夏祭り前日

近くの神社で近々夏祭りをするらしい。

そんな張り紙をぼーっと見つめていると、慌ただしく姉ちゃんがきた。

今日は姉ちゃんの浴衣選びに付き合わされる。

なんでも一目惚れ中の人と行くことになったのだとか。

「あのねあのね、一目惚れの人と一緒にお祭り行くことになっちゃった!どうしよ!だから浴衣選び付き合って?たまくんはね、私に似合うか似合わないかを言ってくれるだけでいいから!」

そうやっておねだりされたのだ。

元来姉ちゃんのおねだりに弱い俺はため息をつきながらそれに付き合うことにした。


「ねぇねぇ、これなんかどうかなー?」

姉ちゃんがその場でくるりと回る。

薄いピンク色の生地に赤とオレンジの桜が点々と咲いている浴衣だ。

元々姉ちゃんはなんでも似合う方だから、浴衣の模様なんてどれでもいい気がするが、そんなこと言った暁には面倒くさいことになること請け合いなので言わない。

「あーうん、いいんじゃない?」

「ほんとにー?」

正直言って、浴衣の模様の違いがわからない。

そういうのは友達に任せた方が良かったのではないか?

「あっ」

「なに」

「みてみて!好きなの見つけた!この柄良い!」

淡い水色に赤い金魚達が映える。

確かに、姉ちゃんが好きそうな浴衣だった。

「じゃあそれでいいんじゃね?」

「うーん、でもこれ高いからなぁ…」

そうやって悩む姉ちゃんの手を取ってレジに行く。

そのまま浴衣を会計すると、いつ兄から渡されたクレジットカードを出して払った。

外に出て浴衣を渡す。

「はい」

「え、あ、ありがとう…でもこれ、お金…」

「いつ兄がこれで払うといいよって渡された。だから気兼ねなく使っていいやつだと思う」

そんな反応をされたらこっちが照れてしまう。

姉ちゃんはえへへ、と笑った。

「ありがとね!」

「はいはい」

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