『ハァ? 何言ってやがんだ? こっちは男だぞ? おまけに、格闘技もやってる。普通の女子供じゃあ、勝てるわけねえんだよ!』
『兄貴の言う通りだ!』
『口を動かすんだったらよぉ、別のことで動かしてもらおうか?』
うっわあ……なんかもう、本当にイライラしてきた。
なんて気持ち悪いセリフなんだ。
完全に感情を逆なでするかのようなセリフ。
口説く気あるのだろうか?
「だから何です? 格闘技をやっているから強い? そんなの、確実じゃないじゃないですか。相手が自分よりも小さくて、弱そうに見えるからって、舐めた発言や行動をしていると、痛い目見ますよ?」
『な、なんだとっ……!? てめえ、ぶっ殺されてえのか!?』
『こんなやつ、さっさと痛めつけて、二度とまともな人生を歩ませらんねえようにしてやる!』
『やっちまえ!』
「きゃあああああ!」
ボクの挑発によって、男たちは怒り心頭らしく、一気に襲い掛かってきた。
それと同時に未果の悲鳴が聞こえてきた。
……こんなに怖がらせるなんて……許せない。
「……殺しますよ?」
襲い掛かる直前、ボクは三人にピンポイントに絞って殺気を飛ばした。
『『『っ!?』』』
「……あ、格闘技をやっているというのは、伊達じゃなかったみたいですね」
どうやら、本能か何かのおかげで、殺気を感じ取ったみたいだ。
うん。よかった、通じて。
じゃないと……
「本当に、殺しちゃうところでしたから」
にっこりと笑顔でボクはそう言った。
男たちは、恐怖で顔を青ざめさせている。
それを見て、ボクが一方踏み出すと、
『『『す、すみませんでした――――!』』』
情けなくも、一目散に逃げていった。
うん。手っ取り早くていいよね、ああいう輩は。
……でも、時代錯誤も甚だしいよね。
今時、あんな人たちがいるなんて……。
「えっと、君は大丈夫?」
「う、うん……あの、あなたは大丈夫なの?」
「うん。ボクの体のどこにも、傷なんてないよ。見る?」
「い、いえ、大丈夫よ……って、『ボク』?」
あ、しまった、ついいつもの一人称が……。
慣れてなくても、『私』とか言うべきだったなぁ。
「それに、私の名前も知っていたし、あなたのその顔、どこかで見たことが……」
ま、まずい。
未果が何かに気付き始めた。
概ね、ボクの正体に気が付きそうになっているはず。
ご、誤魔化さなければ……!
「え、えっと、ボクは、その……あれだよ、聞き覚えのある声だなぁ、って思って、それでこっちに来ただけだから!」
ボクはバカなんだろうか。自分から墓穴を掘りに行っちゃったよ……。
「いや、そんなことを聞いてないんだけど……ん? 聞き覚えのある声? ……私の名前を知っていて、一人称が『ボク』で、見たことのある顔に、聞き覚えのある声……あなたまさか」
未果は確信した顔で、
「依桜?」
ボクの名前を言い当てた。
「え、えっと、それはその……」
図星だったので、しどろもどろになってしまった。
「……はぁ。あなた、やっぱり依桜ね? 隠しても無駄よ。それに、いつまでその声でいるの? というか、なんでそんな女の子っぽい恰好を?」
あ、すっごい呆れてる。やめて! その『女装趣味なの? ちょっと引くわー』みたいな表情はやめて!
「いや、あの、これは……」
「……しかも、これだってパットまで入れる徹底ぶり――」
「ひゃんっ!」
「って、え……や、柔らかいし、温かい……ほ、本物?」
未果がいきなり、ボクの胸を揉んできた。
それによって、思わず変な声を出してしまった。
当の未果は、パッドだと思ったらしい。
……まあ、当然だよね。
「しかも、その反応……依桜、あなたどうしたの?」
訝しんでるような、心配しているような、その二つが混在したような表情で言われた。
「こ、これには深いわけがありまして……」
「はぁ……込み入った話ってことね。いいわ。とりあえず、喫茶店にでも行きましょ。そこで、じっくり聞かせてもらうわよ」
「……はい」
言外に、『逃がさねぇからな?(ニコッ)』って言ってるよ、これ……
ああ、未果の笑顔が怖い……しかもこの顔、絶対に楽しんでるときの顔だよ……。
「――なるほど、異世界で魔王を倒して、呪いをかけられて、今日朝起きたら女の子になっていた、と」
「う、うん」
あの後、未果に連れられ、ボクたちは喫茶店に来ていた。
『喫茶白百合』という名前の喫茶店で、一部の学生の間では密かに人気を博している。
基本的に人が少ない上に、落ち着いた雰囲気であるため、秘密の話をしたりするにはうってつけ、というわけだ。
で、ボクは今しがた未果に途方もない話を説明したところ。
「うーん……にわかには信じがたいけど、その胸は本物だし、声も高い。しかも、髪の長さまで変わってる。下の方は分からないけど……まあ、女の子になったのは信じましょう」
下はここで確認するわけにもいかないよ。当たり前だね。
これが、女委とかだったら、『よっしゃぁ! トイレ行こうトイレ!』とか言って、連れ込みそうではある。
「あ、ありがとう……」
「でも、異世界云々は別よ。何か証拠でもあるの? あるなら、見せてもらいたいんだけど?」
「だ、だよね……」
「なに? 証拠がないの?」
当然の反応と言えば、当然か。
普通だったら、信じられない現象が起こっていて、しかもさらにわけのわからないことを聞かされたんだから、当然か……。
それにしても、証拠かぁ……。
「いや、あるにはあるけど……あまりすごくないよ?」
「別に構わないわよ」
うーん、これは何を言っても無駄そうだ。
しかたない。お店で武器を見せるのはまずいから……うん。あれにしよう。
「『生成』」
ボクが魔法発動の言葉を呟くと、ボクの右手に銀製のフォークが出現していた。
「え、なに今の?」
「何って……さっき言った通り、魔法だよ?」
「ほ、ほんとに?」
「うん」
「手品じゃなくて?」
「種も仕掛けもないよ」
「へぇ~……」
興味深そうに、未果がボクのフォークを手に取って眺めている。
「……たしかに、ここのフォークじゃないわ」
「でしょ?」
「……でも、なんでこんなにしょぼい魔法なの?」
「うぐっ」
「普通、こういうのって、手から火を出したり、水を出したり、とかじゃないの? なのに、なんでフォーク?」
痛いところを突かれた。
未果の言葉が、ボクの胸を突き刺してきた。
言葉は、この世で一番の凶器だと思うんだ。
いくら武器を作っても、言葉という名の凶器には一生勝てない気がする……。
「そりゃ、ボクだって使えたらなぁ、とか思ったんだけど……小型の武器を作る魔法しかボクには才能がなかったからね……はぁ」
一応、ほかの魔法も使えないことはないんだけどね……。
魔力量で効果が高まったりするようなタイプとかはできるけど。
「……なんか、ごめん」
ボクが溜息を吐くのを見て、未果はバツが悪そうに謝ってきた。
「いいんだよ。もともと、諦めてたしね……」
ほんと、もっと色々な魔法が魔法が使えればなあ、と常々思ってたよ。
そうすれば、旅とかもだいぶ楽ができたのになぁって。
「でも、これでわかったわ」
「なにが?」
「昨日、私たちが感じた依桜への違和感。それと、体育での一件」
「あー……」
未果の言う通り、みんながボクに感じていた違和感は、多分男から女へと変わっていく過程だったからじゃないかな?
だとすると、みんなが言っていた違和感にも説明がつく。
あと、体育での一件と言えば、ボクがドッジボールで無双したことだろうね。
「その通りかな。向こうじゃ、死に物狂いで鍛えてたし……」
「でも、今の依桜を見る限りだと、そうは見えないんだけど……」
「うん、ボクもそう思ったんだけど、身体能力は全然衰えてなかったんだよ。ほら、さっきも悪漢を撃退してたでしょ? でもね、ちょっとだけ動きにくいと思ったよ……」
苦笑いをしながら、ボクは視線を下に向ける。
「……まあ、その胸じゃあね」
それを察した未果が、同情の目を向けてきた。
「うん……さっき、未果の間に入った時、胸が揺れて付け根が痛くて……女の子って、大変なんだなぁ、って思ったよ……」
よく、胸が大きい人が好き! なんて言っている人がいるけれど、意外と女の子はそうじゃなかったよ。
女の子になってよくわかった。
胸は揺れると痛い。むしろ、無い方がいいかも、って。
「はぁ……まさか、こんなことになるなんて……」
「こればっかりは、私も何とも言えないわ。……というか、依桜。あなた、明後日からの学校はどうするの?」
「そうなんだよね……一応、学園長先生にでも掛け合ってみようかなとは思ってるけど……」
「それがいいわね。うちの学校、結構緩いところがあるから、多分女子生徒として今後は生活させられるでしょうけどね」
「……だよね。仕方ないかぁ……はぁ」
たしかにうちの学園は緩いところがあるからね、多分掛け合ったところで、未果の言った通りの結果になると思う。
それを考えただけで、なんだかうつな気分になるよ……。
「とりあえず、明日辺りにでも学園に行ってみれば? 幸い、日曜日だから生徒も少ないだろうし。仮に、生徒に会ったとしても、転校生か何かに思われると思うから」
たしかに、この姿で行ったとしても、未果の言うとおり、転校生とかに思われそうだ。
転校生ではなく、ボクだという事実に気づく可能性があるのは、晶達くらいだろう。
「……そうだね。そうするよ」
「うん。ただ……近いうちに学園祭があるからね、大変かもしれないわ」
「……あ」
そうだった。そういえば、三週間後には学園祭があったっけ……。
「依桜がその姿で学園に登校した途端、十中八九ミスコン参加は確実だろうし、クラスの出し物も、多分間違いなく喫茶店とかになるでしょうね」
「……かもね」
「まあ、自信持っていいと思うわよ。依桜。ものすごく可愛いから」
「あ、あははは……嬉しいような、嬉しくないような……」
褒められているんだろうけど、状況が状況だから、何とも言えない。
「ふふふ。とりあえず、明日には行っときなさいよ?」
「うん。わかった。ありがとう、未果」
「どういたしまして。というか、お礼を言うのはこっちよ、さっきは助けてくれて、ありがとう」
「うん。気を付けてね?」
「わかってるわ」
「それじゃ、帰ろっか」
「ええ」
話すことも話し終えたボクたちは、お会計を済ませてから家路に就いた。
そして夜。
ボクは、一つの問題に直面していた。
それは……
「お、お風呂、どうしよう……」
お風呂の問題だった。
急に性別が変わったことで、ボクはお風呂に入ることに戸惑いを覚えてしまったのだ。
トイレに関しては、その……座るだけなので、極力見ないようにしていた。
その時、なんで女の子って紙をたくさん使うのかがわかった。
なんていうか……中に残っている感じがあるからだった。
それを拭き取るために、あんなに紙を使うんだなぁ、と。
……うん。現実逃避はやめよう。
「はぁ……でも、結局自分の身体だし……恥ずかしがる必要も、ない、よね?」
うん。そうだよね。自分の体に、何を恥ずかしがる必要があるというのか。
それに、ランジェリーショップの試着室では、普通に服を脱いでいたんだし、お風呂もきっと大丈夫。
そう言い聞かせながら、ボクは服を脱ぎ、浴室に入る。
浴室内に入ると、真っ先に目に入るのは、鏡に映ったボクの裸。
あぅ……やっぱり、イケないものを見てる気分になっちゃうよぉ……。
で、でも、自分の裸なんだし、大丈夫……大丈夫。
さっきと同じように、心の中で暗示をかけながら椅子に座る。
鏡に関しては、その……やっぱり、気恥ずかしくて極力見ないようにした。
「え、えっと、たしか、母さんがシャンプーとリンスを使っていいって言ってたよね……? これかな?」
女の子になったということで、母さんから自分のを使ってね、と言われた。
なんでも、ボクの髪はとても綺麗でさらさらなので、ちゃんと手入れしてね、ということらしい。
とりあえず、椅子に座り、頭を洗い始める。
「……うーん、髪が長いから、大変だなぁ」
昨日までは、少し長めだったからそこまで大変じゃなかったけど、今は毛量も増えたし、何より長くなっている。
腰元まで伸びているから、シャンプーをするのが結構大変。
数分程格闘して、ようやく洗い終えた。
「つ、次はリンス……」
ボク自身も、ちょっとは手入れしておかないと思っていたので、めんどくさがらず、ちゃんとリンスもする。
やっぱり、数分ほど要した。
「や、やっと終わったぁ……。お、女の子って、こんなに時間かかるんだ……」
シャンプーとリンスだけで、十分以上かかってしまった。
「はぁ……やっと体……」
と言ったところで気付いた。
……この体に、触れるのか……。
「だ、大丈夫……だよね?」
だ、大丈夫。きっと、何も問題は無いはず……。
いつも通り、いつも通りに。
ボクはタオルにボディソープを染み込ませ、泡立てる。
そしてそれで体を洗い始めると、
「……特に何ともない、かな?」
胸を洗っているときに、ちょっとだけ変な気分にはなったけど。
そうして、体をくまなく洗っていると、
「う、うーん……やっぱりここも、だよね?」
ボクの股の辺り。いわゆる、秘所と言うべき場所。
さ、触るのはちょっと気が引ける……。
でも、ちゃんと洗わないと、だよね?
「よ、よし……!」
恐る恐る持っていったけど、
「あれ、何ともない……」
意外と何ともなくてすごくほっとした。
もしかすると、自分だからなのかも。
まあでも、洗うだけだしね。触っても、何かがあるわけじゃないもんね。前に、態徒が何か言っていたような気がするけど、意味はわからなかったし。
とりあえず、最後に体を流して、湯船に浸かる。
「ふぅ……直視するのは気が引けるけど、意外と何ともないね……」
どうにも、見慣れないものを見たせいで、少し動悸が激しくなっていたけど、湯船に浸かったことで気分が落ち着いた気がした。そのことに気づいたボクは、あまりお風呂の事に関して気にならなくなっていた。
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