第5話

八月だった。夏の真っ最中だ。

教室はエアコンが効いて、涼しかったが、外は依然としてして暑く、すぐにでも汗がにじみ出てくるほどだった。夜八時頃、教室を後にした。

一週間ほど経ち、次のエッセイ教室のとき俊一郎は、前回、和歌子が座った席と同じところに座った。教室の中はエアコンが効いていて、すぐにでも汗を吸い取ってくれるようだった。来てくれるだろうか……。

胸を踊らせた。

和歌子が教室に入ってきた。隣の席に座った。すると話しかけてきた。

「大西さん、どんなの書いていらっしゃるんですか?」

俊一郎は、戸惑って答える。

「本と言っても、まだ出版とまではいかないです。書き溜めてばっかりで」

「そうなんですね。私とおんなじですね。お互い頑張りましょ」

「失礼かも知れませんが、どこの図書館にお勤めですか?」

それを聞くと和歌子は口を閉ざした。まずいことを聞いたかな?何故、口を閉ざしたのかわからなかった。

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