第六話「モブキャラは揺るがない」
『拓民ガチギレ事件』が発生してから一日が経った。
今日は一週間の始まりの月曜日、果たして関係はどうなったのだろうか。もし『拓民』と『俺』の関係が悪化した場合、『桜井さん』や『優斗』の関係も崩れる可能性がある…それだけは止めなければならない。
つまりはこの一週間で拓民との関係を良くしないと楽しい高校生ライフは送れなくなる。
俺は自分のクラス、一年三組の教室に入る。
中に入るといつものメンバーが俺の席の近くに集まって話している。
みんなの近くに行って俺はいつも通り挨拶をする。
「おはよう!」
先に振り向いたのは優斗だ。
「おはよ」
そして次に桜井さん。
「おはよ!」
次はーー
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」
と、拓民は俺に目を合わすこともなくすぐさまトイレに向かった。
(やっぱりこうなるよな…)
トイレに向かった拓民を見ていると、後ろから「英ちょっと」と声をかけられる。
振り向くと優斗がなにか困ったような顔で俺を見ていた。
「お前、何があった」
「いや、とくになにもなかったよ」
「あっただろ」
「う」
「俺達が帰ったあとだな」
「う」
「誰にも言わないから教えてくれ英」
真剣な顔で心を尋問してくる優斗に俺は答える。
「詳しくは言えないけど、喧嘩した」
「やっぱりな」
俺が優斗の言葉に引っかかったので「やっぱり?」と聞く。
「朝から拓民の様子がおかしかったんだよ…英の話題が出るたびに、表情がくらくなってるからな」
「喧嘩って言っても、ちょっと言い合っただけだぜ? まぁ、拓民とは早めに仲直りするから優斗たちは安心してくれて大丈夫だ」
「俺も桜井さんも英たちの喧嘩に関わってないしな」
「おう」
そう短く話をして俺は自分の席に座る。
(何か仲良くなれるキッカケがあれば…)
時間は待ってくれない、早く行動を起こさないと状況が悪化するだけだ。
午前の授業が終わり昼休みが始まった。
俺はすぐに弁当を食べ終わり学校の屋上へと向かう。
屋上はこの『物語』で初登場だろうが、俺は何度か行ったことがある。
静かで、誰もいない、集中したい人にはとっておき、そんな場所だ。
廊下を歩きながら俺は考える、これからどう行動するかを。
どうすればいい、拓民との仲を元通りに直すには…まず原因は俺が拓民を『キャラ』と認識して話していた事だ。
何も思い浮かばない。やはりキッカケさえあれば、キッカケがあればーー
ーー!?
俺は屋上に続く階段で、転びそうになる人を後ろから支える。
階段を踏み外したのだろう。
今は俺がお姫様抱っこしているじょうた…お姫様抱っこ!?
この良い匂いに、手に当たる柔らかな感覚。
女だ。
青髪、それに加えて圧倒的な美人。
俺は慌てて『お姫様抱っこ』を解除し、女性に声をかける。
「だ、大丈夫ですか?」
女性の制服にある名札を見ると、「二年
「あぁ大丈夫だ。ありがとう」
「なら良かったです…」
「あ、あのどうしたんですか?」
「ちょっと来て」
「え、いやなんで急に?」
「ちょっと来て」
俺は湊先輩に手を掴まれて屋上に続く階段へと連れていかれる
屋上に着くとすぐに湊先輩が俺の両手を掴んで言った。
「困っていることあるだろう? 私が協力してあげよう」
この時は何故か、頬に当たる風がやけに暖かく感じた。
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