私の彼は注文が多い
初めて彼の家に行くと、何故かお風呂に入るように言われた。まさかいきなりそんなことなんて妄想しながらも、真面目な彼がそんなことするはずないと考え直す。
彼に渡されたカゴに服と下着を入れてお風呂に入ると、なんだかとても良い匂い。どこかで嗅いだことがあるけど思い出せない。
「体をよく洗うんだよ」
甘い香りのするボディーソープで体を隅から隅まで洗う。
「髪もよく洗ってね」
スーッとする匂いのするシャンプーで髪を洗って、なんだか酸っぱい香りのするコンディショナーをつけて、綺麗に洗い流す。
「よぉくお湯に浸かってね」
湯船を見ると真っ白で底が見えない。入浴剤を入れすぎたのかもしれないなと思いながら滑らないようにゆっくりと足を入れる。
「よぉくかき混ぜてね」
置いてあった洗面器でかき混ぜる。するとだんだんお湯がトロトロになってきた。そういう入浴剤なのかと思ってかき混ぜ続けて、ふと思い出した。
そうだ、これはシチューの匂いだ。
子供の頃暗くなるまで遊んで家に帰る途中漂ってくるシチューの匂いが嬉しくてたまらなくて走って帰ったななんて思いながらも、場違いな匂いに体が冷たくなっていく。熱いくらいのお湯に浸かっているはずなのに。
「さてと、そろそろできたかな?」
ガラス越しに映る彼の大きな姿。
「いただきます」
彼はお風呂に入ってくるとそう言って大きな口を開けた。
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