第20話
部屋に入った二人は、互いの手を握り、一歩、また一歩と、ゆっくり前進する。
物音もしない。
光はわずかに足元だけ。
それに、すぐ近くには得体のしれない『誰か』がいる。
視界を限られた状態で暗闇の中を行動するという、ホラーゲームさながらのこの状況。
実際に体験してみたそれは、ハッキリ言って、相当な恐怖感があった。
ゲームならこの状況でいきなり敵が出てきたりするんだよな、などとお決まりの展開が頭をよぎる。
だが、それが我が身に降りかかるとなれば、笑い話では済まされない。
「これはあれだな、襲われたら終わりだな」
「ならせめて私が逃げるまで盾になって」
そして、明は手を握ったまま新の背中側に隠れようとする。
どうやら本気で盾扱いしようとしているらしい。
一言
この状況では足が止まってしまうのが一番まずい。
そして、入り口から数歩歩き、問題の地点にたどり着いたところで
そして、目の前に光を向けた。
ゆっくり、ゆっくりと。
ひどくスローモーションなその動き。
まるで数年ぶりに
不意に心のどこかから湧いてくる数々の不安に、
ピンと
そこには確かに何者かが横たわっていた。
掛布団で身体の半分だけを覆い、新たちに背を向けた
それゆえに表情は確認できない。
新が慎重にベッドの上あたりに光を移動させる。
ぎりぎり姿が確認できる程度になるよう、少しずつライトの向きを調整する。
そしてLEDの
新の背で身を隠していた明が小さく息を飲む音が聞こえた。
布団からはみ出た肩は少し
「……女の人、かな」
外見から同性の特徴を見て取った
「ああ。どうやらそうみたいだ」
一度、
「おそらくあの人が
「この部屋のエアコンだってそうだ。熱くて寝苦しいから、その解消のために使おうとして設定をミスったんだろ」
「じゃあ、あのメールは何?全く知らないアドレスだったんだよ?」
「それは……」
そう、その部分は、新も
それでも新は、そこにあるはずの
「……あの人が、明の知り合いの誰かからアドレスを聞いた、とか?例えば……めぐ
「お姉ちゃんが?」
『めぐ姉』こと、新と明のクラスの担任教師である、
担任のことをそんな愛称で呼ぶのは、彼女が
「店でバイトしてるのが明だけなのは、あの店に通ってる人ならみんな知ってるだろうし。こんな天気の中、出前を呼んで、生徒に
「ん~、そう言われればそうかもだけど……」
明は
「事実、そのおかげでさっきも連絡がちゃんと取れたわけだし。メール打ってた時も、体調が悪くてあんな文面になったのかも……って、明?」
「……」
立て続けに推論を打ち立てていく新。
だが、その後半の部分を明はまるで
代わりに、無言のまま
「な、なんだよ」
「……
「は?」
「な~んか、今日の新、妙に
「べ、別にそんなことないだろ」
否定しても、明は変わらず不満そうにむくれている。
不公平だと
「お、俺だって、本当は今、ちょっと恐いっていうか……」
「……そうなの?」
本当のことなので、こくんと
しかしそれが
「で、でもまぁ?俺は幽霊とか信じないからな!世の中、大抵のことには何かしら理由があるんだし。今だってそれは同じなはずだ」
そこはしっかりと主張しておかなければ。
単にビビっているだけと思われるのは
そんな
「人間の
「それ、誰目線での批判!?」
なんだか、えらく大きなスケールで
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