第八話「モブキャラは知らない」
無事に、『主人公』と仲直りをした俺はいつものメンバーと、もう一人の女と下校していた。
「おい、優斗」
「ん?」
「誰だ?」
俺と優斗は、桜井さんと拓民、そして謎の女の後ろで話す。
「誰って、あぁそうか。英は拓民と話してたもんな」
「なんだよ! そういうの良いから教えてくれ!」
「簡単に言うとだな、桜井さんの友達だ。そして『英グループ』の新メンバーだ」
俺は『英グループ』と聞いてビクッと身体を震わせるがすぐに、 持ち直し、その女に後ろから声をかける。
「あの白石さん」
「はい~? なんですか英くん」
「ま、まぁよろしく」
「あ…はい、よろしくです~!」
アウト、苦手だ。
白石という人間は俺の苦手な部類に入るらしい。
桜井さんと同じタイプなんだが、それ以上にこのテンションだ。
軽いのだ。言動やら態度やらが軽い。
白石は「そう言えば~」と言って俺の方を振り向く。
「英くんって桜井さんの事どう思ってるんですか~?」
「は?」
「いや、だから桜井さんの事どう思ってるんですか?」
「あ、あぁ普通に可愛いし普通に『ヒロイン』してると思ってるよ」
俺の適当な言葉に桜井さんが、
「『ヒロイン』してるってなに!?」
とツッコんでいるが俺は無視をする。
「なんでそんなこと聞くんだ?」
白石さんに聞いたのは拓民だ。
「だって~英くんって、恋愛とかしてそうじゃないですか~!」
俺は全力でツッコミを入れる。
「しねぇよ!」
「え、マジですか」
「マジだ、マジのマジ」
「マジなんすか~」
謎の言語で会話をしていると優斗が「何語話してるんだ」と言うが、ここも無視をする。
「そういう白石さんこそーーあ」
「なになに~?」
俺は家の近くに来たことに気づく。
「俺はここでお別れだな。それじゃあみんなまた明日」
そうみんなに言って俺は家を目指したのだった。
*****
次の日の昼休みにて俺は、屋上に来ていた。
「な、なんですか湊先輩」
そう、今屋上に来ている理由は、湊先輩ーードS女の件だ。
拓民と仲直りをした後に聞いた話だと、湊先輩は結構有名で、何より『ドS』で名が広まっているらしいのだ。
そんな人間に目を付けられるなんて、どれだけ『モブキャラ』に相応しくないんだ俺は。
「英」
湊先輩がボソッと俺の名前を呼んだ。
「はい?」
俺が首を傾げると湊先輩はモジモジとしながらぼそぼそ喋りだした。
(あれ、様子変じゃね)
異変に気づきながらも俺はいつも通りの態度で話す。
「あのだな…契約というか、約束の事でなんだが」
「約束。あ~ありましたね、確か『願い事』がどうとか言う」
「そうだ、その約束でだな」
「はい」
「約束で…」
俺は湊先輩の名を呼ぶ。
「湊先輩?」
湊先輩は深呼吸をして、やがてこう言った。
「私の弟になって欲しい!」
ーー聞き間違いではなく、確かにそう言ったのだった。
モブキャラが目立つラブコメは、絶対におかしい。 逃猫 @Yachiru17
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