2人のENDmarker.
「なにやってんの?」
「ノートに書かれた君の日記を見てる」
「買ったもののリストとレシートしか貼ってないけど」
「じゃあ、僕もこの日記に、日記書いていいかな?」
「なんでよ」
「余白あるじゃん。この、レシート貼った内側のところ。書いていい?」
「うん」
「五月十五日。あなたが買ったのはアイス。まだ寒いよって言ったのに、美味しそうに食べてた」
「あれは旨かった」
「案の定、おなかをこわした。次は温かいお茶を用意してふたりで食べようと思う」
「うん」
「普通でよかった」
「うん?」
「五月十六日。あなたは安売りされているカツ丼の前で迷っていた。昨日のアイスのことがあるからだろうか」
「いや違うけど。隣に牛丼があったからだけど」
「でも彼女が選んだのはおにぎりセット。やっぱりおなかに配慮したのだろうか」
「おなかすいてたんだもん。温めなくてもいいやつにしたの」
「おいしそうにおにぎりを食べてたけど、食べ終わったあと虚無感に包まれていたので、かつ丼をスマホ見ながら自作。よろこんでもらえた」
「おいしかった。また作って?」
「こんな普通の日々が、ずっと続けばいいのにと思う」
「ねえ」
「五月十七日」
「待って。おねがい。待って」
「うん?」
「もう、書かないで。なんか、あなたが、文字のなかに消えていきそうな、気がする」
「文字のなかに」
「私の中だけのあなたが、いなくなっちゃう、感じがする」
「うん。僕いなくなるもの」
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