失恋の秋

姉ちゃんが茫然自失の運動会が終わってから早数週間が過ぎた。

姉ちゃんはまだ部屋から出てこない。

今日も今日とてノックしにいく。

すると扉が開いていた。

「姉ちゃん、入るよ」

ぎゅっとぬいぐるみ(今度はウサギのやつ)を抱いてぐすぐすと泣いている。

「学校は?」

「…行きたくない」

「休むの?」

「…うん」

俺は思いついた提案をしてみた。

「ごめんって送ってみたら?」

「もうしたよ…」

「何回?」

「…」

「なんかね、二、三回以上したらダメなんだって」

姉ちゃんがうるうる目で見てくる。


「…三十四回送っちゃった…」


遅かったか…。

姉ちゃんの携帯にはごめんだの、許してだのの文面がきっちり三十四回、送られていた。

送ろうとしていた三十五回目を消して携帯を返す。

「…ま、まぁ、ほら、前だって良い人見つけたんでしょ?なら今回も大丈夫だよ。学校行こう?」

「うぅ…」

まだぐすぐす言う姉を部屋の外にだす。

「…学校やだ…つきくんの想い出いっぱいあるもん…」

「大丈夫だってば」

そういうと、姉ちゃんはあろうことか俺を抱きしめてきた。

「じゃあたまくん成分を仮として補充する」

「なんだよその成分…気持ち悪いな…」

ため息をついて、姉を張り付かせたまま外に出た。


授業が全部終わって帰ってくると、姉ちゃんはるんるん気分で誰かとメールしていた。

「なに、どうしたの?」

花のような笑顔で携帯を見せてくる。


「告白されちゃった!」


「…あっそ」

俺はその姿をみて、朝の苦労はなんだったんだとまた、ため息をついた。

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