第17話
職員室の扉に手をかけ、一つ深呼吸。
共に
まるでその糸を伝って、緊張が
そして、意を決したように明が扉を右に引いた。
――ガシャン
「え、あれ?」
明が戸惑いの声を上げる。
勢いに任せて引いた扉は、しかし開くことなく、ただ音を上げてその場に
さらに、二、三度同じ行動。
やはり結果は変わらない。
「……?開かないのか?」
「ん、そうみたい……」
「すみませ~ん。
平常心と恐怖心が混じった声で明が呼びかける。
さらに扉を数回ノック。
だが、扉は少し大きめに音を立てるばかり。
そしてその音はそのまますぐに、深い闇へと消えていく。
やがて、扉を開けることを一度断念し、身を丸めるようにして、明は少しずつ扉から後ずさりした。
「え~……。なんでカギかかってるのよ~。しかも電気も付いてないし……。ねぇ、本当にここで合ってるの?」
振り向き、明は新に尋ねた。
「え、そう……そう思ったんだけど」
「いやに
そしてそのまま新の方へと足を踏みだす。
その時だった。
『ピーン!』と、
「な、なになに!なんの音!?」
「お、俺に聞かれても分からねぇよ!?」
完全に
途中、新にも疑いの視線を向けるが、新は首を横に振ってそれを否定した。
こんなこと、新にとっても予想外だ。
(――って、俺まで怖がってどうすんだ!まずは状況確認を――!)
自らを
その
「……
「え、嘘?」
言われて、明は自身の左ポケット辺りに目を向ける。
見るとスマホの液晶LEDの光がポケット越しにぼんやりと漏れ出ている。
「……」
「……」
そして、光に誘われる昆虫さながらに二人の視線はその一点に注がれる。
黒い闇の
「
「……あ、アレ~、おっかしいな~……。スマホならここに来る前、マナーモードにしてたはずなんだけど……違ったみたい?」
「みたい、じゃねぇよ!ちゃんと確認しとけ!」
「だからごめんってばぁ~……うぅ~っ……確かに設定してたはずなんだけど……」
納得のいかないもやもやを胸に抱えつつ、明はスマホを取りだして画面をタップする。
表示されていたのは一件の通知。
「え、メール……?」
意外そうな声を明が上げた。
「友達からか?」
「違うと思う。知らないアドレスだし。それに友達同士ならわざわざメールじゃなくていいじゃん」
「まぁそりゃそうだ」
新さえ、ここしばらく連絡でメールは使っていない。ほとんどはSNSで済ませている。
まして、現役女子高生の明なら、なおさらといったところだろう。
新は明から一瞬視線を外す。
そして、事はその間に起こった。
「えっ、いやあっ――!」
聞こえてきたのは
新は外した視線を反射的に戻す。
懐中電灯の光を明の方へ向けると、右腕を抑えるようにして、一点に視線を釘付けにしていた。
まるで、知らず手の甲を這っていた蟲を、大慌てで振り払った後のような、そんな仕草。
新は
そこに落ちていたのはピンク色の可愛らしいカバーの付いた板状の物体。
明のスマホだった。
いや、この場合、落ちていたという表現は
この状況下なら
つまり、スマホは明によって
「
震える指で視線の先を
表情と声。そのどちらもが恐怖の色に染まっている。
拾い上げ、電源を入れると、画面に表示されていた一通のメール。
「なんだ……これ……」
見た瞬間に、新は一気に
差出人は謎のアドレス。
そして、本文には短く、こう記してあった。
「ほけんしつ いる もってきて」
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