二度目の呼び出し

「へぇー!ここがケントの世界なのね。随分と静かな場所ね。」




部屋の窓から外を見てそんな事を言っているウェンディー。




「夜中だからな。皆寝てるんだよ!ってか、何でお前まで一緒に来てるんだよ?」




何故か付いてくる事になったウェンディー。




「何でって私はあなたのサポートだもん。一緒にいるのは当然でしょ?」




いや、確かにシシリアもウェンディーを通して呼び出すって言ってたけど。




「いや、だとしても。お前がこの世界にいるのは不味いだろ?」




俺がそう言うと何で?って顔をするウェンディー。




「この世界には魔法なんてないんだぞ。ましてや妖精なんて者もいない。お前の姿が見られたりしたら騒ぎになるんだよ!」




俺はバレて騒ぎになった場面を想像して頭を抱える。面倒な事をしやがってシシリアの奴。




「あら、そうなのね。なら見られなければ良いんでしょ?だったらケントにしか見えないようにすれば問題ないわね。」




そんな事を言うウェンディーの言葉に顔を上げる。




「そんな事が出来るのか?」




確かに姿を消したりしてたけど。でも、あの時は俺にも見えなかったぞ?




「出来るわよ?信じられないなら外に出てみる?」




そう言ってくるウェンディー。




「いや、良い。とりあえず、信じるよ。それより、俺はもう寝るぞ!夜中に呼び出されて疲れてるんだ。明日も学校があるからな。お休み!」




夜中に呼び出されて、向こうで何時間も歩いたし直ぐに倒せたけどドラゴンとも戦ってる。体の疲れはないけど精神的に疲れた。俺は横になると一瞬で眠ってしまう。






翌日、目を覚ますと何故か俺の上で寝ているウェンディー。




「おい。起きろ!おい。」




とりあえず俺が起き上がれないから揺すって起こす。




「う、う~ん。な、なによ~。ハッ!?ち、違うわよ?別にケントが寝ちゃって寂しかったとかじゃないわよ!か、勘違いしないでね。」




揺すり起こすと寝ぼけていたのか周りを見渡すウェンディー。そして、俺の上に寝ていたのに気付くとそんな事を言う。




「いや、どうでも良いからどけよ?起きれないだろ?」




俺がそう言うと浮き上がる。すると、部屋のドアがノックされる。




「ヤバい!?隠れろ!」




俺がそう言うと姿を消すウェンディー。




「お兄ちゃん?起きてる?入るよ!」




ウェンディーが姿を消すと同時にさやかが入ってくる。




「起きてた?今、誰かと話してなかった?」




返事を聞かずにドアを開けたさやかが部屋を見渡してそんな事を言う。




「い、いや?誰とも話してないぞ。そんな事よりどうした?何か用事か?」




俺はドキリとしながらも誤魔化しながら質問する。




「そう?いや、起きてこないから起こしに来たんだけど?ご飯出来てるからね。私はもう時間だから先に行くよ?お兄ちゃんも遅刻しないようにね?」




そう言って下に降りていくさやかをやり過ごしウェンディーに声をかける。




「ウェンディー。昨日言ってた俺以外には見えないようにするって方法を確かめるぞ。」




俺がそう言うと姿を現す。誰あれ?と聞いて来たので妹だと教えてやる。




「本当に大丈夫なんだろうな?」




下に降りていく途中で小声で話しかける。




「え、ええ。大丈夫よ、任せて!」




下に降りていくと丁度さやかが学校に行く所だった。




「行ってきます!」




さやかがウェンディーに気付いている様子はない。




「行ってらっしゃい!」




とりあえず安心した俺はさやかを見送り朝ご飯を食べ食器を洗って出かける用意をする。




「何処かに行くの?」




俺が学校に行く用意をしていると近くを浮いていたウェンディーが話しかけてくる。




「ああ。学校に行くんだよ。俺と同じ位の年齢の人が集まって勉強する所だ。」




学校って言っても分からないだろうから説明すると、




「学問の園みたいな場所ね。」




どうやら似た場所があるらしい。




「それで?お前はどうするんだ?家で待ってるのか?」




正直、家に残って欲しい。




「普通に付いて行くわよ?神様達から連絡来たら困るでしょ?」




だと思った。大丈夫かよ?




「お前、絶対に周りにバレるなよ?後、大人しくしていろ!」




仕方ない。これ以上モタモタしていると遅刻してしまう。












「凄いわね、この世界は!科学だけでここまで発展するなんて!」




学校に向かう途中ウェンディーが周りの建物や乗り物等を見て騒ぎまくって煩かった。一応、この状態だと声も周りには聞こえないようだ。




「別に、他の世界でも科学が発展している世界なんてあるだろう?」




世界が沢山あるなら同じように科学が発展している世界なんていくらでもあるはず。




「それはあるだろうけど。でも私が知ってるのは魔法の世界ばかりだもの。そりゃあ、少しは科学も発展している世界もあるけど魔法の方が発展しているのよ。だから、この世界みたいな場所は私は見たことないのよ。」




そう言って辺りを見渡す。まあ、話を聞くのと実際に見るのとじゃ反応が違うか。俺も初めて魔法を見たときは驚いたし。




「そろそろ学校につくから大人しくしてろよ?人前で話しかけても無視するからな。」




俺がそう言うと黙って頷くウェンディー。コイツちゃんとわかってるのか?




その後、学校に着いた俺は教室へと行き授業が始まる。ウェンディーの奴は大人しくしている。これなら心配しなくても大丈夫か?




大丈夫じゃなかった。一時間目が終わり友達と話していると俺の机の上にいたウェンディーが居なくなっている!




あの馬鹿、何処に行った?もう授業が始まるし探しに行けそうにない。




俺が地味に焦っていると隣の女子の鞄の方からガサっと音が聞こえた。




「やったー!やっぱり飴玉だわ!」




俺がそちらを見るとウェンディーが女子の鞄から飴の入った袋を持ち出そうとしている所だった。




この馬鹿は何をやってんの?誰かに気づかれたらどうする!




幸い、俺の席は一番窓際の後ろの席だから後ろの奴に見られる心配はない。




とにかく隣の女子にバレる前に回収しないと。




俺は物を落として拾うふりしてウェンディー回収しようとするが、イタズラがバレたことに気付いたウェンディーが抵抗しようとしたせいで飴の入った袋が落ちる。




最悪だ。幸い周りの奴にはバレてないけど隣の席の女子、高崎には気付かれたかも。ウェンディーの姿は見られてないけど、高崎からしたら俺が飴の入った袋を取ろうとしたように思われたかも。




俺はウェンディーを上着のポケットに押し込んで高崎に落ちた袋を拾って渡す。押し込まれたウェンディーが文句を言っているが無視だ。




「高崎、これ。」




俺はそう言って高崎に袋を渡す。




「あれ?鞄から落ちちゃった?あありがとう柏木君。」




あれ?バレてないのか?なら、




「なあ、良かったらそれ何個か貰えないかな?」




俺がそう言うと少し驚いた後、4つ飴をくれる高崎。




「う、うん。はい、どうぞ!」




俺は高崎にお礼を言って飴を1つだけウェンディーの入ったポケットに入れる。




「やったー!飴玉だわ!」




その瞬間、ウェンディーが普通に声を出してしまう。俺は高崎を見るが一瞬不思議そうな顔をしただけで何も言わない。俺は笑って誤魔化しておく。






◆高崎サイド◆




何か音がしたと思ったら、隣の席の柏木君が飴の袋を渡してくれる。あれ?鞄の奥に入れてあったと思ったのに落ちちゃったのかな?私はお礼を言って袋を受け取る。




「なあ、良かったらそれ何個か貰えないかな?」




すると、柏木君が飴が欲しいと言ってくる。彼とは余り話したことがないから意外だ。飴が好きなのかな?




彼は気付いてないかも知れないけど柏木君はクラスの女子からの人気が凄くある。いや、訂正。学校中かも知れない。彼は普段は男子としか話さないから知らないだろうけど皆、柏木君の事を知っている。彼の隣の席になった時は友達に羨ましがられたっけ。




彼が妹さんを大事にしているのは皆知ってるし二人だけで暮らしているのも知っている。先生達も彼の事を信頼しているし、男子達とも仲が良い。顔も格好いいけど、そこは皆気にしていない。と言うより顔以上に格好いいって思うところが沢山あるからだ。




最近、少し雰囲気が変わった気がするけど、それが人気に拍車をかけている。何となく危ない雰囲気が格好いいの。




そんな彼に彼女が出来ないのは不思議だけど皆、彼が妹さんの為にバイトで忙しいのは知ってるし、何より強力なライバルがいる。




彼と幼馴染みの遠藤さんと宮内さん。まずは、この二人以上に仲良くなれないと勝負にもならない。皆、彼のバイト先に行ったりして話しかけようとしているけど誰も話しかけた人はいないらしい。何でも、バイト先に凄い美人がいるらしい。




私は4つ飴を渡す。




「ありがとう。」




彼は飴を受け取ると1つだけポケットに入れて残りは別のポケットに入れる。私が不思議に思っていると、




「やったー!飴玉だわ!」




一瞬小さな声が聞こえた気がする。気のせいかな?すると柏木君と目が合う。柏木君が微笑んでくれたわ。これだけで今日1日頑張れそう!










二時間目の授業が終わった俺は人気のない所へと来ていた。ウェンディーを叱る為だ。俺が本気で怒るとウェンディーも反省したようで謝ってくる。




「ねえ、他に飴持ってないの?」




俺が一先ず許してやるとウェンディーがそんな事を言う。お前、本当はそんな反省してないだろ?




「あるけど、今はあげない。大人しくしてたらやるよ。」




俺はそう言って教室へと戻ろうとする。だが、




「待って!神様から呼び出しよ!」




そう言われた瞬間、俺は神々の間へと来ていた。




「やあ!よく来てくれたね健人。私は女神レイアだよ。よろしく~!」




二人目の神様の登場みたいだ。

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