第14話
「……それじゃあ、いくぞ?」
「い、いいから、早くしてってば……」
暗闇の中で交わすお互いの言葉は、それぞれの
ごくん、と
数キロにも錯覚するほどの、
それを経て、新の指先が明の手のひらに触れた。
柔らかく、自分のものより
そして、確かにそこに宿る温もりが重ねた手のひらからじんわりと広がっていく。
それら全てが、新の内側から、えもいわれぬ
「こ、これで、いいか……ッ!?」
「うん。大丈夫」
言葉とともに、明が手をゆっくり握り返す。
たったそれだけで、まるで電撃にでも打たれたかのように、理性に強烈な
自分のものとは全く違う、女性特有の柔らかさ。
加えて、意中の女性が手を握り返してくれているという事実。
そんな
(意識するな、意識するな――!)
それを静めようと必死に脳内から信号を送った。
けれども、そうするほどに新の意識は二人の
そして、
「……
明の言葉に、新は、心に
「ごっ、ごめん――!」
言うが早いか、新は自分の手を
数秒の間、
「ちょっと、なんでいきなり離すわけ?」
その声の調子はいつもの
滅多にない、明の本気の怒り。
「いや、その……俺と手、
我ながら
「なんで?私、そんなこと一言も言ってないけど」
「……いや、手が冷たいって」
「それが何?全然理由になってないでしょ。さっきから
その
ただ淡々と、異様なほど冷静に、新の言葉を
言われなくても、そんなことは
「……手汗」
「え、何?」
だから、いっそ全部ぶちまけてやろうという衝動が
「だから、
「え、いや、そんなことは思ってないけど……」
まくし立てるように
ただ、それも一瞬のこと。
やがて
「……ぷっ。あ、アンタ、そんなこと気にして……」
明はなんとか笑いをこらえようとしていた。
だが結局、
「アッハハハハハ!な、なにそれ!つまり、私と手つないで手汗かいてドン引きされたかもってこと?ないない!
「~~~~~~っ!」
もはや夜の校舎内だということを完全に忘れて
ここまで笑い飛ばされると、新としてはもはや心に残ったのは猛烈な
なんとかコイツに一矢報いてやろうという
「はーっ……あ~笑った笑った。ホント
明が気付いたころには二人の位置関係は、ほぼゼロ距離だった。
そして新は、おもむろに明の
「え、ちょ、ちょっと、
伸ばした手は明の
その温もりが頬に触れた
(
頭では
(でも、相手が……新なら……)
このまどろみに身を任せてもいいかもしれない。初めての相手が新だという想像を、明はなぜだか抵抗感なく受け入れることができた。
明は自然と重くなる
そのまま新は、明の頬を一気に
「いひゃいいひゃい!!(痛い痛い!!)へ、なんで!?思ってたのと違うんですけど!」
「何を思ってたのか知らんが、俺は最初からこうしたくてたまらなかったんだよぉ!」
「いっひゃーーー!(痛ったーーー!)」
とどめとばかりに、
「……うう~っ、
「うるさい、人の純情をあざ笑った
「……新だって、たった今、私の純情、
「待て、それは本当に覚えがないぞ?なんの話だ?」
しかし、その反論に明は耳を貸さず、もういい、と恥ずかしそうに言ってそっぽを向いてしまった。
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