第3話
すると教室内に拍手が起こった。教室の広さに比べ、人数の少なさに拍手は寒々しいものになった。俊一郎も数秒間だけ皆に合わせ、拍手をした。
川辺は軽く自己紹介をし
「それでは皆さんも自己紹介をお願いします。今、みなさんがしたいことを最後に言ってください」
と言った。
前列の右端の者から自己紹介がはじまった。海外旅行に行きたい。本を出したいと答えていた。
斜め前に座った女性の番まできた。
「飯田和歌子と言います。二十八歳。図書館司書をやってます。細々とですが作品を書いています。ここへは、エッセイのスキルアップのために来ました。今、一番したいことは、歩きたい?」
皆、冷静にその話を聞いている。意識的に耳を傾けているのは、俊一郎だけかと思われる。俊一郎の番まできた。
「大西俊一郎と言います。フリーターです。作家を目指してます。今、一番したいことは、ご飯を食べたいです」
わっと、教室が笑いに包まれた。和歌子もくすくすと笑っていた。
よし。俊一郎は心の中でガッツポーズを決めた。
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