第3話:気付けば
―― よっしゃぁ! ドラゴン捕食完了っ! ――
『まあ、よくもこれだけのモンスターを捕食しまくったでいやがります』
アベノルは現在地下八十九層にいる。
この迷宮コキューストは全部で九十九層。
この二週間近くせっせと人の姿で襲われながらも最後には再生したスライムの姿でモンスターたちを捕食しまくってその能力を掻き集めていた。
―― へへ~ん、これであと捕食していないモンスターはミスリルゴーレムとラスボスの魔人だけだっけ? ――
『はい、そうでいやがりますマスター』
―― よっしゃぁ! 全モンスターコンプリートまであと二つだぜ! 全部ゲットしてやる!! ゲットだぜぇっ! ――
『黄色い悪魔はここにはいないでいやがりますよ? 雷ネズミは他の迷宮でいやがります』
アベノルはちょっと残念そうな雰囲気だ。
―― まあ、いないのなら仕方ない。それより次行こうぜ! ――
『それは構わないでいやがりますが、良いのですか? もうかれこれ二週間以上たっていやがるですよ?』
―― はぁ? そんな短期間でこんな深層まで来るなんて俺ってすごくない? ね、凄くない!? ――
『まあ、凄いと言えば凄いでいやがりますが主に最強スライムのお陰でいやがりますよ、マスター?』
―― まあ、そうなんだけどな。さてと、次行くかぁ! ――
『その前に、マスターの寿命がもう少しで終わるのは忘れていないでいやがりますよね?』
―― へ? ――
『マスターは女神の使いの先月のノルマ達成後に余剰ノルマ分と言う事で延命一ヵ月を特典付きでいる訳でいやがりますよ? 良いのですか、短い余生をモンスター集めで終わらせてでいやがります?』
―― あっ! ――
完全にその事を忘れ思わず間抜けな声を出してしまうアベノルであった。
さながらダイエットでダイエット食品を摂取するのがいつの間にか美味しいダイエット食品を探しもとめ喰いあさり結局ダイエットできない貴婦人方のように。
―― やっべーよ! 俺まだあいつらに仕返ししてないじゃん!! なあナビ、こっから第一層まですぐに戻れないのか? ――
『いくら最強スライムでもそれは出来ないでいやがります。戻るのに最低十日近くかかるででいやがります』
―― 何だってぇ! それじゃぁ俺の命が尽きてしまう!! 何とかならねーのかよ!? ――
『一つ手が有るとすれば最下層にいるラスボスを取り込みその能力でこの迷宮を自由に行き来できる能力を使うしかないでいやがります』
―― よしそれだ! すぐにラスボスやっつけに行くぞ!! まってろよ、『黒き誓』の奴等め! ビザンカ以外血祭りにあげてくれる!! ――
危うく間に合わなくなるところであったアベノル。
果たして間に合うのか?
時にアルフガリド歴二千二十年八月が終わりの九月に入った頃の事であった。
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