第6話
高校を退学し、家を出てから1年がたった。私は相変わらず新聞配達に寮に住み込みで働いている。借金はまだ残っているが、元父のおかげであと数か月で返済が終わる。これだけ体を酷使する仕事をほぼ毎日しているが、高校の時と違い、予習復習の時間をなくし、すぐに寝ることができる環境にあるおかげで、大きな怪我をここ1年していない。それに、仕事仲間が私をかなり気にかけてくれているおかげで、休む時にはしっかり休めている。今の私は、体が弱かった昔の私とはかなり違う。
そんなある日、元父が再婚した。相手は、元父の同僚だという。元父は私に「もう一度、私たちと暮らさないか」と聞いてきてくれた。再婚相手にも了承済みだと付け加えた。私は、ありがたい話だと思ったが、断った。私のような人間が、そっちの家庭に関わるわけにはいかないと思ったからだ。元父は、気が変わったらいつでも連絡してくれと言い、また今までと変わらず、借金返済に協力してくれると言ってくれた。
それから2年後、私はすべての借金の返済が終わった。また、高卒の資格を持っていなかったので、高卒認定試験合格に向けて勉強に励んでいる。元父と最後に連絡を取ったのは1年くらい前だろうか。返済が終わった私は、元父の協力が必要なくなったため。「新しい家庭のために、今までのお金を使ってほしい」と伝えた。今までのお金も返すと私は言ったが、父は頑なに拒んだ。そして、「ありがとう」と伝えたのが最後だ。新しい家庭のために頑張ってほしい気持ちは、今も変わっていない。母は刑務所に入ったそうだが、面会に行ったことは1回もない。そして、これからも行く気はない。
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