冬
こたつ
寒くなってきた。
冬休みに入った俺と姉ちゃんは、のんびり家でダラダラするのが日課と化してきた。
なんでも、いつ兄が出した炬燵が原因だ。
「ふぅ〜…あったまるねー、たまくん」
「おー」
一日中炬燵に入り浸っている。
姉ちゃんは一息ついてミカンを取ると、むきむきと剥き始めた。
ほんのりと甘酸っぱい匂いが鼻につく。
「ねぇたまくん」
「なに」
「付き合って欲しいことがあるんだけど…」
「…なに」
「そーくんにね?あーんってしたいの!」
「すれば良いじゃん」
「でも恥ずかしくて…だから、練習させて?」
姉ちゃんが上目遣いでお願いしてきた。
普通ならこれで一発なはずだ。
普通なら。
生憎と俺はこのメンヘラがかっている姉の弟である。
そんな可愛いポーズは通用しない。
「練習もなにも、姉ちゃんいつもしてるじゃんか」
「へ?」
「ほら、いつ兄とか俺に弁当作った時。あーんって」
「あれとこれとは話が別だもん」
「えぇ…めんどくさいよ…」
「そんなこと言わずに!ね?お願い!」
乙女心は複雑である。
正直言ってよくわからん。
仕方ないから付き合うことにした。
「い、いくよ?」
「弟相手になんでそんな恥ずかしがるんだよ」
「も、もう!うるさいなぁ!」
あーん、と口元にミカンが運ばれてくる。
それを口で受け止めて咀嚼。
「どう?おいしい?」
「んー…うまいよ」
「ほんとに!?やったぁ!」
ミカンだけでこの喜びよう。
弁当作った日にはさぞかし一日中喜ぶんだろうな。
こういうところは良いところなのに、なんでこの姉はメンヘラを拗らせてんのかね、全く。
ため息をつく。
「姉ちゃんに付き合う自分がバカに思えてきた…」
「へぇ!?」
「つくづく不憫な弟だよ俺は…」
「な、なんで!?なんでそんなこというの!?」
家中に姉弟の賑やかな声が響く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます