第4話
ひとまず明を家に
外の
新は明の
雨の中を歩いてきたせいか、明の髪や服の所々には雨粒が付いていた。
えんじ色のスタンドカラーシャツに細めの黒色のパンツ、それにポリエステル素材の黒のエプロン姿。
それはいわば、明の戦闘モード。
学校近くの中華屋、『
新たちの通う、県立
そこに続く坂道のふもとに位置するその店は、いわば白浜高生にとってのオアシスだ。
いかにも街の小さな中華屋という店
だが、学校から徒歩5分という
そんな魅惑のダブルコンボは、長年に渡り白浜高生からの信頼を不動のものにしていた。
野球部やサッカー部をはじめとした運動部生は言わずもがな、育ち
そこを営む夫婦と小学校の時から仲の良かった明は、現在社会勉強として特別にアルバイトとして雇ってもらっていた。
「それで?いったい何があったわけ?」
浴室から新品のタオルを取って戻り、それを明に手渡しながら、話の続きを
「そう、それよ!大変なことが起こったの!」
あらかた雨粒を
ずいと、明の顔が近づくと、制汗剤だろうか、ほのかに香る
「大変なこと?」
「うん、あのね……」
まるで恐ろしい何かを封印した箱を開くような慎重さで明は口を開き、そして、
「……幽霊が出たの」
「……」
なんだかその場の偏差値が急降下しそうなことを言ってきた。
「え、あれ?おかしいな。幽霊が、出・た・の!」
「いや、聞こえてるから。そんな思いっきり口開けて言わなくても伝わってるから」
「だったらなんでそんな無反応なわけ?」
「いやだって突然、オカルト話を持ちだされても、ねぇ」
「どこの世界に予告して現れる幽霊がいるってのよ。いい?幽霊はいつも、突然なのよ」
「お前は幽霊の何を知ってんだよ」
「なんかリアクション薄いわね。幽霊よ、幽霊!もっとこう、驚くなり、バカなこと言ってる私を
「その自覚はあるのかよ!というか、罵ってもいいのか?」
「
にっこりと浮かべた笑顔は明らかに狂気を
「文字通り、私に骨抜きにされるわけね」
「ドヤ顔で言ってるけど、それ意味違うからな。物理的に骨を砕きにくる女とか、どんな
「妖怪じゃなくて、幽霊だってば」
「はいはい、じゃあその幽霊がどうしたって?」
脱線した話をもとの筋に戻す。
「……新は聞いたことない?
「……あ~……そういやこの前休み時間に誰かが話してたっけ?」
「そう、その話ね。私も
「
そんなセクシー幽霊が出るという
「あの話ね、どうやら、本当みたいなの」
「てことは、そのウワサの幽霊が、明のバイト先に電話してきたってことか」
新の言葉に明は頭をブンブンと上下させて肯定する。
取り留めのない話だが、本人はいたって真面目な様子だ。
どうやら、そんなバカなと笑い飛ばして許してくれそうにない。
とはいえ、どう答えたものかと新は思考を
「新、どしたの?」
ぼんやりと明を眺める新の視線に気づき、
「いや、なんでも。それより実際、噂の内容ってどんな感じなんだ?」
そう聞いたのは、
クラスメイトが話しているのが聞こえたことはあったが、普段なら気にも止めない話題だ。覚えていようはずもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます