第11話
玄関の屋根から
コンクリートを打ち付けたそれらは
屋根の下でもこの有様。
まるで絶対に振り切れない追跡者にでも追われている気分だ。
「ほい、
「うん、サンキュ」
ボディバッグに入れていたハンドタオルを手渡すと、明はそれで自分の
そして一人、再び思考を巡らせる。
具体的には、校舎への入り方。そして校舎へ入ったあとの行動についてだ。
(特に問題なのは前者だな……)
ここまで来て、校舎に入れなかったというのでは
とはいえ、合鍵なんてものが都合よく存在するはずもない。
どうしたものかと考えていた矢先だった。
――キィ。
「……キィ?」
雨音に
そちらに目を向けると、明はなにやらガラス扉に手を当てていた。と、いうより――
「はは……どうしよ、新……。扉、
もうすでに、扉を半分ほど押し開けていた。
「えーーーーーっ!?待て待て!なに思いっきりフライングしてんだお前は!」
「仕方ないでしょ!?私だってまさか本当に
「にしても、軽率すぎるだろ!お前はアレか?迷宮とかで真っ先に
「うるさいわね!そういうアンタは罠に落っこちた後に、女の子の胸を
「誰が草食系主人公だ!」
まさに、売り言葉に買い言葉。
降り続ける雨音を前にギャンギャンと二人して
息を切らしながらも話を本題に戻したのは、
「そもそもなんで一番大きな出入り口の
私は店の鍵を忘れたことなんてないわよ、と明。
良くも悪くも、物事に対しては一途で
だが、新の見解は少し
そう、職務怠慢。
その言葉が新には少し引っ掛かった。
「……本当にそうなのか?」
「?何がよ」
「いや、だから、本当に鍵をかけ忘れたのかってこと」
「……そ、そんなこと言っても!現にこうして開いてるんじゃない」
「ん~……」
反論する明の声に新はあえて明確には答えなかった。
確かに、よりによって正面玄関の鍵をかけ忘れるなんてことは、やはり
そして、言葉にしないが、そこまで考えが
――そう。
つまり、第三者が
だが、それを明に
恐怖で行動不能に
だから、新がここで
新は玄関の扉に手を当てたかと思うと、次の瞬間、一気に
「ま、
急な行動にぽかんとする明を横に、
そして、さも当たり前のように玄関の
「……アンタも人のこと言えないじゃない」
決して思慮深いとは言えない行動。
それでもそんな行動に、明は自身の奥にほのかな火をともしたかのような温かさを感じた。
そして、先ほどよりも少し軽くなった足取りで、明は新の後に続いた。
扉を
そんな
加えて空調も無いせいか、入った瞬間に湿気を多分に含んだ、すえた臭いの空気が二人を出迎えた。
二人して顔をしかめて立ち尽くしていると、突如『ゴン!』という大きな音が空間に反響した。
ひゃあっ、と明が反射的に叫び声を上げると、それもまた、空間の広さが
自分の情けない叫び声にエコーを掛けられるという偶発的羞恥プレイ。
後ろを振り返ると、どうやら支えを失った扉がひとりでに閉じただけらしい。
だが、起きた事象に対して明が払った
「……ちょっとびっくりしただけだから」
「まだ何も言ってないんですが」
「でも、絶対何か言おうとしてた」
「それは、まぁ……」
「……バカ」
恥ずかしそうに
どうやら結構本気で恥ずかしかったらしい。
すると、明はもう一度後ろを振り返った。
「帰りにあのドア、
「後で説明が面倒だから、止めとけ」
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