夏祭り

夏祭り当日となった。

姉ちゃんは朝からるんるん気分で買った浴衣を着ている。

「たまくん、お土産なにがいい?」

「…別にいいよ。どうせ和と柚に誘われて俺も行くだろうし」

「えー…夜遅くはダメだよ?」

「姉ちゃんこそ夜遅くまでいたら、いつ兄に心配されるんじゃない?」

「ふふん、お姉ちゃんは良いんだよ!樹兄ちゃんにもちゃあんと許可貰ったからね!」

「あっそ」

行ってきまーす!と元気よく玄関を飛び出す姉。

…何事も起きませんように。


いつものメンバーが揃ったので、お祭りに行く。

「そういや、環ん家の姉ちゃんもお祭りいるんだっけ?」

「いると思うけど」

「まじか…ちょっとはお近づきになったり?」

「しないよ。あいつ今好きな人いるらしいし。今日はそいつと出かけるんだって」

「う、嘘だろ…まじかよ…」

先に告っとけばよかった…と柚。

お前は多分一瞬で終わるからやめとけ、と追い込む和。

失礼だけど俺もそう思う。

ふっと視線を感じて、そっちを向く。

するとあの水色の浴衣が見えた。

「あ、姉ちゃん」

「え!?どこどこどこ!?」

「柚うるせぇ」

ちょうど屋台を挟んで向こう側。

姉ちゃんが幸せそうな顔で自分より背の高い男に笑っていた。

…なるほど、あいつが姉ちゃんの一目惚れのやつか。

優しそうな人だ。

あの人ならいいんじゃないか?

そう思った。

「…行こうぜ」

「だな」

「え、え、俺まだお前の姉ちゃん見つけてないんだけど!?」

「おっ、お化け屋敷あんじゃん。入ろうっと」

「いやいや待てよお前ら!俺がお化け嫌いだってわかって言ってんのかよ!?」

「柚、うるせぇ」

「俺の要望を聞かないお前らが悪いんだろぉ!!」


祭囃子が辺りに響く。

俺はちょっと笑いながら友人達についていった。

たまにはこんな騒がしい日もいいかもしれない。

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