第9話

それから五ヶ月が過ぎた。その日、仕事が休みだった。少し家から離れた場所にある、本屋に行った。三冊ほど文庫本を買い、自転車でゆっくりと家路へむかっていた。

線路沿いには、マンションが立ち並ぶ。少しカーブになっていて、その道をぶらぶら自転車で走っていた。すると、その中の一つのマンションの一階のガレージのところに、眼鏡をかけた和歌子が立っていたのだ。

和歌子か?一瞬、眼鏡をかけていたので、判別がつかなかった。通り過ぎようとしたとき、「こんにちは」と和歌子があいさつをした。気づいたときはもう遅かった。顔をぼーっと眺めるだけで、あいさつもせずに通り過ぎてしまったのだ。

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