クリスマス

今日は十二月二十五日。

つまり、クリスマスだ。

まぁ、でも俺には関係ないんだけどな。

そう言って布団に潜り込もうとした時。


「たまくぅぅううぅうん!!」


「ぐぇっ」

メンヘラ姉が上に飛び乗ってきやがった。

カエルが潰れたみたいな声を出す俺。

そんな俺を横目に原因はにこやかにいつになく満面の笑みで早口でまくしたてた。

「あのねあのね!今日クリスマスだからね!クリスマスプレゼント買いに行きたいからついてきてよ!あ、もちろんたまくんの欲しいもの買ったげるから!あそこの新しくできたお店も行きたいし、ちょっと遠いとこも行きたいんだぁ!ね、ね、ついてきてくれるよね!?」

「わかったわかった、うるさいうるさい」

なんで耳許で叫ぶんだこのバカ姉は。

お陰で耳がキーンってなったじゃないか。

のそのそと布団から出て着替える。

リビングに行くと、いつ兄がこれまたにこやかに迎えた。

「おはようたまくん!」

「…ん」

いやに機嫌がいい。

「…なに?なんでそんな機嫌いいの?」

「ふっふっふっふっ…実はね、大晦日と三ヶ日、仕事のお休みが取れたんだよ!」

「おー」

いつ兄は市役所勤めだから休みが少ない。

なのに今回は大晦日を入れて四連休だ。

珍しい。

「だからね、日の出見に出かけようね!」

「はいはい」

能天気なものだ。

ほんわかした雰囲気で卵焼きを作るいつ兄。

姉ちゃんがリビングに入ってきて言った。

「お兄ちゃん、お仕事お休みってほんと?」

「うん、そうだよ」

「やった!じゃあ大晦日どっか行こうね!」

「いいよー!どこ行くか決めておいてね!あと、それまでに二人とも自分の部屋掃除しておくこと」

「「はーい」」

「じゃ、ちょっと出かけてくるね!」

「はい、いってらっしゃい」

「いくよたまくん!」

「うぇっ、引っ張るな引っ張るな!」


*°.・

お店はクリスマスだからか結構混んでいた。

「わぁ…すごい!」

「人多いな…」

早速あれとこれとと買い込む姉。

女子の買い物ほどわからないモノはない。

じっと待つこと数十分。

姉ちゃんがほくほく顔で出てきた。

お目当てのモノが買えたらしい。

「次いこー!」

「はいはい」

にしても、この前のぐずってたのが嘘のようだ。

…なにかあったのか?

「姉ちゃん」

「ん?」

「この後、誰かと予定あるの?」

「なんで?」

「だっていっぱい買い込んでるじゃん」

「ううん、ないよ」

「そうなんだ。じゃあなんでそんな嬉しそうなの?」

すると、照れながら呟いた。


「新しく彼氏ができたの。今度はすっごく良い人だよ」


その言葉を聞いて安心する。

ああ、やっとか。

姉ちゃんにもきっと心に決めた人ができたのだろう。

俺はあっそ。と呟いて小さく笑った。


おめでとう、姉ちゃん。




※とてもキレイに締めてますが、環くんはこの後恵ちゃんにプレゼントと称してバカ高いネックレスを詐欺紛いばりに買わされて二週間お姉ちゃんと口を聞かないことになります。

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