エピローグ&後日談
後日談1
魔神将ビフロンスを退け、その配下の
しかし戦いが終わっても、王都が落ち着きを取り戻す日は遠い。戦後処理や破壊された街の復興、怪我人の治療など、やるべき事は山ほどある。
やらなければならない事は、それだけではない。今回の事件の発端となったのは、唾棄すべき裏切り者達の存在である。
国家の支柱たる大貴族、それも王家に次ぐナンバー2の地位にある、ベレスフォード公爵家の当主。
本来であれば他の誰が敵に回ろうとも、最後まで王家の味方であり、身命を賭してその身を護る筈の近衛騎士団。その団長を筆頭に約半数の騎士達。
それら国家の中枢に居る人間が、事もあろうに世界全ての敵である魔神将陣営に寝返った以上、王都に粛清の嵐が吹き荒れるのは当然の成り行きであった。
主犯であるベレスフォード公爵は魔神将ビフロンス復活の為の依代となり、既に死亡しているものの、関与していた彼の妻や息子達は全員捕縛され、ベレスフォード公爵家はその長い歴史に幕を下ろした。そして彼らをはじめ複数の……10を超える家の貴族達が逮捕・連行される事になった。
裏切った近衛騎士達は全員、異形の闇黒騎士へとその姿を変えており、彼ら自身は自ら魔神将復活の生贄となったか、王都を守護した勇者達によって討ち取られ、生き残りはいない。だが彼らの親類縁者は一人残らず捕らえられた。
逮捕された者達が集められ、国王が彼らに処罰を告げる。
ベレスフォード公爵家をはじめ、裏切った貴族の家は全て取り潰し、当主および嫡子、裏切りに直接関与していた者達は全員死罪。裏切りに関与していない者は出家し、神殿や修道院に入れられる事になった。
裏切った近衛騎士の家族は、懲役刑となった。
処刑はすぐに執行される。国王の前に引っ立てられたベレスフォード公爵家の者達は、みっともなく喚き散らしながら抵抗するが、屈強な兵士達によって王都の広場へと連行され、断頭台にかけられた。公開処刑が執行される。
「お待ち下さい、陛下!」
断頭台の刃が彼らの首に落下しようとした、その時だ。その場に割って入る者がいた。
法衣を着た、金髪碧眼の若い男の神官である。名はクリストフ。女神アルティリアに仕える司祭であり、その本名はクリストファー=ベレスフォード。ベレスフォード公爵の四男である。
その姿を見た公爵の長男が、媚び諂うような笑みを浮かべて彼に話しかける。
「おおっ、クリストファー! 我が弟よ、助けてくれ! わたしはまだ死にたくない! 全ては父上が悪いのだ! わたしは関係ない! お前からも陛下に口添えを……」
「黙れ、恥知らずが!! 私は今、陛下と話をしているのだ! その汚い口を今すぐ閉じろ!」
情けなく言い訳や命乞いをする長男を、鬼の表情するクリストフ。後衛職の司祭ではあるが、彼とてアルティリアの下で厳しい訓練や実戦を幾つも乗り越えてきた歴戦の勇士である。その気迫に、貴族としての誇りを失くした俗物が耐えられる筈もなく、長男は何かを口にしようとしたが、金魚のようにぱくぱくと口を開け閉めするだけだった。
「突然の推参、平にご容赦を。私はベレスフォード公爵家が四男、クリストファー=ベレスフォードと申します。私は誓ってこの裏切り者共に与してはおりませんが、私が彼らと同じ血を引いている事は紛れもない事実であります。である以上、私も唾棄すべき裏切り者の子として、しかるべき罰を受けるべきであると考え、こうして御前に参上した次第でございます」
クリストフがアルティリアに仕える司祭であり、此度の魔神将陣営との戦いでも目覚ましい活躍をした事は、国王をはじめとするこの場に集まった貴族や役人達は、皆承知している。
「彼の働きを考えれば賞賛されこそすれ、罰せられる必要など無いというのに、何と高潔な……」
「うむ、あれらと同じ血を引いているとはとても思えぬ」
「しかし、彼がベレスフォード家の出というのもまた事実……ううむ、どうしたものか」
貴族達の呟きを耳にして、国王は困り果てていた。
彼とてクリストフがベレスフォード公爵の子だという事は存じている。だが彼が父の裏切りに関与している可能性は皆無であり、それどころか父の暴挙を止める為に尽力し、第二王子の命を救ってくれた恩人でもある彼を、罰するつもりなど毛頭なく、あえて見ないふりをしていたのだ。しかし、
(ええい、こうして自分から出てこられては庇いようがないではないか。そちがベレスフォードめの血を引きながら、己だけ助かるのを善しとしない高潔な男なのは良く分かった。分かるが、もう少しこう、時と場合とかを考えんか……!)
どうしたものかと考えていた国王を救ったのは、傍に控えていた彼の息子、第二王子サイラスであった。
「貴様は、ただのクリストフなのだろう? わたしは貴様がそう言ったのを、この耳で確かに聞いたぞ」
サイラス王子が口にしたのは、クリストフが父に投げつけた拒絶と決別の言葉だった。続けてサイラス王子は言う。
「おい、なぜ無関係の司祭がこの場に居る? 貴様の友人か、ジュリアン? さっさとこやつを摘み出せ」
その言葉を受けて、隣に座っていたジュリアン王子……普段はジャンと名乗り、吟遊詩人に扮して放蕩生活を送っている第四王子はニヤリと笑った。
「おっと、すまねぇなサイラス兄貴。こいつは良い友人なんだが、自分をベレスフォード公爵家の人間だと思い込んでる、ちょいと頭のおかしい奴なんだ。そういうわけで親父、すぐに追い出すから俺の顔に免じて、こいつを許してやってくれよ」
ジュリアン王子のその言葉を受けて、国王は呵呵大笑した。
「フッ……ハッハッハ! うむ、そういう事なら仕方がないのう。ジュリアンよ、そこにいる友人を送って行ってやるがよい。それと、お前はベレスフォード家の人間ではないと、よく言い聞かせておくのだぞ」
「おうよ、合点だ」
こうして、クリストフは友であるジュリアン王子に連れられて、その場を去った。その先で、ジュリアンはクリストフに詰め寄った。
「馬鹿野郎、何であんな事を。お前はあいつらとは違うだろう」
「何故でしょう……。自分でも馬鹿な事を、とは思うのですが……きっと、情が残っていたのでしょうね。幼い頃に神殿に入ってからは、殆ど会う機会も無く、他人同然ではありましたし、国どころか人類そのものに対する裏切りを働いた、どうしようもない者達ではありますが、それでも血の繋がった家族ですから。彼らの罪を消す事は出来ませんが、せめて一緒に罰を受けたかった」
そこまで言ってクリストフは、首を横に振った。
「いいえ、それは唯の綺麗事だ。私は彼らの死に、恐ろしいくらいに何の感情も抱かなかった。どうしようもない裏切り者とはいえ、実の親兄弟が死罪を告げられた事に、全く心が動かなかった。そんな冷徹な自分を否定したかったのかもしれません。私は卑怯者だ」
自罰的な告白をするクリストフに、ジャンは言う。
「馬鹿野郎! 本当に冷たい奴が、そんな事で落ち込むかよ! お前はいちいち難しく考え過ぎなんだよ! ええい、いちいち辛気臭い事言ってないで、俺について来い!」
ジュリアンがクリストフに背を向け、王都の大通りに向かって歩き出す。
「いったい何処へ?」
「決まっている! ナンパをするぞ!」
「何故そこでナンパ!?」
突拍子の無い提案に、クリストフが当然の疑問を呈す。
「うるせー! お前はあんな奴等の事なんかさっさと忘れて、さっさと嫁さん貰って今度こそ暖かい家庭を築けばいいんだよ! その手始めとして、顔は良いのに良い歳して女っ気が全く無いお前の為に、IKEMEN かつ OUZOKUであるこの俺様のナンパテクを伝授してやると言ってるんだ!」
「貴方は一体何を言ってるんですか」
そもそも神官に女を侍らせたらまずいだろうとか、仮にも王族が王のお膝元で白昼堂々ナンパとか正気かよ、とか色々と突っ込み所が満載である。
ジュリアンを止めようとするクリストフだったが、そこに更なる乱入者の集団が現れた。
「話は聞かせて貰ったぞ!」
それはクリストフの仲間である、海神騎士団の男達だった。
彼らのリーダーたる団長のロイド=アストレアは、高らかに宣言した。
「ジュリアン王子の言う通りだ。お前はもっと馬鹿になっていい。というわけで海神騎士団の諸君、ナンパに行くぞ! 王都の美女をお持ち帰りだ!」
「「「「「おおおおおおおおおお!!」」」」」
「女性団員とアルティリア様には内緒だぞ!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおお!!」」」」」
団長の号令に、神殿騎士達が歓声を上げる。
「我もか?」
「お前もだスカーレット! 皆に後れを取るなよ!」
こうしてクリストフは羽目を外した仲間達に連行され、夜中までバカ騒ぎに付き合わされる事になった。
次の日はむさくるしい男共が雑魚寝をしている中、二日酔いの頭痛と共に最悪の目覚めを体験する事になり、二度と御免だと思いながらも、少しだけ胸のつかえが軽くなったのを感じるのだった。
なお今回の件は数少ない女性団員達によって、既にアルティリアに報告されている事を彼らはまだ知らない。
【キャラクターデータ】
名前:クリストフ(クリストファー=ベレスフォード)
種族:人間
性別:男性
年齢:23
所属勢力:海神騎士団
メインクラス:
サブクラス:
戦闘スタイル:後方支援型
主な生活スキル:解読・鑑定・釣り
ステータス評価:筋力D 耐久C 敏捷D 技巧B 魔力A
特徴:『神官』『学者』『貴族』『穏和』『冷静』
好きなプレゼント:『遺物』『古書』『釣り道具』
苦手なプレゼント:『装飾品』『宝石』『酒』
【概要】
クリストフは、ロストアルカディアシリーズに登場するキャラクターである。
初登場はロストアルカディアⅦで、序盤から仲間にする事ができる。
アルティリアに仕える海神騎士団に所属する司祭であり、騎士団の頭脳面や裏方を担当する。
このゲームでは珍しい後方支援に特化し、長所と短所がハッキリ分かれているキャラの為、回復・強化担当として序盤から終盤まで活躍させる事ができるだろう。
火力は控え目な為、雑魚狩りでは主に火力バフをかけるくらいしか仕事が無いが、彼の本領は大規模戦闘やボス戦での広範囲回復・支援である。
ただ使用武器の棒が、攻撃力こそ低いものの長射程&振りが速くてコンボを繋げやすい為、実は接近戦も数値以上にやれる。
また、希少な『博識』『礼節』といった外交関連の技能を持つ為、交渉の場に連れていくと非常に便利。更に『考古学』『古書解読』『遺物鑑定』を最初から高ランクで習得している為、遺跡探索で非常に有用。本人が考古学マニアな為、遺物探しに連れて行けば勝手に信頼度がモリモリ上がるのも◎。
(※以下ネタバレ注意)
実は王家に次ぐ勢力を誇る大貴族、ベレスフォード公爵家の四男であり、本名はクリストファー=ベレスフォード。
作中では密かに魔神将勢力に寝返り、王家を滅ぼし自らが支配者の座に座ろうと目論む父と対立する事になり、父親との決別や直接対決が用意されている。
実父との戦いの後、魔神将ビフロンス戦の前に最上位職業『聖者』に覚醒。直後のビフロンス戦で後衛として大いに活躍してくれるだろう。
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