第7話

それからというもの、二人は毎回隣の席に座るようになった。

和歌子にやさしくされた日は、決まって家に帰りビールを買ってきて、お気に入りの音楽をかけながら、おいしく飲んだ。

その時書いていた短編小説があった。『君と結婚できないなんて』というタイトルの話だった。ある日、婚約していたカップルで、急に女性から、あなたと結婚できないわ、と告げられる話だった。男が散々悩んだ挙げ句、その女性がみるにみかねて、結婚をオーケーするという、少し情けない話だ。でも男にしてみてはハッピーエンドなので、その女性の名を、「和歌子」という名に書き換えた。当然内緒にしていた。

三ヶ月という月日は、あっという間だった。結局、和歌子の住んでいる家も、連絡先でさえ聞き出せないままだった。

最初に、働いている図書館はどこかとたずねたとき、口を閉ざしたのがひっかかっていたからだ。もしたずねて、ことわられたらどうしよう。

そんなことを考えていると、肝心なことは何も聞き出せないままでいた。

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